日光国立公園のニホンジカ  2007年6月1日(金)〜2日(土)
(アースウォッチプロジェクト)

宿舎:日光交流促進センター

研究者(敬称略)

   須田知樹博士 
      立正大学地球環境科学部環境システム学科 講師

   森田淳一 立正大学地球環境科学部4年生

ボランティア6名(男2 女4) 

このプロジェクトは参加しやすい日程であり、また世界遺産日光での調査とあって非常に魅力を感じた。以前から日光観光をしてみたいとは思っていたが、和歌山からは電車を乗り継いで7時間かかるとあって、なかなか行けなかった。ちょうど中間テストの最中で、金曜の午後は年休を取りやすい。このプロジェクトは土曜の1日だけであり、ついでにもう一泊すれば観光もできるので思い切って申し込んだ。
 夜8時半頃、日光交流促進センターに着いた。女性の部屋には既に2人の方がいらっしゃった。いただいていたボランティアリストから私以外は神奈川県在住の方ばかりということは知っていた。お互い自己紹介をして、お二人は昔からの友人同士で、住んでいる場所も近いらしいことがわかった。私と同世代という感じで、話しやすい雰囲気のお二人であった。お風呂に交代で入り、のんびりしていると、10時くらいに若い女性が到着して女性全員そろった。

翌朝8時、食堂で初顔合わせをした。男性4名、女性4名の計8名。食事後、程なく車3台で出発。私は、須田先生のお話が聞きたかったし、また先生の車がマツダのRX8というスポーツカーだったので、乗せてもらうことにした。RX8はドアの開閉が観音開きみたいになっている。途中、コンビニで各自昼食用に好きな食べ物を選んだ。代金はプロジェクト代金に含まれるので須田先生がまとめて支払った。

このプロジェクトは先週も行われたが、シカの死体は見つからなかったので、今回は調査場所を変えることにしたそうだ。先週は男体山の南側、今回は北側(裏男体)である。男体山が綺麗に見えた。登専用の第二いろは坂、中禅寺湖の横を通って赤沼の駐車場に着くと、予想に反して満車でしばらく待った。

駐車場から南に少し行き、そこから山に入って行った。途中、硫黄の臭いがした。男体山はやはり火山である。柵があった。シカが出て行かないようにしているそうだ。柵の入り口付近で最初のレクチャーがあった。シカの餌であるミヤコザサ、チシマザサ、チマキザサなどについて説明していただいた。ミヤコザサは夏に地上部が枯れるので冬の餌になる。ただし、高さが50cmくらいにしかならないので、積雪量からこの辺りが越冬極限らしい。チシマザサとチマキザサは地上部は10年くらいもち、高さ1mくらいになる。ただし、シカに食べられると弱い。ササが食べられた後を見て、そこにシカがいるかどうかわかる。ウサギとシカの食痕は違う。ウサギは前歯が鋭いのでまっすぐ切れるが、シカは下あごを使うので葉脈が残る。

柵の中に入って行った。新緑が美しく、所々にシカや猿の糞が落ちていた。糞の量からこの山には10〜20頭のシカがいると予想しているそうだ。
ボランティアの役割は、GPSを持ってシカの死体を探し、その場所を記録すること。下あごがあれば、研究者は持ち帰り、年齢査定を行う。そして死体の分布地図を作成し、定期的に(1回/月程度)死体の腐敗状況を記録し、自然死亡個体の年齢ピラミッドを作成し、経年的自然死亡のシミュレーションを行うそうだ。

木肌が向けた木が所々にあった。木の形成層には糖分が通る道があるので、それを舐めるためにシカが皮をむく。皮がむけた木はやがて枯れてしまう。

時々、林道から上側と下側の二手に分かれて死体を探しに行った。昼前に、一人の男性がとうとう死体を探し当てた。そこへ行ってみると、頭骨、下顎、大腿骨が揃っていて周りに毛が散乱していた。研究者によると、一昨年生まれた1歳くらいの子鹿で、死んだのは昨秋〜冬と思われる。二冬超すと毛は散乱しないそうだ。あばら骨のような細い骨は早くなくなってしまうそうだ。

昼食をとった。周りにはニッコウモミ(ウラジロモミ)や、カラマツが多かった。やはり高地である。そこは奥日光の菖蒲林道という地で標高は1400mくらい。ウラジロモミは日本固有種で日光が群生地となっている。カラマツは唯一の落葉性針葉樹である。関東では1000m以上の所にしかないそうだ。シロヨメナが咲いていた。また栃木県花のトウゴクミツバツツジとシロヤシオが綺麗に咲いていた。

シカについて色々なお話を聞いた。昔に比べて、ハンターが減っているので、シカが増えている。そのために起こる農林被害や生態系のバランスの崩れへの対策として駆除をしている。しかし、須田先生たちは、この方法に疑問を持っていて、シカの死体を捕食している生物たちに対する影響があると考えているそうだ。

下山して最後に、柵の周辺を調査しようとしたら、雨が降ってきたので、最後の調査はやめて駐車場に向かった。時間があったので、戦場ヶ原に連れていってもらった。展望台から遠くを2頭のシカが走るのが見えた。最後の最後にシカを見られてよかった。初夏になるとワタスゲが沢山咲くそうだが、まだその時期ではなかった。

下り専用の第一いろは坂を通って東部日光駅まで送っていただいた。そこで皆さんとお別れして、私は、鬼怒川温泉に向かった。
斜面を上り下りして少々疲れたが、それは心地よいものだった。
今回の体験も、とても勉強になった。
須田先生、森田さん、ボランティアの皆さん、お世話になりました。