金田眞議員の質問(三月八日)

【誰もが納得できる同和行政・教育の終結と総括を】

二十一世紀の人権を考えるとき、今年は「人の世に光あれ」と差別からの解放を願って立ち上がった全国水平社創立から八十周年にあたり、三十三年間の同和特別対策が終わる歴史的な転機を迎える意義深い年でもある。部落解放運動は、多くの人々の情熱と血みどろの努力により、日本の人権闘争の輝かしい先駆的な役割を担った。この結果、旧身分に係る社会問題としての部落問題は、日本の人権問題の重要な位置を占めてきたが、基本的に解決できる状況に至った。

 この三十三年間に全国で約十六兆円が投下され、このように長い年月と多額の予算をかけて、多くの方々の努力により同和対策事業が行われた。同和地域は大きく変わり、地対財特法の有効期限が到来し、特別対策の法令上の根拠がなくなった。それ以降、同和地区の事業は他の地域と同様、同和地区・同和関係者に対象を限定しない通常の一般対策を講じることとなった。同和対策の過去の多大な成果を評価しつつ、その終了を歓迎する。

 しかし、多くの実績と効果を生み出した反面、行き過ぎた同和対策によって、新たな差別意識が生みだされ、財政的面からも、負の遺産と言われる結果も生まれた。その新たな差別意識は、「同和は特別」とする行政や教育をやめ、憲法に定める恒久平和と民主主義、そして基本的人権が大切にされることで克服されると信じている。

 県の終結と総括のあり方について。昨年八月には「今後の同和行政に関する基本方針」が、本年三月六日には「期限後の同和行政のあり方」が出された。どちらも成果の総括は「相当の成果を上げてきたところであるが、残念ながら同和問題の解決に至っていない」との評価である。「相当の成果」ではなく「十分な成果」を上げ、基本的に解決に至ったのではないか。また、方針では同和対策を「特別法のみに基づいて実施されたものではなく、単に特別措置法の失効をもって終了や放棄されるべきものではない」としている。しかし、この間一般対策では同和問題を早急に解決できないから、特別対策という手法を用い早期解決を図りその特別法を終えられる状況をつくりだした。解決できたなら終了するのは当然であるのに、県の方針は同和問題を人権の重要な柱として据え、同和行政から人権行政に名を変え、推進することを宣言する内容ではないのかと危惧する。

 現在県において、同和問題を特別に扱い、事業を行う必要がどこにあるのか。「意識」は一定期間残るであろうが、それは一方的な啓発や教育によるものではなく、自己学習と社会の前進や発展の中で克服されるものである。県の総括や方針は、同和問題解決の妨げとなり、同和の垣根を高くする要素を含むものである。直ちに撤回すべきだ。

 県教委が「県同和教育基本方針に基づき、同和教育を人権教育の中核と位置づけ一層の推進を図る」と述べたが、ここには今までの「同和教育」への反省がなく、成果のみを一面的に強調するような「人権=同和教育」を進める姿勢が感じられる。県民の正しい人権教育・人権擁護運動に混乱をもちこむものではないかとの危惧から、白紙撤回を提言する。

 本来同和教育は、同和部落問題が提起する教育上の課題を民主教育の中で解決する営みとして位置づけられ、差別や貧困による不就学、長期欠席、低学力の克服、進路保障の問題に大きな力がそそがれてきた。そして、これらの問題が今日、同和問題解決の到達段階を反映し、特に同和地区に集中してみられる固有の問題ではなくなった。特別扱いや分け隔てする教育は廃止すべきである。

 私は昨年の十二月議会でも、子どもの旧身分を特定する「校区に同和地区を含む学校の状況調査」の中止を要望し、「調査」をするその法的根拠と科学的裏付があるのか質問した。しかし、教育長は「基本的な調査」「必要な調査」「格差があるから」とするだけで、「調査」を続ける法的根拠と特定する科学的基準は、結局答弁されていない。これ以上「調査」を続ければ、県教委の人権感覚が疑われる。「地域や人の特定」をすることは、県の基本方針とも異なる。具体的な答弁を求める。

