2001年12月議会  表紙に戻る

高田由一議員の質問(12月13日)

【JR西日本の合理化計画について】

高田 JR西日本和歌山支社は本年十月に「ローカル線経営改善施策の実施について」ということで、紀勢線と和歌山線における大幅な合理化計画を労働組合に提案してきた。

 紀勢線では、朝五時四十分新宮発のくろしおをなくし、田辺発にし、二十一時六分和歌山発二十四時五分新宮着の最終くろしおを田辺止まりにするとしている。また、JR西日本バスが運行している二十二時十分京都発で新宮に朝着く夜行長距離バス「ルナメール」が近く廃止される予定で、このまま実施されれば紀南地方の市町村にはたいへんな影響がでる。

 普通電車が新宮〜勝浦間で九本、串本〜白浜間で四本の削減。今でも一時間に一本も走っていない普通電車をこれ以上削減するというのである。

 和歌山線では、第一に、橋本〜粉河間で平日十四本もの電車を削減すること。これは新たに粉河止めの電車をつくることである。通勤・通学の時間帯を除く昼間を中心に減らすので日中の本数が激減する。粉河〜和歌山間は本数を変えず、快速を一〜二往復に増やすそうである。第二に、四両編成も含め全ての電車をワンマン化すること。四両もの車両をワンマンにして乗客の安全が守れるのか。第三に、五条〜粉河間で六〜八月を除く毎月第二日曜日十一時から十六時まで全ての電車を止め、線路の点検を行うそうである。月一度、昼間まったく電車を止めてしまうのに、バスによる代替運行の予定はない。

 和歌山・紀勢両線の路線に共通するのは、運転士に線路に関わる保守業務をさせることである。これまでは保線係がやっていたことのうち、簡易なものは運転士にさせる。例えば線路に倒木があったり、ポイントに石が挟まり動かないときなど、運転士は乗客を車内に残したまま電車を離れ、木を切ったり、石を取りにいったりするというものである。安全運行上問題ないのだろうか。

 JR西日本はこうした「合理化」を来年三月のダイヤ改正後行う計画である。先日、会社と労働組合の交渉では、紀勢線のくろしおを減らす計画については批判も強かったことから、見送りになったが、会社側は「和歌山支社としては、減らしたいという考えは今後とも変わりありません」と回答した。これからも新宮発着のくろしおは今より減らす方向だと公言している。また、普通電車の大幅削減など「他の施策については何ら変更する考えはない」と回答している。これを聞いた沿線の首長らは怒りをあらわにしている。

 JR西日本は超優良企業で年間五百億円の黒字を出している。これは関西全体の私鉄の黒字合計額を上回っているという。支社の範囲でのみ黒字、赤字を判断すべきではない。

 県はいつJRから今回の改善計画の説明を受けたのか。だれが対応し、どう返答したのか。また自治体の意見を聞いたのか。県当局はこれでいいと思っているのか。今後、この問題において県はどういう対応をしていくのか。

 今年十月、県の市長会、町村会、知事の連名でJR西日本に対し、トイレなし電車の解消、和歌山線と紀勢線の電車の増便を訴えている。その結果が今回の事態である。知事が、地域住民の交通権を守るため、また鉄道路線の豊かな発展のため市町村をも巻き込んだ一大県民運動の先頭に立つことを求める。

■ 木村知事 県民に不便がかかるということになれば、いくらJR西日本が民間会社だとはいえ、非常に公共的な責任の多い会社なので、今後もっと緊密にJR西日本との連携・相談を行い、本社とも話をすべきだと考えている。県だけでなく、関係市町村とも連携をとり主張すべきは主張していきたい。

■ 垣平企画部長 JR西日本の経営改善計画は、本年九月二十五日にJR西日本和歌山支社担当者より担当課に報告があり、課長以下担当者が対応した。JRによれば、和歌山支

 社管内で多額の赤字が出ているため今回の改善施策を実施し、路線維持に努めたいとのことであった。これに対し当局は、利用者への配慮を求めた。さらに十月十五日には石田市長会会長、根来町村会会長、私の三者でJR西日本和歌山支社長を訪問し、USJ効果を県内に導入するための特急くろしおの西九条駅への停車、全ての特急の新大阪駅への乗り入れ、田辺・新宮間の紀勢本線及び和歌山線の列車運行の増便を要望し、今回の改善施策に対しては遺憾の意を伝えた。

