高田由一議員の質問(6月20日)

【東南海、南海地震への対策】

 

高田 昨年9月に発表になった政府の地震調査委員会の分析は、東南海と南海地震が今後30年以内に40%の確率で発生することを明らかにした。知事も出席されていた「激震が襲う日」というテレビシンポジウムで、ある著名な学者は、1707年と1854年におこった巨大地震が、東海、東南海、南海の3地域で同時に発生した地震であったことを取り上げ、「東海、東南海、南海の地震は本来、同時に起こるのが普通であって、ばらばらに起こるものではない」と強調していた。政府の中央防災会議のメンバーも出席しており、「3つの地震は同時発生する、国もこれまでの考えを改め、対策をすすめる」と発言した。

 さらにこのシンポジウムでは、内陸の活断層による直下型地震についても警告があった。兵庫県南部地震を皮切りに西日本は地震の活動期に入ったといわれている。そして約50年後におこる南海地震あたりまで、危険な状態が続くという。学者は、和歌山市から紀ノ川沿いに走る中央構造線は「世界に誇れる第一級の活断層」と述べた。約2000年周期で動くが、ここ千数百年は動いたことがない。和歌山県の地震対策としては、大津波を伴う巨大地震と、県庁所在地を襲う直下型地震への対策が欠かせない。

 政府の中央防災会議は、3つの地震が同時に起こったケースも含め、各ケースごとに各地の震度と津波の高さを割り出す予測作業中で、その資料が今秋にまとまり被害想定を発表する予定だ。和歌山県内での具体的な対策はそれ以降、南海地震への特別措置法が成立してから、今までの対策を仕切りなおし、再検討することになるだろうが、今からすぐにできる対策を着実にすすめることが必要だ。人的な被害の規模は地震が起きた直後から30分以内の対応で大きく左右される。今回の質問は、その時間帯への対応にしぼる。

=家屋の倒壊を防ぐ対策=

 県の防災計画予想でも、南海地震では県南部の地域で震度7、和歌山市周辺でも震度6弱である。また中央構造線が引き起こす直下型の地震では、和歌山市周辺で震度7が予想されている。この地震による住宅の倒壊は、阪神・淡路大震災なみになるかもしれない。個人住宅には昨年度まで耐震診断への補助事業があったが、人気がなく今年度から廃止になった。耐震診断のみで、住宅の補強にかかる費用は補助されないからだ。本県も静岡県のように、古い木造住宅の補強のための補助事業を行ってはどうか。

=津波からいかに早く逃げるか=

 県の防災計画ではM8.4の南海地震の場合、最も波の高い地域で8Mをこえると予想されている。また串本町では、10分で4Mをこえる津波が押し寄せるという。昨年11月に行われた日本災害情報学会の「南海地震に備えて」というシンポジウムで、東京大学地震研究所の阿部教授は「前回の地震がM8.1、想定される次の地震がM8.4。Mで0.3の差は地震のエネルギーでは約3倍。昭和の南海地震が3つ同時に発生したエネルギーをもつことになる。津波の高さでは約2倍。昭和の南海地震より、危険性はさらに高まる。地震が大きければ津波の速度は更に早まる可能性がある」と述べている。

 同シンポジウムで高知県消防防災課の職員は「芸予地震があって、高知市で震度5弱だった。その瞬間には、これが南海地震か何地震かは当然わからない。ずっと沿岸地域の人には避難訓練ということで、揺れたらすぐに逃げようということにしていたが、みなさん、ラジオ、テレビをつけて8分、というとすでに津波は到達している。そういうものを待って行動しては遅い。実際自ら避難した人は1人しかいなかった。情報というものをあてにしすぎたために命を失うケースがでてくる。揺れたら逃げるということがどれだけ徹底しているかが一番の心配です」と述べ、住民の主体的な判断の重要性を説いている。

 したがって今後、住民には地震がおきたらすぐに高台に避難すること、または近くのコンクリート製の建物の3階以上に避難すること、この周知徹底を図らなければならない。また前回の南海地震より、震度も津波も大きくなることを、普段から住民に意識づけておく必要がある。例えば、市町村では昭和南海地震の当時、津波の水位を表示した記念碑があちこちにあり、住民に日々警鐘を鳴らしている。しかし今度はそれ以上のものが来るおそれがあるので、次の南海地震で予測される津波の高さも同時に表示し、普段から住民に意識づけしておくことも必要ではないか。