@文部科学省は、「調査」を中止し、実施しない町もあるのに、なぜ和歌山県は固執するのか。

Aいかなる法的根拠に基づいて行うのか。

B調査を通じて児童・生徒を「同和の子」と「一般の子」

とするのは、子どもの世界に分断を持ち込み、教育上の

弊害をつくり出す心配はないのか。

C本人の了解もなく、旧身分洗い出しの調査はプライバシ

ー侵害ではないのか。

Dこの「状況調査」は「地名総監」に準じるようなものに

はならないかどうか。

E同和地区の混住化の進行、地区内外の結婚の増大のもと

で、「同和の子」を判断、識別することは不可能であり、

また調査上の判断基準の明確性が欠落しているのでは

ないか。

科学的根拠を明らかにしていただきたい。

   ◆白井福祉保健部長

     平成十三年度に貸与や補助等の対象となった

者について、当該事由の終了までの経過措置とし

て事業を実施するとともに、貸与者に対する償還

業務の終了まで経過的に実施する以外は、全ての

特別対策を終了する。しかし県としては、いかな

る差別も現存する限り、問題の解決に積極的に取

り組むことが責務であるという認識のもと、今後

も取り組みたい。

   ◆小関教育長

     県の「今後の同和行政に関する基本方針」を踏

まえ、県同和教育基本方針に基づき、問題の早期

解決に向け今後とも同和教育を推進していく。地

対協の「意見具申」では同和問題解決への主要課

題として「教育、就労、産業等の面でなお存在し

ている較差の是正」があげられており、「これら

の課題については、その背景に関して十分な分析

を行い、適切な施策が講じられる必要がある」と

述べられている。本調査は、その基礎となるもの

の一つだと位置づけている。調査の際は、関係市

町村教育委員会には個人情報の秘密保持等への

配慮を十分踏まえた対応を、各学校長には地域と

の連携等を通して十分な情報提供を受け報告書

作成にあたっていただいていると認識している。

 

(再質問)

 同和問題の総括、方針については納得できない。県の方針などの撤回を強く求める。

 法的根拠や科学的裏付けを明らかにできないような状況調査は中止すべきだ。「校区に同和地区を含む学校の状況調査」という名の、人や地域を特定する調査は現状にそぐわない。学校の教員や各市町村職員等、様々な意見を聞き、検討し、この調査を中止する方向を見いだしていただきたい。

 ◆小関教育長

     状況調査を含む同和教育のあり方、幅広い人権

教育の進め方については、幅広い意見をいただき

つつ進めていくことが大切だと考えている。

 

 同和行政の一部に現れた負の遺産は決して残してはならず、今こそ、負の部分を取り除く努力が同和問題解決には必要である。

 中小企業高度化資金貸付は、中小企業者の集団化事業などに、都道府県と中小企業総合事業団が協調して貸付を行う制度で、「同和」対策と「一般」対策とがある。貸付条件は長期低利に設定され、殆どが無利子で三年据え置き二十年償還という好条件であり、各種税制の特例措置がある。平成十二年度決算では貸付は五十四組合に三〇一億四六〇〇万円、そのうち三十一組合が七四億二一〇〇円滞納している。また、三年以上の滞納は二十八組合七二億二〇〇〇万円で、休業や経営破綻しているのは五組合だった。

  県の償還状況の資料では実態が十分につかめなかったため、情報公開を求めたが、担当課は「公開によって企業が特定され、銀行融資がストップすれば大変なことになる」とプライバシー保護の姿勢をとり開示を拒否した。

私たち日本共産党は、中小企業の経営と暮らしを守る立場から、少しずつであっても返済している、返済する意志があるという人々には行政の手を差し伸べることは当然だと考えている。しかし最近では、高知や徳島化成の疑惑事件もあり、長期間返済意志の感じられない、実質的に経営が破綻している場合などがあり、未返済問題については全容解明が必要である。県民への新たな負担としないため、独自に調査した結果から質問をおこなう。

 滞納している三十一組合への貸付金は一六七億三〇〇〇万円、延滞元金は七四億二〇〇〇万円である。その内、同和対策は二十四組合で貸付元金の約八〇%、延滞元金では全体の九〇%を占めている。また経済情勢の悪化から、八組合が事実上経営破綻しており、貸付元金五九億三〇〇万円のうち、延滞元金は十八億四六〇〇万円である。そのうちの一つは既に競売も終わり、延滞総額四億九〇〇〇万円のうち、事業団の三億三〇〇〇万円は回収不能として償却されたようだが、県の一億五九〇〇万円は回収の見込みがなく、「こげつき」となるのは必至である。さらに三十一組合中、償還率がひと桁というのが七組合もあり、最低は二.四%で二億五四〇〇万円に対し返済額は六〇〇万円である。

