心  筋  炎

 心臓の筋肉(心筋)に炎症が起こることを心筋炎といいます。
 もっとも多く見られるのは、ウイルス性心筋炎で、それまで心臓に異常のなか
った人が発熱、咳、頭痛、咽頭痛、倦怠感などの風邪症状や、吐き気、嘔吐、腹
痛、下痢などの消化器症状に引き続いて、動悸、胸痛、呼吸困難やむくみ、顔面
蒼白、チアノーゼ、不整脈や失神発作、四肢末梢の冷感、関節痛、筋肉痛、発疹
などの症状が出現した場合、急性ウイルス性心筋炎が強く疑われます。





心筋炎と解熱鎮痛剤

 風邪と思われる患者を診察する際、心筋炎の合併を危惧して診察する医師が極
めて少ないという。
 ウイルス性が圧倒的に多い心筋炎であるが、心筋炎の診断をしたことがない、
診断を下せない医師が多い中で風邪として見過ごされやすい疾患の一つである。

 1997年5月、医療事故調査会のシンポジウムで、医真会八尾総合病院長の
森 功 先生(医療事故調査会代表世話人)が、解熱鎮痛剤の危険性について
「感冒から発症した急性心筋炎と増悪因子としての非ステロイド系消炎剤」と題
して発表をされていました。

 急性心筋炎の急性期に(発症1週間)、非ステロイド系消炎剤を使用すると心
筋壊死を増悪させる可能性があり禁忌であるということ。
 体温と比例しない瀕脈、胃腸症状、倦怠感を伴う呼吸困難、低血圧をみれば本
疾患を疑うことが肝要であり、臨床的に何等かの心機能低下所見を示す例では早
期診断、少なくとも疑診は予後を左右する最も大切な点であると警告している。





急 性 心 筋 炎

 急性心筋炎は心筋症障害にもとずくポンプ失調や伝導障害による不整脈により
多彩な症状を呈する。
 1980年に発表された厚生省小児慢性疾患研究班による「小児心筋炎の診断
のための試案」以後、心エコー検査の進歩と普及により病型の解明が進められて
きた。
 本症は従来より突然死を含む予後不良例がある反面、急性期を乗り切った後、
心筋にほとんど後遺症を残さず治癒する例や、拡張型心筋症の基礎疾患なるよう
な慢性の経過にてその存在が後日推測されるものまで包括されている。





心筋炎(小児)の分類

 小児科の一般臨床医が外来で診察する患者は、その大多数が感冒とその合併症
である。
 入院設備を有する病院小児科の急性期疾患に対する役割が、大多数の感冒患者
の中に発生する合併症の有無を診断し治療することである。
 この範疇に急性ウイルス性心筋炎は位置づけられる。
 しかし心筋炎は、病初期には診断のための特異的症状に乏しく「何となく元気
がない」といった、漠然とした症状を呈し、通常より長引く経過の中で子供が弱
り、睡眠、食事、遊び等の日常生活に支障を来すケースとして小児科医は遭遇す
る。



 小児期急性心筋炎は発症状況、心筋障害の部位、程度により3つの型に分類さ
れる。

@Stokes−Adams(S-A)型
 Stokes−Adams発作は心停止ないしは心室細動による心原性の循環停止が脳虚血の原因となり
意識障害、失心、痙攣きたす発作がある。
 S−A型はこの発作にて発症し通常、前駆症状より発症までの期間は半日から3日と短く急激
な経過をとる。
 しかし心拍出量の変化は軽度であり、EF(駆出率)の低下は非発作時はみられずほぼ正常の
70%程度である。心電図の変化も著明である。
 「劇症型」「急性致死型」「無症状突然死型」はこの群にあてはまる。

A発作性頻脈拍(PT)型
 動悸を主訴とし脈拍200/分を越えるような頻脈、胸痛、蒼白等にて発症する特徴がある。
 前駆症状より発症まで7日から14日と期間が長い傾向にある。
 心電図変化では上室性頻脈(PSVT)が特徴的で伝導障害が全面に出ることにより、
「Electric failure」とも呼ばれる。
 EF(駆出率)の低下は少なく報告でも60%程度の低下にとどまる。

Bポンプ失調(PF)型
 心拍出量の低下による心不全症状にて発症し、病初期よりEF(駆出率)の低下が特徴であり
50%以下となる。
 進行した場合30%を切ることもまれではない。
 心電図変化では「ST−T変化」と「T波の逆転」を来す。
 前駆症状から発症までの期間は3日から5日間である。



参考文献 日本小児循環器学会雑誌3巻3号299〜306頁(1988年)
     小児期急性心筋炎14例の発病時を中心とした臨床像の解析






 ウイルス性および突発性心筋炎に対する全国アンケート調査では、最も出現頻
度が高い症状は発熱(57.3%)で、次に胸痛(46.8%)、呼吸困難(46.3%)
動悸(30.7%)、失神(23.4%)、浮腫(16.1%)、ショック(12.8%)、
痙攣( 9.2%)、チアノーゼ( 8.3%)となっている。
 新生児心筋炎に至っては特異的な症状がなく、元気がない、哺乳困難、チアノ
ーゼ、発熱、呼吸窮迫、黄疸、下痢、肝脾腫大、2峰性発熱、出血、中枢神経症
状などが認められるのみである。



参考文献 厚生省特定疾患特発性心筋症調査研究班、昭和60年度研究報告集