 避難場所に指定されていることの多い公的な建物の耐震診断の進捗状況はどうなっているのか。遅れているのなら、今後どのように推進していくのか。さらに避難場所で心配なのは、休日や夜間など、建物にカギがかかって開けられない状態にある場合であるが、その対策はどうなっているのか。

 地震は突然発生するため、時と場合によっては、たとえ小さな子どもたちでも自分の命を守るための、主体的な判断が必要になる状況が生まれる。学校教育のなかで防災訓練の実施などはもちろんだが、学校外にいるときの対処の仕方あるいは地震と津波の科学的な理解をすすめる必要があるのではないか。

 東海地震についてはさきに地震防災対策強化地域が拡大され三重県も熊野市までの海岸の市町村が指定された。強化地域では、東海地震の警戒が宣言されると、マニュアルに従い、交通や安全管理の面で様々な規制が行われることになっている。しかし東海地震により津波が発生するのは、新宮市から串本町にかけての海沿いの市町村とて同じである。警戒宣言による規制がかかっている隣で、普段通りというわけにはいかない。鉄道や交通、ライフライン、さらには小中学校での対応など様々な検討課題が考えられるが、そのマニュアルを作っておく必要はないのか。

■大山土木部長ホームページを開設し、簡易に耐震診断できるプログラムを提供していく。改修費用は、住宅金融公庫等の融資制度の活用を推奨していきたい。

■稲山総務部長地域防災計画の策定にあたり、その前提となる南海地震のM8.4として各地域の震度分布の予測あるいは津波浸水想定をたて、住民への啓発も想定を前提として行っている。従来の防災安全地方講習会、県民の友での防災特集記事の掲載、自主防災組織を対象とした図上訓練等に加え、本年度から沿岸地域住民を対象とした津波避難訓練も実施したい。住民に対し「自分の命は自分で守る」という意識付けを様々な機会を通して行っていきたい。浸水高の実績及び想定を示す標識の設置は、津波避難対策をする上でひとつの有効な方策だと考えている。

 避難場所として指定されている公共施設における耐震診断の進捗状況は、平成13年4月1日現在、全6195棟のうち、建築基準法の改正により耐震基準が強化された昭和57年以降に建築されたものが2163棟で34・9%、昭和56年以前に建築されたものが4032棟で65・1%である。

 これ以前に建築された4032棟のうち650棟について耐震診断が実施されている。実施率は県施設で46・5%、市町村施設で9.2%、全体の実施率16・1%である。本年4月に設立した県地震対策協議会耐震化対策部会などを通じ、早期実施を要請し、指導していく。

 災害時の避難場所は県地域防災計画で「市町村長がそれぞれの地区の実状、災害の種類等を十分に検討の上、危険区域と危険度を想定し、関係機関と協議の上、あらかじめ選定」すると定めており、これを受け、県下市町村により、避難場所916箇所、広域避難場所1箇所、避難施設1450施設が指定されている。

 夜間・休日等の対応は、市町村地域防災計画の修正協議等を通じ、市町村に対し要請・指導していきたい。

 東海地震の警戒宣言が発せられた場合の応急対応は、県の地域防災計画において「東海地震の警戒宣言に伴う対応措置計画」を定めている。東海地震想定震源域の見直しにより、熊野灘沿岸の関係市町に対し、地域防災計画にこれを定めるよう要請、指導を行う。

■小関教育長−災害時の危機管理や安全に対する判断能力を高めるため、「防災教育担当者講習会」「防災教育・災害時の心の健康に関する研修会」等を開催し、防災教育の一層の充実を図るとともに、教員等の指導力の向上に努めていきたい。各学校では教育活動全体を通じ、防災上必要な安全教育の推進を図り、避難訓練等を実施し、防災能力の育成を図っている。

 

【ホームレスの問題】

高田 田辺市内でホームレス状態にあり、腰痛がひどくどうしようもなくなり、生活保護を受けたいという相談があった。市や県の福祉事務所に相談したが、住所を決めるようにという指導であった。入院が認められるほどの容態であれば、入院時から職権保護ができるが、この方の場合、入院はしていたものの、薬を出される程度であった。仕方なく私の知り合いに頼み込み、アパートの部屋を借り、その住所から生活保護の申請をしている。偶然相談を受けたから手を打てたものの、仮にそういう方が一人で相談に行ったのに「まず住所を決めてください」と言われれば、せっかく福祉事務所を訪ねたのに、やはり救われなかったと悲観するのではないか。住所が定められないからホームレスをしているのだ。厚生労働省は昨年3月、全国担当課長会議で「居住地がないことのみをもって保護の要件に欠けるものではない」―ホームレス状態でも保護はできると書いている。しかしながら、現場での運用は必ずしもそうなってない。

