医療事故調査会は「医療事故の被害者を救済し、医療事故を防止するためには、医療事故事例を集めそれらを
検討して、教訓を引き出し、それを日常診療に生かすシステムを確立することが必要である」との認識の下に
、具体的事例について、公正・中立の立場から、医療内容の検討・評価を誠実に行い、その結果を文書にまと
めて検討依頼元に報告し、もって、「患者の権利の確立」「医療の質の向上」を図ることを目的として、
1995年4月22日に発足されました。
その医療事故調査会代表世話人であり、医真会八尾総合病院の理事長でもある 森 功 先生からメッセージ
をいただくことが出来ましたのでご紹介させていただきます。
森先生は、日本救急医学会認定医、日本循環器学会専門医であります。



小生の外来に二人の「拡張型心筋症」の患者さんがおられます。
昔、といっても一人は3年前、今一人は20数年前に心筋炎にかかっておられます。
幸い、心筋炎は乗り越えたものの、その後にこういう病気を併発されていますが、治
療によく反応され、自己管理もよく移植など念頭におかずに生活しておられます。
急性心筋炎は予想以上に多い病気ということは、病理学の先生などから指摘されてい
ます。                                   
しかし、臨床的に「症状を訴える」レベルの心筋炎は多くはありません。
ましてや生命に関わる「劇症型」はさらに少なくなります。
ただ劇症型は必ずしも救命不可能ではありません。
何よりも「早期診断」が決め手です。                     
必要に応じて簡易人工心肺、補助人工心臓、大動脈バルーンポンプなどを使って、
7−10日間ほど心臓を休めると完全に回復するヒトも少なくありません。
大切なことは「かぜ症候群のあとで急性心筋炎を起こすかもしれない」という認識が
第一線の診療家にあるか否かです。                      
大学などの高度機能病院の専門の医師は「心筋炎の診断がつくか、疑いがあるために
紹介されてきた患者さん」を診ているので診断しやすいのですが、初診の患者さんか
らその情報をピックアップすることがもっとも大切ですが、その気がなければ決して
診断できるものではありません。                       
「心音の聴取は医師としての基本的診察手段」です。              
もしも聴診が出来ないのならば、早急に「再訓練」を受けてください。
聴診は循環器の医師の特技ではありません。                  
また心筋炎は心臓に限局した病気ではありません。
免疫システムの異常を伴う全身的病気です。                  
単なる「かぜ」でないような「顔色が悪い、倦怠感が強すぎる、熱の割には脈が速す
ぎる、脈が弱い、呼吸が速い、顔がむくむ、尿が少ない、ミルクの飲み方が極端に悪
い」などがあれば「先生、心筋炎の可能性はありませんか」と尋ねてください。
それを受けて「ではもう一度慎重に聴診しましょう、脈が弱くていやに速いので念の
ために心電図を取りましょう、どうも怪しいので循環器の先生に紹介しましょう」な
どという対応をする医師には続けて診療を受けてください。           
物も言わずに大丈夫といった顔をする医師は次回から遠慮してください。
それとともに小さなノートを持ってゆき、「診断・その理由=検査所見など・治療内
容・生活等の指導など必要情報」を記入してもらってください。
自分の健康・診療情報は普段から自分の手元においてよく理解し、納得しておいてく
ださい。                                  
決して、熱があるから熱冷ましといった治療に走らないように。


                      医真会八尾総合病院  森   功