【鶴田至弘議員の反対討論】(10月17日)

議案一五一号、議案一五二号及び議請第2号の不採択、議請一二号の採択に反対の立場から討論をいたします。
 まず議案第一五一号は平成一二年度建設事業にともなう市町村負担金についてですが、わが党議員がこれまでも主張して来たところですが、現下の市町村の財政事情を鑑みるとき、さらにその事業が本来的に圏のおこなうべきものであることを考えればこのような負担金をかけるべきではないと考えます。
 議案一五二号紀の川大堰に関する基本計画の変更についてですが、事業費を現行の七百億円から六割近く千百十億円にも増加させ、工期を十七年間延長し二〇〇九年とするものであります。これによって、県の負担は四二億円の増と見込まれます。 四百十億円にも上る事業費の変更は、物価上昇による二百二十八億円、消費税の導入とそのアップにより四十四億円、その他の事業内容の変更によって百三十八億円とのことであります。また、事業内容の変更ではJR鉄橋の耐震化および建設省・運輸省協定の変更などとなっていますが、いずれもその詳細は明らかにされていません。また、和歌山市の取水口の補償費が当初の五十七億円から三十二億円に減額されたと聞きましたが、その妥当性も論議する必要があろうかと思われます。国直轄工事は、国の方で一方的に事業費を変更して、県に分担を求めてくる方式がとられますが、今回のような大幅な事業費の変更は、計画とその詳細をできるだけ早く提示して、広く情報を公開し費用対効果も明確にすべきであり、今回の提案には反対です。
 次に議請第二号永住韓国人の参政権確立のための意見書の提出について、委員長報告は不採択とされた件でありますが、長く日本に居住し、日本の法律にもとづいて納税し、日本の法にもとづいてその義務をはたし、生活を律している方々が地方参政権を付与されるべきことは決して不自然なことではなく当然のことであると考えます。したがって請願を不採択にすることには賛成できません。
 次に議請十二号「小中学校教科書採択制度の改善について」が採択との委員長報告についてですが、私が抱いた疑問や意見を表明してなおいっそうの審議を求めるものでります。
 請願の主旨は、かいつまんでいえば、「歴史の教科書の記述が日清、日露の戦争が侵略戦争であったと一方的に記述されており、それは先人の平和のための偉業を冒涜するものであり、従軍慰安婦問題や南京占領時の問題は史実に基づかないで自虐的に叙述されている、そのような教科書が国民のプライドを失わせる青少年の非行の一因ともなっているから教科書の選択にあたって教育委員会の機能を正常にされたい等々というものであります。しかし、日清、日露戦争について言えば、それは日本とアジアの平和のためのものであったのでしょうか。日清戦争は朝鮮半島の利権をめぐっての戦争であったし、日露戦争は朝鮮と満州の支配権をめぐっての戦争であったことは歴史学上の定説であり、日本をまもり、アジアの平和と繁栄を願ったための戦争であったなどというのは歴史的にも証明し得ない説であります。従軍慰安婦問題・南京占領軍の事件問題等も国際的に検証された事件であって決して恣意的に作り出された虚構ではありません。
 私は現在の教科書検定制度を決して肯定するものではありませんが、これらの歴史記述はその教科書検定さえ否定できないものとなっているのです。
 これらの事件を教科書が扱うことは歴史の事実を事実として国民が認識し将来の平和を保障していくうえで決しておろそかにしてはならない重要なことで決して自虐的などと言うべきではありません。
 また、何の論証もなく、今日の青少年の非行の問題がいわゆる括弧つきの「自虐史観」に大きく起因するというのは、あまりにも短絡すぎ頷けるものではありません。更に請願事項について言えば、教科書選定協議会の下で調査委員会が教科書を事前に絞り込み、教育委員会の権限を形骸化しているというものですが、調査員自身教育委員会によって任命されその任務を委嘱されておるものである以上、また絞り込みなどの具体例がない以上、教育委員会が形骸化しているという批判は当たりません。また、膨大な各種教科書を直接教育委員会が検討選考できるものでなく、直接子どもの教育に責任を持つ教員や校長が専門知識を生かして選考に当たるというのは当然のことではないでしょうか。
 また請願理由との関係でとくに歴史教科書の記述内容が学習指導要領にそったものであることを求めていますが、検定を通過した教科書が学習指導要領にそっていないとしたら、選択段階の問題でなく検定の段階の問題と考えられます。したがってこれは県教育委員会に求められる事項ではありません。また、「新しい歴史教科書をつくる会」がその主要メンバーを執筆者として、みずからの手で教科書をつくり、そのつくる会の組織が歴史教科書を特別視してこのような請願行動を起こされることは,自ら制作した教科書の採択を間接的にも求めていると考えられ、特定団体の教育への介入となりかねない問題であろうかと思います。
 さて、この請願を審議された常任委員会は本請願を採択することに賛成の委員四人、継続審議を唱えた委員三人であったとお聞きしていますが、委員の中には更に質問や議論を尽くしたいと言う意見が強くあったと聞きます。問題の大きさから考えてさらなる議論を尽くすべきであったのではとの感想を持つものであります。しかし、それが取り上げられず採決に持ち込まれたことはきわめて残念であります。
 以上の理由により請願十二号については採択することに反対するものであります。