口述試験体験記
平成13年10月15日。
ついに口述試験の日がやってきました。
天気は快晴でいうことなし!
気合を入れて家を出ました。
会場は大阪法務局の庁舎です。
試験は午前と午後に分けて行われますが、私は午後の部でした。
どうやら地方の人は午後にしてくれているようです。
庁舎に入るとホールに掲示があって、4階の第一会議室が受験生の控え室とのことでした。
私がその控え室に入ったのは12時45分ごろ。
少し早いかなと思っていたのですが、すでに部屋は満室でした。
私を除くほぼ全員がダークグレー又は濃紺のスーツで、後ろから見るとまるでお通夜のようでした。
受付の人に受験番号を聞かれ、答えると席が指定されました。
1時になり簡単な説明のあと、いよいよ試験の順番の抽選です。
茶封筒を持った人が前から歩いてきて、一人づつ封筒を取っていきます。
中には番号を書いた紙切れと、受験番号を記入する用紙が入っていました。
私の番号は170です。
前にある表を見ると、なんと後ろから2番目!
最悪です。
試験は7つの組が同時並行的に行われるのですが、それぞれの組が13名づつの構成で、私は7組の12番目だったのです。
結局、私の順番が回ってきたのは4時30分をまわったころ。
その間、トイレやタバコにも係りの人の付き添いがあり、自由にはできません。
用意してくれていた麦茶を飲みすぎておなかはダボダボ。
まぁタバコを吸うときにほかの受験生とお話できたので、まるっきり無駄な時間でもなかったんですが。
さて、ようやく私の名前が呼ばれました。
係りの人について行くと、2階の供託課の前で待たされました。
前の人が部屋から出てきました。
ようやくスタートです!
ドアをノックすると中から「どうぞ」の声。
部屋はごく一般的な会議室で、長机の向こうに50代の男性が2名座っています。
一人はやさしそうな人でしたが、もう一人はむすっとしています。
きっとお疲れだったのでしょうね。
以下、やり取りを再現します。( )内は私の心の動きです。
試験官:それでははじめます。まずはじめに氏名、生年月日、口述試験の受験番号を述べてください。
私 :(省略)
試験官:まずは不動産登記法からの質問です。胎児名義で登記することはできますか?
私 :(いきなり「胎児」?)はい、できます。
試験官:それはなぜですか?
私 :(質問の意味がよく分からんなぁ)申請人のことでしょうか?
試験官:(うなずく)
私 :胎児の母が法定代理人的地位で申請行為をすることができます。
試験官:うーん、それではどんな登記もできますか?
私 :(趣旨が分からんなぁ。権利の種類のこと?)…はい…。
試験官:違いますね。相続と遺贈の場合でしたね。
私 :(あぁ、それを言わせたかったのね)はい、そうでした。
試験官:(紙に大きくバッテンを書きながら―私は大ショック!―)それではなぜ相続、遺贈の場合だけ可能なのですか?
私 :胎児には権利能力がありませんが、民法が特に相続、遺贈に関して権利能力を認めているからです。
試験官:そうですね。それでは申請人は?
私 :胎児の母です。
試験官:いいでしょう。それでは未成年者が自己の所有する不動産を売却したとします。登記申請はみずからできますか?
私 :はい、できます。
試験官:どんな場合でもできますか?
私 :あっ、もちろん意思能力があることが大前提です。それと印鑑証明書の発行が受けられなければなりません。
試験官:そうですね。それではその場合の添付書類をいってください。
私 :原因証書又は申請書副本、登記済証、印鑑証明書、住所証明書、代理人による場合は代理権限証書、親権者の同意書です。
試験官:親権者の同意書は必要ですか?
私 :(あれ、いらなかったっけ?)はい、必要だと思います。
試験官:そうですね。次に権利能力なき社団について述べてください。
私 :(「述べろ」ったって…)社団としての実体は備えているが、法令上の根拠がないために法人格を認められない社団のことを言います。
試験官:「社団としての実体を備えている」とは?
私 :一定の目的のもとに設立され、規約や定款を備えた集団であれば実体は備わっているといえると思います。
試験官:それでは権利能力なき社団が社団の名義で登記を受けることはできますか?
私 :できません。
試験官:なぜですか?
私 :権利能力がないからです。
試験官:それではどのように登記すればよいですか?
私 :構成員全員の共有名義とする方法もありますが、構成員が変わるたびに複雑な持分移転の登記をすることは煩に耐えないため、現実的には信託的に代表者名義にするしかないと思います。
試験官:代表者名に社団の名称を肩書きとしてつけることはできますか?
私 :(えっ、どうかなぁ?)できない、と思います。
試験官:それはなぜですか?
私 :(???)社団に権利能力がない以上、あくまでも代表者個人名で登記をするしかないからだと思いますが…。
試験官:そうですね。それではその代表者が変わったときには?
