鶴田至弘県議の質問全文

 (2002年12月9日)※答弁は届き次第記載します


1、今議会冒頭の知事説明要旨において「地方の税財政制度が大きな変革期を迎えようとしている」としてそれに耐えうる予算の編成を考えていくことを表明しています。ところで最近の地方税財政制度に関する国の動向は必ずしも地方自治の強化とか地方分権を促す方向には進んでいないと思われます。地方交付税制度ひとつとってみても削減の方向がしきりに提起され、全国の均衡ある発展を支える交付税の役割を軽視し、その根幹を揺るがすような動きさえ見せています。補助金制度でも教育関係予算の教職員費の一般財源化などに見られるように地方にとっては由々しき問題も出てきています。総じて地方分権の名のもとに国としての最低限の義務でさえも地方に肩代わりさせ、財源措置が充分講じられないままに地方負担を強化する傾向が強まっています。道州制が提唱されたり、市町村合併も市町村の自主性をうたいながら結局半ば強制の形で進められています。このような傾向の中にあって、唯々諾々と国のなし崩し的な地方税財政改革に呼応していくことは本来の地方自治・地方分権の道にもとることになると危惧するところです。知事の所見を伺います。

 

2、来年度の予算編成にあたってのいくつかの課題を要望しながら知事の考え方をお聞きしたいと思います。予算編成にあたっては県の将来を見据えながら、同時に焦眉の問題の解決と言う両面を考慮されなければならないと思いますが、これだけの厳しい経済情勢にあっては県民生活の安定こそ最も重視しなければならないことではないかと考えるところです。そういう視点からいくつか質問をいたします。

@   まず県経済の活性化の視点からも、県民生活の安定を図る視点からも中小零細企業に仕事を多く作り出せるような予算編成を望みたいと思います。公共事業で仕事を作り出すと言うことは地方自治体で出来る経済対策として数少ない仕事の一つです。生活に関連した道路、河川改修、身近な防災、バリアフリ−対策、震災対策等々、必要にして欠くべからざる身近な事業で且つ緊急性の高い事業をおこしてゆくこと、公共事業は先ずその視点を重視していただきたい。それは同時に県民生活に利便性と安全を生み出すものでもあります。将来を展望する事業も必要ですが経済情勢が厳しいだけにこのような対策が強められなければならないと思います。

A   次に福祉施策を一掃強化して頂きたいことです。本年度は高齢者の福祉医療制度が大きく後退させられました。医療保険制度が改悪され高齢者の医療負担が大きくなってきている時この後退は高齢者を悲しませました。高齢者が集まると必ずこの話が出てまいります。ついてはこの制度の所得制限を緩和することを考えられてはいかがでしょうか。同時に、その他の福祉医療制度については住民負担が強化されることのないように努力願いたいと思います。児童扶養手当の制度も改悪されようとしており母子家庭に大きな不安を与えています。そのような事態が到来しないよう努力されるとともにそれをフォローする施策なども考えておいて頂きたいと思います。

高齢者福祉については現在1399人の特別養護老人ホーム待機者がいます。本人にとっても、介護する家族にとっても極めて深刻な問題です。介護のため家族が就労できずに家計に大きな問題を生じている家族もあります。この方々の一日も早い入所を可能にするため、ホームの建設を計画の前倒しで進めて頂きたいと思います。この事業はまた新しい雇用を創出することはすでに幾度も議論されてきたところです。村岡議員の本年2月の試算によりますと50人定員のホームで対応する時は25ヶ所、100人定員で対処する時は13ヶ所以上のホームが建設されなければなりません。そこで働く人員は500人から600人と見込まれます。それだけの雇用が創出されるわけです。来年度に一挙にとは言いませんが大きく前倒しすることによって福祉の拡大と雇用を前進させる工夫を望みます。さらに介護ヘルパーについて言えば平成16年度末の数値目標2453人に対し600人以上が不足している。こういう福祉関係従業者を増やすことによって福祉サービスを受けるほうも仕事を求めるほうも潤うことになります。その他老健施設等、こういう考えのもとに福祉施設の拡充を大きく前進させていくことを考えていただきたいと思いますが如何でしょうか。

B   30人学級,少人数学級の施策を推進できる予算を考えていただきたいと思います。この問題については幾度かこの場でも申し上げました。すでに22を超える県がそこに踏み出しています。

