【高田由一議員の質問】(10月10日)

1、市町村合併について

 合併要綱の策定を急ぐ必要があるのか
高田 
 県は、本年十二月中にも市町村の合併の推進についての要綱を作成中と聞くが、市町村の自主性の尊重というなら、この年末までに合併の要綱をつくる必要があるのか。

■ 木村知事
 市町村合併については、市町村並びに住民の方々が自主的に判断されることが基本であるが市町村を取り巻く情勢が大きく変化している中で、本県も市町村の合併を推進していく必要あり、市町村並びに住民の方々が議論をされる際の参考となるように、現在、和歌山県広域行政懇話会を設け、これらのご意見をいただきながら、県として市町村の合併の推進についての要綱の策定を進めている。現行の市町村合併特例法の法期限が平成十七年三月三一日までであるので、できるだけ早期に要綱を策定したい。
 人口四千人未満自治体への交付税削減額は?
高田 
市町村に対する地方交付税の問題について。平成十年から地方交付税算定の際、人口四千人未満の町村の基準財政需要額を計算するときの補正係数という数字が見直されて、地方交付税が減らされ、人口規模の小さい町や村に大きな影響を与えている。まず、県下幾つの町村で、これまでの累計で幾らの交付税減額の影響が出たのか。

■ 木村知事
 これまでの段階補正の見直しによる各年度の影響額を試算すると、人口四千人未満の九団体で約一億円程度となっている。

高田 
 自治省は今、合併を推進しようとする市町村には、さまざまな補助金や交付税措置などで優遇措置をとる一方、小さな規模の町村には地方交付税を減額しているが、これは市町村の自治権を侵害するもの。市町村の自主性を尊重するやり方にすべきだが、知事の見解を。

■ 木村知事 
地方分権推進計画に基づく算定方法の簡素化の一環として行われており、市町村の合併を促進するものでない。

2、財政運営について
高田 
経常的経費の見直しについて
 財政運営プログラムの具体的な取組み、四つのうちの一つの、施策の抜本的見直しで約百億円を削減するとある。経常的経費の見直しで約四十億円削減することになっているが、県単独の扶助費、例えば、現在寝たきりのお年寄りへの紙おむつの支給、障害者の舗装具の給付、百歳になったお年寄りへの長寿祝い金なども含まれるのか。

■ 木村知事
 県単独の扶助費は、従来からマイナスシーリングの対象外としている。また介護保険法の基づく県負担分等の義務的な経費については、シーリングの対象から除外している。

高田
 県単独の投資的経費やその他の施策費についても本年度予算の段階で既に前年度比八五%のシーリングがかかっているが、土木部の急傾斜の対策事業、農林水産部の山村21創造事業や梅の改植への補助など、要望が多いが、どうした基準で抜本的な見直しをする事業を選んでいくのか。

■ 木村知事
見直し基準になる事業の選定基準だが、歳出の削減に関しては、県が行っているすべての事業について見直しを行うこととしており、事業の必要性や効果、緊急性といった観点から検討したい。

 大規模公共事業の推進では財政再建はできない
高田 
 木村知事は、先の知事選挙で紀淡連絡道路の早期着工や関西空港二期工事の推進を公約されたが、そうした大規模プロジェクトと財政運営プログラムの関係はどうなるのか。これらは、財政運営プログラムで予定している大規模プロジェクトには含まれていないと思う。平成十五年度までをプログラムは予定しているが、このプログラムの計画どおりそれまでしのいだとしても、その後でこうした大規模な負担のかかる事業が後々予定されていては、再び財政悪化の原因をつくることになりかねない。

■ 木村知事
 財政運営プログラムでは、公共事業を除いておおむね五億円以上の事業を大規模プロジェクトとして想定しているが、これらのプロジェクトについては、事務当局に原点に立ち返っての検討を指示しているところだ。なお、紀淡連絡道路については、経済調査やルート、構造等の技術検討がなされている段階であり、平成十五年度までの財政健全化期間中の事業には含まれていない。

3、有田郡の広域農道について
 山の尾根を通る農道は何のためにつくるのか
高田 
 現在、県は、有田市から金屋町に至る広域農道の建設を計画している。この事業は、地元の推進協議会で、海南や和歌山市方面に抜ける南北の道路は大変要望が強いが、計画されている農道は東西を抜けるもだけのものなので、何のメリットがないということで、協力できないことが確認されたそうだ。ところが、この事業の計画が蒸し返されようとしている。今、示されている見直し案では、ほとんどミカン畑のない尾根付近を農道が通っていく計画になっていて、一体何のための事業なのか問われている。そもそも、なぜこのような事業が採択になったのか、その経過とこの事業で得られる効果について、農林水産部長の答弁をお願いする。

