2000/11/25  「狂言」

 11月18日に地元で行われた狂言を見てきた。市の文化事業で毎年秋に安くバレエ、コンサート、歌舞伎、ダンスなどを見る機会がある。今回は入場料4000円。都会ではもっと高い上に、いい席が取りにくいが、地元の文化会館では早めにいけばとてもいい席がとれる。後ろの方でも800人の会場だから顔が見える。
 前から5列目の席を取れたので役者の顔もはっきり見えた。ということで人気の和泉流二十世宗家和泉元彌を見た印象。彼は舞台顔をしていた。目鼻がはっきりとしていたってこと。鼻がすこぶる高い。TVで見てた通りのハンサムだった。来年の大河ドラマで主役の北条時宗をするし、紅白の司会はするしで、時の人だ。講演の後、握手会をしていたとき、すぐ近くで見てきた。黒い細身のスーツ、白いドレープのあるブラウスのような、王子様が着ているような物を着ていた。背筋がピンとして、手が細く貴公子という感じ。背はそれほど高くなく170cm台だろう。
 狂言は猿楽から能と狂言に分かれたもので狂言は風刺、可笑しさを題材にした劇。顔は化粧を全くしない。髪型も普段のまま。だから初の女狂言師、和泉淳子は男の役をしているときも髪を後ろでまとめているだけであった。見た目は背景と着物だけが古典芸ということを思わせるだけ。初めに狂言について和泉元彌から狂言についての説明があった。歴史、拳を軽くにぎり腿の前において軽くかがむ姿勢のこと、舞台のこと、背景の松のこと、犬の鳴き声はビョービョービョーだとか、その他色々説明してもらってくれたので見たときわかりやすかった。
 演目は「墨塗(すみぬり)」「盆山(ぼんさん)」「棒縛(ぼうしばり)」。墨塗は京都へ務めで来ていた大名が地元へ帰らねばならなくなり、仲良くしていた女と別れねばならなくなった。別れに女のもとへ行ったら女は泣く。しかし大名のお連れの者が嘘泣きだと見破り、女が涙に見せる為に使っていた皿の水を、お連れがこそっと墨にすり替えた。そうとは知らぬ女は墨を目の下に塗ってしまい、大名もやっと女にだまされていたことがわかり目が覚めたという話。盆山は盆栽を盗みに入った泥棒が茂みに隠れて居るところを屋敷の者に気づかれたが、屋敷の者は気づいていないふりをして、「犬だろうか。犬なら鳴くだろう。」 泥棒「ビョービョービョー」と鳴き真似。屋敷の者「猿だろうか。」 泥棒「キャア、キャア」 屋敷の者「タイのせびれが見えた」 泥棒、せびれを見せる。屋敷の者「タイなら鳴くはず」 泥棒、タイの鳴き声を聞いたことがなかったので「タイ、タイ、タイ」 屋敷の者「タイはそんな鳴き方なぞせぬ。泥棒だな」と言いながらやっつけに行ったという話。棒縛はあるお屋敷の主人が酒蔵の酒が減っているのをけらいの太郎冠者と次郎冠者が飲んでるのだろうと目星をつけた。ある日、出かけることになり主人は一人の両腕を背中に横に渡した棒に縛り、もう一人は後ろ手に縛った。これで大丈夫だろうと思っていたが、二人は酒蔵に入り、智恵をしぼってまんまと飲む事に成功したという話。飲む様子が可笑しかった。あとの2つは狂言には今までとんと縁のなかった私でも聞いた事のある話だった。もしかしたら教科書に載っていたのかもしれない。
 狂言は600年前のままだそうだが、内容は理解できた。言葉もよく聞いていたらわかった。高校時代、教科書で習った古典よりもわかったような気がする。ユーモアがあって昔の喜劇。面白かった。来年の大河ドラマは和泉元彌目当てに久しぶりに見てみようかと思っている。