高田由一議員の質問(三月七日)


【緑の雇用事業について】


◇高田
日本共産党県議団は、知事が提唱された緑の雇用事業が一時的なものではなく、地域に密着した事業として末永く続くよう応援する立場である。

昨年十二月補正予算から実施され、今年度も継続される予定の古道周辺森林環境整備について。先日、中辺路町内の熊野古道周辺で行われたこの事業について、地元から苦情があった。そこはもともと古道の周辺に広葉樹林を復活させるため、植林を伐採して広葉樹を植えた場所である。十年もかかってようやく林となり、多くの小鳥たちが集うようになったそうである。その林が古道周辺森林環境整備の事業で、かなりきつい間伐をされて、見晴らしはよくなったが、実のなる木も少なくなり小鳥もいなくなったとのこと。古道の語り部の方たちや森林の生態に詳しい先生方もがっかりされていた。しかし一方では、事業を行った中辺路町や作業をした森林組合は、眺望も良くなったし、あの場所はもともとそういう管理をするところだったとの見解で、この主張もよく理解できる。問題は、県民の税金を使った事業で、良かれと思い取り組んだことが、同じ町民の中で、意見の対立を生み出していることである。

熊野古道とその周辺の景観についての意志統一が、地元でさえなされていない。このことについて十分に議論されていないか、また、されていても古道を守り育てる立場の地元住民に、世界遺産としてあるべき古道のすがた、県の考える管理手法などの情報が行き届いていないために起こったことである。平成十四年度では、先の十二月補正の約十倍の予算がこの事業に投入される。このようなことがおこらぬよう、早急に地元の行政と住民、学識経験者、農林水産部と教育委員会が入った協議会を立ち上げる必要があるのではないか。


◆辻農林水産部長
教育委員会とも連携を図りながら、事業を実施する市町村をはじめ地域住民・学識経験者・森林所有者などが参画した協議会を三月中に設立する準備を進めている。今後、関係者の意見を聞きながら、古道周辺の森林景観について十分に議論を重ね、森林整備に取り組みたい。
◆小関教育長古道の景観保存については、バッファゾーン(古道を守るための緩衝地帯)の確定並びに関係市町の景観保護のための条例制定が早急の課題であり、現在文化庁等との協議を重ねている。古道の保存・管理・活用のための総合的な計画についても検討をおこなっている。今年秋を目途に、これら諸案件の解決に努めたい。


◇高田
広葉樹林等森林環境整備事業への予算として、三億五千万円と緑の雇用事業の中でも、最も多い配分になっている。平成十四年度は五十ヘクタールを植林するようだが、それに必要な苗木は七万五千本といわれている。この事業は継続的に続けられるものだと考えている。それならば、この事業に用いるケヤキやヤマザクラ、ウバメガシなどの苗木生産を地元に委託してはどうか。山村では現金収入の得られる仕事は貴重である。苗木屋に委託するだけでなく、やはり地元を使ってほしい。今後もこの事業を拡大していくなら長期的な計画として、苗木の安定した購入により山村の活性化につなげていってはどうか。


◆辻農林水産部長
苗木の購入は、可能な限り地元の例えば県山林種苗共同組合員が生産する苗木を調達する。苗木生産を新たに農家に委託することについては、種子採取など様々な課題があり、難しい。今後、広葉樹苗木の需要が見込まれることから、地元組合

等の生産力強化に努めたい。

                                   
◇高田先日、林業関係者を訪ねたとき、県の林業センターにどんな役割を求めているかと聞いたところ、複数の方から「一歩先を読んだ研究をしてほしい」との声があった。現時点における一歩先の研究とは何か。そのキーワードは環境である。 

植林から伐採まで長期間かかることが宿命の林業では、景気の状況や時代背景に左右されず、安定した経営が求められている。また、間伐をしないことで土壌の流出や花粉の大量飛散などの問題がおこっている今、環境に配慮した経営が求められている。

三重県の速水林業では、環境や労働者に配慮した持続可能な森林経営をしているということで日本で初めて国際的な認証機関の認証を取った。環境に配慮した人工林の中では下草や広葉樹も生え、多様な小動物も住むそうである。例えば、そうした森林管理の方法を体系化するような研究はどうか。あるいは、観光農園があるように、木材生産と共存できる観光林など、複合経営をすすめるための研究はどうか。ポイントは生産物を出荷するだけではなく、来てもらう、見てもらう、食べてもらう。お金も落としてもらう。要は山に人をどう呼ぶかである。今こそ、林業センターなどの試験研究をさらに充実させていくことが望まれる時代ではないか。