子供たちの現在と未来のために、財政のこともありますから、一気にとは言いませんが来年度が着実にその一歩を踏み出した年度だと言えるような予算にしていただきたいと切に願うところです。少人数授業など工夫されることは結構なことです。しかし少人数学級が基礎ですからそこを大胆に踏み切っていただきたいと思うところです。如何でしょうか。

C   一方、厳しい財源の問題があります。当局の皆さんもさまざまなご苦労をされていろことと察します。それぞれの事業の中に例え小さくとも無駄があれば省いていく努力は当然でしょうが、同時に費用対効果に大きな疑問が出されている大規模事業や、現在は小さな支出でも、将来には過大な負担が迫られる可能性のあるものや、あえて和歌山県が負担する道理がないもの等を含めて見直す必要があろうかと思います。たとえば関空二期事業はきわめて複雑な議論が繰り返されていますが、つまるところ将来にわたって採算の目途が立たないというところからきています。現在の空港で間に合っているという現実や、巨大な滑走路の費用対効果を率直に見直して中止を求めるべきではないでしょうか。紀淡海峡道路は随分トーンが落ちてきました。今年度組まれた予算は会議費に類する程度の金額であったように思いますが、この種の将来性のないものには金額がわずかであっても予算計上は考え直すべきです。和歌山下津港の北港沖南防波堤は関電埋立地保護を主要な目的とするものです。和歌山県がその4分の1、約75億円負担しなければならないものではないと思います。県が埠頭を建設するということが根拠になっていますが、あえてそこに埠頭が必要だとは思われません。このようなところにも見直すところがあると思いますが如何ですか。

◆木村良樹知事
 国には積極的に提言し、地方公共団体の側でも自主的な実践を伴っためり張りのある対応をしていきたい。公共事業は投資した額以上の効果を県民にもたらすように選択していきたい。県で使うお金はできるだけ県内事業者の収入になり、県経済の活性化につながるよう、透明性も考慮して対応したい。福祉事業は多くの雇用を生み出すという視点も加味しながら、福祉施設整備充実を図るとともに、従事者の資質向上や人材育成を図っていきたい。教育問題については地域にあった形の対応をしていく必要がある。少人数学級については多面的に検討していきたい。関空二期工事は積極的に早期に進めるべきだ。北港沖の南防波堤の整備の行き方等は真剣に考えたい。紀淡海峡は非常に厳しい。県は給付と負担の公平を図り、安心できる保険制度の一日も早い実現を国に要望していく。

=要望=
 めり張りのある予算編成を行うという立場で、具体的に県民の仕事づくりに効果を発揮し、さらに福祉とも結びついてよりよい成果が上がるようにしてほしい。金がないということですますのではなく、小さくても少人数学級への一歩を来年度には踏み出せるようにしてほしい。 

3、不況対策についてお尋ねいたします。

@深刻な不況は県民生活に暗いかげを投げかけています。3万5千人以上の人が職を失っていると言われていますが実態はもっと大きなものだと推定されます。昨年は150件が倒産し今年10月でもすでに105件が倒産しました。撤退する大型小売店も続出し、県下事業所の趨勢は平成8年から平成13年の間に事業所数の減少は4231件にのぼり、それに伴う就業者数の減少は2万5488人と実に愁うべき状態になっています。

県下の深刻な経済状況を当局はどのように捉えどう対処しようとしていますか。庁内組織として不況対策会議などが組織され対応しようということが、昨年来言われてきたことですがその存在感もあまりみえてきません。どのような活動をされどのような対策をされようとしていますか。お示しいただきたいと思います。

A次に金融対策についてお尋ねをいたします。中小企業が塗炭の苦しみにあえいでいます。不良債権早期処理を迫られる銀行が中小零細企業を相手に貸し渋りだけでなく貸しはがしというような、異常な行為に走り不況の苦しみを拡大しています。小泉政権の不良債権早期処理という施策の当然の帰結でしょうが、それでよしとできないのが末端の中小零細業者です。当局にあっては数年来横行した貸し渋りに対しては直接銀行に対してもいろいろと要望活動をおこなってきたところでしたが、このような金融業界の行為に対しても中小企業の存立を守るという立場から十分に自重することを求めるべきだと思いますがいかがでしょうか。

B次に制度融資の拡大等についてお尋ねをいたします。もう金を借りる馬力もないという状況の企業も決して少なくはありませんが制度融資はなんと言っても中小企業にとっては命の綱です。制度融資の利用状況を見てもそれがよく分かります。今年導入された緊急経済対策資金制度が長期分だけでも10月末で一挙に2250件を超えていることは待ちに待っていたという思いだったのだと推測されます。適切な制度融資を設けられたこと、大いに評価したいと思います。