 既に倒産している組合について調査した状況を紹介する。この食肉加工組合は、昭和五十八年四月に設立され、五人が保証人となり、総事業費四億六〇〇〇万円のうち、三億五七〇〇万円を同和向けの高度化資金として融資を受けた。内訳は、事業団の二億四一〇〇万円と県の一億一六〇〇万円である。昭和六十一年に三〇〇万円を返済したが、翌年には延滞し、平成四年までに約一二〇〇万円を返済しただけで、平成七年に倒産し、現在まで返済していない。結局三億六〇〇〇万円借り三億四五〇〇万円残り三.五%の償還率である。県は、平成七年十一月に繰上償還命令を出したまま、平成八年から最近まで、この組合の実質的な責任者A氏が所在等不明という理由により、長期間借金返済の対策がとられていない状況であったとのこと、不安が残る。

 貸付けは、事前に事業計画について専門的な立場から適切な診断、指導が行われる事は当然である。しかし実態は、土地や建物は、県が抵当権を登録しているが、この土地は昭和五十七年に以前の所有者から先ほどのA氏に売買され、五十八年にA氏が組合に売買した土地。この二一八坪の土地所要資金は一億二二〇〇万円だが、現在負債に見合うだけの資産価値があるのか疑問である。建物は鉄筋コンクリート二階建てだが、放置されたままであり、解体に新たに費用を要するのではないか。また、地元の行政はこの組合に、自己資金の約一億円に対し、同和対策として利子負担軽減補助事業を実施。昭和五十九年から平成六年までに約一七〇〇万円の補助をしており、これでは組合の県への返済額よりも、地元行政から受けとった額の方が高いことになる。それなのに地元行政は同和対策の総括として、この組合を「評価すべき協同化であった」としている。

 これが事実なら、貸し付けた県としての見通しの甘さや指導のあり方が問われる重大問題である。高度化資金の実態を明らかにしていただきたい。多くの案件で担保価値が大幅に不足しているが、県は担保価値の鑑定書をとっていない。担保物件の売却を含む債権回収策をしても、最終的に何十億円がこげつき、一般会計からの更なる損失補てんを迫られるのか、見通しと今後の対策を示していただきたい。

   ◆木村知事

     社会環境や経済状況等の変化に伴い、貸付金の

一部が滞納していることは承知している。今後と

も償還指導の実施等、適切な債権管理に努める。

地域改善対策高度化事業は国の施策であり、中小

企業総合事業団及府県が協力して行う融資制度

である。長引く景気低迷等の理由により、多くの

高度化組合の定期償還が困難な状況となってき

たため延滞組合が増加してきた。今後は体制を整

備充実し弁護士の協力を仰ぎ、なお一層の未収金

回収に努め、課題解決を図る。

◆内田商工労働部長

 高度化資金融資状況は、十二年度末で五十四組

合に貸付けており、貸付金額は約三〇一億四六七

二万円で、償還済額は約七四億七九六一万円であ

る。残り二二六億六七一一万円のうち三十一組合

約七四億二一九三万円が延滞となっている。この

うち地域改善対策に係る延滞額は、二十四組合六

七億三五八〇万円である。多くの組合はこの制度

を有効活用し、懸命に返済している。

 担保は土地建物に一番抵当を設定している。不

動産鑑定士による鑑定は行っていないが、固定資

産税の評価額を参考にしている。それとともに組

合員が責任をもって償還するよう組合員を連帯

保証人として設定している。

 高度化資金の約定償還が困難な状況が多くな

っている。今後は休業又は破綻している組合につ

いて、弁護士の協力を得ながら抵当権の実行等法

的処理により債権を回収していく。しかし全額回

収できない場合は、財源の多くを負担している中

小企業総合事業団とも協議し、取り扱いを検討し

ていく。 債権回収は、貸付決定のための審査・

承認を行った中小企業総合事業団と十分連携し、

弁護士の協力も得ながら、取りうる法的手段を最

大限に活用し、なお一層の未収金回収に努める。

 