■ 島本農林水産部長
 広い視点から再評価したい
 有田川広域農道は、金屋町有原の国道424号線から吉備町を経由し、有田市初島の国道四二号線を結ぶ延長二十五・一キロメートル、幅員七メートルの農道で、有田ミカンの主産地である当地域の基幹農道として、地元からの要望により、平成九年四月に県が事業主体となり、金屋町有原から吉備町田角までの十三キロメートルの区間が総事業費百三十一億五千九百万円で一期地区として採択されている。
 本農道の実施により、国道四二号線のバイパスとして、大阪、和歌山への農産物の出荷路線が確保され、軽四輪から大型車への車種転換により輸送費や人件費のコストが軽減されるとともに、荷痛み防止効果等が見込まれている。本事業は、土地改良法に基づき地元農家の方々の同意を得て、手続きを行い、測量設計の後、地元説明を行ったところ、排水対策を初め、各種条件等の調整が図られていないため、現時点で工事の着手に至っていない。今後、路線の変更や費用対効果の再評価をするなど、広い視点から検討を行い、関係市町村及び地元と協議したい。

4、県民医療への県の責任について
 自治体病院は県民医療に大きな貢献
高田 
 自治体病院、特に市町村立の病院の経営は大変厳しい。平成9年の医療保険改悪での患者負担の増加による受診率の低下、診療報酬の改定で実質一・三%の収入減になるなどの理由があるからだ。本県では、県立病院が県立医大の紀北分院を入れて三つ、紀南地方では、一つもないことから、市町村立の病院の役割が非常に重大。紀南地方に県立病院を建てる構想はないので、市町村立への各種運営費の援助の拡大が県の責任ではないか。

■ 白井福祉保健部長
 経営が悪化している病院に対しては、市町村振興資金貸付金による長期の低金利融資を行い、その経営健全化を支援している。また、救急医療や僻地医療対策等の事業に補助を行っているが、国に対して、財政措置の充実強化について引き続き要望していきたい。

5、五稜病院に結核対応の病床確保を
高田 
 「和歌山の結核」という県が発行したパンフレットでは、平成十年の統計では、減少を続けてきた罹患率などが約四十年ぶりに増加に転じた平成九年をさらに上回っている。現在、罹患率は全国でワースト四位だ。 県内では、現在、和歌山市の神田病院、野上町の野上厚生病院、美浜町の国立療養所和歌山病院で、合計二百五十一床の専門の結核病床を持っている。現在問題になっているのは、老人福祉施設などでの集団感染が多く、単純に結核を治せばいいというのでなく、さまざまな合併症状を伴うことが多い。
 厚生省も、結核患者収容モデル事業のなかで、一般の病棟や精神科の病棟でも、結核患者が出ても対応できるような部屋を用意しておこうと述べている。県立五稜病院が現在建てかえ整備中だが、結核に対応できる病床をつくっていくべきでないか。
■ 白井福祉保健部長
 五稜病院を視野に入れて検討する
 五稜病院の結核病床は、重点的に取り組むべき課題の一つとして考えている。精神結核合併症病床整備については、精神疾患患者に対する医療の確保の観点から、県立五稜病院も視野に入れて検討したい。

6、鳥獣害の対策について
 市町村の独自対策に県補助を
高田 
 鳥獣被害を防止する上で、農家の皆さんはそれぞれ工夫されていますが、それに対して、県下で現在約二十の市町村が設備費用の大体半額の補助を出してくれています。予算的に見ても、全部の市町村を合わせて、一年間に大体一千万円前後と推定されるが、金額的には少なくても、中山間地の農業を励まし援助する制度として大変有効だと考えている。京都府では、府の単独事業をつくってこうした対策に支援をしている。県も検討してはどうか。
■ 島本農林水産部長
 これまで被害の多い地域において、国庫補助事業の導入により電気さく等を設置した。また、簡単な防護さく等は、一部県単独事業で対応するなど、農林産物の被害の回避に努めた。今後、市町村との連携をより一層緊密にし、鳥獣の被害防止モデル事業等、国の補助事業を活用するとともに、さらに有効な支援策を研究したい。

 県の研究機関で、独自の対策を研究されたい
高田 
 県の試験研究機関でこの問題の科学的な研究をしてほしい。鳥獣害の被害が年々増える理由のひとつは、これまでの鳥獣害対策に科学的な視点が欠けていたからだ。そんな中で、大学や農業試験場が野生鳥獣の能力、習性の研究に力を入れだした。これについて、今まで、和歌山県の研究機関では、じゅうぶんに取り組まれていない。実は、県段階でもこうした取組みは始まってきており、近くでは奈良県、兵庫県が国の委託研究を受ける形で研究機関として研究を始めている。本県としても、国の委託研究を受けることも含めて研究を始めてはいかがか。
■ 島本農林水産部長
 被害防止技術の開発を行うためには、鳥獣の生態系の研究から対策技術の確立まで、一貫した総合的な研究が必要。国に対して、根本的な被害防止対策の研究を要望するとともに、県として有効な資材の検討等を進めている。               
 高田 
鳥獣害を防止する資材について、普及センターが被害の多い現地での実証展示などをして、そのうち有効なものを普及することを提案しますが、いかがか。