◆辻農林水産部長
林業センターにおける試験研究課題については、関係者の意見集約を行い、有効な研究課題に絞り込み取り組んでいる。環境など新たな視点での研究課題については、現在部分的に伐採する非皆伐施業による機械化作業システムの研究や花粉の少ないスギの品種の育種などに取り組むこととしている。今後、関係者や地域のニーズを把握しながら、森林環境・機能等の新たな研究課題についても検討し、研究していきたい。


◇高田
林業の現場労働は、あいかわらず労災が最も多い職場である。新しい雇用者が増えるときこそ、労働安全に注意が必要である。安全性を高めるためにも山の現場で携帯電話を使えるようにしてほしいという要望がある。こうした分野に力を入れていただきたい。

◆辻農林水産部長一般に普及している地上系の携帯電話については、山間部における鉄塔の建設など膨大な経費が必要であることから、現時点では衛星系携帯電話の活用が最も効果的だと考えている。緊急連絡体制整備の一環として、既に一部の森林組合が補助事業で導入している衛星携帯電話や車載無線、トランシーバーなどを組み合わせた緊急連絡体制の普及を図りたい。

 

【産業廃棄物の処理計画】

◇高田この間、知事をはじめ県当局から産業廃棄物の処理について、一定の公共関与が必要との見解が示されてきた。私たち日本共産党県議団は、産業廃棄物の処理は排出事業者の責任で行うべきであるという廃棄物処理法の趣旨からいっても、安易に公共関与で産廃の処理を行うことは、ごみ排出者責任を回避することにもなり、ごみを発生源から抑制するという真剣な企業努力を怠らせることになると考えている。

 そもそも、公共関与の産廃処理施設が必要だといわれているのは、大阪湾のフェニックス計画に参加をしていない、主に御坊・日高以南の地域である。この地域の産廃あるいはそれに加えて一般廃棄物の一部を受け入れたとしても、廃棄物の発生が少なすぎるため、処理施設が経営的にペイするとは思えない。現在の県の産廃処理計画では、最終処分量は平成十五年時点で五十一万トンの目標であるが、実際にはすでに二十七万トンにまで減少している。こういう状況のもと、そもそも公的な処分場が必要なのか。フェニックス計画の対象地域以外では産廃の最終処分量はせいぜい一万トン前後ではないか。少なくとも最終処分場まで公共関与するような状況ではないと考えられるが。また、すさみ町ではそうした処分場の誘致要望があるのか。


◆秋月環境生活部長
廃棄物処理に関しては、資源化が進んだため、最終処分量は減少しているが、県内には管理型最終処分場がなく、民間事業者による整備が進まない現状から、一定の公共関与による廃棄物処理が必要と考えている。第三セクター方式(官民が共同出資して経営にも自治体が加わるもの)やPFI(公共事業に民間資金を取り入れる手法)または建設補助のように一部支援的な関与の方法も含めて検討したい。今後、産業界、市町村、県が一体となり協議の場を作り、地域の実態にあった具体的な検討を行っていく。現時点では誘致要望は受けていない。


◇高田
公共関与して創設された産廃処理場では、安く産廃を処理できるという考えは誤っている。確かにフェニックス計画では、処理料金が安く抑えられているが、この間、第三セクターなどで作られてきた産廃処理場の処理料金を見ると、この近辺の民間処分場の料金と大差はない。

その高い処理料金を取っている「いわてクリーンセンター」では、廃棄物の受入量は当初、計画を大幅に下回っていたが、法規制強化もあり平成十二年度では計画の約一.五倍、総量で五万トン近い廃棄物を受け入れている。それでも実質約十一億円の赤字をだしている。その上、法規制強化で最新鋭の処分場であっても、ゴムシートの緑化や搬入車両のタイヤ洗浄のための施設を増設するなど、改良や修理のための支出など、後年度の負担もある。

 今のところは経営的にうまくいっているといわれている新潟の「エコパークいずもざき」は、高い処理料金をとったうえで、平成十三年度では十二万トン以上もの廃棄物を受け入れている。一六五億円の事業費の七割以上を借入金でまかなっているので、今後本格的に借入金の返済が始まればどうなるのか心配である。こうしたことを考えたとき、県としては赤字覚悟でも公共関与でおこなうつもりなのか。


