金田真議員の質問全文  ※答弁・再質問(要望も含む)は要旨のみ(2002年12月11日)

 
1.納得できない同和対策について
〈高度化資金の滞納〉

 不透明な同和向け中小企業高度化資金の解明は、同和問題の真の解決と県政の民主化をすすめ、県民の信頼を高めるとの立場から質問します。

 同和向け中小企業総合事業団の都道県別延滞状況を見れば、総延滞額172億円の内、和歌山県の滞納額は56億円で32%を占め、一位です。

 さて私は、昭和58年当時、新宮市議会の経済建設常任委員でした。その委員会で中小企業高度化制度に関係する「新宮市同和地区中小企業構造の高度化事業利子負担軽減補助要綱」を審議し、反対しました。その審議の過程で、今回の質問対象となった熊野食肉生産協同組合の設立を知り、最近法務局で登記状況を調べ、今回裁判所の競売で破産の事実を確認しました。この調査から、正常な貸付融資ではないとの思いがします。

 中小企業高度化資金は、いくつかの中小企業が共同して1つの組合をつくり経営改善を図る事業に、国と県が資金面からも支援する制度です。その目的にそって審査が適切に行われ、運用されていたか疑問であり、県の実施した施策について具体的に質問します。

 この熊野食肉生産協同組合は昭和58年4月、5人の組合員で設立され、3億5700万円を同和向け高度化資金として融資を受けました。昭和61年から返済を始めまたが、滞納を繰り返し、平成4年までに1250万円を返しただけで、平成7年に倒産しました。結局、償還率は3.5%で、3億4500万円が残ったままです。

 県は、平成7年11月に繰上償還命令を出しましたが、その後1円の返済がないまま、本日12月11日に裁判所の競売入札が行われる予定です。

 土地や建物は、県が抵当権を設定しています。土地は、昭和57年に組合員のA氏が事前に購入し、58年にA氏が組合に売っています。この土地は、u単価16万8700円で1億2200万円です。しかし、競売での標準価格はu7万900円とされて、1791万円と安い競売評価額でした。1億2200万円が1800万円です。

 1億1800万円の建物の競売評価額は、659万円でした。2億2千万円の機械設備は、経済的価値がないと0円です。4億5千万円の担保物件が、競売の最低入札価格2121万円と20分の1以下の安い担保と評価されました。

 県は、「事業団による審査も受け、承認を得た上で貸し付け決定を行っており、事務手続上問題はなかった」とします。しかし、土地だけみても、あまりにも実情に合わない高い値段で売買されていました。ちなみに県は、「融資の際の資産の評価について固定資産税の評価額を参考とする」としますが、平成13年度の土地の固定資産評価は3268万5204円で、u単価4万5208円です。

 確かに、現在地価は下がっていますが、地価が高騰する以前の昭和58年当時と現在を較べても新宮では大差はありません。これでも、過剰融資でないとする納得できる根拠を示して下さい。

 県は返済について、「組合が倒産したため、責任者との連絡がとれなくなり、その当時会うことができなかった。放置していたのではない」とします。しかし、今回の競売以外に、給料や財産の差し押さえなどの法的措置を何故とらなかったのか、お答え下さい。

 「抵当権設定・金銭消費賃貸契約」では、組合が返済を遅れた場合は、年10.75%の違約金が発生します。しかし、何故か違約金はありません。その事への質問に県は、「違約金は全額徴求することが基本です。弁済金の充当は、原則、違約金、利息、元金の順で充当する。充当順序の変更は、違約金を後で回収することの方が貸し付け先の償還意欲を促し、徴収上有利と認められる場合などがある」とます。しかし、充当の変更は「債務者等が償還に対して十分に誠意があると認められる場合に限る」のであって、返済が1割もされていなにのに「十分に誠意がある」と判断するのは誤りではありませんか。他にも疑問点はありますが、この様に審査の不備や不適切な運営であったと思われますが、知事の見解と、部長の説明をお願いします。