 進学奨励事業について。平成十二年度決算の調停額では、返済予定の三億三四〇〇万円に対し、実際の返済額は一億三四〇〇万円で、六割の二億円が返済されていない。教育委員会は「このデータは、過去の償還分をすべて捨象しており、八割近くが償還されている」としている。しかしこの決算の調停額にはすでに、返済を減免された件数は含まれておらず、平成十二年度の件数は二五六件七一〇〇万円もあった。十年前は、七割が返済されていたのに現在では四割である。長期未納者が増えている。この事業を総括し、返済を促進する意志があるのか。

   ◆小関教育長

 進学奨励事業における償還状況は、平成十二年

度までに償還されるべき額約九億三六〇〇万円

に対し、約七億三六〇〇万円の償還で、未償還額

約二億円となっている。未償還者には督促状を送

付しつつ、市町村と連携をしながら個別訪問によ

る償還相談を行っている。また、今後新たな滞納

者がでることを未然に防ぐための相談等にも当

たっている。

 

 住宅新築資金等貸付制度については、同和室と住宅課とが担当であるが、同和室の場合は同和対策事業の一環として個人住宅の新築に必要な資金貸付をおこなう市町村に対し、県が融資をする和歌山県の独自制度である。昭和四十六年から平成十三年までに、二十九の市町で七二八六件二七〇億四八〇〇万円の貸付が行われ、平成十二年度末で一五九九件二二億一二〇〇万円が滞納されている。住宅課の場合は国の融資制度だが、昭和四十二年から平成八年までに二十八の市町で一万二五八件三九七億三八〇〇万円の貸付が行われ、平成十二年度末で一九六〇件二九億一〇〇万円が滞納されており、両方合わせると五一億円の滞納となる。長期滞納、返済不能というケースも増えており重大問題である。実態と今後の見通し、そして対策を示していただきたい。

 同和対策事業でこういう問題が生じたのは、採算性の見通しや返済計画に対する適切な援助もないまま、過大な融資や受付がおこなわれ、その審査が適切に行われなかったからではないか。行政の主体性や管理能力の欠如、といった体質をそのままにして対策を講じても、行政責任があいまいにされるだけで、解決にはならないのではないか。

   ◆白井福祉保健部長

  住宅新築資金の滞納が市町の財政負担とな

っていることは十分認識している。県としては、

適切な債権管理をおこなうよう市町を指導し、国

の補完制度として実施しているので国の制度も

見守りつつ研究していく。

◆大山土木部長

  住宅新築資金等貸付事業では過去に二十八

市町が貸付を行っているが、この償還状況は平成

十二年度末には全国平均九〇.三%に対し、本県

では九二.七五%である。今後も本事業を実施す

ると共に、適切な債権管理を行うよう市町村を指

導する。

 

(再質問)

 償還問題についての答弁は、各課に温度差がある。土木部長は「九〇%は他に比べても少しは低い」というニュアンス、教育委員会は「二億円ぐらい」というニュアンス。そんな中で中小企業の高度化をしなければならない。今回の調査では債権放棄しなければならないのではといった話もあった。事業団が痛み分けしてもしなくても県は何十億円も負担しなければならない状態である。今後は各課だけではなく全体的に取り組み、どうすれば返済し生活や経営を成り立たせていくことができるのかといったことも含め、指導できるようなあたたかい体制、県政を実現していただきたい。

   ◆木村知事

     貸付事業問題は重大な問題であるという認識

のもと、担当部局で償還指導や債権管理の問題を

弁護士も入れて進めていく。

 

【障害者に暖かい行政の手を】

 現在、全国には五八六八ヶ所の小規模障害者共同作業者があり、前年度よりも二八一ヶ所増えている。和歌山県でも五十一ヶ所で四ヶ所増えたが、いずれも家族関係者、障害者自身の手による自発的な発足である。県は、いつまでも障害者共同作業所の自然増に対応するだけでなく、積極的に無認可作業所に対する計画を持たねばならない時期にきている。

