鶴田至弘議員の一般質問

1】来年度の予算編成について
 知事の予算編成によると、昨年比で、公共事業に95%、県単独事業に75%、その他の施策費に85%のシーリングをかけることになっている。県の財政事情の悪化の原因は主として国の経済対策に呼応する公共事業の拡大と県単独事業の異常な増加にある。そこにメスを入れないで、福祉施策費を含む一般施策費にまで公共事業を上回るシーリングをかけるというのは理解に苦しむ。
 9月議会では扶助費については、昨年通りだとの答弁があったが、各種補助金については、民生費、衛生費用の関係だけでも30項目を上回る制度がある。
 ある母親から訴えがあった。児童扶養手当の所得制限が切り下げられて手当カット、それにともない就学援助、医療給付、福祉定期の利率の引き下げなど、打撃的な収入減となった。母子で必死に生きている者にこんな苦しみを与えないで下さい、という内容だ。聖域なし見直しが単に歳出の抑制という観点から出発するならば、厳しい生活を余儀なくされている方々をいっそう寒風にさらしてしまうことになりかねない。福祉は後退させないという知事の勇断を求める。

(木村知事)
福祉事業の性格やその重要性にかんがみ、画一的な歳出削減をおこなうのではなく、十分に配慮していきたい。
【2】雑賀崎の埋め立てについて
 景観検討委員会では、景観にとっては何もしない方がいい、緊急に必要なものなのか、港湾整備の必要性を論議すべきだという意見が出されてきた。景観は主観的なもの、科学的根拠はない、住民の声こそが大切だという意見もあがったが、委員会には住民が含まれておらず、その地域に生きる切なる声は、委員会の結論に生かされなかった。委員長の吉川教授の発言の中にも、「学問として十分な検討時間がなかった。委員会の結論はお墨付きでない」とあるように、この港湾計画が景観保全を十分満たしていない。
 知事は、この景観が将来にわたって保たれることが必要だと思うか。
 埋め立てが必要とされる理由の一つに、公共事業から発生する建設残土の処分地というのがある。県の建設副産物対策連絡協議会は、建設残土発生量を九九年度で約六百キロ立法メートルと推定したが、実際は270キロ立法メートルにとどまった。2000年度も同じような傾向をたどっていると聞く。高速道路の建設などにともなう残土の発生は今後も続くだろうが、土砂の処分は海洋投棄という単純な発想は全国的にも克服されてきつつある。
 さらに県の残土再生率は32%で、近畿で最低。全国平均47%をも大きく下回り、その向上が強く求められる。建設省もリサイクル100%を2010年までに達成することを求めている。知恵と工夫で、雑賀崎の名勝を埋めなくても残土処理の展望は十分にあると考えられる。
 港湾需要、景観保全、残土処理、どの問題からみても雑賀崎の埋め立て計画を含む港湾計画は適正なものとは考えられない。計画の廃止を求める。
 また、地元との話し合いの機会を設けるべきではないか。
   (木村知事)
 景観は大切にしなければならない。一方で、経済発展を考える時、和歌山下津港の整備も必要。調和をはかっていくことが重要打と考える。 
 建設残土の問題については、雑賀崎沖埋め立てと切り離して考えている。
 港湾計画は現時点では必要なものと考えている。地元住民との話し合いについては、社会経済状況を見極めていく中で、その必要性があれば検討していきたい。
   (再質問)
 今の港湾計画に示されている景観の問題はバランスがとれたものだと考えているのか、それとも本来ならば原形のまま維持したいと考えているのか。
 景観の問題は主観的な問題があるのも確かであり、それだからこそ地元の方々の意見は大切にしなければならない。フランクに意見を聞いて、そして知事なりの意見を言うのが本来の姿ではないか。
   (木村知事)
 雑賀崎の景観がすぐれた場所であるということは身をもって体験している。トータルに考えたうえで判断している。
 経済情勢が変わってきて、和歌山下津港をどんどんやっていかなければならないときがきたときに、景観に対する住民の意見を聞きながら考えていく。
3】関西国際空港について
 関西空港の地盤沈下問題で、その予測値がしばしば変更されている。最初の予測値は開港50年後8メートル。開港延期決定時には10メートル,さらに11.5メートルに変更された。しかし、現在すでに11.5メートルに達し、最近になって50年後は12メートルと変更された。運輸省や会社はおおむね予測通りと言うが、実際は地盤沈下に予測をあわせているのが現実だ。50年後予測と現在は50センチの差。昨年1年間の沈下が22センチだから2・3年で50年の予測をオーバーすることになる。
 また、空港島は海面から4メートルの高さで安定した島となるよう設計されているとされるが、すでに海面から2.9メートルにまで沈下しているところもあり、最高潮位(3.2メートル)との関係では危険な状況さえ生まれている。
 沈下対策の費用は270億円が明らかになっているが、それ以上は明らかになっておらず、部外者の研究も阻害されている。
 安全と環境を最優先した根本的な見直しが必要だと思う。知事は沈下予測数値の変遷の根拠、実測値の経年の数値などの公表、安全のための検討と対策を空港当局に求める考えはないか。
 次に2期事業について。空港需要は低迷したままで、営業利益は支払い利息の半分しかない。累積赤字は1571億円にもなっている。なぜ2本目の滑走路が必要なのかと、大蔵省の幹部がつぶやいたとの報道があるほど、政府のなかにも疑問の声があがり始めた。見通しのない2期事業の中止を知事は進言するべきではないか。
 さらに、最近では国際競争力強化のための地方負担がいわれ始めている。国際空港は国の負担で建設されるという原則が破られてきたうえの負担だ。国と会社で解決すべきで、地方自治体へ転嫁すべきではない。知事はきっぱり断るべきだ。
    
  (木村知事)
 沈下は今後も予測と大きくずれずに収束するとの報告を受けている。引き続き適時情報提供を求めていく。
 地元自治体負担の対応について、12関係自治体で支援の必要性やその効果等について協議検討している。