◆木村良樹知事
 債権回収処理はガラス張りの中で、すべて法律に基づき公正に処理を行っていく。
◆石橋秀彦商工労働部長
 審査が適正か、過剰融資ではないかという質問にはさきの議会で答弁したとおり。特定の組合についても答弁を差し控える。返済で競売以外の措置としては、競売申し立てと並行して可能な範囲で財産等の調査を行っており、競売の進捗状況を踏まえ、連帯保証人の財産も含め差し押さえを実施するなど、法律に従って処理していきたい。十分誠意があると認められる場合は、違約金を後順位にする。今後は債務者に一定期間ごとに違約金額を通知する。

=要望=
 お金が100億円以上返済されていない状態、1円も返済せずに倒産している組合、1割も返済できていない数多くの組合。だれでもおかしいと思うのは当たり前。その疑問を解決するため、原因究明のために県に対して様々な資料の提出を求めたが、知りたいことは教えてくれない。だから現在、文書の開示請求を行っているが、ずっと待つわけにもいかず、独自調査をおこない疑問点を議会で質問した。ところが答弁しない。1円の返済もない組合に対して、借金返済に対して十分誠意があると開き直るような答弁はおかしい。県行政はこの責任について真剣に考えてほしい。

 

〈状況調査は中止すべき〉
 次に、1973年につくられた県同和教育基本方針は、同和対策が大きく前進した現状においては、この基本方針の幾つかの規定は現実にそぐわないものになっており、逆に人権教育・人権擁護運動に混乱をもちこむのではありませんか。

 例えば、この基本方針の性格を規定する「はじめ」の項は、「今なお部落差別が人々の考え方や同和地区の生活実態の中に生きています」とあります。しかし、この規定は過去はともかく、今の現実を正しく反映しているとは思えません。

 また、はじめ部分には、「同和対策審議会答申の精神及び同和対策事業特別措置法の趣旨にのっとり、教育行政機関の責務を自覚し、この基本方針を作成」とあります。別記にも「同和対策審議会答申と同和対策事業特別措置法に基づいた長期計画による年次計画を立て」とあります。しかし、その根拠の特別措置法がなくなった現状からすれば、それに基づく基本方針を廃止するのが道理ある姿ではありませんか。さらに、今年四月には「人権尊重の社会づくり条例」が策定されましたが、その県条例との関連からも解消させるべきではありませんか。

 さて以前から私どもは、旧身分を特定する「校区に同和地区を含む学校の状況調査」をこれ以上続けることの法的根拠と科学的裏付けがないとして、その「調査」の中止を求めてきました。しかし、県教委はこれまで「基本的な調査」、「必要な調査」、「格差があるから」必要としていましたが、「地域や人の特定」する特別措置法がなくなる中、本会議や予算委員会で「多くの方のご意見をいただきながら検討していくのは必要であろう」とされ、14年度は「状況調査」は実施されませんでした。そして、新たに「人権教育の推進に関する調査」が行われました。この「人権調査」については、意見はありますが、少なくとも今後「校区に同和地区を含む学校の状況調査」は中止すべきではありませんか。

◆小関洋治教育長
 本年度から各学校で、同和問題を初めとした様々な人権にかかわる課題や、その解決に向けた取り組み等について調査を実施する。

〈補充書について〉
 次に補充書ですが、これは決算委員会で村岡議員の質問で明らかになりましたが、高校入試に際して,中学校から高校に提出されるものです。

 県教委の「平成14年度和歌山県立高等学校入学者選抜の判定に係る口頭説明事項」という文書では、「同和地区生徒など、教育的環境にめぐまれない生徒や身体に障害のある生徒で、本人のもつ能力が十分発揮されていないと考えられる相当の根拠がある者」としています。