◆秋月環境生活部長
採算性については関係機関と廃棄物処理の計画を協議していく。適正な利用料金と採算性を考慮して事業を計画していくべきだと考えている。

 

◇高田−廃棄物処理計画について。昨年二月議会の原議員の質問に環境生活部長は「策定作業に際しては、庁内の関係課や各振興局、市町村、事業者や関係団体と協議し、広い範囲の意見を取り入れてまいります」と答弁している。具体化するにあたり、どのような方法でそうした意見集約をしていくのか。また、住民や環境問題に詳しい学識経験者などの意見をどう反映させていくのか。


◆秋月環境生活部長
廃棄物処理計画策定にあたっては、廃棄物処理及び清掃に関する法律により、審議会及び関係市町村等の意見を聴くこととされており、近く環境審議会に諮問する予定。審議会の審議と並行して市町村、事業者や関係団体の意見を聴くとともに、幅広く県民の意見を聴くため、インターネット等を利用したパブリックコメントの募集を実施する予定。

 

(再質問)

◇高田−現時点では、すさみ町から具体的な要望は受けていないということだが、本年一月二十一日すさみ町議会合併問題調査特別委員会における町長の発言に「知事部局の方から、西牟婁、東牟婁へ陳情に行ってくれんかということで県議会の先生方が見えて、何とか施設をつくりたいが協力してくれないかとの話があった。これは、こちらからお願いしたいくらいですと返事をした。埋立地の候補地はうまくいかず、従来型ではなく溶融炉方式について知事も前向きの姿勢であり、溶融炉設置について日置川、すさみ町協力して取り組んでいくことになり、日置川町の伊古木、名立地区に一カ所あったが条件に合わず、すさみで候補地を探すことになっている。場所については、公害がないといっても川の上流ではだめであり、海岸で荒いそがよいのではとなっている」云々とある。このような議論が既に公式の場でされている。これでも県行政が関与していないといえるのか。これは明らかに要望であり、事前協議ではないのか。

秋月環境生活部現在、産業廃棄物の種類、施設規模、実施主体等、まだ県としては具体的な案をもっていない。適地性も今後の検討課題。ただ、遊休地があるなどの情報は寄せられている。

 

(再々質問)

◇高田−公式な会議で発言されていることは明らかだ。知事のことも話に出ている。どういう経過があったのか、内部調査をおこない、部としての見解を示していただきたい。

◆秋月環境生活部長県が必要な施設については、市町村の一般廃棄物との合わせ処理のことなどについても平成14年度に検討したい。県としては、今のところ具体的な候補地は考えていない。

 

【市町村合併について】

◇高田
合併を推進するなら、合併特例法の様々な優遇措置を受けられる平成17年3月までに間に合うようにしたいという思惑から、この間、県内でも様々な動きが出てきた。特に田辺市周辺の十市町村では、市町村長や議会代表でつくる合併検討会が、この四月に任意の合併協議会をつくることで大筋合意をしたようだ。十市町村で合併協議会をつくることはその十市町村の枠組みでの合併を検討するということで、それはこれまで行われてきた合併研究会などから、ひとつ違う段階に入るということである。

しかし、住民の立場からみれば早急すぎるといわざるをえない。多くの住民は昨秋ごろからようやく各市町村役場が開く懇談会などで、合併の話があることを知った。行政側も十分な資料がない中での議論で、具体的なメリットやデメリットの議論はなされていない。合併推進の立場の人でさえ「どことどこが合併するのがいいか」という点では隔たりも大きい。

例えば、「南部町市町村合併を考える女性の会」という団体が南部町内で500人以上から集めたアンケート結果によると「合併そのものに反対」が36%と、賛成の19%を大きく上回っている。しかも賛成の中にも「十市町村での合併がよい」と答えたのはそのうちの16%にすぎない。こういう状況の中、十市町村という枠組みで合併するか否かの協議をすすめようとする任意協議会の設置には反対である。

市町村長の中でもこの任意協議会については様々な思いがあるようだ。新聞報道で南部町の山崎町長は、「4月に十市町村による任意協議会に入るが十が合併する前提ではない」と言っている。十市町村で任意協議会をつくるということは十市町村という枠組みでの合併を検討するということなのか。


