スマトラオオヒラタのページ

通称「スマトラオオヒラタ」、学名Dorcus titanus(Boisduval,1835)
数あるヒラタクワガタの中で、最も素晴らしい!
どの辺が素晴らしいかというと、頑強で極太な大顎!幅のある強靭なボディ!漆黒光沢のある上羽!
今一番力を入れているクワガタの一つです。
プロフィールにも書きましたが、外国産クワガタムシの生体を買ったのもこの虫が初めてで、感動を覚えたのもこの虫でした。
そんなこの虫の良い血統にやっと出会い、また、この血統でギネスを狙いたいと思ったのです。
累代はWF2まで来ていて、♂成虫も年明け頃には羽化してくると思うので、少しずつですが、暖めてきたデータを公開し、少しでも多くの方がこの虫の良さを共有できる方が出てくればと思います。


初代
 初代は昆虫専門店(A店)が、HP上で49mmメスを売っていることを知り、早速TEL在庫を確認、すぐ購入しました。
2頭有ると言うことで2頭とも購入、49.0mmをA、49.5mmをBとし累代を始めることにしました。
 ここで私が重要視したのは、産地とワイルド(以下W)メスの大きさでした。
それまでWで49mm台のメスは中々見ませんでしたし、産地はできるだけスマトラ島北部の個体がほしかったのです。
これまでの経験上、スマトラヒラタについてはパダンで93mm位までは出ていたのですが、頭打ちを感じていました。元親が小さくても菌床に入れれば90mm位までは簡単にでます。しかし、ギネスに1mmでも近づこうと思えば、大きさはやっぱり大きいほうが有利ですし、フォルム的にも内歯下がり、極太が理想でした。
 スマトラオオヒラタというのは、スマトラ島北部〜南部にかけて連続に歯型が変化します。パダンのものでは歯型は安定しませんでしたので、より内歯が下につく安定を求めアチェを選びました。
 唯一の心配点は、タネがついているかという点と、そのタネがムキムキマッチョの内歯下がりのオスかという点でしたが、期待どうりの結果が出ました。今迄、ヒラタのW個体で産まなかった事が無かったので、その辺は大丈夫かと思いましたが。

累代1代目の結果:
A血統、10頭初令幼虫を選別、菌床投入
B血統、10頭初令幼虫を選別、菌床投入
残った幼虫は、数頭?(10頭近く有ったかもしれない)ネット販売、クワ友に20頭程プレゼント。
このクワ友宅では、今年の春(2年近くかけて)95mmUPが出てかなりヘコミました・・・。(残念ながらきちんと血統管理していないということで使えません。)

詳しい資料は残していませんが、ちょうどオス10頭、メス10頭羽化不全も無く成虫になりました。
A血統 ♂最大94.8mm、♀49.5mm
B血統 ♂最大93.0mm、♀48.5mm

 オスメス共に、何年もかかって累代してきた自己ブリードギネスの結果をあっさりと塗り替える結果となり、この血統の良さと、100%内歯下がり、しかも、極太個体のすばらしさに改めて感動しました。
 ここで注目していただきたいのは、(少ないサンプルでの比較に過ぎませんが)A血統のほうがオスメス共に最大個体が出ています。次世代はA血統の最大個体オス94.8mmを使って累代し、そのクワ友を見返してやりたいのと、本来の目的であるギネスに1mmでも近づけるように闘志を燃やしつつ累代することを決めました。

2代目
2代目のブリードはかなり気合が入りました。
まず配合ですが、
A血統♂94.8mm×A血統♀49.5mm(最大オスでのインラインブリード)記号はA
A血統♂94.8mm×B血統♀48.5mm(最大オスでのアウトラインブリード)記号はB
A血統♂94.8mm×A血統♀48.7mm(最大オスでのインラインブリード、保険)記号はC

