◇高田−6月に発表された骨太の方針第2弾には構造改革特区の構想が盛り込まれました。そのうち農業に関する特区では約90の提案が自治体から寄せられたそうで、そのほとんどが企業の参入を促すものとなっているようです。農地をめぐっては、すでに昨年3月の農地法改正で、農業生産法人の枠内ですが、株式会社の農地取得を認めています。このとき日本共産党は、農業生産法人の要件緩和は、株式会社、法人大企業の農地取得、農業支配への一歩をふみだすものであること、そして日本農業の家族経営を守る柱となってきた耕作者主義、つまり実際に耕作に従事する者が農地についての権利を有するという原則を破るものであり、家族経営を基本とした農政のあり方を変えてしまうものだとして反対しました。しかし、結果として法案は成立しました。その影響がまだこれからどのようにでるかもわからない今、また再び、農業特区によって、なし崩し的に農地規制が緩和されようとするのは、あまりにも性急すぎます。この構造改革特区のねらいは、最初、地域的な規制改革をやって、実績があがれば全国的な規制改革へつなげるというもので、いつまでも地域限定版でやろうという意図ではありません。農地が乱開発、投機の対象になりはしないか、全国農業会議所や全国農協中央会も懸念を表明しています。
農業県和歌山が、その基礎を崩す先頭にたってよいとは思えません。今回、知事があえて既存の法律の枠内ではなく、「特区」にこだわるのは農業生産法人でもなんでもない株式会社に農地を取得させようとするネライが最初からあるからではないですか。 コスモパークの土地についてなぜ特区に設定する必要があるのか。その意図するところはなんなのか。知事の今回の特区構想への考えをうかがいます。
つぎに県内農業への影響についてうかがいます。今回のカゴメの計画では生食用のトマトを生産するそうですが、和歌山県のトマト出荷量は年間約8000トンにすぎません。そこに1か所で6000トンもの生産が可能と言われる団地をつくって大丈夫でしょうか。県内農業に及ぼす影響をどう考えるのか。答弁をお願いします。
○木村良樹知事―地元での雇用確保に有効であり、県が「トマト主要産地」となれば県内生産者との連携による相乗効果が期待でき、地域振興にもなる。
◎再質問
◇高田―県内の農家もいっしょに、発展していこうという考えですか。8000トンしかない県内の生産に6000トンつくって、さあみなさんいっしょにいい値段で売りましょうと。それはできない話です。だいたいそういうつもりなら、なぜ、特区の研究会に農業団体をいれてないのでしょうか。じゃ、今後、農業団体や地元のトマト生産者とカゴメは対話していくんでしょうか。
知事はカゴメの構想というのはご存じだと思うんです。以前から、全国を対象にして大型温室産地ネットワーク構想というのを打ち出しています。第一段が茨城県でやられているらしく、一ヘクタール3億5千万円の温室を2棟たててカゴメが建設して法人にリースするというやり方です。こういう農場を全国に10か所、50法人つくれば年間4万トンの生産が可能といわれています。「トマトといえば和歌山」、そんなことはカゴメは考えてないですよ。温室団地を全国展
開してしいていえば「トマトといえばカゴメ」という体制をつくろうとしている。各地の温室を中央本部が管理してアグリフランチャイズチェーン構想と言うらしいですが、コンビニみたいなものです。だからカゴメには昨年の農地法改正や、今回の特区構想はたいへんうま味のある話なのです。
私この質問をするにあたって聞きました。なぜ、コスモパークにわざわざやるのかと、そうすると、担当課は「泉南にも遊休地がいっぱいあってそこでやられても同じですよ」という答えです。そうなんです。大企業の力をもって、農業経営に参入すれば、コスモでやろうが、泉南でやろうが家族経営のトマト農家は大打撃をうけることは同じです。だから私は、この和歌山県が、大企業の農業参入の露払いをさせられる、そういう特区構想は認められないことを表明して、質問を終わります。
○木村良樹知事―コスモパーク加太は雑種地で、農地ではない。生産者には情報公開しながら対応する。
◇高田−8月からこのネットワークが稼働しはじめたわけですが、全国あちこちの自治体で、住民の情報が漏れないのか、もれた場合どうするのかなど、さまざまな疑問がだされ、中にはつい先日の東京都中野区のようにネットワークとの切断をした自治体もでてきました。 何よりも問題なのは、住民基本台帳法の制定時に、当時の小渕首相も、ネットワークシステム実施の前提として約束していた個人情報保護の法制度が未だに整備されていないことです。国への早期整備を要望されるとともに、この未整備のまま、住民基本台帳ネットワークが始められた状況について、知事としてどう考えているのか答弁をお願いします。