 

(再質問)

高田 九月二十五日にJRから今回の計画を聞いたとき、部はどうしてこういう大事な問題を部内だけでしがまえて黙っているのか。沿線の市町村長を集め、会社に考え直してもらうという働きかけ、県議会への呼びかけをしてもよかったのではないか。私が知らせるまでこの計画を知らない首長もいた。先に情報を受け取る部課がきちんとした立場に立たないと、県民の交通権の確保はできないのではないか。

■ 垣平企画部長 今後は、JRや関係市町村との連携を強化していくとともに、県議会ともよく協議し、県民の利便性確保という立場でがんばっていきたい。

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(要望)

高田 総合交通政策課に、地方の公共交通の問題に詳しい職員を配置する必要があるのではないか。特に地方交通問題は専門的な知識や経験が必要な部門である。この問題に情熱をもって取り組める方を長いスパンで登用していただき、その問題の核になっていただく。そういった専門の担当者がいれば、展望も切り開けてくるのではないか。

 

【IT総合センターについて】

高田 IT総合センターは田辺市中心部からかなり離れている。公共交通アクセスは主にバス利用かと思われるが、現在は田辺方面、白浜方面から一日八往復(最寄りの新庄公園まで)便があるが将来的にはどう拡充していくのか。特に上富田町、大塔村、中辺路町方面からは既存のバス路線ではアクセスが難しくなる。上富田町が運営するコミュニティーバスがITセンター付近まで巡回運行しているので、このバスに財政的な援助をしたうえで活用することを提案する。

 県立図書館紀南分館が同センター内に移転する予定だが、蔵書がどうなるかが心配である。この五年間で県立図書館の図書購入などに充てる資料費が半減している。平成九年には六千万円以上であったのが、平成十三年度予算では約二千七百万円と半分以下になっている。

 図書館の資料費を性質別の歳出で区分すると、普通建設事業の県単独投資に分類される。つまり最もきつい予算シーリングがかけられる分野にあり、そのままシーリングをかけてきた結果が現在の状態であるといえる。図書館資料費への予算シーリングの撤回を求める。また、同センターが教育センターも兼ねるのであればせめて教育関係、IT関係、そして自然豊かな紀南に設立されるのだから自然環境関係の蔵書などを抜本的に強化させるべきである。

 同センターには関連団体として和歌山サテライト大学(仮称)が入り、和歌山大学による公開講座などが行われるようだが、どのような活動をし、また県としてはどのような支援をしていくのか。

 現在、和歌山大学経済学部が中心となって、紀南地方の自治体や民間団体と地域活性化のため様々な取り組みを準備している「きのくに活性化支援センター準備室」が、将来的にはこのサテライト大学の一翼を担うことになるらしいのであるが、平成十六年のサテライト大学設立にむけ、今のうちから県として積極的な支援をすべきである。

■ 木村知事 図書館の資料費の問題については、和歌山県を文化立県ということで進めていこうとしているのに、図書の購入費が大変少ないということは恥ずべき事なので、十分対応していきたい。

■ 垣平企画部長 IT総合センター(仮称)は様々な機能を有する複合的施設であり、人材育成・研修機能における市町村職員研修や地域支援機能における市町村ヘルプデスク、 さらには普及啓発機能における体験・展示コーナーなど、地元市町村の住民にも大いに活用されるべき施設である。したがって、できるたけ多くの駐車場を確保し、公共交通アクセスを確保していくことが重要である。コミュニティーバスも含め、センター利用に係る 公共交通利用のニーズを検討・研究・勘案し、地元市町村とも協力し、バス事業者に対する協議・依頼を行っていく。

  和歌山サテライト大学は、紀南地方の高等教育に対する県民の生涯学習のニーズや社会人の再教育に対するニーズに応えるために、和歌山大学が地域貢献策の一環としてIT総合センターを拠点に、公開講座の開催、大学の授業公開などを計画しているもの。この実現に向け、県は出来る限りの支援をしていきたい。また「きのくに活性化支援センター」は将来、和歌山サテライト大学の一翼を担うものと認識しており、県も事業内容により必要な支援をしていきたい。