 以上の方法で産卵セット、C保険分は何故か産卵しませんでした。セットA、Bは大ケース、Cについてはあくまで保険ですので中ケースで行いましたが、結果オーライ、予定していた通り2系統の幼虫を得ることができ、その全てを菌床ビンに投入、(今回は気合が違います!クワ友達には半ば・・・)メスがぼちぼち羽化してきました。しかし、その成長スピードの速いこと!
詳細は次回にしますが、6月中旬に投入した幼虫がもう羽化しているのです・・・。
 何故こんなにも早いのか?以前から冬場はガラスケースやメタルラックを使った簡易温室を使っていましたが、夏場の飼育は常温でした。しかし今年の夏は、2坪の冷凍冷蔵庫内にエアコンを導入し、設定27℃、実測24℃〜25℃で飼育をしました。(ここにも気合が・・)
 前から夏場の常温菌床飼育は幼虫の体重増がイマイチと思っていたのですが、やっぱりでした。25℃にしたかったのは、引き続き産卵セットを続けたかったのと、台湾オオクワその他のセットをしたかったからです。本当は22℃位にしたかった・・・。知り合いのクワ友には、部屋を20℃にセットして、さらに温室を置いて加温しているツワモノもおられるのだが・・・。
 2005/02/05現在
飼育温度について、投入〜2004/11月頃までは24℃〜25℃、2004/11月頃〜2005/2月頃まで19℃〜21℃、2005/2月頃〜2005/4月中旬21℃〜23℃、2005/4月中旬常温管理(エアコンOFF)。

累代2代目の結果:
 血統Aの個体を表T、血統Bの個体を表Uにまとめてみました。

表中説明:
小”→500cc程度ガラス瓶、中→850cc程度ポリボトル、大→1500cc程度ポリボトル、大”→1500cc程度ガラス瓶、特”→4000cc程度ガラス瓶。
サイズのところの「up」は、数字サイズ+0.5mm以上あるものについて♀のみに付けてみました。
また、備考欄に特記の無いものについては、初令で割り出し及び投入、表U−bQ1〜bR4の個体については、添加剤の有効性を合わせた実験も同時に行った。また、表U-bR5〜43(bS2除く)については、2〜3令オスのみ選別、菌床投入なので実験結果からはずしたいと思います。(メスはまとめ飼い)笑!

表T:(血統A)
番号 投入日 交換日、ビン 体重(g) 交換日、ビン 体重(g) 羽化日 雌雄 サイズ(mm) 備考
bP 6/17 中 04/8/30 中 17 04/11/下 48
bQ 6/17 中 04/8/30 中 14 04/11/下 47up
bR 6/17 中 04/8/30 中 17 04/11/上 49
bS 6/17 中 04/8/30 中 16 04/11/下 48up
bT 6/17 中 04/8/30 中 17 04/10/下 48
bU 6/17 中 04/8/30 中 16 04/12/上 48up
bV 6/17 中 04/8/30 大 31 蛹化不全
bW 6/17 中 04/8/30 特" 38 05/1/下 90
bX 6/17 中 04/8/30 大 26 04/11/9 大 46 05/1/下 88
bP0 6/17 中 04/8/30 特" 28 04/12/24 大 41 05/3/上 93
bP1 7/4 中 04/9/18 中 15 04/12/下 49up
bP2 7/4 中 04/9/18 中 18 04/11/下 49
bP3 7/4 中 04/9/18 中 19 04/11/下 49up
bP4 7/4 中 加令不全?
bP5 7/4 中 消滅
bP6 7/4 中 消滅
bP7 7/4 中 04/9/18 大 35 04/11/9 大" 42 05/2/中 88
bP8 7/4 中 04/9/18 大 26 05/2/中 87
bP9 7/4 中 04/9/18 大 39 05/2/中 91
bQ0 7/4 中 04/9/18 大" 38 04/11/30 大" 48 05/3/上 94
bQ1 7/4 中 04/9/18 大" 33 04/11/30 大" 43 05/2/下 91
bQ2 7/4 中 04/9/18 大" 28 04/11/25 大" 41 05/2/下 89
bQ3 7/4 中 04/8/30 特" 29 04/12/17 大 41 05/3/中 88
bQ4 8/5 中 05/1/上 48up
bQ5 8/5 中 05/1/下 47
bQ6 8/5 中 04/10/31 大" 46 05/3/上 90
bQ7 8/5 中 04/10/31 大" 49 05/3/上 92
bQ8 8/5 中 04/10/31 大" 48 05/1/5 特" 46 05/3/中 92
bQ9 8/5 中 04/10/31 大" 47 05/3/下 89
bR0 8/5 中 04/10/31 大" 42 05/1/5 大" 42 05/3/下 90
bR1 8/5 中 04/10/31 大" 46 05/1/5 大" 48 05/3/下 92
bR2 8/29 中 04/913 中 05/1/上 49up
bR3 9/28 中 05/1/下 46