◆稲山総務部長
任意合併協議会は、法定合併協議会を設置する前段階として関係市町村間で設置されるものである。協議その他諸々は今後、関係市町村間で取り決められるものと理解しているが、少なくとも十市町村での法定合併協議会の設置に向けての必要な協議は行われるものと考えている。法定合併協議会の性格は、合併に関する協議を行う機関であり、合併の是非を含め検討がなされる場である。これへの参加は、必ず合併するということを前提としていない。

 

◇高田−県の平成14年度予算案では合併推進に2億5,000万円以上が計画されている。この合併推進の予算案は、他府県と比較しても突出している。例えば福島県は「合併しない宣言」をした矢祭町があるが、佐藤知事は「県がイニシアチブをとってほしいという声もあるが、それは地方自治と逆行することになる」「自分たちの町のあり方は自分たちで考えるという地方自治の基本を崩したくない」と述べている。そして平成十四年度予算案では、特に合併推進を掲げた予算はなく、その言葉どおり合併するかしないかを問わず、県は市町村を応援していくそうだ。


 さらに、高知県の橋本知事は「今の合併の仕組みが高知県に向いているかは疑問」「100万都市になったさいたま市と全部一緒になっても二万人にならない嶺北五町村を同じ仕組みでやるのは無理がある。国が言うように行政の効率化がすすみ、住民にプラスになるとは自信をもっていえない」と述べ、一律の合併推進に疑問を呈している。そして「市町村合併というのは、国や県が無理やり押し進めるべきものでもないし、あくまで地域の住民の方々が議論をして、自らの住む地域の将来を決定をしていかれるべきもの」「ただ、住民の方々に投げかけているだけでは、当然お話も進んでいきません。議論をしていただく、そういう場づくりというものが必要だと思います」と発言している。その高知県では、合併のシュミレーション用のコンピュータソフト作成に1,200万円、合併協議会への補助金として2,000万円など合計約4,000万円を予算案に盛り込んでいる。
あるべき県の態度、ふところの深さとはこのようなものではないのか。

 
 和歌山県は平成14年度予算案に2億5,000万円以上の合併推進予算を盛り込んでいる。ちなみに近畿他府県の予算では、大阪府約3,000万円、京都府約1,000万円、滋賀県約5,800万円、兵庫県約1,700万円、奈良県約5,000万円となっている。和歌山県は格段に多い。しかもその予算の内容は、重点支援地域で整備する公共施設の整備に1億8,000万円もの配分をしているが、これは具体的な計画の積み重ねではなく大づかみの予算である。昨日、村岡県議が指摘したように一方では、県民福祉への予算要求に厳しい査定を行いながら、一方ではこんな大づかみの予算を組む。他府県または県内の他分野の予算と比較しても、この合併推進予算は大きすぎるのではないか。

こういう県の顔色をうかがってか、和歌山県内では合併問題についての率直な意見が述べられにくい状況になっているのではないか。

 最近は合併問題でも明確な態度表明をする首長が増えている。例えば先ほど紹介した福島県矢祭町の町長は「矢祭町は地理的にみて福島県の最南端にあり、辺境にあることは動かしがたい現実であり、合併のもたらすマイナス点である地域間格差の拡大をもろに受け、過疎化がさらにすすむことは『昭和の大合併』で証明済み」と反対している。

 田中康夫知事の長野県では合併推進予算は1,000万円程度である。その長野県の泰阜村(やすおかむら)村長は「合併しても村の抱えている問題は何ひとつ解決するものではないので合併はできない」と述べた上、さらに「国は小さな自治体では専門的な分野の職員が配置できないといっているが、例えば溝が詰まって住民が苦情を寄せてきたときに、高度な専門家より『それは本当にお困りですね』と住民の気持ちになって対話ができる職員こそが必要」と述べている。  

その隣村の阿智村でも村長が「交付税措置のある起債をすすめることで国の経済政策に従ってきた地方自治体が、政府の方針がかわったことで交付税の制限をうけ、財政破壊をうける事態は納得できません。国の都合による市町村合併には従うことはできない」と明確に述べている。

また高知県でも、越知町町長が「合併は最終的に行政のリストラに進み、過疎が急激に進む」と合併を正面から批判している。柚子を使った村おこしで有名な馬路村村長も合併のメリットはないと言っているようだ。合併問題について、市町村の自主性を尊重している県では、市町村長の本音がでている。

