雑賀光夫県議 2004年3月5日(金)

まず第一は教育問題であります。

 来年度予算が提案されました。懸案の少人数学級の問題、小学校1、2年および中学校1年には拡大されたことは、大歓迎であります。このたびの改善は、予算的に県独自措置でなく、文部科学省の施策だということです。全国でひろがった国民世論と和歌山県を含む全国の多くの自治体で「文部科学省をまっていられない」と実施に踏み切ったことが文部科学省を動かしたといえます。
 このたびの措置は、中学校一年生は35人学級ですが小学校1,2年生ではそうなってはおりません。昨年は、せっかく一歩前に出て、文部科学省をリードしたわけですから、せめて小学校1,2年生についても35人学級を実施するぐらいのことはできなかったのか。そうしてこそ知事がおっしゃった「教育が何よりも大事だとおもっている」という言葉も生きると考えます。今後、この分野で、予算的にも文部科学省の一歩前をいく気持ちがおありなのかどうか、教育長の見解をお伺いします。
 教育予算にかかわる第二は、高校普通教室へのエアコン導入であります。高校に限らず、小中学校を含めて「暑い教室をなんとかして」という声は切実です。和歌山県教職員組合は、1998年から何度か県下すべての学校でいっせいに教室の温度調査を実施したことがあります。33度というのはザラというような報告がだされ、これをもとに市町村にも要求してきました。エアコンまでいかずに扇風機をつける市町村がひろがりつつあります。

 今回の高校教室へのエアコン導入は英断として評価いたしますが、電気代上限5000円の授業料への上乗せときいて、びっくりしました。いまでも、経済的理由で高校を中途退学する生徒は少なくないのです。鳥取県でも京都府でも保護者負担はしておりません。せっかくの英断に傷をつける電気代等保護者負担はやめていただきたい。また、国の予算案をみますと、高校授業料の標準額が引き上げられています。近いうちに引き上げられるならダブル値上げであります。
 また、中小業者が不況であえいでいる中でございます。エアコン設置にあたって、大手に一括注文でなく、地元業者に分離発注してもらいたい。
 さらに小中学校でも暑いのは同じです。小中学校でのエアコン導入に向けて、県としてどういう支援をするのか、国および市町村にどういう働きかけをされるのか。教育長の答弁をもとめます。

 大きな第2は、不況の下で中小企業を守る、連鎖倒産防止の問題です。
 下津町で老人ホーム橘寮という施設が12月20日にオープンいたしました。この施設の建設を直接うけおったのは、大阪に本社を持つ、大臣認可の企業であります。大部分の仕事を、県内の県知事認可企業である島本建設に下請けさせました。この島本建設が、工事完成直後に倒産してしまった。第二次下請け企業が10数社あります。私どものところに相談にきた企業5社からききとりをしてみますと、島本建設からの工賃は、ほとんどが未払いか不渡り手形になっている。このままでは、連鎖倒産であります。

 「建設業法」という法律があり、元受け企業が、第2次以下の下請けへの支払いを「立替払い」するというシステムです。しかも大阪の建設会社には、第2次下請けを救済する道義的責任があります。また、この企業が、ほぼ丸投げの形で島本建設に仕事をさせていること、そのことを隠すための書類を第2次下請けにつくらせていることなどの問題もあります。さらに、たてものの引渡しがおわるか終わらないかという時期に、3億円もの工事代金が栗本建設から島本建設に現金で支払われているということも不自然です。
 私たちは第2次下請け業者のみなさんや、施主である橘寮の理事長さんにもお会いして、こうした状況をつかんだのです。
 そこで業者のみなさんも参加して、1月22日、日本共産党近畿国会議員団事務局の援助を得て、大阪の建設会社本社との直接交渉をおこないました。国土交通省近畿整備局にも指導を要請しました。県土整備部にたいしても要請し、大阪の建設会社に働きかけをしていただきました。まだ未解決ですが、大阪の建設会社も私たちには「何度でも会ってお話します」と答えています。
 私たちは道理をつくしてとりくんでいるわけですが、特別な第三者にたのんで取立てをしようとした大阪の第二次下受け業者があります。
 橘寮にやってきたそうです。「金をはらってほしい。でないと、鉄骨をはずして持って帰る」とまで言ったそうです。理事長の方は「鉄骨をもっていくのはいいが、それ以外のものはさわってはならぬ」といわれた。私は、その話を聞いて「シェイクスピアのベニスの商人ですね」と申し上げました。しかし、この業者にしても、被害者です。どこのも頼るところがなくて、こうした第三者を使ったのです。
 以上の経過を踏まえて質問いたします。