この問題では、今後、県内の市町村のなかでもネットワークの切断や情報更新のストップをするところもでてくる可能性があります。こうした市町村の意見、態度は、政府が約束をまもっていないこと、個人情報の保護という観点から市町村の意見を尊重しなければならないと考えますが、いかがでしょうか。
また個人情報の保護法案がきちんとできればそれでいいかというとそれではすまない問題があります。どんなコンピューターのシステムでも絶対に情報が漏れないというのは、理論的にありえないといいます。また、全員に11桁の背番号をふるという国民合意があるかというと、いまの状況をみればないと言っていいでしょう。 日本共産党は、この住民基本台帳法に対し国会審議のなかで明確に反対してきました。しかし、法律ができたからといって、国民の十分な納得のないまま、運用されることはさけるべきです。ひきつづき、いまからでも見直し、中止を求めていきたいと思います。
○木村良樹知事―個人情報保護法案は国会での審議に期待する。コストや利便性の理解があって、各市町村が参加、運営していると考えている。
◇高田−文部科学省が各都道府県教育委員会に7月31日付けで出した通知「公立学校の耐震化について」では、耐震診断をおこなっていない校舎について平成17年度末までに全て耐震診断を行うよう求めています。これまでも耐震診断の必要性はいわれてきたが、和歌山県の実施率は3、3%で全国ワースト5位です。なぜ、和歌山県は遅れてきたのか。その理由はなんでしょうか、この際、明らかにしてください。 また耐震診断の実施計画の提出期限は8月末でしたが、県内ではどのような計画になっているのか。お示しください。 さらに、実際の耐震補強工事についての国の財政措置はどのようなものでしょうか。不
十分なら強化するべきではないでしょうか。答弁をお願いします。
○小関洋治教育長―8月末、来年度からの3年間でほぼ全部の校舎の耐震診断を実施する計画を策定。市町村への指導をおこない、国に予算措置を求めていきたい。
◇高田−オゾンとは聞きなれないと思うので弱冠、説明しますと、酸素原子が3個集まってできた不安定な物質で、強力な酸化作用があり、これにより殺菌、脱臭、殺虫、漂白などの用途に使われています。一般の薬品などと比べると比較的安全な物質で、使用してもすぐに分解、消滅するため食品などの殺菌にも好まれて使われているようです。 先日、私のところにある食品工場で働く方から相談がありました。食品の消毒に使っているオゾン水というオゾンを溶かしこんでつくっている殺菌用の水で、のどが痛んで仕方がないが、どうにかならないものかということでした。その後、いろいろ調べましたが、このオゾンの使用については労働安全衛生法でも明確な規制がなく、あるのは「日本産業衛生学会」というところが定めた0、1ppmという指針があるにすぎません。
一方、大気汚染という点からのこのオゾンの規制をみますと、環境基準が0、06ppm以下です。そして0、1ppmを越えますと、光化学オキシダントの予報がだされ、0、12ppmでは注意報、0、3ppmでは警報がでることになっています。ですから一般に事業所内で使われる基準と環境基準には大きな隔たりがあるわけです。
先日、私はこのオゾン水をつかっている模範的な食品工場を見てきましたが、そこでは食品の消毒とともに、夜間、無人になったとき高濃度のオゾンで作業場内を殺菌しているとのことでした。そして、作業場にはオゾン濃度が基準の0、1ppmを越えたときに点滅する警告灯が設置され、また、携帯用の測定器も備えられていました。工場長の話によると、夜間の消毒をおこなったあと、朝仕事にかかるときオゾンが抜けきってないと警告灯が点滅しているので作業にかかる前に十分換気をするとかの対応をしているそうです。また、別の工場では、職員が濃度の設定をまちがえて、かなり濃い濃度になり、ホースなどのゴム類がぼろぼろになったこともあったそうです。
そこで商工労働部長にうかがいます。県内の事業所でのオゾンの使用状況は把握されていますか。もちろんおもには国の労働基準監督署の仕事だと思いますが、県としても、任意のアンケート調査をするなど実態の把握につとめる必要があるのではないですか。
また、さきほど述べたように、法的な基準がありませんから、実態調査のうえ必要なら国に対し、法的規制を求めてはいかがですか。さらに、そうした法的規制ができていない現時点でも、行政指導で警告灯の設置や測定器の配備、安全教育などすすめる必要があるのではないでしょうか。答弁をお願いします。
