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チトンシャンと三味線の音色が聞こえる。「上手く、なりましたね!お嬢さん」「先生が教えてくれるからです!」娘・千代。
「いやいや、お嬢さんの上達が早いのですよ」と言った男・男盛りの艶っぽい顔をしている。「何時も、先生には、本当に
お世話になって…」「三味線の音がおかしくなったら、何時でも家の店に来て下さい。それでは俺はこれぐらいで…」
大店・伊勢屋から出た勇次であった。
「順ちゃん〜。待ってよ」と玉助。「こんな所で捕まりませんよ。あの、おじさん本当にしつこいから!」「順ちゃん、冷たいのね。悔しいー!」と袂を咥えて怒っている玉助。
「やっと、我が家についた。おせいちゃん!」「遅かったじゃないかい!又、あのおかまに追っかけられたんだろう。」「おばさんこそ、何です?そんなに富くじを買って!」「富くじを買ったて大もうけすると、この世界からおさらばできるじゃないかい!」喜ぶ加代。
「でも、そんなお金!あったのですね…」「八丁堀と二人で買ったんだよ!」「なるほどね…」と呆れ顔の西順之助。
「お殿様に謙譲したい、良い品が入りまして」と長門屋「良い品とは、例の品か!」とニヤニヤしている、勘定奉行・宮田左門之助。
「お殿様に、例の品を…」と長門屋が言うと、若い娘が縛られて来た。「最近、若い娘のかどわかしが多いそうだが そうか!その方であったか!」「器量の良い娘は、お殿様に!器量の悪い娘だったら、ルソンに売り飛ばしていました。お許しを…」と長門屋。
「よいよい、それよりこの娘は器量が良いの!」ニヤつく宮田に「お助け下さい、お願いします」「悪い用にはしないから、こちらに」
「嫌ー!誰か助けて!!」と叫ぶ娘に「仕方がない!始末するか」っと言って娘を刺した。「大川にも、捨てておけ!」と言う宮田に
「はい、分かりました。」と長門屋。
「大川に娘の死体があがったよ」と叫ぶ女に野次馬が集まる「中村さん!この娘、身投げしたのでしょうね。可哀想に」と言う田中に、
「刺し傷がありますけど…これは、殺しではないでしょうか?」「身投げと言ったら、身投げです!!この事はお奉行さまの命令でも
あるのですよ!」っと小声で言う田中に「臭いモノには蓋をすれ。ですな…」と呟いた主水。
「勇さん、今日は寄って行っておくれよ…」とせがむ芸者に「また、今度な!」と交わす勇次。
「良い、男は 何時も、もてて大変だね〜」と暗闇から、加代が現れた「なんぜー、おめーか!」「それより、私の買った富くじで 一儲け
しないかい?八丁堀も一口乗ったのだよ。」「おめーの話は乗らない!」と帰る勇次の背に「良い男ぶるんじゃないよ!ケチ」と叫ぶ
加代だった。
お千代が、夕暮れ時 三味線音色が悪いので【三味線屋】の看板を探していた。その時である、背後から何者か分からぬ
男達が、お千代をかどわかしたのだ。溝内を殴られたせいか、お千代は、籠に乗せられて連れていかれた。
道に三味線だけが残っていた。
長門屋の一室に、気絶をしているお千代が横たわっている。「今度のお殿様の品は上物が入りまして」「ほーこの娘か!」
目を開けた、お千代は見知らぬ人物と部屋に怯えている「ほー目覚めたか!娘」「貴方達、誰です?此処はどこなの?」
「良い子にしていたら、何も悪い用にはしないよ」と長門屋。
道に、三味線が落ちているのを不思議に思い、後をつける男・端正な顔をしている【飾り職人の秀】だ。
長門屋の屋根裏に上ると板を外し、見ている。秀も大川に上がった娘の死を不信に思っていたのだ。
中を見ると、良く伊勢屋の前から 三味線の音色が聞こえて来ていた。勇次と楽しそうに話しをしている、お千代ではないか!