しかし返済に苦慮する業者もまたおられます。そういう方のために現在の何件かの借入金を一本にまとめ、返済期間を長期化できる借り換えのための制度を作れないものでしょうか。現在利用している制度が県や市にまたがりいろいろ工夫しなければならない条件もあるでしょうが京都府は京都市と提携してそのような制度を作って、府民に喜ばれているということです。和歌山県も考えてみてはいかがでしょうか。また制度の運用には、それこそ貸し渋りなどのないように柔軟に対応していただきたいと望むところですが、緊急性を要する連鎖倒産防止資金などに担保や保証人を一律に求めるなどして制度を設けた本来の趣旨が活かされないとか、希望がかなえられないということのないようして頂きたいと思いますがいかがでしょうか。

B次に緊急雇用創出についてお尋ねをいたします。ハローワークに行ってもなかなか適職が見つからない、それでも何とか働かなければという時、とりあえず緊急雇用創出事業で本来の就労までつなぐと言うことで、その制度で就労できた人はひとまず喜んでいます。しかしそれは長くてたった6ヶ月でしかありません。仕事の内容では2,3ヶ月と言うものも普通です。これではあまりにも短かすぎます。県下の失業者は35000人をはるかに越えます。緊急雇用創出事業はそういう短期就労する人が3年間で4000人ということです。一年では1000人余りと言う、ないよりはうんといいけれど就労を求める人数との関係では差があり過ぎます。国へその枠の拡大と期間の延長を求めるとともに、県独自でもその努力が出来ないものでしょうか。昨年も同じことを求めて叶えられなかったところですが、今回も求めたいと思いますいかがでしょうか。

C住友金属が去る11月新日鉄・神戸製鋼と資本提携を基本とする「中期経営計画」を発表しました。今回の計画では直ちに労働者の削減はうたわれていませんが、自然減で150人の雇用の場が減少するとされています。また関連企業で100余名の余剰人員が出るとされていますがそれは関連事業者の自助努力で解決すべしとしているようです。また関連中小企業などには製造・輸送業務などでさまざまな否定的な影響が出ることが予想されます。商工会議所なども「住金関連企業の経営安定と雇用確保について最善の対策を講じて欲しいと申し入れた」との報道もありましたが、県としても知事が善処方を要望したとも聞いています。しかし過去住金合理化の前には県の要望も充分にはかなえられないまま、住金の企業目標が着々と進められ、最近でも3000名の労働者が出向、離籍となり、運輸関係業者には過酷な運賃切り下げが行われたところでした。ついては今回、企業に対して県が何を要望したか、住友金属はどう応えたのかを明らかにしていただきたい。そして、その要望がどのように応えられるのかしっかりと確認してゆくことが必要だと思いますがそのような意思はありますかお伺いいたします。

D次に不況対策と言うよりも一般的恒常的施策ということになりますが郷土産品の販路拡大についてお尋ねをいたします。

 この課題については常々努力されているところだとは思いますが海外へのアプローチをもっと積極化してはいかがでしょう。こんな話があります。海南市の漆器関係の業者にイタリアから話が来たそうですが、来年4月イタリアで家具の展示会がある。総費用1000万円のうち日本から出展するのであればイタリアの地元自治体で700万だしましょう、という話があった。そこで残り300万、主に運送費や派遣する人の人件費にあたるそうですが県にそんな補助制度がないかと聞いたところ外国での展示にはどうも消極的で今年は予算がないという話だったそうです。そんな話を聞きながら、県産品の販路拡大には、中国への接近はしばしば聞くところですがそこにとどまらず、ヨーロッパを含め大きく視野を広げた構えと対策が必要ではないかと思ったしだいです。地場産業発展のためにもぜひ一考頂きたいと思いますがいかがお考えでしょうか。