 そして,補充書作成上の留意点として、「本人のもつ能力が十分発揮されていないと考えられる理由と、指導経過及び現在の状況等について記入する」ことをあげています。

 この補充書の実際の提出は、県教委の資料では、平成10年度が延べで501人、11年度が526人、12年度が387人、13年度が415人、14年度が382人です。これを受けつけした高校は全日制では、10年度から14年度まで32校から36校です。この補充書の身体の障害や農業後継者を希望する特別の事情については、一定理解はできますが、教育的環境に恵まれない生徒の例として,同和地区生徒などと例示するのは、旧同和地区を依然として環境の劣悪な地域として考えているとすれば、大変問題があると考えます。

 また、この補充書の提出について,中学校長は本人の同意を得て提出するようにはなっていません。本人の同意なしにこうした文書を出すことは、個人のプライバシーを侵害することになりませんか。「人や地域を特定した」同和対策をやめているとき、こうした制度を残すことは和歌山県の子どもの将来にとって好ましいとは思われません。

 入試判定にあたって同和地区の出身だということを、合否の判定材料にすることは、直ちに中止するのが適切な対応だと考えます。以上、教育長の御答弁をお願いします。

◆小関洋治教育長
 現在、中学校と高等学校との連携を密にする観点から、その実施方法等について検討を行っている。

 

2.熊野の自然と健康を守る環境行政の実現について
〈松山の産業廃棄物問題〉

 毎議会取り上げています新宮市松山での環境破壊の恐れのある産業廃棄物の建設業者の自社処理について、先の9月議会で環境生活部長は「8月8日に新宮保健所と合同で廃棄物対策課が立入調査を実施し、燃え殻の保管や廃棄物まじりの土砂等に不適正な処理が見受けられたので、期限を付して適正に処理するよう指導している。なお、事業者からいまだ改善計画書が提出されておりませんが、指導期限が経過しても処理がなされていない場合、また改善が十分でない場合には、廃棄物処理法に基づき改善を命ずる考え」と答弁がなされましたが、その後の住民のみなさんへの対応も含め経過をお知らせ下さい。

 また、県は「焼却灰の長期保管は廃棄物の適正処理の観点から望ましくない」との立場から、一度も処理されづに長年置いている焼却殻や灰を適正処分することを10月31日までと改善期限を切って指導しています。改善されましたか、その結果をお知らせ下さい。

 私は99年の9月議会からこの問題を取り上げ、今回で13回目です。やっと「燃え殻の保管や廃棄物まじりの土砂等に不適正な処理が見受けられました」と、不法な処理の実態がこの議場で明らかになりました。長かったです。住民の訴えに、新宮保健所や環境生活部、土木部、県警、そして知事が、そのぞれの立場で努力してくれている結果だと思います。しかし、問題はまだ解決していません。私が質問を始めた3年の間にも自然や生活環境の破壊は進み、現在も進んでいます。この問題の完全な解決と、今後はもっと素早く対応でき、違法な処理を許さない方策を、国の動きも見ながら検討される事を強く要望します。

◆秋月成夫環境生活部長
 10月18日新宮保健所立ち会いのもと事業者が現地を掘削。廃棄物混入が認められ、11月1日付で廃棄物処理法の処理基準に従い、平成15年1月31日までに適正に処理するよう知事名で改善命令を行った。12月5日には新宮保健所と合同で現地調査を行い、改善作業に着手していることを確認し、地元住民には県の対応状況を説明した。灰状の焼却殻はふたつきのドラム缶に、スラグ状の焼却殻はコンテナに防水シートで覆って保管している。ドラム缶による保管は腐食の心配もあるため速やかに適正処理するよう指導する。

 

〈砂利採取問題〉
 次に、世界遺産にふさわしい熊野川についてです。河川審議会は「人と川との関わりは古来より人の生活そのものともいえ、河川は畏怖すべき自然であると同時に清らかな水が流れ豊かな生物が育まれる地域の共有財産であり、流れる水は日本の風土と文化の源泉でもあった」としています。昨年の9月議会で、熊野川に清流を取り戻すために、初めて二津野ダムの発電停止と撤去問題を取り上げました。その後、県は昨年11月電源開発に「濁水の軽減対策は十分なものでないとして、実効性のある長期化対策を求める要望書を出し、抜本的解決ではありませんが、電源開発から発電停止の延長などが示され前進していると思います。