 各福祉事務所別に、ホームレスの状況は把握されているのか。ホームレスの方が生活保護を申請した場合の対応がまちがっているのではないか。ホームレスの方が相談に行ったときなど、公営住宅の空き部屋の活用等、一時避難できる施設が必要ではないか。

■白原福祉保健部長−県内のホームレスの状況は、平成13年9月現在、和歌山市46名、海南市2名、橋本市2名、田辺市1名の計51名。居住地がないことや稼働能力があることのみをもって保護の要件に欠けるものではなく、一般世帯と同様に取り扱うこととなっている。したがって、保護が必要な場合は施設入所等の方法により保護を行うことができるので、各振興局等に対し趣旨を徹底していく。緊急避難場所としての公営住宅の活用等については、個々の実情等を勘案しながら、市町村等関係機関と連携を図り対処するよう各振興局等を指導し、自立に向け指導・援助を行うようケースワーカーを指導していく。

【市町村への総合交付金制度の創設】

高田 鳥取県の「山間地域活性化交付金」制度は、過疎地の住民が自ら集落を元気にするアイデアに対し、県と市町村が1地域あたり3年間で最大2000万円を交付する制度で、助成する側がメニューを限定しない自由さが売り物である。2001年度は13地区の採用が予定されていたが、申し込みが殺到し、補正予算を組んで対応したそうだ。この事業の適否については@住民が広範に参加した話し合いのもとに計画されているか、A計画が住民合意を得ているか、B将来にわたる継続性があるかの3点。県や市町村が各集落の計画を判定し採択するが、内容には口を挟まない。行政が住民を信頼するやり方なので、住民には自己責任がつきまとう。善し悪しは別にしても、鳥取県の担当者は「市町村を均等に支援することは考えていない」と明確に述べ、集落や市町村に創意工夫の知恵比べを迫っている。

 この交付金を得るために欠かせないのが、地域住民の参画によるワークショップの開催である。ワークショップとは、みんなで寄り集まって自由闊達に意見交換しながら計画を練り上げていくやり方で、住民自らが地域資源を掘り起こし、問題点を明らかにするために、子どもから大人まで参加する意見交換の場をもっている。このワークショップ方式は、いま各地で地域おこしの原動力になっている。 

 岩手県ではそれを「地元学」と呼び、県の総合計画で推進をはかっている。岩手県の総合計画では「住民が何気なく過ごしてきた地域には、実は貴重な資源が存在しています。『こんなものが』と思うような『当たり前のもの』が、実は地域外の人々にとっては新鮮で、価値あるものだったりする。それを見いだすことが地元学の第一歩です」と述べている。三重県では「三重ふるさと学」と言っているが、こうした取り組みを市町村職員の研修として取り入れている。

 「仏つくって魂いれず」、今まであまりにもこのような補助事業が多かったのではないか。これからは、まず行政がしっかりサポートし、魂をつくったうえで仏をつくるという方法が税金の無駄遣いをなくすためにも有効である。和歌山県にも振興局単位でそうした趣旨の補助金があるが、まだまだ不十分である。市町村への総合交付金制度の創設および住民が自らの地域を元気にするためのワークショップの開催を推進していくことを提案する。

■木村知事非常にいい提言だと思うので、NPOや地域住民が自ら地域をつくり、その取り組みに対し県が支援するというかたちを取り入れていきたい。

【観光地バリアフリー情報のPR】

 

高田 いま観光地のホスピタリティー(あたたかくもてなす心)の重要性がいわれている。どんなに設備が豪華な施設でも、顧客に対し心のこもった対応が行われなければ、満足されないという接客の基本がこの言葉の背景にあるといわれている。ホテルなら接客、部屋の掃除、食事などをひとつのまとまりとして客は評価するそうである。県内最大の観光地の一つ、地元白浜町では、この暖かくもてなす心が欠けているのではないか。特に夏場は早朝深夜を問わず、自動車があふれ、ゴミが散乱している。町内の自動車だけを減少させ、観光客を減少させないためにはどうすればいいか。

