小 児 医 療






小児科は母科である
こどもが最初にかかる小児科医は母親であるというこの言葉は、小児科の教科書の始めに書
かれているという。
こどものちょっとした異変に気づくのは、外の誰でもない『母親』なのである。
自分の状態を言葉でうまく表現できないこどもにとって、母親からの訴えは重要な役割を果
たす。
この母親の訴えを「大したことではない」と受け取るか「重要なこと」として受け止めるか
でその後の治療に大きな影響を及ぼす。
母親は、世界中の誰よりも我が子のことに関しては専門家であるということを忘れないでほ
しい。





人間性が表れる診療
こどもの病気というのは流行があり、ともすれば診療が雑になっている場合がある。
日常の診療の中で「慣れ」ということが絶対にあってはならない。
常に緊張感をもって新鮮な気持ちで患者に接する態度こそが、早期診断・早期治療につなが
る。
軽症患者の中にいる重症患者に対する危機感を忘れてはならない。
たとえ同じ病気の患者がいたとしても、その後の経過や予後の見込みなど全て同じではない
ということを肝に銘じるべきである。





緊急を要するこどもの病気
こどもの病気は、信じられないスピードで悪化する場合がある。
患者やその家族に不安を与えない診療、すなわち母親の訴えに真摯に耳を傾ける診療が提供
できてこそ、病状を早期にくい止めることができる。





こどもの病気は、こどもにとっても母親にとっても一大事である。
医師や看護婦はそういった不安をも考慮して、診療にあたってほしい。
「神経質」「おおげさ」、こういった言葉は、母親の心をひどく傷つける言葉であると
いうことを医療従事者は理解しているのだろうか?
たとえ、神経質・おおげさであったとしても、その後なにごともなく病気が快復すれば
「なにごともなくてよかったね」と言える余裕を私たち母親に見せてほしいと思う。
ただでさえ不安なのに、こういった言葉によって聞きたくても聞けない、不安を残した
ままこどもを看病することは、母親にとって一番悲しいことである。
小児医療というのは、身体全体で訴えるこどもと、「いつもとはちがう」と感じる母親
の直感、それらの訴えから慎重に病気を診断する医師の目が相互に生かされてこそ成り
立つものだと思う。
小さな命を守るために、小さな異変を見過ごしてはならない。
出会った医師と看護婦の熱意や努力、誠実さによって小さな命は大きく左右される。