○石橋秀彦商工労働部長―事業所内の測定器や警告灯の設置等は労働局に申し入れをおこなう。
●市町村合併について
◇高田−この6月に政府はいわゆる「骨太の方針第二弾」を発表しました。そのなかでは、市町村合併にさらに積極的に取り組むことと同時に、小規模市町村には、仕事と責任を小さくし都道府県がそれを肩代わりするなど、これまでの地方行政の根幹を揺るがすような内容が盛り込まれています。そうしたなか総務省の私的研究会である「地方自治制度の将来像についての研究会」は小規模市町村についての考え方の素案をまとめました。それによると合併しない人口1万人未満の市町村から憲法上の地方公共団体としての法人格を取り上げ区に格下げすること、行財政の権限を制約すること、さらに人口3000人未満の市町村は自動合併すること、など地方分権とは縁もゆかりもない強制的合併をちらつかせたひどい内容になっています。この素案が事実上、政府の地方制度調査会のたたき台の役割を果たしており、今後この案に基づいて法案化される可能性が高いといわれています。
こうした方針に全国町村長会の山本会長は、「小なりとはいえ、町村は住民サービスに責任がある。そこを認識していない論議だ。」と反発しました。また、全国町村議長会の会長も「極めて小さい町村との理由で都道府県の直轄にするのは論外だ。」とこれもきびしく批判しています。こうした国の方向がすんなりと受け入れられないのは当然です。しかしこうした、議論をちらつかせることによって、小規模市町村に独立独歩の道の選択を諦めさせる心理的効果は十分にあるといえるでしょう。
全国には小さいけれど、いや小さいからこそ住民と一体となって活気ある地域づくりに成功している市町村がいくつもあります。そうした市町村は行政能力でも独自の景観条例をつくったり、職員の知恵と工夫がいかされる行政をしています。にもかかわらず、人口が少ないからだめなんだ、能力がないんだ、などというのは、実際の地方行政を知らない中央官僚の傲慢な発言といわざるをえません。知事、あなたは「強制的」市町村再編とも言うべきこの流れをどう感じておられますか。率直な感想を聞かせてください。
つぎに市町村合併問題でとくに財政面からいくつか総務部長にうかがいます。
最初に地方交付税の算定替え特例の問題です。 総務省は「合併後10年間は合併しなかった場合の普通地方交付税を全額保障、その後5年間で激変緩和措置」がとられると説明しています。しかし、現実には地方交付税の額は、毎年度ごとに、基準財政需要額を算定するための単位費用、測定単位、補正係数などが総務省によって変更されており、これは合併後も当然、変更がされていくものです。ですから、合併した場合の交付税算定替えの特例も、地方交付税の算定を合併前の単位で行うだけのものであり、合併以前に交付されていた金額を10年間保障するものではありません。わかりにくいと思うので資料で説明します。
たとえば田辺広域7市町村が特例法の期限までに合併して新しい市が作られたとしましょう。ここでお配りした資料の@番の表を見ていただきたいのですが、上の段では、総務省の言い分どおり、合併しても合併後の交付税が10年間保障され、その後、5年をかけて本来の交付税額に減らされていくことになっています。しかし、問題はその後も、いまやられているような小規模自治体への段階補正の見直しこれはつまり標準的な自治体の人口を10万人として、それより人口が少ない自治体の交付税については割り増しして配分されるようになっているわけですが、この段階補正やその他の補正が縮小されれば、合併後の特例期間の10年以内でも新市の交付税額は削減されてしまいます。それをあらわしているのが表の下の段です。(表をつかって説明)
これは先程も言ったように、合併した場合の交付税というのは、もとの市町村がそのまま存在すると仮定して計算して、その合計額を10年間は保障するという仕組みだからであります。したがってもとのそれぞれの市町村にくる交付税が少なくなるような見直しがあれば、当然、合併後の新しい市にくる交付税も減ることになるのです。
しかし、このことをきちんと理解できている首長や職員は少ないのではないか。先日、ある町の合併に詳しい職員にこのことをたずねましたが、「そんな計算になるとは知らなかった」といっていました。合併に詳しい職員でも勘違いしてるんですよ。私の試算がまちがいなければ、これは合併前の交付税が全額保障されるなんてことはとても言えないんじゃないですか。総務部長にうかがいます。この私の試算はあっていますか、それともまちがっていますか。答弁をお願いします。
つぎに合併20年後の財政の姿がどうなるかおたずねします。 合併した場合の財政問題でもっとも重要なのは、合併後15年たって、さきほどの交付