ところが和歌山県内では、正面切った批判は無く、「どうせ合併するなら」「できればしたくないが・・」など、合併の目的や意義からの出発ではなく、半ば開き直りのような議論が多い。そういう状況では合併を選んだ地域でもよい合併にはならないのではないか。全国的にみても、あまりにも突出した県の合併推進姿勢は、県民の自由な議論のさまたげになっているのではないだろうか。


 新聞報道で、龍神村の古久保村長が「国はムチは使わないという。しかし、支援策がないということは、弱小自治体にとって大きなムチ。兵糧攻めがなかったら、ギブアップすることはないのだが・・」と述べている。合併推進には惜しみなく援助するが、合併を考えないところには交付税削減の脅しだけがきて支援がない、こんな状況に置かれれば市町村長なら誰しも不安を抱く。どうか、過疎地域を抱える市町村にこうしたつらい思いをさせないでほしい。あくまで市町村の自主性を尊重するならば、これからも独立でやっていくと選択した市町村にも、県はしっかり援助をしていくということを示していくべきではないか。


◆木村知事
市町村合併は非常に難しい問題であり、単に3,300ある団体を1,000にしようとか、特に過疎地域においては重大問題なので、そういうやり方は良くないとは言っている。しかし、市町村に任せきりでは県の責任を回避することになるため、県は市町村と一緒にこの問題に取り組むという姿勢を示すために予算化した。決して強制や意見の無視ではない。重点支援地域に指定した地域で巻き起こっている様々な議論の末、合併するところが出てきたときに夢を描けるようにしていきたい。財政を削減したために過疎の地域でサービス水準が低下し、過疎を進展させることは、県にとっても非常に困ることである。このような問題についても併せて議論していきたいという考え方に基づく予算だから、県の顔色をうかがってどうこうということは無いと確信している。

 

(再質問)

◇高田−知事は各市町村が、県の言いなりになるしかないような状況にならないようにしたいと答弁されたが、残念ながら現場では、国や県が言うのだから仕方がないという声が現実にあがっている。知事のその意志を現場にまで徹底して示していただきたい。

 

【難病対策について】


◇高田−現在「特定疾患」対策は、難病対策の中心的な事業として位置づけられている。これは国が指定するもので原因や治療方法の解明が研究されている118疾患のうちの46疾患について医療費の公費負担がおこなわれるものである。和歌山県ではそれに加えて県独自で5疾患を指定して制度を拡大している

難病対策が始まって今年で30年を迎え、今厚生労働省は制度の抜本見直しの作業をすすめている。その検討の中では、研究成果がある程度あがったと思われる疾患や、治療法が一定、開発されたと見られる疾患の医療費補助対象からの除外、軽症患者の除外などがたくらまれているようである。小泉内閣による「構造改革」がこの分野でも押し寄せており、患者の不安は増している。現実にはまだ何の手も差し伸べられていない難病が多く存在する。多くの患者、家族が医療費の負担にあえいでいる。この難病対策をさらに充実・発展させることを、国に要望していただきたい。


◆白井福祉保健部長県として今まで以上に公費負担対象疾患の拡大、現行制度の充実に向け、全国衛生部長会等を通じ国へ働きかけていきたい。

 

◇高田−医療費の公費負担の対象となっている国の特定疾患は、最初は四疾患でスタートしたが、現在は四六疾患を対象とするまでに徐々にではあるが拡大してきた。ところが県独自に指定している疾患は制度発足時に十四疾患あったものが、国のカバーする範囲がひろがってきたために、現在では五疾患のみとなっている。県の制度としてはむしろ後退してきている。  

難病であるにもかかわらず公費負担の制度から外れている患者がいるが、彼らを救うためにも県指定疾患を拡大すべきではないか。なぜ同じ難病でありながら、公費負担するものとそうでないものがあるのか。合理的な根拠はあるのか。


◆白井福祉保健部長
県指定特定疾患は、昭和四十九年当時、国の公費負担対象とならなかった疾患について県が独自に対象としたことに始まった。その後、国指定の難病が急増し、国が対象としない全ての疾患を県が独自に負担することは困難となっている。そのため新たな県指定の追加は行っていない。県指定の拡大についても他の様々な疾患との公平性や県財政の現状から考えると困難であるため、今後は重症難病患者に重点をおいた支援策の充実をすすめる。