 その課題解決のために、地方新聞紙上で行った私の提案。かつて白良浜と旧空港付近を結んでいた白浜ロープウェイを復活させ、夏場の車の渋滞対策として空港跡地の一部を駐車場として無料開放し、町内の自動車を誘導する。空港跡地でロープウェイに乗り換え、旧空港から白良浜までの約4分の空中散歩。ロープウェイの採算性、また、観光客確保のための町民や合宿に訪れる大学のスポーツクラブなどからも要望が強いスポーツ公園を空港跡地に作ってはどうかとも提案している。今後、県当局にも知恵を借りたいと思っている。

 5月22日、超党派の議員立法で身体障害者補助犬法が国会で成立し、盲導犬、聴導犬、介助犬などは今後、公共施設でも民間施設でも同伴できるようになった。介助犬とは身体の不自由な方の手足となって働く犬である。今後は観光地としても、介助犬等の同伴者にもひらかれた観光地としてのPRが欠かせない。三重県の観光PRのために発行されているバリアフリーレジャーガイドには、各施設について、車椅子での利用や介助犬の同伴の可否が記載されている。「誰でも、行けそう、楽しそう」がキャッチフレーズで、障害者でもあちこち観光できる、「ホスピタリティー」あふれる観光地としてのPRを行っている。

 和歌山県でもバリアフリーを強調し、観光地のバリアフリー化ならびに体験型観光にもバリアフリーメニューを取り入れること、その積極的なPRを行うことを求める。

■石橋商工労働部長本年度から市町村が実施するバリアフリー化事業に対し補助する「観光地バリアフリー化推進事業」を行う。観光連盟が定期発行している観光情報誌などを活用し、積極的にPRし、身体障害者補助犬法の趣旨徹底を含めた事業者に対する啓発など、ハード、ソフト面にわたる施策をより一層推進していく。体験型においても、市町村や受け入れ施設に理解が得られるように努力したい。

 

【JRきのくに線の合理化問題】

高田 昨年12月議会でも大問題になったが、次の合理化計画がJRで提案されている。御坊駅から紀伊田辺駅間の普通電車をワンマン電車にしようという計画で、予定では今年10月のダイヤ改正で導入するという。基本的にワンマン電車は安全上2両編成である。現在の4両編成では、利用者に不便にならないか。ワンマン運転では、田辺―新宮間のトイレなし車両の例があるため、大変危惧している。

 この計画は労働組合から聞いたが、知事及び県とJRとの十分な協議がなされるべきである。今回の合理化計画を県としてどのように把握し、どう対応しようとしているのか。

■垣平企画部長JRによれば「JR内部の調整段階であって社としての方針決定に至っていない」ということだ。情報収集に努め、県議会や沿線自治体の協力を得ながら利用者の利便性確保を第一義として対応していきたい。

 

【要望】

★地震対策とくに津波対策について★

 子どもにはやはり教育の現場で、波のもつ破壊力というのを実感としてわかるような取り組みが必要ではないか。那賀郡の消防組合では、夏休みを利用して防災問題の試験に挑戦する「防災博士認定講座」があるそうだが、小中学生が楽しく学べるような、そんな工夫も大切である。

★ホームレス問題★

 ホームレスは全国的にも大問題になっている。行き倒れ状態で医療機関に搬送され、入院すると生活保護の医療扶助が適用されるものの、治療を受けて退院すると、とたんに保護が打ち切られ、再び野宿生活に戻るということが繰り返されている。

なぜ行政が住む場所を探さないのか。福祉事務所に相談に来れば、現場職員が一緒に住む場所を探すことは当然のことではないか。窓口で探してくれないから、特別職だが同じ公務員の私たちが本人と一緒に探した。それはたとえば、知事が「この人の世話を頼む」と相談に行けば、知事にその人のアパートを探させるのか、ということである。そういう点における現場への指導の徹底を求める。

★JRの合理化問題★

 今年10月のダイヤ改正から合理化が行われようとしているのに、まだ何の話もない。そんなことでは、県と協議する機会をもっても意味がない。現場では既に、ワンマン化に向けて車両の改造や、御坊駅で折り返しができるように、線路の切り替え作業が始まるそうだ。舞台裏で準備しておいて、県と協議するのは形式だけすませばいいということか。私はこういう姿勢のJR西日本に、この場を借りて強く抗議する。県も、周辺自治体や利用者の声を十分反映できるよう、しっかりした態度で臨むよう強く要望する。