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2005年11月29日 | 【 3.月刊『お前だえよ!』 】 |
粋なおじさん、海南の文さん
年に一度、地元での独演会も無事終わり、この号が発売している頃は又いつもの日常生活に戻っている事だろう!(ちなみに今は11月1日。独演会は9日)
地元での会は、年々お客さんが増えてくれて嬉しい気持ちとそれにお応えしなければと言う気合で毎年、この時期は「あ~でもない!こうでもない」と夜な夜な事務所で頭を抱えている訳です。・・こういう時間があればこそ、終わってからのお酒は格別に美味しいんやけど。来年20周年を迎える僕は、色んな人の応援で今があるわけです。特に地元は、お客さんに来てもらうのに必死だった20代前半の頃から今に至るまでずっと顔を見せてくれている人たちがいる。落語家に成り立ての頃は、勿論僕の事は誰も知らないわけで落語会を開くといっても、友人や知人または親戚と身内がほとんど。和歌山出身といえども馴染みのない若手芸人の僕が、高座で喋っていると見慣れた顔の中に知らない顔を見付ける。会を重ねて行く度、お互い顔見知りにもなり親しくなる。決して「あそここうした方がいい」とか批判的な事は言わず常に「がんばれ!」と言って励ましてくれる。そういう人がいればこそ今がある訳やし、続けている値打ちもあるわけです。
海南で「藤白寄席」という落語会を藤白神社で年に一度開催している。
これは、海南の市民サークルの皆さんが主催としている手作りの会で僕にとって一番古くから続いている落語会。打ち上げも、主催者側のお家でざっくばらんとした手作りな感じがあったかい。その会で知り合った‘文さん‘というおっちゃんがいてる。見た感じ、菅原文太に似ている事から皆はそう呼んでいる。今から15年も前の話。(ひょとしたらもっと古いかも知れない)まだ文さんと知り合って間がない時、僕は海南でラジオウォークの仕事をしていた。ほかの人に混じって作務衣にグラサン白髪交じりで角刈り。首から手拭いをかけた粋なイデタチで訪れた。仕事終わり、帰ろうとしていた僕に「ちょっと行こう(酒)か?!」と誘ってくれた。時間もまだ夕方、汗をかいてるせいもあり風呂行こうとレトロなお風呂屋さんへと連れってくれた。旧家の町並みを親子ほど年の離れたふたりがそぞろ歩いては、出会う人に次から次と愛想をしている。結構、顔の広い文さんである。
それから、ふたりは湯船に浸かり裸の付き合い。風呂上りにコーヒー牛乳までよばれた。
昔からの知り合いの様に話込んだ。
もう大分と経つんだが未だにその事が鮮明に残っている。その後、奥さんと合流して居酒屋へ。それからは、和歌山市内での僕の落語会へは必ず来てくれる。またそこで知り合った先輩や後輩の落語会へも顔を出してくれる。今では、落語会で文さんが居ないと何とも落ち着かない感じだ。今年は、海南での高座が多く、ある日出番前にタバコをくゆらせながら「何のネタをしようかなあ?」と悩んでいると、「今日のお客さんからしたら、これやな!」とささやく。僕の落語を人一倍聞いてると分かってるから僕もスッとそのままやってしまう。(笑)その仕事が終わってから、ふたりで久しぶりに昔、コーヒー牛乳を飲んだお風呂屋さんに行ってみた。昔と何ひとつ変わらない佇まいに安心し、ふたりでゆったりとちょっと熱めの湯船へ浸かった。時間が止まっているかのような銭湯で入浴後、あのときのコーヒー牛乳を飲んでみた。15年前から置いてるんちゃうかなあと思うぐらい同じ味。
風呂屋から出でて文さんの後姿をみて「あ、ちょっとおじいちゃんになったなあ~」と一人で微笑む日曜日の夕ぐれ時でした。
Posted by sisomaru at 2005年11月29日 19:41