D   さて不況対策といえば多岐にわたり自治体にはおのずから限界があります。国に対してその責任をしっかり果たすよう求めなければなりません。先ほどからいろいろ申し上げていますが、そのほか緊急の課題として一つは社会保障での3兆円の国民負担が介護保険、雇用保険、年金保険、医療保険制度の改正の中で進められています。年金切り下げは前代未聞のことでありますが、県下にはこれは庶民生活にとって大変なことです。これら一連の負担増を中止することを求めていただきたい。また大企業の退職強要やサービス残業などがまかり通っているところがあります。失業とただ働きが労働者の生活を圧迫しています。和歌山県下でも昨年来の住友の大合理化やNTTの合理化はすさまじいものでした。このような労働者の権利無視を法的にも許さないような措置を国に対して求めていただきたい。そして不幸にして失業された方々の雇用保険期間の受給期間を延長することを求めていただきと思います。失業して新しい職場を確保することがどんなに困難かご承知のとおりです。せめて給付期間を1年にしてほしい、多くの方々の切実な求めです。国民の貧困化が不況を進化させ悪循環を呼びます。県民の生活を守るという課題とともにデフレスパイラルから脱出するためにもぜひとも必要な措置だと思います。国に対して要望していただきたいと思います。

◆木村良樹知事
 労働条件の基準を定めた労働基準法を初めとする関係法規を遵守することは当然だ。国の議論を注視し、雇用を確保し生活の安定を図るため積極的に努めていきたい。
◆石橋秀彦商工労働部長
 土木部、農林水産部が合同で県産品活用部会を設置し、公共事業での県産品の積極的活用も始めている。景気・雇用対策本部ではさらなる全庁的な取り組みを進めたい。今年10月には金融機関及び県信用保証協会に対し、個別企業の実状に応じた配慮を要請した。借りかえ融資制度は今後研究していきたい。緊急雇用創出事業の期間延長等を国に要望している。住金中期経営計画への対応は、本年11月には地域経済に与える影響を極力軽減するよう、また和歌山への関連企業の進出など県経済の活性化につながる努力を強く要請し、12月には特定企業対策連絡会議を開催し、同計画についての詳細な内容を聴取し、雇用対策、下請対策などについて意見交換を行った。販路拡大については上海での活動拠点設置への取り組みとともに、海外市場への進出に前向きな民間団体との連携を強化していきたい。ヨーロッパなど他地域についても調査研究に取り組みたい。 

4、外形標準課税と消費税改正について
  まず外形標準課税ですが、これについては昨年もお尋ねしたところですがいよいよ本格化してきましたし、商工会議所にもあちこちの商工団体にも外形標準課税反対の旗が立ってきていますので今一度知事の見解を聞きたいと思います。この税については地方財源を安定させるものとし、全国知事会や和歌山県の国に対する予算要望の中にも掲げられてきたところです。地方自治確立協議会という県も参加している団体がきれいなパンフレットを作ってこの税の導入を呼びかけています。それを読むと全体として増税にはならない、努力したところは報われるとか、小規模企業やベンチャーにとっても負担にはならないとか、所得にかかわる負担は大幅に軽減されるとか、その他嬉しいことがいっぱい書いてあります。それなのになぜ全国の多くの中小企業団体が反対ののろしを上げているのか、なぜ彼らを説得できないのか、答えは簡単です。中小零細企業が確実に負担を強いられるからです。和歌山県の中小企業でこの税の創設を喜ぶところがどれだけあるか。あるかもしれません。しかしそれは指折り数えられるほどでしょう。中小零細企業の8割以上が赤字経営です。そこにも遠慮なく課税されるのがこの税です。資本金1000万以下の企業では簡易外形税額を選択すれば4万8000円で済むからいいではないか、とかいう考えは今の不況の現実を知らない方の言うことではないかと思います。しかし一方大手企業はこの税の導入によって法人税の莫大な減税を得ることが出来ます。たとえばトヨタ自動車では320億円、武田薬品では110億円、アコムで70億円、等々と試算されています。零細企業への厳しい課税は、一方では甘い減税にもなっているのです。先ほど紹介した知事会などによって作成されたパンフレットには「外形標準課税については今後各方面の意見を聞きながら検討を深め、具体案を得た上で景気の動向も勘案しつつその導入を図る」という閣議決定が傍線入りで紹介されています。この決定の前提は平成14年以降の2.5%の経済成長を見込んでおりますが、果たしてそれが果たされるものか、ほとんど見通しがありません。それ以前に「各界の意見を聞き」という条件が満たされていません。商工会議所などが絶対反対を唱えていることが何よりの証です。