表U:(B血統)
番号 投入日 交換日、ビン 体重(g) 交換日、ビン 体重(g) 羽化日 雌雄 サイズ(mm) 備考
bP 6/17 中 04/8/26 中 12 04/11/下 47up
bQ 6/17 中 04/8/26 中 16 04/10/中 47up
bR 6/17 中 04/8/26 中 13 04/10/上 48
bS 6/17 中 04/8/26 中 15 04/12/中 49up
bT 6/17 中 04/8/26 中 17 04/10/中 49
bU 6/17 中 04/8/26 中 18 04/10/中 50 羽に水膨れ
bV 6/17 中 04/8/26 中 15 04/11/上 48up
bW 6/17 中 04/8/26 中 04/9/上 47up
bX 6/17 中 04/8/26 中 04/9/下 45
bP0 6/17 中 04/8/26 中 04/10/中 48
bP1 6/17 中 15 蛹化不全
bP2 6/17 小" 04/8/21 大 32 04/10/14 大 46 04/12/中 89
bP3 6/17 小" 04/8/21 大 37 04/10/14 大 48 05/1/上 92
bP4 6/17 小" 04/8/21 大 36 04/10/14 大 50 05/1/上 91
bP5 6/17 小" 04/8/21 大 36 04/10/14 大 49 05/1/下 90 49→42、交換ミス有
bP6 6/17 中 04/8/26 大 34 04/10/14 大 47 落下により羽化不全
bP7 6/17 中 04/8/26 大" 38 04/10/14 大" 41 04/12/下 89
bP8 6/17 中 04/8/26 大 28 04/10/14 大 54 05/1/下 89
bP9 6/17 中 04/8/26 中 37 04/10/14 大" 45 05/1/上 89
bQ0 6/17 中 04/8/26 大 38 04/10/14 大" 46 05/1/上 88
bQ1 7/4 中 04/9/20 中 16 04/11/中 50 無添加
bQ2 7/4 中 04/9/20 中 15 04/11/下 48up 無添加
bQ3 7/4 中 04/9/20 中 17 04/11/下 48up 無添加
bQ4 7/4 中 04/9/20 大" 36 04/11/25 大 43 05/2/中 91 無添加
bQ5 7/4 中 04/9/20 大" 41 04/11/19 大 48 05/2/中 92 無添加
bQ6 7/4 中 04/9/20 大 44 05/2/上 93 無添加
bQ7 7/4 中 無添加 蛹化不全
bQ8 7/4 中 04/9/20 中 13 04/11/下 48
bQ9 7/4 中 04/9/20 中 12 04/11/下 47up
bR0 7/4 中 04/11/上 48up
bR1 7/4 中 04/9/20 大" 43 04/11/29 大 39 05/2/中 91
bR2 7/4 中 04/9/20 大" 43 04/11/25 大 50 05/2/下 94
bR3 7/4 中 04/9/20 大" 44 04/11/29 大 44 05/2/中 91
bR4 7/4 中 04/9/20 大" 38 04/11/19 大 44 羽化不全、91〜92
bR5 8/29 中 04/11/9 大 45 05/3/中 87 2令で投入
bR6 8/29 中 05/3/中 87 2令で投入
bR7 9/3 大 04/11/9 大 37 05/1/下 83 3令初期で投入
bR8 9/3 大 04/11/9 大 41 05/2/上 82 2令で投入
bR9 9/3 大 04/11/9 大 48 05/3/上 92 2令で投入
bS0 9/3 大 04/11/9 大 47 05/3/上 89 2令で投入
bS1 9/3 大 04/11/9 大 33 05/2/上 79 2令で投入
bS2 9/28 中 05/1/中 49up 3令14gで投入
bS3 9/28 中 04/12/7 大" 40 05/4/上 90 3令初期で投入