 

◇高田−小児慢性特定疾患という制度は十八歳未満で、慢性の腎疾患や心疾患、ぜんそくや糖尿病、その他の難病がある子どもには、医療費が公費負担となる制度である。国の制度では一ヶ月以上入院しないと対象にならない。慢性の疾患を抱えている子どもの中には、症状の悪化が無くても、検査のために定期的に入院しなくてはならない子どももいる。すでに近畿では大阪府、京都府、奈良県で一ヶ月以内の入院や通院についても、独自に援助をおこなっている。和歌山県でもぜひ援助していただきたい。


◆白井福祉保健部長
現在国において、10の疾患が小児慢性特定疾患治療研究事業の対象とされているが、疾患ごとに入院・通院といった適用範囲や、対象年齢を18歳未満に限定した疾患、また20歳未満まで延長できる疾患があるなど、異なる状況である。県も国に対し、疾患ごとの違いをなくすよう要望を続け、県単独事業としても、対象年齢を全疾患で20歳未満まで延長するなどの措置を講じている。現在国では検討会を設け、今後の事業のあり方について適用範囲も含めた抜本的な検討を行っているので、短期入院や通院部分を県単独事業として対応することについても、この結果をふまえて今後のありかたを検討していきたい。


◇高田難病対策の制度について、周知徹底と広報活動を求める。数年前、県内のある病院で、小児慢性疾患の対象になる子どもが医者にかかった。その子は、小児科ではなく内科で受診を続けていたため、この制度を医師も患者自身も知らないまま過ごしていたそうである。あるとき学校の先生が気付き、国会にまで問題が飛び、ようやくそのときの医療費が返還されたそうだ。病院内での制度の広報とともに、県民の情報源のひとつとなっている県のホームページでもこの制度について紹介するよう求める。


◆白井福祉保健部長
県は特定疾患治療研究事業や小児慢性特定疾患治療研究事業について、対象患者や制度について紹介したポスターを作成し、保健所、県医師会、県病院協会等の関係機関を通じて医療機関等への周知を図っている。平成十一年からは、和歌山県立医科大学付属病院内に設置した「子ども相談センター」において、難病の子ども、その家族からの様々な相談に応じるとともに、保健、医療、福祉に係る各種公費負担制度についても紹介し、難病対策制度の周知にも努めている。県のホームページでの紹介についても今後出来るだけ早期に実施していきたい。

 

(再質問)

◇高田−病気が病気だから、専門の治療や精密検査ができるのが近畿一円でもごく限られた病院にしかない場合がある。しかも小学生や中学生の慢性疾患の子どもの中には、普通学級にいる子もいる。そういう子は年に一度、検査入院や集中的な治療を受けるために、夏・冬の長期休暇を使っている。したがって、数少ない専門の病院にこの期間、各府県の難病の子どもたちの入院が集中する。医師はどの県が公費負担しているか知っているので、公費負担の申請書を出そうとして、「ああ、お宅は和歌山だからあかんね」と書類を引っ込められたという経験をもつ保護者もいる。これでは和歌山県民として誇りをもてない。

また、せっかくの夏期休暇だから、できるだけ検査や治療の期間を短くしてやりたい、学校の友達と遊ばせてやりたい、保護者なら誰しもこう考える。だから医師に、短期間の治療を依頼する。それで一ヶ月以内に収まってしまったなら、高い治療費がかかってくるという。国の難病対策の見直しがどうであれ、普段から健康な子どもと比べて、想像もできない苦労をしている難病の子どもたちに、和歌山県に生まれてよかったと思える制度にしていただけるよう要望する。

 

 

高田由一議員の反対討論(3月20日)

 
 日本共産党県議団を代表して諸議案への反対討論をおこないます。

 小泉内閣が、深刻なデフレに有効な対策をうつことができないもとで、県民のくらしは長いトンネルから抜け出せないでいます。リストラが猛威をふるい、医療費の患者負担が増大するなど、県民がいっそう先行き不安を募らせている今、政治が果たす役割はきわめて大きいものがあります。