「誰か、助けて!勇次さん助けて」と泣きじゃくるお千代に帯を取る左門之助。隣の部屋には「寝間が敷いてある、こっちに来ないか
小娘」部屋からは、泣きじゃくる お千代の声が聞こえた。暫くすると、出てきた・左門之助が「長門屋!何時ものように始末を…」と
長門屋を呼びつけ、千代を匕首でさした。そして、荷台を乗せ大川に来ると橋の上から千代を落とした。
「勇さん、お願いだから 今夜は…」芸者・お蔦から誘われている勇次。「ねーさん、今度にして下さいな」「たつみ芸者のお蔦を
恥じを欠かせるつもり!!」と怒って行った、お蔦だった。
大川を歩いている、勇次の目を疑ったのは、川に投げ出されている お千代の姿だ。駆け寄る勇次に「先生…」と小さな声で
「先生を訪ねようとしたら、かどわかされて…先生に直して貰おうと思ったお金です。江戸には、晴らせぬ恨みを晴らしてくれる
仕事人っと言う人の噂を聞きました。このお金で…」と息を引き取った お千代「わかったぜ・お千代ちゃん」とその財布を握り
締める勇次であった。
暗いお堂の中
事の経緯を、秀から聞いた主水は「ひでぇー真似をしやがる」「お千代が残していった、銭だ!少ねーが仕事両にしてくれ。」
一人一分の割だ。「行くよー坊や」と二分銀貨を順之助に渡す加代。一分銀を握り、走り出す秀。勇次の肩を叩き、頷きながら
一分銀を持って行く主水。残された勇次が、残った銀貨を握り蝋燭の火を消す。
「おしーい事をしましたな。あんな上玉!滅多に手に入りませんよ。」「又、頼む長門屋」「お殿様の為ですから、又探しますよ」
と笑っている、長門屋。女中が出入りしている。
「何軒だい?」「十軒です」と言うと投石機に石を置く加代。「行くよー」っと言った瞬間女中達が倒れた。
「籠に娘をかどわかし乗せるだけで、儲かる良い仕事だ。」っと言っているならず者の木陰から飛び降りる、秀!登場。
口に簪を咥えている。ならず者の口を抑えると、チャリーンっと鳴らし首を貫いた。
「女中が遅いな…誰かいないのか」長門屋が大声で言っていると口に咥えた三味線の糸、木陰から糸を投げると
長門屋の首に絡まった。「苦しい…」っと途切れ途切れの声で言う長門屋が、持ち上がった!勇次は肩からピーンっと張った糸を
指で鳴らす「ビーン」三味線の糸を鳴らすと同時に、長門屋は息を引き取った。
「長門屋ーー、何処に行ったのだ長門屋」影がみえる「誰だ!貴様は」「地獄の案内人です」と刀で左門之助を斬りつけた主水。
「今日は、富くじの当りの日だよ!八丁堀」と騒ぐ加代に「なんぜー全然、当たらないじゃーねーか!この馬鹿!!」
「おかしいね…こんな筈ではないんだよ」「おめーが当たると聴いたので、俺は一口乗ったんだぜ!その占い師の所に行こうぜ!
加代!」「占い師じゃないんだよ。あたしが、見た夢で…」「何でそれを早くいわねーか!俺まで大損くったじゃねーか!」と
諦め顔の主水。
中村家
「ただいま、帰りました。」「母上、この上等の着物はどうしたのです?」「母上が、富くじで金子を当り 買ったのですわ」
「ほほほほ、どうです!?婿殿、この着物、似合いますかしら」と嬉しそうに反物を肩からかけ喜んでいる、せん。
「似合いますよ!母上、正直モノは損をするな…」「何か言いましたか!婿殿」「いえ、良くお似合いになるといったのです」と
せんに言う主水であった。