税算定の特例がなくなった時点での、極端な地方交付税の落ち込みにどう対応するかだと思います。ここに新潟県のある合併協議会の長期財政シュミレーションがあります。4つの町村が平成17年度に合併。合併により職員を約2割へらし投資的経費については、赤字にならない範囲で実施というかなりきびしいものです。
ここで資料のAを見ていただきたいのですが、これは合併した場合としない場合で、普通建設事業が将来、どうなるかを試算したものです。普通建設事業とは道路をつくったり、学校をたてたり、投資的な事業のことですが、この試算によると、合併した場合は合併特例債の活用などで、合併後10年までは従来の倍以上の事業ができるが、15年たつと、さきほど言ったように交付税が大幅に減らされ、つまり事業のもとでになる一般財源が不足するものですから、普通建設事業も合併前の2分の一以下に落ち込まざるをえないという状況をあらわしたものです。
そして、この財政シュミレーションは次のように結論づけています。「この結果は、単なる人件費の削減と財政支援措置によるハコモノ建設だけでは、合併は所期の効果を十分にあげえないということを示しています。合併を成功に導いていくためには投資効果を考えた特例債の活用を図るとともに、さらには事務事業経費の軽減に取り組んでいくことが重要となります」と述べています。つまり特例債も野放図につかっちゃだめですよ、また、行政サービスをもっと減らしなさい、ということだと思います。
一方、合併しない場合のシュミレーションは、地方交付税が約20%減額されるという相当きびしい条件で試算していますが、それでも20年後には4町村あわせて約2億円の赤字がでるだけです。合併した場合とくらべて、ずいぶん有利だと私は思います。
田辺広域合併協議会でも試算がだされています。資料のBのグラフです。こちらは一般職員の削減による効果が入っていない試算ですが、歳入から歳出を引いた差引額、点線の方ですが、これでみると合併後12年で赤字になり、以後、それが拡大していき15年後では約43億円にまで赤字がふくれる結果になっています。そういうもとで普通建設事業がどうなるかというと、これは実線のグラフですが、合併15年後の数字では、年間34億円の事業費しか確保できない。じつは田辺広域7市町村では平成12年度で177億円の事業がなされています。それと比べると約5分の一に激減しています。5分の一に事業費を減らしても単年度の収支はさっきみたように赤字になってしまう。ということは、合併15年後に、事業量を現状維持か、すこし削減する程度を維持しようと思っても、かなりの借金をしなければならないのです。合併特例債によるバブルのあとは、極端な緊縮財政、借金財政となり財政破綻が懸念されます。
そこで総務部長にうかがいます。地方自治体にとって合併特例債のような巨額の地方債を短期間に使うというのは、後年度の財政を硬直化させ、必要な事業もできないような財政状況になるのではという私の危惧は当たっているでしょうか。
また、今後、それぞれの合併協議会で財政のシュミレーションをする場合、私は少なくとも合併特例債の返済がほぼ終了する20年後まで行うことが必要ではないかと思いますがいかがですか。答弁をお願いします。
合併問題の最後に述べたいことがあります。
最近、大塔村の富里地区で産業廃棄物の処分場建設計画が持ち上がっています。それに対し、村長は、・・・・・と、県からの意見紹介に対し、明確に反対の態度を表明しました。いま、産廃の処分場をめぐっては各地で行政と業者が裁判をするなかで行政側が敗訴という事例もでているもとで、この明確な意見表明は、たいへん勇気のある態度だと思います。しかし、こうした地域に根ざした判断が、田辺広域のような広大な行政になったときにできるかというと、私は実際できないと思います。
私はこれまで合併問題をいくどとなく取り上げるなかで、自分なりに研究もし、合併先進地といわれる兵庫県篠山市や香川県のさぬき市も見てきました。また、小さくても元気な自治体の例として、高知県の馬路村、長野県の栄村、小布施町なども調査しました。そして今、はっきり言えるのは、住民自治という点からみて、また、将来的な財政破綻の心配から、いま論議されている田辺広域合併については、住民の利益には絶対にならないということです。この合併計画には明確に反対することを表明して私の質問を終わります。
○木村良樹知事―合併後の都道府県や市町村のあり方について議論が深められるのは結構な事である。
○宮地毅総務部長―もし算定方式が削減に改正されれば、合併したかどうかにかかわらず削減される。合併特例債を有効活用する。