■ 島本農林水産部長 
 今後とも、国との連携を図るとともに、普及センター、市町村等、関係者が一体となって、試験研究成果や全国の優良事例を現地で実証しながら効率的な防止対策を推進したい。

7、梅の成育不良について                             
 現地視察では農家の声を直接聞くこと
高田 
今回の知事の現地視察では、被害農家の声を直接、聞かれるように求めるが、いかがか。
■木村知事
 梅の成育不良の問題は、県政の最重要課題の一つであると認識している。この問題の早期解決を図るため、できるだけ現地に赴き、多くの方々と対話し、理解を深めたい。また、農産園芸局長も視察する予定だ。

 関電に御坊火電のバイジン提供を求めよ
高田 
 関西電力との対話を十分にしてほしい。梅農家らが研究を委託している科学者が本年四月二十五日に関西電力へ直接出向いてそのばいじんの提供を要望したが、聞き入れられていない。ぜひ県から要望してほしい。

■ 島本農林水産部長
関電に要請を伝える
 ばいじんの成分分析は、JA紀南と関西電力で組織する梅生育障害対策研究会において、平成九年から三回実施されている。分析にあたっては、専門機関である関西環境管理技術センターと関西総合環境センターにおいて同時に比較分析され、その結果については、梅産地の降下ばいじんと煙道中のサンプリング試料の成分構成比は異なっていたとして、梅生育障害対策研究会で公表されている。一方、県うめ対策研究会の専門家においても、その分析については信頼できるものとされているが、大気環境の影響を懸念する声もあるから、議員お話の、比較を前提とする成分分析のための資料提供については事業者に伝えたい。

6、和歌山工科大学について 
高田 
 和歌山工科大学の凍結を歓迎する。県民的な議論がつくされていないことや財政状況から、当然だが計画凍結により、地元の失望感は本当に大きい。そこで、旧白浜空港跡地の有効利用など、地元住民の意見を取り入れながら、白浜が、文化や学術の発信拠点となれるような新たな施策を考えていきたい。

■ 木村知事
 旧南紀白浜空港跡地については、民間活力の導入も含め、今後幅広く検討したい。

【再質問】
高田 
・ 市町村合併について
 知事は、小さい人口規模の町村の交付税が減っているのは、算定方法の簡素化によるものだ、合併を促進するものでないと言われたが、町村にとったら、国から見放されたと考えるのでないか。その一方で合併を考えるところにはいろんな財政支援があるということになれば、「あめとむち」によるやり方じゃないか。例えば、県内で人口が一千人以下の村は北山村と花園村だが、この二つの村では、例えば、平成十年度、どちらも千七百万円ぐらいずつ交付税が削られている。小さな自治体ほど財政に占める交付税の比率は高い。県では大体三五%前後、小さい村だったら六〇%を超える。こうした合併の誘導の仕方は、意図的であれどうであれ、大いに問題ある。

・五稜病院の結核病床について
 平成十年度につくった第三次保健医療計画は、「今後、高齢者の増加とともに患者が増加することが危惧され、また合併症、多剤耐性菌等治療困難な事例の増加が予想される」と、県自身の文章で警告を発している。しかし、今建て替え中の県立病院でそんな対策の計画がなかったのはどういうことか。実際に重い合併症の患者が出たら、野上の厚生病院などに送るという対応は、責任を果たしていない。例えば、結核病棟を持っていて、内科とか精神科とか総合的な診療ができる病院の一つである野上の厚生病院が建て替えの時、県の方から結核病棟の存続を熱心に要請された。しかし、その結核病床の整備に県は何の援助もしてくれなかったと、関係者が大変怒っていた。こんな県政の姿勢
では信頼されない。ぜひ五稜病院の結核病床実現に取り組んでいただきたい。

・梅枯れの問題
 田辺の農家の知事視察日程を見せてもらったが、田辺市秋津川の現地で農家の代表が発言することになっているが、たった三分以内しかしゃべらしてくれない。多くの梅農家が県行政の取組みを信頼していない。もっと、時間をとった話し合いをしていただきたい。

・御坊火電のばいじんの提供について
 関西電力に伝えていただけると部長から答弁をいただきました。今後を見守りたいと考えています。