 さて今回は、熊野川の環境問題の一つとして砂利採取についてお尋ねします。

 ご承知の様に、平成9年に河川の持つ多様な自然環境や水辺空間に対する国民の関心の高まりに応えることや、地域の実状に応じた河川整備の必要性から、従来の河川管理の目的の「治水」、「利水」だけでなく、「河川環境」を加えて、水質・景観・生態系等などの整備と保全を推進する河川法に改正されました。

 平成11年3月の河川審議会答申では、新たな水循環・国土管理に関する課題として、1つには、廃棄物の不法投棄による水質汚染、環境ホルモン等の新たな汚染物質の顕在化、生態系の変化、水文化の喪失等など、水循環に関する様々な弊害を上げ。2つに、川と人とのかかわりの希薄化。3つ、川と川沿いの地域との関係の希薄化。4つ立ち遅れている危機管理対策を指摘しています。そして、5つ目として、土砂・砂利に関する問題の多様化・複雑化を上げ、「ダム等の築造に伴う下流河川への土砂供給の低減、過度の砂利採取などにより、河床低下、海岸侵食等の安全・利用上の問題に加えて、砂浜の喪失等の環境上の問題も顕在化し、多様化かつ複雑化している」としています。

 まさに、熊野川の姿です。特に砂利問題では、本宮町では砂利が上流に堆積し河床を上げ浸水の原因となる、一方で海岸部では海岸侵食が進んでいます。

 砂利採取は、本宮町が浸水被害を軽減する河床整備の方法として、昭和62年から砂利採取を実施した結果、以前は洪水時3千dの出水で浸水していたのが、現在では4千dの出水にも大丈夫だそうです。また、地元建設用骨材の確保から、紀南砂利生産協同組合が昭和52年から砂利採取を行っています。

 平成13年度の熊野川での和歌山県の砂利採取量15万2千リューベの内訳は、本宮町11万6千リューベ、紀南砂利3万6千リューベであり、手数料として1リューベ当り220円が県の財産収入となっています。

 熊野川と云う一つの母なる川の恵みを受けいてる対岸同士の和歌山と三重ですが、三重県は昭和55年から熊野川での砂利採取は行っておらず、同一流域としての整合性を求める声があります。

 例えば、和歌山県の本宮町では砂利採取の収益があがり、三重県の御浜町では井田海岸の海岸浸食対策の費用がかかっており、熊野川の恵みと環境面からも、同一流域市町村との整合や協力が必要ではないでしょうか。砂利採取で上がる収益は、流域地域の目に見える形での県独自対策での活用や、また両県の連携した活用も検討が必要だと思いますが、県の考えをお聞かせ下さい。

 また、本宮町は平成19年3月末で砂利採取を中止するそうですが、その中止計画とその後の堤防補強などの河川整備について、県の考えをお聞かせ下さい。

 さて、紀伊山地の霊場と参詣道を世界遺産に推薦することが12月6日文化審議会文化財分科会で承認されました。平成16年の第28回世界遺産委員会での登録を願うものです。しかし、世界遺産登録とは、文化遺産及び自然遺産を人類全体のための世界遺産として損傷、破壊などの脅威から保護し、保存するためのものですから、その責任は重大です。熊野川も川の参詣道として登録されますから、熊野川の自然と環境を守っていくことが必要となり、自然本来の熊野川のあり方や姿を考えるとき当然、濁水問題・廃棄物の不法投棄・砂利採取について、その対応が迫られると思います。