考察:
 今回の実験で初めてのクーラー飼育により短期間で羽化までもっていくことができたのと、逆に、設定温度が高すぎたため(?)、早期の積算温度達成による中型(?)程度のものの羽化が目立っている。
中型という記述に疑問を持たれる方もいるかと思うが、種雄が94mmなので、94mm以上を大型とココでは呼びたい。
 表U−bW、bXの個体については3ヶ月程度で羽化しており、今回最大サイズのメス50mmについても、4ヶ月で羽化することが分かった。
 しかし、A血統メスのアベレージは48.3mm、B血統メスのアベレージは48.2mmとそこそこ高く、はずれ個体である45mmと46mmが無ければそれぞれもう少しアベレージが上がったように思われる。
 メスの羽化はじめの頃、50mmという自己ブリード最大サイズが出て喜んだのではあるが、以降それを越えてくる51mmサイズが出なかったのは残念である。
 次にオス個体であるが、A血統アベレージ90.2mm、B血統アベレージ90.6mm(うちサンプル14個体)で、両血統ともアベレージを見る限りコンマ何mmの差は有るもののこの程度は誤差の範囲と考えたい。
 「幼虫サイズのわりに大型化しなかった。」と以前に記述したのではあるが、実際のところ、表T-bP0の個体のように、幼虫時代の体重が41g程度でもその後の展開次第で、今回の成虫群では大型に入る虫も羽化していることを考えれば、幼虫体重の計測は「無意味なのか?」と思わせる個体も少なくはない。実際種親に使った94mmも最終体重は47gであった。
 幼虫時の体重は、菌床の種類、特に水分量に左右されることが多く、以前使っていた菌床では、55gUPが続出したが、羽化不全やディンプル個体が多く、きれいに羽化させようと思えば、現在使用している水分オオクワ用?の菌床が合っているように思う。「合っている」と言っても、野外ギネスには程遠い状況なので、サイズを出すには菌床飼育自体が合っていない様な気もする。
 数を飼育すると、趣味で飼育しているということもあり、どうしても安価な菌床を使わざるをえない状況にある訳では有るが、機会があれば(もう少し低価格になれば)カワラ菌床等も使用してみたい。
 また、添加剤の有効性についても実験したわけではあるが、今回の実験では比較する対象個体が少なかったこともあるかもしれないが、特別、添加剤の有効性が確認できないような結果となった。同じく、ビンの材質についてはあまり神経質になるような状況に無い様に思われる。
 
最後に:
今回、76頭もの幼虫を1シーズンで飼育したわけであるが、親個体を越すサイズのオスが出なかったのには正直がっかりしたわけであるが、さらに次世代の累代に対する闘志が沸いてきたのと同時に、多頭飼育により素晴らしい発現形を見せる個体が20%程度確認することができた。サイズは90mm〜92mmであるが、アゴの太さが他の個体とは明らかに違っていた。
メスでは1頭のみ飛び抜けてアゴの太い個体を確認できたので、次世代は、各血統を2ラインに分け、太さ(特にアゴの太さ)と、サイズによるブリードを行いたいと思っている。単純計算で150頭近い幼虫を抱えることになるのかと思うとゾッとするのではあるが・・・。
 うまく写真を撮る事ができるのか少々心配では有るが次回は写真も交えて、皆さんに楽しんで頂ける発表にしたいと思っている。



お便りお待ちしております

KSNワールドTOPへ