@ 県行政として、県内建設業者が困っているとき、「建設業法」はもちろんのこと状況を調査し、大企業の社会的・道義的責任を果たすこともふくめて、困っている企業を守り抜くという行政を進められるのかどうか、県土整備部長の答弁をもとめます。

A つぎに、連鎖倒産防止のための金融支援であります。一定の支援はありますが、零細建設会社というのは、こうした倒産の余波を受けなくても、不況の元で青息吐息でやっているというのが実態です。ほかの融資を先にかえさないと新規の融資をうけられないなどの問題にもぶつかりました。返済能力をとわれるためです。しかし、連鎖倒産というのは、突然襲い掛かってきて、多くの建設会社に広がる問題です。全力で金融支援をする必要があるのではないかという立場で、商工労働部長の見解をお伺いします。

 大きな第三は、市町村合併の問題です。12月議会で、わが党の松阪議員が、市町村合併について、市町村の自主性の尊重という立場に立って、県当局は合併推進一辺倒ではなく、合併する市町村も合併しない市町村も支援するという立場に立つべきだと主張しました。
 木村知事の答弁は、ご自身が合併はやむをえないという立場におたちであること、合併市町村のみを支援する基金についての反省がないことなどは、私たちにとって不満でありますが、県としては市町村の自主性を尊重するという立場は表明されましたから、松坂議員は、一応追及の矛を収めたわけであります。
 ところが、年末から年始に入って、那賀地方で、那賀振興局をふくめて、市町村の自主性をおかすような、市町村合併協議がおこなわれていることが明らかになりました。私たちの手に入った関係市町村でのやりとりから何があったのか、その謎解きをしてみたいと思います。
 ご存知のように、那賀地方の市町村合併は、さまざまな変転がありました。県が示したモデルは、6町合併ですが、岩出町は単独市制をめざします。のこりの5町合併ですが、打田町の態度がかわりました。その結果、5町合併は消えたと思われたのですが、打田町議会の意向もあって、打田町から5町合併の申し入れがおこなわれました。そこで5町の協議がはじまりました。「スタートに当たって確認文書をかわそう」となったわけです。

そう言い出した町長さんの気持ちもわからないではありません。けれども「法定合併協議会」というのは、「合併するかしないかを含めて協議する」というものす。また、最終的に合併するかどうかを決める権限は、各市町村議会にあります。「住民の意思を確認する住民投票を」という声も強いわけです。
 さて、「心変わりはしない」「合併協議会で合意したことについては責任を持つ」というようなことを町長さんたちが約束して協議に入るということになると、市町村の自主性はどうなるのかという問題が生じます。
 こうしたとき振興局の職員は、どうしなくてはならないのか。振興局から派遣された職員は、行政の専門家です。町長さんから「確認文書を交わそう」という声があっても、「それは市町村の自主性、議会の権限などの関係で問題があるのではないですか」と助言しなくてはならない立場にいるわけです。
 けれども、那賀振興局の担当者は、そういう助言をするのでなく「確認事項」の原案を起草することを引き受けた。その「原案」には「協議項目の決定にしたがうこととし、決定後に異議を唱えたり、協議会を離脱したりしない」「決定事項について、責任を持って、その町民または関係機関の合意につとめる」と書いている。その原案を見て、「確認事項」の起草を頼んだ町長さんの方から「これはいかにもひどすぎるんじゃないか」という意見が出た。最後は、折衷案でまとまりました。

 ここではっきりした問題は、市町村の自主性を犯すような「確認事項」というようなものには、行政の専門家の立場からブレーキをかけるべき振興局職員が、市町村からも「すこし、いきすぎではないか」といわれるような「原案」を起草したという事実です。こうしたことについて総務部長はどうかんがえるのか。答弁をもとめます。