 熊野川の砂利採取は、昭和40年頃から河川管理上支障を与えない範囲内で許可をしてきました。しかし、国立公園でもあり、21世紀の河川環境や世界遺産登録を考えるとき、砂利採取をどうとらえるのか、また本宮町が中止の方向であるだけに、雇用の場でもある民間の砂利採取を今後どうしていくのか、砂利採取の許可権者としての県の考えをお聞かせ下さい。

 国の河川整備計画待ちという消極的姿勢ではなく、和歌山県が河川管理者として熊野川のあり方を国に提案する基本の1つの柱として、知事と部長の答弁をお願いします。

◆木村良樹知事
 今後策定する熊野川河川整備計画において検討する予定。
◆大山耕二土木部長
 砂利採取収益は、県、町で一般財源に充当し、結果的に河川などの公共事業に還元している。熊野川の河床変動と井田海岸の侵食との因果関係は明白ではない。砂利採取も含めた熊野川の整備のあり方は、流域委員会の設置を国に求めており、その中で順次策定する熊野川河川整備計画で検討する予定。

=再質問=
 三重県や流域の市町村とも一緒になって、砂利採取収益の活用を考えていくのはどうかという提案をしたのであり、海岸侵食の因果関係など質問していない。県は熊野川についてどんな認識をもち、どういう方針で取り組もうとしているのか。

◆大山耕二土木部長
 収益を両県で連帯して活用することは考えていない。

 

〈不法投棄問題〉
 世界遺産登録にも関連する熊野川沿いの不法投棄ですが、特に白見の滝付近の埋立や投棄は、2000年2月議会からの宿題ですが、一向に解決されません。

 この件は昭和63年からの口頭指導から始まっており、平成12年9月7日に違法行為者に対して、「不法埋立に関する報告書の提出について」の文書を出し、@埋立を処理し始めた時期及び期間廃棄物の種類。埋め立てた量と面積。廃棄物等の種類と量及びそれらを図示したもの A処理し始めた経緯及び現在までの経過 B今後の対応について 平成12年9月21日までに提出することを指示しました。しかし実行されず、その後10月4日に口頭で、更に10月30日文書通知で督促したが未提出で、12月22日に平成13年1月10日までに当局あてに報告書の提出なき場合は、刑事告発もしくは廃棄物の撤去に向け行政代執行の措置を取りうる場合もある」と督促しましたが、いまだに実行されていません。

 また、土木部長は「和歌山地方法務局など関係機関との協議の結果、河川区域を特定するための図面を作成中です。その作業終了後、除去に向け、監督処分などの法的措置を実施」としていますが、一向に改善された様子はありません。

 世界遺産登録が間近に迫っていとき、河川管理者の県が、議会で違法行為とした不法投棄・埋立の案件をいつまでも解決できないでは、これから熊野川を世界遺産として保護・保存していけるのか不安です。

 県は、熊野川の河川管理と環境についてどの様に考えておられるのか、またこの一件の早期解決に向けての特別対策や見通しについて部長、お答え下さい。

◆大山耕二土木部長
 河川区域の図面を5月に策定したが、法務局と協議した結果、当該地域は公図混乱地域であり、監督処分を行う場合には地番を特定した方がよいと指導を受けた。現在、地番を特定するために公図を整理している。特定でき次第、監督処分を実施していく。

=要望=
 市民が再び新宮の河原で泳げる、そんな熊野川であってほしい。こんな川こそ本当に世界遺産にふさわしい川である。そのためにも濁水、不法投棄、砂利問題の解決に、県が懸命に取り組まれることを要望する。

 

3.グリーンピア南紀について

 11月15日 財団法人グリーンピア南紀の理事会は、和歌山県からの運営委託を辞退する決議を行い、県と年金資金運用基金が協議した結果、紀南大規模年金保養基地・グリーンピア南紀が平成15年3月いっぱいで運営停止することを決定しました。