 消費税についていえば免税店を3000万円から1000万円に引き下げると言う方向で議論が進められています。全国で新たに150万人の零細業者が課税事業者になります。全国商工団体連合会の調査によると中小業者の66.7%の事業者が消費税を消費者から徴収できていないという現実があります。日本商工会議所会頭も「売上げ3000万円の業者の所得は300万円程度。消費税は転化できない」と述べています。とりわけ小零細企業は大手大量販売店との競争や下請け単価切り下げの中で、生死をかけた日々を送っています。そこにこのような税がかかることがどういう事態を招くか。さらに簡易課税制度を無くすことによって中小業者に膨大な事務負担が新たに追加されるということにもなります。一方トヨタ1社や日産などの大企業には輸出戻し税で輸出売上の5%が還付されます。昨年度の数字で、年間約2兆円。輸出上位10社の還付税額は約6000億円、トヨタ1社で1551億円が還付されているという実態もあります。あまりにも大きな矛盾ではありませんか。私たちの目の前の、県下の事業所が年間平均800件を前後して姿を消している時、このような税の導入や改正が県経済がまた新たな困難に見舞われることになりかねません。外形標準課税の導入が知事会等の要望から出ているということや、和歌山県経済が圧倒的に小零細企業から成り立っていることを考える時、このような税制の変更は知事において再検討を求めるべきではないかと思いますがいかがでしょうか。

零細業者です。当局にあっては数年来横行した貸し渋りに対しては直接銀行に対してもいろいろと要望活動をおこなったところでしたがこのような金融業会の行為に対しても中小企業の存立を守ると言う立場から自重することを求めるべきだと思いますがいかがでしょうか。

◆木村良樹知事
 外形標準課税は本来、景気のいいときにやっておくべき問題だが、制度制定からあらゆる緩和措置を講じた上での実施の検討であり、制度導入により地方財政に関して安定的な税収の確保となるのは間違いないので、税調で前向きな議論が出てくるように期待している。消費税は状況を見極めながら注視し、対応していきたい。

=再質問=
 廃業に追い込まれる中小零細企業へのさらなる増税と、大企業への減税というアンバランスを前提に含んだ課税は、明らかに間違っており、そういう制度はつくるべきではないと県は国に要望すべきだ。

◆木村良樹知事
 非常に厳しい問題ではあるが、党税調では議論の最終段階を迎えているので、状況を注視していきたい。 

5、国立大学の独立行政法人化と県立医科大学について

@国立大学が独立行政法人にしていこう、ということで盛んに議論されているところですが、その意図するところは大学を民間経営の手法で運営する「国立大学法人」にするということです。法人化はこれまでの大学制度を解体し大学の独立性、自主性を根底からなくすことになります。国立大学の教育研究の目標は各大学が自ら決めるものですが、大学法人では、文科相が各大学の中期目標を策定しこれを大学が達成できなければ予算が削られることになります。教授会を基礎にした大学運営はトップダウンの仕組みに変わることになります。教職員を非公務員化するとともに、大学の執行部に企業からの学外者が参加して大学の意思決定を握り競争原理や効率的運営を追及することになりかねません。それは「効率」を追求する側面のメリットがあることにはなりますが、本来の大学の任務が果たせなくなる危険性が内蔵されています。大学関係者からは当然のこと、さまざまな異論が出されているところでもあります。たくさんの意見がありますが、2,3紹介します。藤原正彦お茶の水女子大学教授は「これはかなりの危険をはらんでいる。ノーベル物理学賞の小柴氏が成功させた巨大実験を、はたして法人に出来るだろうか」と危惧を示し、池内了名古屋大学教授は「産業界と結びつかない基礎的な分野、文化にのみ寄与するような産業に、『役に立たない』と評価される分野は立ち枯れて行くのではないか。ノーベル賞は夢のまた夢となりかねない」という批判的見解を述べています。片山善博鳥取県知事は今年の6月議会で鳥取県西部地震の時に、鳥取大学が地道な研究の成果を生かして余震の正確な予測を行い、的確なアドバイスをもらったことを例にあげ、政府の大学改革によって「本当に必要な研究、地道で息の長い研究、効率性や採算性の尺度から合わない研究がなくなってしまう」と批判的見解を述べています。医科大学長にあっては政府の進める大学の法人化をどのように評価していますか。

A「和歌山県立医科大学のあり方懇談会」という組織が県立医大のあり方についていろいろと議論を始めているところですが、ただあるべき姿を検討するということではなく、国立大学の法人化を視野に入れ、医大のあり方を考えるというところから出発させています。懇談会でも法人化の意見が出てきているようですが医科大学長の意見をいくつかお聞きしておきたいと思います。