 「紀の国障害者プラン」も残すところ二年となり、新たに根本的な成人期障害者に対する労働・生活・発達・社会参加を保障する障害者プランが必要である。これからの障害者プランの中には、小規模作業所の役割の位置づけは不可欠の課題であり、その検討の場には必ず障害者当事者が参画することが必要である。

   ◆白井福祉保健部長

     現行の計画期間が平成十五年度末となってい

るため、来年度より新たなプラン策定に着手する

べく予算を計上しているところである。その際、

平成十四年度末までとなっている国の長期計画

の動向にも留意し、市町村や障害者または家族等

関係者の意見を充分反映しつつ、現行のプランの

進捗状況や今後の課題等について検討を重ね、新

しい時代のニーズに応えられる計画にしていき

たい。

 

 精神障害者の授産施設・生活訓練施設・福祉ホーム・グループホーム・生活支援センターの設置自治体は、全国で十%〜十五%である。和歌山県では、二市一町に通所授産施設二・生活訓練施設二・生活支援センター三・福祉工場一の計八ヶ所である。

 今年四月から精神障害者の福祉施策は市町村に移管するため、地域生活支援に関わる社会資源の整備の比重は大きくなる。しかし生活支援センターは普及していないのが現状である。原因として、人口の少ない町村部では設置母体法人が少ないこと、自治体が積極的に設置者になっていないこと、県の市町村への働きかけが弱いことがあげられる。生活支援センターの積極的な設置など、今後の地域生活支援施策の計画について質問する。

 今年度から精神障害者ホームヘルパー制度が本格的に施行されるが、現在グループホーム入所者はホームヘルプサービスの活用は出来ないとされており、実情に合わない。グループホームの入所者は通勤、通所など生活自立度の比較的高い障害者を前提にしているが、実際は障害が重くても入所している。精神障害者福祉制度には、生活訓練施設、福祉ホームがあるが、いずれも通過施設でグループホームの様な居住型はない。しかし、グループホームは終のすみかとなっているのが現状であり、ホームヘルプ制度の導入は必要。制度の組み合わせを再考すること強く望む。また、ホームヘルパーの仕事に、精神障害者福祉に精通した精神保健福祉士やビアサポート(二人一組で互いの話を聞き合う訓練プログラム。相手の話を聞く態度や表現の仕方を体験的に習得し、対人関係がスムーズになる。)の有効性が指摘されており、障害者へのヘルパー採用も視野に入れた人材育成が望まれる。

   ◆白井福祉保健部長

     平成十四年度には県内で初めて医療法人が、精

神障害者通所授産施設、精神障害者地域生活支援

センターを一カ所ずつ整備する予定である。また

現在、精神障害者の社会福祉資源のない圏域にお

いても社会復帰施設設置の構想がいくつかある。

県はこうした動きに積極的に協力をしていく。さ

らに、平成十二年度から社会福祉法人の設立要件

が緩和され、本年度中に無認可小規模作業所のう

ち二カ所が法定施設の小規模通所授産施設に移

行しており、十四年度にも一カ所が法定化される

見込みである。こうした法人は、同時に精神障害

者地域生活支援センターやグループホームも運

営可能である。各地域での小規模作業所が出来る

だけ法定施設に移行できるよう支援していきた

い。

     ホームヘルパーの派遣は、グループホームの利

用対象者が「一定程度の自活能力があり、共同生

活を送れることに支障のない者」とされているた

め、原則として出来ないが、市町村の判断により

特段の事情が生じた場合は、サービスの提供は可

能である。

 ホームヘルパー育成については、県精神保健福

祉センターにおいて研修事業を実施し平成十三

年度末で二〇〇名余りに修了証書を交付してい

る。平成十四年度は修了者を対象に資質向上のた

めのフォローアップ研修を実施する予定である。

また、平成十四年度以降の障害者ホームヘルパー

養成研修事業では、精神障害者に関する項目を加

える方向で、現在国で検討されている。精神保健

福祉相談員等は、各市町村に対しその人員配置を

要請している。

 

 不況による共同作業所への影響は深刻で、作業所の工賃の減額率が和歌山県内のある作業所では八五%との報告もあり、減額後の工賃は月額八三三円という事例もある。是非とも、不況にあえぐ小規模作業所の実態調査を要望する。

