2004年3月1日
UNOが変わる、井上雄彦が変える。
井上雄彦氏演出による
まったく新しいCMオンエアー開始。

★解説★
『スラムダンク』でバスケットのかっこよさを描ききり、いま『バガボンド』『リアル』連載中の井上雄彦氏とUNOのコラボレーションがはじまる。
オンエアーされているCMのメイキングは次回公開するとして、今月は井上氏演出のイラストによるSTYLE、そしてこの「井上雄彦インタビュー」

TV CM篇
スラムダンク編

(1) 「スラムダンク篇」
Q:1.まずは、『スラムダンク』。連載をはじめるときに編集部は乗り気じゃなく、バスケットマンガは当たらないという常識があったと伺ったのですが?
僕自身、バスケットを高校からやってました。大学は週1回のサークルで。それもあってバスケットばっかり描いてたんですけど、連載ってなった時に編集者に「バスケットかぁ〜」って感じでずっと言われてました。バスケットはいいけどストーリーのメインにしないほうがいい。学園生活の中の一部で使うくらいがいいだろうって言われてて……
どうして編集者がそう思うんだろうって考えると、実際のかっこ良さを知らない。髪の毛サラサラな軟弱男たちがポーンとかやってるイメージがあったんじゃないかと思うんですよ。
Q:2.スラムダンクでバスケットのかっこよさに気づいた人って多かったように思いますが、それは確信犯だったのですか?
マンガでは誰もやっていないのと、自分が日常的にそういうのがかっこいいなと思って生きてるから、わざわざ必殺技とか付け加えなくても、それをそのまま描いてあればぜったい皆かっこいいと思うだろう。伝える役割をするだけなんじゃないかと。その動きを忠実に描けばかっこいいよなって思ってました。
とはいえ、学園もの、恋愛もの、不良もの、そういう要素全部入れるつもりで、連載を開始したんですけど。描いていて途中で人気のレベルがあきらかに上がった時があって、それでバスケでいけるかなと。
Q:3.それは連載を始めて、どのあたりですか?
最初の試合「陵南との練習試合」を描き始めて、その後、三井が登場してケンカするシリーズの後くらいですかね。完全にバスケットでいっていいと思ったのは。
メンバーの5人が揃った時点で、人気のレベルがいっこ上がったんですよね。それで、半信半疑ながら編集部もいけるかな?と。試合終わった後に学園生活を織り交ぜながらに戻る事もできる段階でしたし、あんなに試合オンリーになるとは思ってなかったと思いますけどね。ぼくは思ってましたけどね(笑)。そうしたかったんで。
Q:4.妙な質問かもしれませんが、井上さんの絵はどこから来るんでしょう?
それは、記憶というか。ひとつは自分がバスケットボール好きとして、NBAの雑誌とか写真とかを見てきた中で、すごいかっこいい瞬間のポーズとかが頭に焼き付いてる記憶と、自分がやってた時の基本的な動き、バスケットらしい動き、シュートとか、そういう身体の記憶。見てた記憶とやってた記憶、その2つですかね。
バスケットの雑誌とかが出始めてた頃でしたから、アメリカの雑誌とか見ててもバスケットの一瞬ってすごいかっこいいですよね。宙にいるポーズがすごくかっこよかったり。マイケル・ジョーダンがその決定打になっている。その以前にも祖先みたいな人たちはいるんですけど、写真見ただけで「うわっこんなに跳んでる」ってインパクトが決定的になったのはマイケル・ジョーダンだと思うんですけどね。
Q:5.ご自身で描けていると思うのはいつぐらいからですか?
描いてる時は毎回思ってるんですけど(笑)、1週間、2週間、3週間って経つと、ちょっと前に描いたのはダメだって思うんですよ。今見ても描けてるなって思うのは、肉体の実在感という意味で山王戦ですかね。
自分がバスケットだけ描きたい、ほとんどバスケットにしたいと思っていても、人間の動いている体とかを描くにはまだ画力が追い付いてなくて、説得力がなかった。最初の頃は完全に表現できてなかったですからね。最初ケンカシーンとかも含め7、8巻描いていく中で画力もちょっとずつ上がっていって、バスケットの試合も描けるようになってきた。最初からやっててもダメだったかもしれないですね。
Q:6.スラムダンクからバガボンドまで2年間、しかもまったく違う世界、武蔵を描こうと思ったのは?
やりたい事はバスケットマンガでしたから、しかもスラムダンクは好きなようにできたので、これで漫画家終わってもいいやくらいに、やりたい事をやり切った満足感がありました。
その後、資生堂のアレフに関わったり、イラスト集を出したりと、忙しくはしてたんです。マンガから離れていて2年くらいたって、またやりたくなってきた時に、たまたま編集者と話していて彼が「武蔵」にはまっているんだと言うのを聞いて、読んでみた。そして、この人たちをそのまま描きたいと、思ったのがはじまりです。