 医科大学が制度疲労を起こしている、と第二回の会合は総括しているようですが、解決しなければならない問題があるということと制度疲労を起こしているということとはイコールではありません。大学長として何をもって現在の医大が制度疲労を起こしていると考えておられますか。それは現制度の中で解決できない問題なのでしょうか。医療機関という機能を持った大学が効率重点主義に陥る危険性を持った法人化という制度に目を向ける前に現在抱えている問題を現制度の中でどう解決するか大学内で十分検討する必要があるのではないでしょうか。

B大学にはいろいろな組織があります。教授会、職員組合、学生組織、病院、等々それぞれが違った角度からの問題意識をもっています。大学法人化についてもその効率主義を危惧する強い意見も存在しています。学長としてはそれらを充分くみ上げ、あり方懇談会に対してもそれぞれの意見表明の場を保障すべきだとおもいますがいかがでしょうか。

◆山本博之医科大学学長
 現在、学内に自己点検評価委員会を設置し、点検評価や将来の在り方を検討し、それに基づきできるところから改善を行っている。本年7月に学内に法人化問題委員会を設け、研究検討を進めている。広く学内の意見を聞いていきたい。同委員会での意見などを踏まえ、県立医大のあり方懇談会に反映させていきたい。

=再質問=
 学長は国立大学の法人化がどんな問題点をもっていると考えているのか、懇談会で、大学が医科大学も含めて制度疲労を起こしているという話があったが、それは今の体制ではなく法人化しなければ解決できない問題なのかどうか、そして医大の中の様々な組織での意見は懇談会の中に反映されているのかどうか、もう一度以上3点の答弁を。

◆山本博之医科大学学長
 法人化の中身が見えてこない。大学教育、学術研究の本質が生かされる運営方法が非常に重要になってくると考えている。懇談会では医科大学が制度疲労を起こしているとは言っていない。懇談会は公開であり、大学内で意見集約をして会に反映させていきたい。 

6、カジノに関連して

 過日、東京都庁で模擬カジノが催されたとの報道がありました。カジノによって観光客を呼び込もうと言うことだそうですが大阪の太田知事も大いに乗り気だったとの報道もありました。その報道の一画に木村知事の談として「有効な観光資源で経済波及効果や雇用が期待でき賛同」という見解も載せられていましたのでそれに関してお尋ねをいたします。

@   賭博行為はもともと刑法23条で禁止されています。法務省も「カジノにかかわる行為は刑法第23章に規定する罪の構成要件に該当しうる行為である」として現行法では禁止されていると見解を表明しています。禁止されているにはそれなりの理由があってのことだと思います。射幸心の刺激、勤労意欲の低下、犯罪の温床化、暴力団の資金源化、青少年に対する否定的影響、等々が挙げられるのではないかと思います。知事はそれをどのように認識されていますか。

A   カジノ誘致を歓迎とのことですが、法改正までしてカジノを誘致することが和歌山県を総合的に発展させると言う立場から見て本当に好ましいことと考えられますか。財源のためにはなんでもありと言うのは余りにも品位がなさ過ぎます。それが特区と言う形で設定されるとすれば賭博の出来る和歌山と言うありがたくもない地位に置かれることになりはしないでしょうか。兵庫県知事が「そこまで落ちぶれたくはないと」談話していましたが私もそう思います。所信を聞かせて下さい。

B   和歌山県ではここ数年間に場外馬券売り場やボートピア誘致の話が5件ほどありました。その都度県民から大きな反対運動が起こり、ことごとく断念に追い込まれました。県民の中に賭博行為やそれに類する行為に大きな拒否感があることを物語っています。かつて馬券売り場誘致が問題になったときも時の教育長は「一般的にいって賭博行為は青少年の健全育成の障害になる」というような意味の意見を表明しましたが、知事はこのような態度をどうお考えですか。

願わくば和歌山県へのカジノ誘致はないことを明らかにし、県民に安心を与えて頂きたいと思いますがいかがですか。                    

◆木村良樹知事
 日本はいろんな面で沈滞しており、こういう時ある程度コペルニクス的な発想の転換が必要だ。例えば白浜や勝浦という全国的に有名な観光地に何らかの付加価値をつけ、風紀の乱れがないという担保があれば、積極的に検討していくべきではないかと思う。

=再質問=
 もともと刑法で禁止されてきた賭博行為には、その原理自体が否定的な内容をもっている。だから禁止されてきた。品格のある和歌山県ということを考えるならば、カジノは考え直すべきではないか。

◆木村良樹知事
 ほかのところでカジノができて栄えて、和歌山県の観光地だけが枯渇するということになるのは好ましくない。慎重に検討していきたい。