 また昨年六月にも提案したが、全国十九ヶ所にある社会就労事業振興センターを設置するなど、障害者に向けて作業所製品や仕事の開発・開拓・普及・調査・相談を含む情報提供、また企業や団体に向けての広報・連絡・資金融資の紹介を行うなどの、特別対策が緊急に必要である。

   ◆白井福祉保健部長

     平成十四年度は、授産製品の共同受注の促進、

 

製品開発、製造技術の向上などを通じて販売量を

少しでも拡大できるよう、県社会就労センター協

議会とも連携しつつ、授産施設・企業関係者等で、

授産活動活性化のための指針の策定、また授産製

品共同カタログを作成していきたい。

 

【自然と健康を守る環境行政の実現を】

 昭和六十三年から長年解決されていない熊野川沿いの白見の滝付近での川沿いの不法投棄・埋立について、土木部長は、昨年十二月議会で「除去に向け、監督処分など、さらに強い法定手段を含めた取り組みを行うため、和歌山地方法務局などの関係機関と協議している」と答弁され、解決に向け期待をしていた。結果をうかがいたい。

 世界遺産登録の準備が奈良・三重・和歌山と三県あげて進められており、その中で熊野詣の川の道・熊野川がある。しかし、最近は世界遺産登録について保全に対する審査が厳しいとの話がある。何故なら世界遺産は国内法での保護が前提条件であるのに、自然公園法が踏みにじられ、廃掃法、河川法に明らかに抵触しているのに、いつまでもその熊野川の不法投棄が解決できないからである。このままでは遺産の登録は夢に終わってしうのではないか。

 また、昨年九月議会で熊野川の濁水問題の抜本的解決のために、二津野ダムの撤去を含めた発電停止を求めた。その時、知事は「世界遺産登録の問題もあり、環境保全・緑の保護ということから非常に大事な川との基本的な認識である。 二津野ダムについては、濁水の軽減対策は充分でないこと。最終的には、発電中止、ダムの廃止等いうことなんだろうと思うが、色んな事情があり、すぐにそこまでというわけにはいかないと思うが、近々、県の幹部を電源開発の方に派遣してこの問題をいかに地元として強い要望というより、意向というものがあるかということを示していきたい」と答弁された。その後の状況と、産廃の不法投棄や濁水対策など世界遺産登録との関連について見解を示していただきたい。

   ◆木村知事

     昨年十二月に副知事を派遣し、電源開発株式会

社に対し、実効性ある濁水対策を早急に実施する

ことを要望したところ、実施可能なものから対策

していくとの回答を受けた。不法投棄も含め、今

後とも熊野川の環境保全に取り組んでいく。

   ◆大山土木部長

     和歌山地方法務局など関係機関との協議の結

果、河川区域を特定するための図面を作成中であ

る。その作業終了後、除去にむけ監督処分などの

法的措置を実施していく。

 

 議会ごとに、和歌山県の自然と人間を大切にする環境行政の根幹から、都市計画法で健康で文化的な都市生活及び機能的な都市活動を確保する住居専用地域に指定された地域である新宮市松山での、法の不備をついたようなやり方で、環境破壊の恐れのある産業廃棄物の処理を許してはならないし、行政は自ら住環境を守るために定めた地域において、少しでもそれを脅かす時には毅然とした行政姿勢を示するのが当然だと訴えてきた。

 環境生活部長は、この松山の産廃処理場の焼却灰について昨年九月議会で「適切な処理業者に処理を委託するよう指導している」と答弁された。その後適正に処理され、焼却方法も適切なのか。業者は平成十年十一月から平成十三年八月までの焼却灰がドラム缶一〇〇本としているが、現状はどうなっているのか。また一ヶ月平均三本程度だが、この間の処理状況からすれば、とてもその程度の本数では済まないが、一〇〇本の裏付けはあるのか。

 

(写真の紹介と説明)

 

  埋められたのが焼却灰であれば、廃棄物を不法投棄したことになり、木やコンクリート殻が盛り土の中にあることは明らかに廃掃法に抵触する行為であるが、自己所有地にごみを埋め立てる行為は不法投棄にあたらないのかうかがいたい。