■ 小関教育長 現在の計画では新たに児童コーナー、郷土資料コーナー、IT関連コーナーなどを設置し、バリアフリー化に努めるなどあらゆる利用者層に対応した施設づくりを念頭におき、平成十六年春のオープンに向け準備を進めている。蔵書は開架書庫に五万冊、閉架書庫に十五万冊を目標に計画を進めており、必要な経費の確保に努めていきたい。また、教職員の資質向上に役立つ書籍、情報や環境関連の資料を整備するとともに、幅広い県民のニーズを踏まえ、多様な蔵書の充実に鋭意努力していく。

 

(要望)

高田 『図書館物語〜徳川頼倫と南葵文庫〜』という本には、明治の紀州家侯爵、徳川頼倫が私費で東京麻布の邸内に明治三十二年、二万冊の蔵書を誇る図書館をつくったこと、全ての設備が一つとして最新式でないものはないという有様、その後日本図書館協会の総裁として活躍したこと、関東大震災で東京帝国大学の図書館が消失したとき、南葵文庫を全て寄附したこと等が記されている。今日の東京大学の図書館の基礎はまさに紀州家が築いたと言っても過言ではない。この分野での偉大な先人に学び、本当にこの和歌山県を学問の栄える県とするため、知事と教育長に頑張っていただきたい。

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【市町村合併について】

高田 一般質問への答弁でようやく正式に県としてどの市町村を対象に重点支援地域の指定を考えているかがわかった。各市町村長には一ヶ月前から県の振興局を通じ、指定の打診があったようである。それを受けた市町村では各議会において協議をしてきた。なぜ、県会議員には知らせないのか。今後もこういうやり方ですすめていくのか。

 田辺周辺十市町村の合併研究会スケジュール案では、来年三月にも法定合併協議会を立ち上げたいとなっている。合併協議会とは、合併特例法第三条で市町村合併の意志をもつ市町村がつくるものとなっている。しかし住民の中ではようやく合併の説明会が開かれ始めたばかりで、あと三カ月後には協議会をつくるとするスケジュールはあまりに急である。合併をする意志をもっていることが合併協議会への参加の前提ではないのか。

 十一月二日に開催された「第二十五回経済財政諮問会議」で総務省から出された地方交付税の見直し案では、人口十万人より少ない市町村には大幅な交付税の削減となるような案が出されている。この時期に出すことはまさに私たちが指摘していた「アメとムチ」での合併推進になるのではないか。

■ 木村知事 交付税の見直しについては、財務省では総額二兆円を削減することや交付税特会等の借入をどうしていくかが問題になっている。県としては、県下の市町村が行政を行うための額を確保できるよう要求していかねばならない。ただそうは言っても国と地方の借金の合計が六百六十六兆円という事態もあり、趨勢的には交付税の見直しも問題になり、その中で合併も真剣に考えるべき時期に来ている。

■ 稲山総務部長 重点支援地域の指定はまだ途中である。振興局を通じての打診ということについてであるが、これは関係市町村の現状と併せて重点支援地域の指定に係る意見 を参考のために聞いたものである。

  法定合併協議会は、構成市町村間の合併を検討する場として、その中で合併の是非を含め種々の協議を行うために設置されるものと理解している。

 

(再質問)

高田 重点支援地域については県の意思を決める段階での情報集めだから議会へのやりとりは無かったということだが、この十一月末には公文書を各市町村長に出し、指定についてどうかなどどを聞いている。県が公文書を出すのであれば、地元の県議にもしかるべき説明があっていいのではないか。県は今後、県会議員への説明責任についてはどういう態度をとっていくのか。

 合併特例法の第三条には、合併をしようとする市町村が協議会をつくるということになっているが、県は合併を検討するという立場で協議会をつくると答弁している。これは意味が違う。また私が心配しているのは、総務省で出している「合併協議会の運営の手引」には、合併の是非そのものではなく、事務的な手続きだけが詳細に記されていることである。これは合併を前提としてそれを実務的に進めていくというやり方ではないか。合併協議会の性格と位置づけについて、もう一度答弁をいただきたい。

