2002年3月17日   寺田寅彦の本

 寺田寅彦の随筆集を図書館で借りてきた。新聞の広告で寺田寅彦関連の本が出版されるのを知って、読んでみたい気分が起きたのだった。物理学者で随筆の大家だったということは知っていたが、本を読んだことはなかった。図書館で検索してみたら、随筆集は1冊しかなく、それも閉架書庫にしかないらしかった。それで係りの人に言って出してきてもらった。かなり古く昭和29年に出版されたもので、旧字体であった。裏の方を見ると、過去に借りた人達の名があった。5人ほどしか借りていなかったが、その中に同級生の名前を見つけた。その人は、幼なじみで京大理学部物理学科を出た秀才であった。しかし、29歳、過労死で亡くなった。勘定すると彼は中学3年生の時にこの本を借りている。確かに本をよく読んでいる人だったが、中学生でこんな本を読んでいたのかと思うと感慨深かった。(私が中学生の時は、親が買っていた日本文学全集で太宰治や三島由紀夫なんかは読んでいたが、寺田寅彦は知らなかった。)
 今日は「案内者」という随筆を読んだ。旅行した時の案内者であるガイドやガイドブックは便利ではあるが、邪魔になることもあり、新しい発見は見つけにくくなるということ、それは、科学的知識を教える案内者でも同様である。しかし、精神的方面の案内者は唯の案内者ではなくなって「師」となり「友」となる、というようなことを書いていた。旅が好きで、科学的知識を教える立場の私は、そうかもしれないなぁと納得できた。