こうした問題がおこってくる背景として、市町村課長が地域を回って「合併が必要だ」と説明しているわけですが、これがすこし行き過ぎではないかと思われる説得をしている。市町村課のメモというのは、かなり分厚い資料です。そこには「道路事業の採択は合併しない場合減少」と書いています。「国と県の補助事業の採択基準(箇所付け)として合併支援道路事業を優先。合併しない場合採点が低くなる」とも書いています。

知事は、一年前の議会で、『合併しないところは冷遇するというふうなことは考えておりません』と答弁しています。この知事の答弁と、今回、市町村課が県内の首長などに話していること、資料として配布していることには大きな乖離があります。もちろん、道路事業はじめ公共事業は、その必要性に応じて事業化されるわけです。市町村課の資料が書くように、合併するところだけを優先するというようなことがゆるされるはずもありません。公正、公平が求められる県行政として、市町村の合併を誘導せんがために、行政の根本をゆがめるようなことがあってはならないと考えますが、知事の見解を求めます。

 第四に、道路問題についてお聞きいたします。
 まず、国道370号阪井バイパスについて。いよいよ大づめになってきています。地元では説明会がすすめられていますが、この建設についてどのような見通しをもっておられるのか。また、国道370号が国道424号に接続したあと、野上・美里方面への道路の改善はどうされる構想をお持ちなのか。国道424の木津バイパスの見通しはどうなのか。
 さらに、県道海南金屋線整備も大きな課題ですが、とくに、海南市重根別所間で大変狭いところがある。バイパス計画などどう進められているのか、以上、県土整備部長にお伺いいたします。
 
 第五は、産業廃棄物問題であります。海南市・東畑の産業廃棄物問題を、9月県議会でとりあげまして、県廃棄物対策課が、迅速な対応をされたことを評価し、お礼申し上げました。運び込んだ廃棄物を運び出させる課題がのこっていたわけですが、私は、建設廃材や古畳をくずしたものだから、そう急がなくてもいいだろうと見ていたわけであります。
 しかし、このたび地元の方から連絡を受けていってみてびっくりしました。廃棄物が埋められたすぐ下の小さい池が脂ぎってまっ黄色になっているわけであります。ただちに県廃棄物対策課に連絡したところであります。池を黄色くした流出物は何なのか、埋められた廃棄物との関係はどうなのか、今後の対策について、生活環境部長にお聞きいたします。

 第六に、とりあげたいのは国際観光の問題です。和歌の浦は万葉の昔から風光明媚の地です。また江戸時代、俳人松尾芭蕉は「行く春を和歌の浦にて追いつきたり」とうたったのでありました。
 また明治の文豪・夏目漱石が「現代日本の開化」と題した有名な講演をおこなったのはこの和歌山市でありまして、漱石はこの和歌山訪問をその数年後の小説「行人」にいかし、和歌の浦、片男波などが登場するのであります。
 この和歌の浦は、中国文化との交流の地としても重要です。不老橋という名前が不老長寿・中国の仙人思想とのかかわりがあるし、周辺の橋も含めて中国文化の影響が大変強い。中国の杭州に西湖という大変景色のいい土地がある。和歌浦の風景が、西湖とたいへんよくにていることは、西湖の風景写真を持って妹背山にのぼってみるとわかります。紀州徳川家につかえた儒学者が、このことに注目したのです。ヨウ水園、妹背山への三段橋など中国ににせて設計したわけです。
 この和歌浦で、和歌山の偉人・南方熊楠と中国の国父・孫文がロンドン留学・亡命時代の旧交をあたためたのでありました。いまは公園になり芭蕉の句碑がたっておりますが、その奥にあしべ屋という料理屋があったそうです。ここが熊楠と孫文の再会の場でありました。
 私は、観光紀州をアッピールするうえで、高野熊野の世界遺産はもちろんでありますが、たとえば和歌浦というも観光資源を万葉・芭蕉・漱石・中国との交流など多角的にほりおこすことが必要だと考えます。特に、今後の日本の経済発展・貿易の方向は、アジアとくに広大な中国市場に目を向けなくてはなりません。こうしたとき、市民の中から「熊楠・孫文の記念碑を」という声があがっています。記念碑の問題は、地元のみなさん、観光協会などのみなさんと協議する問題でありますが、とりあえず、標示物のようなものをつくったらどうでしょう。中国との関係をみすえた和歌浦観光について、商工労働部長の見解をお聞かせいだくとともに、知事のご意見をおきかせいただければと思います。