 県政においても、限られた予算をどのように有効に活用し、福祉向上に資する政治がおこなわれるのか。県民の真剣な目がそそがれています。

 当初予算は、「緑の雇用事業」など新たな発想にもとづく施策への積極的なとりくみと、行政改革や事業見直しによる財政健全化という、ふたつを柱に編成したとされています。

 「緑の雇用事業」は、県土の保全、林野の公益機能の維持などの点からも意義のあるものであり、一過性のものに終わらないとりくみが望まれます。その他、JR紀伊駅へのエレベーターの整備、うめ研究機関の整備、県立図書館の蔵書の充実、廃棄物不法投棄の監視事業の推進や、乳幼児医療補助の拡充など、県民の願いを受けとめた施策は歓迎するものです。

 また、補正予算のなかで超過勤務手当ての未払い分が計上されたことは、法違反の状態を是正する当然の措置とはいえ、その決断は大いに評価するものです。

 観光レクリエーション事業の廃止も当然の措置と考えます。

 一方で、見直しのメスを入れるべき事業の継続と、老人医療費補助の所得制限強化といった福祉の切り下げや職員削減など、県民と職員に犠牲を強いる内容があることを指摘しなければなりません。

 関西国際空港は、巨額の借金を抱えつつ採算の見通しは不透明なまま、二期工事がすすめられています。会計検査院の二〇〇〇年度の決算検査報告において、「的確な経営予測と償還計画にもとづいて、適切な事業運営をおこなうことが望まれる」とされているのが現実です。離発着の容量がまだまだ残されているという検討結果が示された旧運輸省の内部文書も明らかになっています。二期事業は中止すべきです。漫然と出資と無利子貸付をつづけることは容認できません。

 紀淡海峡ルートの建設促進やPRなど、ムダな巨大事業を推進する国策に対し、無批判にしたがうことは残念です。県の主体性が問われています。また新宮港第二期工事など県内の無駄な事業も見直すべきです。

 県の主体性にかかわっては、本来LNG火力発電所を計画している事業者が負担すべき住金西防波堤建設にかかわる費用なども認めるわけにはいきません。

 削減可能な予算としては、市町村合併推進も指摘しておきます。合併するとも決定していない地域での施設整備を応援するなど、突出した予算計上といわなければなりません。

 老人医療費への補助では、きびしい所得制限が加えられ、ことし八月以降六七歳になる方々のほとんどが、その補助を受けられなくなります。国の医療制度で負担が増えているきびしいときに、県においてもこのような措置がとられることには賛成することはできません。

 職員削減は、安易におこなうべきではありません。とりわけ、教師を確保することは、学級規模を小さくすることに結びつけることができます。県下の小学校で、三〇人を超える規模のクラスが三六%もあるもとで、たとえば小学校一年生を三〇人学級にするために必要な教師の数は九〇人であり、来年度減らそうとしている一一一人を下回ります。どの子もわかる授業、どの子にも教師の目がゆきとどく環境を願う立場から、削減を認めることはできません。

 次に同和行政についてです。経過措置をのぞいて特別対策は終了というのが県の説明であり、それは当然のことです。しかし、同和委員会職員を横すべりさせて、人権教育・啓発活動のためのセンターを設立することや、その業務を、まだ設立もされていない団体に委任させることになっている予算は納得できません。また同和教育を人権教育の中核と位置づけて推進するという姿勢には同意できません。

 基本的人権が尊重される社会は、主権者である国民の参画をつうじて国民本位の政治がおこなわれることでこそ、実現されると考えます。さらに国民の「意識」の課題にたいしては、国民の自主性と自発性が尊重される学習により解決することが大切です。その点で、同和委員会がイニシアチブをとって策定された人権尊重の社会づくり条例案では、基本方針の策定や審議会委員の選任に県民参加の道が閉ざされていることは、大きな問題です。本条例案や関連予算には反対です。

 中小企業むけの高度化資金や、住宅新築資金の貸付については、今後は償還を求める事務だけになりますが、これまでの貸付と償還の実態にたいする県の結果責任の重大さを考えるとき、関連議案を認めることはできません。

 ことし八月から本人確認情報の業務利用が始まるということですが、これはプライバシー保護の点から、関連する条例には反対です。

 建設事業にともない市町村に大きな負担を強いる市町村負担金にも賛成できません。

 以上が議案にたいする主な意見です。

 反対する議案は、一号、五号、一〇号、一三号、一九号、二〇号、二三号、三〇号、三一号、三二号、三八号、五四号、六四号、六五号、七一号、七五号、七八号、八一号、八六号、八七号、八八号です。

 以上で反対討論を終わります。