 県警はエコポリスをはじめ、不法投棄など環境犯罪に取り組まれている。紹介した写真を住民が警察や保健所に持って相談にいったそうだが、この様な場合、一般的にどのような対応をされるのか。

 廃棄物処理法十六条は「何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない」としている。これは、廃棄物の投棄によって、当該土壌のみならず、周辺の土壌や地下水が汚染され、雨水等によって汚水が河川等に流れ込み、結果として生活環境に悪影響を及ぼし、公衆衛生の安全を図ることができないからである。しかもこのような悪影響等は、一度発生した場合、その除去が困難であることは橋本の例からも明らかである。

  廃棄物処理法十六条の投棄の主体は、「何人も」とされており、人を限定する訳でも継続的な投棄に限定されるわけでもない。また、「法律の規制目的からすれば、仮に暫定的に廃棄物を一定の場所に置く行為であっても、その廃棄物の性質、形状、数量、地理的条件、行為の態様、廃棄物を置いていた時間等から、その廃棄物をその場所に置くことが何ら周囲の生活環境の清潔を損なうおそれがないことが明らかな特別の事情がある場合はともかく、そうでない限りは、その廃棄物を、それを捨てることが禁止された場所に置いた以上、直ちにこれが『みだりに捨てた』行為に当たるというべきであり、廃棄物をその場所に置くことの認識があれば、これをみだりに捨てる意思があったというべきである」との法律の解釈もあることを、紹介しておく。

   ◆秋月環境生活部長

     焼却灰の処理については、事業者から本年三月

四日に計画書が提出され、ダイオキシン類の分析

調査の後、最終処分場で適正に処分されることに

なっている。燃え殻入りドラム缶は現時点では八

十六本である。事業者から平成十三年八月二十七

日にドラム缶一〇〇本との報告を受けているが、

現時点で保管本数については変化はない旨聞き

取っている。一〇〇本の裏付けは、消却する廃棄

物の種類、焼却方法により排出する燃え殻の量が

異なるため、この期間内の発生量を算出すること

は困難である。

 最終処分場以外の場所で廃棄物を投棄することは禁止されているため、自己所有地にゴミを埋め立てる行為は不法投棄である。

 住民からの情報提供は、廃棄物の不法投棄の防止を図るための情報として活用している。今後も監視パトロールや立入調査の実施及び関係機関との協議などを行い、これらの情報を生かしていきたい。

   ◆岩井県警察本部長

     近年産業廃棄物の不法投棄等の事犯が増加し

ている現状を踏まえ、昨年は環境機動捜査隊を発

足させ環境事犯の摘発を強力に行い、一昨年の四

倍の五十九件六十九人を検挙した。住民からの情

報提供や関係機関からの通報は、事件化に向けた

貴重な捜査資料として活用している。所要の内偵

捜査を尽くしても事件化に至らない場合であっ

ても、関係行政機関との連携を密にしながら、不

法投棄事犯の未然防止や拡大防止に努めている。

 

(再質問)

 新宮松山の業者はドラム缶一〇〇本と報告しているのに八十六本しかなく、十四本足りない。住民は心配している。部長は問題ないというような答弁をされたが、認識を改めていただきたい。住民の不安を取り除くことこそが必要なのではないのか。

   ◆秋月環境生活部長

     平成十三年八月二十七日に事業者からドラム

缶一〇〇本との報告があった時点で、県は確認調

査をしていないが、同年八月十日に新炉の製作状

況調査に併せ、現地で保管状況を目視したところ

約八十本保管されていた。本年二月の調査では、

八十六本が保管されていた。再度、企業にも数字

の差異について確認していきたい。

 

 県議会で問題を取り上げているのに解決できないとなれば、熊野川は世界遺産に登録されないのではないか。ぜひ「ほんまもん」といえる熊野の自然を守るためにがんばっていただきたい。知事の提案する「緑の公共事業」とはなにかと尋ねられたとき、私は「緑と環境の公共事業」と説明している。ぜひ、この環境問題についてより一層真剣にとりくんでいただきたい。

 

(要望)

 知事は、失敗を恐れず向こう傷を恐れない問題解決の県政のためにぜひ頑張っていただきたい。環境問題では橋本の教訓、それは総括文書にもある最も欠けていた住民への配慮を、十分肝に銘じて取り組んでいただきたい。