 小泉内閣の経済効率を第一に弱者に負担を押しつける構造改革は、国の特殊法人の整理合理化計画でグリーンピア事業を財政基盤の弱い地方への譲渡や民間企業へ売却する無責任極まりない方針を打ち出し、廃止か民営化かと迫った訳です。

 グリーンピア南紀は、那智勝浦町・太地町にまたがる364fの敷地を持ち、ホテルやコテージのほか、多様な施設をもつ国民の総合保養施設として昭和61年に開設されました。運営は、年金資金運用基金が県に委託し、さらに県と那智勝浦町、太地町が出捐した同財団に運営を再委託し、観光でも雇用の面で地域経済に貢献してきました。

 しかし、景気の低迷もあり、平成9年度から単年度収支が赤字となり、昨年の11月には、公益法人には珍しいリストラ策として希望退職の募集を行うなどの、一定の経営改善計画を策定し努力がなされていた矢先だけに運営停止に地元は驚きました。10月28日に「行政組織等の見直しに関する提言」が提出され熟読する間もなく、早々と見切りを付ける様なやり方は、そこで働く人の意欲をそぎ、地域にも大きな影響を与えることを考えないものです。それだけではありません。宿泊や施設利用の予約は6ヶ月前から受け付けていましたが、団体客を含めた予約を断る事態をつくりだし、利用客に迷惑をかけ、信頼を失墜させる乱暴で無計画なやり方は経営責任が問われます。

 ですから、経営改善や存続について、十分に検討されてた結論だとは思われません。現場の意見も含めて十分に論議し検討された上で決断したものですか、存続の可能性について知事お答え下さい。

 理事長でもある木村知事の本義会での知事説明要旨には、「今後、この施設が地域振興につながるよう、地元町や施設の所有者である年金資金運用基金と運営停止後の利活用について、さらに協議を重ねてまいりたいと考えております」とあります。しかし、そこには働く人たちの事は残念ながら一言も触れられていません。不況の中、年末年始に向けて忙しい現場では不安の声が上がっています。 理事長として木村知事は、そこで働く人の生活と雇用に重大な責任を負うことは当然です。グリンーピア南紀の今後についての知事の決意をお聞かせ下さい。

 昨年11月に希望退職者を20名募集したところ、なんと35名が手を挙げました。その理由は、将来不安と経営のやり方に反発が多かったようです。しかし、35人も一度に退職されたら日常業務が成り立たないと3月までの慰留を行ったそうです。これも経営体質の改善と計画の甘さを感じさせる出来事でした。

 希望退職に応じなかった人達は、これまでも人件費や経費の削減に努力し、お粗末な経営改善計画にも協力して、財団を信頼して職場を守るため一生懸命頑張り、グリーンピア南紀を支えてきました。そんな人達を切り捨てる様な事はあってはならないと思います。いま働いている人の生活と雇用を保障することに対する部長の決意をお聞かせ下さい。

 最後に、グリーンピア南紀の運営停止を知って、今まで通りのリゾート施設として存続を求める声は多いですが、老人施設とか障害者施設への転用を望む声もあります。先の提言でも「地域の振興策に十分配慮しつつ、施設の今後のあり方については、関係自治体と早急に協議を行うことが必要である」としており、この施設の今後について部長の答弁をお願いします。

◆木村良樹知事
 施設は地域振興に役立つよう、引き続き地元自治体と協議を続け、雇用確保にも努力していきたい。
◆白原勝文福祉保健部長
 雇用確保はハローワークなどの協力を得て、財団、県、地元2町が連携しながら企業訪問等を行い、再就職支援のために最大限の努力をしていく。土地所有者である年金資金運用基金では、施設をまず公共団体で有効利用を図ってほしいという意向があり、地元の那智勝浦町と太地町に対し、跡地の譲り受け、有効利用を図る方向での検討を求めている。県としても積極的に協議していきたい。

=要望=
2町とも一緒になり運営停止後の職員の雇用対策、そして施設の有効活用に向け、地元のいろんな方の意見を聞き、全力の努力を払ってほしい。