私 :「年月日委任の終了」を原因として移転登記をします。
試験官:登記名義人表示変更ではダメですか?
私 :登記簿上の所有者その人が変わる以上、移転登記をすべきだと思います。
試験官:それでは私からは以上です。
ここでむすっとしていたほうの人にバトンタッチ。
試験官:私からは商業登記について質問します。会社の解散事由は?
私 :(あまりの唐突さに戸惑いつつ)えーっ、存立時期の満了等、定款所定の事由による解散、株主総会の決議による解散、破産、合併、解散を命じる裁判の5つです。
試験官:(不満そうに)免許を要する会社についてはその取消、休眠会社、最低資本金未達の場合などもありますね。
私 :(5つと言い切ったのがまずかったかな?それにしても最低資本金未達なんて…)あっ、そうでした。
試験官:それでは解散登記の添付書類は?
私 :(えっ、どの事由で…???プチパニック)えーっと、…「解散」の登記ですよね…。
試験官:そう、先ほど解散事由を挙げてもらいましたよね。
私 :定款所定の事由によるときには、存立時期の満了だったら登記簿上から存立時期が満了していることが明らかなので、定款の添付は不要です。株主総会の決議によるときは株主総会議事録、合併のときは合併による設立又は変更登記と同時申請になりますから添付書類は不要です。破産および解散を命じる裁判のときは嘱託で登記が入りますので、申請は不要です(このあたりは焦っていたのでとにかく、まくしたてた)。
試験官:清算人の就任は?しないの?
私 :(それは当然に同時申請じゃないだろー!)はい、します。
試験官:その際の添付書類は?
私 :法定精算人の場合は定款、定款所定の精算人のときは定款と就任承諾書、総会決議により選任された場合は株主総会議事録と就任承諾書、裁判所により選任された場合には選任審判書を添付します。
試験官:清算結了の登記の添付書類は?
私 :株主総会議事録です。
試験官:そうですね。それは決算報告書を承認した株主総会の議事録ですね。いいでしょう。私からは以上です。
ここで再びやさしそうな人にバトンタッチ。
試験官:司法書士の事務所について定められていることをあげてください。
私 :(げぇっ、ぜんぜんわからん)事務所は複数設けることはできません。
試験官:そうですね。ほかには?
私 :(???)…わかりません。
試験官:事務所にはその旨の表示をしなければなりませんね。また、見やすいところに報酬に関する規定を表示しなければなりません。規則15条と17条ですね。
私 :(へぇ、そうなんだ、と思いながら)あっ、そうでした。
試験官:それでは、なぜ事務所を複数設けてはならないのですか?
私 :書類が散逸するおそれがあるから、でしょうか?(そういえば模擬試験パンフレットに「企業化のおそれ」とか書いてあったっけ、と思いつつ迷っていると)
試験官:そうですね。それでは補助者についてですが、あなたが補助者をおいた場合、特に注意しなければならないことはなんですか?
私 :きちんと監督し、特に単独で申請書を作成したり補正したりさせないようにしなければなりません。
試験官:では、司法書士が長期入院中の場合、補助者に業務を代わりにやってもらうことはできますか?
私 :できません。
試験官:なぜ?
私 :十分に監督できないからです。
試験官:そうですね。そもそも司法書士でないものが司法書士の業務を行ってはいけませんね。いいでしょう。最後にあなたが司法書士になったときはどのような点に注意して業務を行いますか?
私 :常に品位を保持し、業務に関する法令、実務に精通し、公正かつ誠実に業務を行うようにします。
試験官:はい、結構です。お疲れ様でした。
私 :ありがとうございました。失礼します。
部屋を出ると、先ほどの係りの人と次の(つまり最後の)受験生が待っていました。
係りの人は「お疲れ様でした。それではおかえりください」といってくれました。
時計はもう5時を指していました。
あぁほんとに疲れた!
以上、できるだけ忠実に再現してみました。
途中、かなり焦った場面もありました。
そう難しいことは聞かれていないのですが、独特の雰囲気の中で口頭で聞かれたことに即座に答えるのは、思ったより大変ですね。
それに筆記試験が終わってからほとんど勉強していませんでしたから、相当ボケてしまっていました。
ともあれ、長かった受験生活もついにこれで終わりです。
自分にお疲れ様でしたといいたい気分です。
※なお、試験の問題は午前と午後で違います。
午前の部では商登法からは同一管轄内での本店移転登記の添付書類、登録免許税、支店所在地での登記申請の方法などが、
不登法からは第三者の承諾書等を添付する理由、登記原因日付に第三者の許可書、承諾書を要する場合を具体的に述べよ、という点が、
司法書士法からは有資格者が開業するまでの手続き、司法書士会の目的。禁固刑以上の判決を受けるとどうなるか、開業後に注意することは何か、といった点が問われたようです。
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