■ 稲山総務部長 説明責任については指摘のとおり適時適切に対処していきたい。法定合併協議会の性格については、合併に向かって検討する場として設けられるものであり、 その中で住民の意見を聞きながら合併の是非も含め検討がなされるものであり、これに参加することが合併することになるというものではないと考えている。

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【高校新卒者の就職難について】

高田 十月末現在の県内の高校生の就職内定率が県平均で四八.五%、田辺公共職業安定所管内では三五.九%と過去最悪である。前年同月比でもマイナス九%。今年の特徴は、梅の安値を受けた形で地元の製造業からの求人がほとんどないことだと聞いている。就職できなかった青年は雇用保険の対象外であるため、職業訓練などの様々な事業から除かれ、不利な状況におかれている。県当局が副知事を先頭に経済団体等に高卒予定者の求人枠拡大を求める異例の要請をしたことは大いに評価するが、一方、企業任せでは限界があるのも事実である。県も高卒者を受け入れる中小企業に何らかの支援をすべきである。盲・ろう・養護学校の卒業生には特別の対策が必要ではないか。

 また今後の研究課題として、たとえば県発注の官公需の入札では、参加業者の高卒者の新規雇用や障害者の雇用への取り組みを点数化し、ある点数以上でないと参加できない入札を設定するとか、そうした方面から雇用を応援することも検討してはどうか。企業の社会的なあり方を行政のイニシアチブで問うていくことも重要ではないか。

■ 木村知事 今回国の補正予算の中で「短期間のトライアル雇用」というのを行った会社に対して支援するような制度が創られた。県も支援の制度について真剣に検討し    ていきたい。

■ 内田商工労働部長 高校生の円滑な就職等の促進を図るため、三年生を対象とした県内の企業見学会を夏に実施した。早い時期に就職に対する意識と意欲の向上を図るため、今回新たに一、二年生を対象とした企業見学会を年明けに実施する。短期間のトライアル雇用については周知徹底に努める。新規高卒者の就職は非常に重要である。県は労働局、県教育委員会と連携をとりながら一人でも多く就職できるよう努める。

■ 小関教育長 「障害生徒進路対策協議会」を設置し、本年度は、各地域の社会福祉施設等に派遣されている生活支援コーディネータ等から様々な福祉制度や地域の作業所の状況、生徒個々の能力や適正に応じた社会自立の具体的な情報の提供をいただいた。これを十分に活かし、各学校では産業の現場等の実習を充実するなど一人ひとりを大切にした取り組みを進めている。今後とも、関係機関との連携をより密にし、求人の開拓に努める。

 

【輸入農産物の安全性についての要望】

高田 農林水産部は、中国などでの農薬使用状況について、その実態を把握するよう国に要望していただきたい。また、環境生活部にはより詳しく、しかも定期的に残留農薬の検査ができるような体制と予算を確保することを要望する。

 

【和歌山県レッドデータブックについて】

高田 本年、五年間の歳月とそれぞれの専門家や多くの協力をいただいた学者や研究者のおかげで「保全上重要なわかやまの自然」いわゆる和歌山県版レッドデータブックが完成した。貴重な動植物などの知見は日進月歩であり、また専門家といえども誤りや認識不足はある。そのため、蓄積される新しい情報を収集し、見直していく作業がどうしても必要になってくる。その体制をきちんと確保し、次の見直しにつなげていくべきである。

 また、こうした残された貴重な自然については、人の目から遠ざけておいた方がいいものを除き、なるべく積極的に県民に紹介し、豊かな地域の自然に目を向けてもらうことが、ひいては環境の保護にもつながるし、あるときには町おこしの材料にもなっていくのではないか。観察会を開くことも含め、県民への公報を通じて積極的に保全を訴えることも行っていくべきではないか。

■ 秋月環境生活部長 自然環境の状況はたえず変化し、また新たな知見も生まれてくるので、今後も県関係機関及び県内自然保護調査団体等との連携をさらに強化し、各種情報の収集に努めたい。このデータブックは県内市町村、高校、大学、図書館、自然博物館等へ配布し、県のホームページにもリストを掲載している。今後、これまで行ってきた自然観察会などにおいて、貴重な自然の紹介を積極的に行い、県民の自然に対する認識が高められるよう努力する。     表紙に戻る