9月28日、藤井健太郎議員がおこなった一般質問と答弁の概要は以下のとおりです。

  

1.行財政運営について

 地方分権推進法が平成7年に制定されて今年で10年、遅々としてすすまなかった地方自治体への権限と財源の委譲が三位一体の改革という手法で、国、自治体側、それぞれの立場や考え方の違いをもちながらではありますが、すすめられてきました。国は16、17、18年度の3年間で国庫補助負担金について4兆円程度を廃止・縮減し,地方が主体となって実施する事業について基幹税を基本に税源移譲を行い、地方交付税については財源保障機能を見直して縮小するというものでした。

 16年度は全国ベースでは、国庫補助負担金の削減が1兆円、地方へ移譲された譲与税や交付金は6550億円で全額補填されず、おまけに臨時財政対策債を含む地方交付税が2兆9千億円カットされ、全国の自治体は青息吐息に追い込まれました。本県でも286億円の前年比減となりました。これは警察費の1年分の予算が突然なくなったのと同じ事態でもありました。

 17年度は、国と地方自治体側との合意による三位一体改革の全体像が明らかにされた上での予算編成でした。その内容には、義務教育費や国民健康保険負担金、その上に生活保護費や児童扶養手当など国の都合によるものが入り込み、国庫補助負担金の廃止・縮減額4兆円に対して税源移譲はおおむね3兆円規模を目指すとされ、地方の固有財源でもある地方交付税もさらに縮減がすすめられることとなりました。本県では、17年度地方交付税は大幅削減された16年度並みに見積もられ、国民健康保険や公営住宅家賃対策への補助金カット分の譲与税、交付金での全額補填は見込まれず、三位一体がらみで52億円の減収となり、17年度当初見込みで生じる109億円の財源不足は県債管理基金からの繰り入れで補填することになりました。

 結局、三位一体の改革は地方自治体の財源をいっそう窮屈にし、さらに国の地方財政対策により自治体財政のきりつめがすすめられ、今後も縮小の方向が続くことはまちがいありません。

 バブル景気以降の起債に頼った経済対策で膨れ上がった財政を適正規模に戻すことは、後年度負担の軽減のためにも必要なことではあります。しかし、職員の年齢階層をも無視した一律の人員削減や本来自治体が担うべき福祉施設などをはじめ小規模補助金の一律カットなどは、自治体の存立意義を損ないかねない問題があると思います。また、三位一体の改革によって自治体の裁量がひろがったとはいえ、てばなしで評価できないものもあります。二次救急への対応として機能している病院郡輪番制に対する国の補助がなくなり、県は診療時間が自由になったと評価していますが、補助金が一般財源化されるにともない、救急医療機関が受け取る補助金の単価が従前より大幅に減額されるなど、住民の救急医療の受け入れ先である医療機関からは決して評価されていないという問題もあります。 

三位一体改革についての評価は県行政からの視点だけではなく、住民の視点から最終的にどのようになっているのか、見届ける必要があります。

 来年度は、三位一体改革に二期があるとしたら一期の仕上げの年として、また二期につなげていく年として重要な意味をもっています。そこで、知事ならびに関係部長にお尋ねします。 

 

1)新年度予算の編成にあたって

三位一体改革の改革期間の最終年度となる来年度予算編成にあたっての知事の基本的な考え方をお聞かせください。三位一体改革をどうするのか、地方側の意見がどの程度反映されていくのか。特に地方交付税の扱いがどのようになるのか。新年度予算の規模、重点課題、予算編成のありかた、などなど知事の新年度にむけての構えと姿勢どういう気概をもってとりくもうとするのか。お尋ねします。

 

《答弁 木村知事》

  地方分権という観点から、三位一体の改革は何としても、ある程度、地域ごとに痛みは伴っても達成していかなければならない。地方公共団体間で大きな財政格差があり、適切に地方交付税等の調整措置によって、一気に困ることがないように、国に対して大いに訴えかけていきたい。

  きびしい財政状況のなかで、切るべきものは切り、とれる歳入は思い切りとっていくということのなかで、メリハリをつけて、和歌山県が遅れることのないように成長の芽を伸ばすような形での予算編成をしていきたい。

 

2)新地方行革指針について

総務省が策定した「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針」、新地方行革指針とよばれていますが、今年の3月29日付けで総務事務次官から都道府県知事ならびに政令指定都市長に通知され、県内の市町村に対しても周知するように求めています。       

その内容は、都道府県、市町村すべての自治体に新たな行政改革大綱の策定や従来の大綱の見直し、17年度を起点とし、おおむね21年度までの事務事業の再編・整理、統合・廃止、給与・人員の削減、民間委託の推進など国の示す9項目の課題の達成目標を数値化した集中改革プランを作成し公表することとなっています。特に職員の適正化計画などは、退職者数、採用者数の見込みを明示して、4.6%以上の職員削減を目標とした平成22年4月1日における明確な数値目標を掲げることなどきめ細かい内容となっています。計画の策定にあたってのヒアリングも予定がされています。

国が自治体に対して行政改革の推進を求める通知は平成9年11月以来、約7年ぶりのものとなります。地方分権一括法が平成12年4月に施行され、機関委任事務や通知・通達行政は基本的には廃止されました。しかし、国の地方自治体に対する関与の仕組みは、助言、勧告、資料の提出の要求など自治事務においても強く残され、さらに国が都道府県知事に市町村に対して助言、勧告をしたり資料の提出をするように指示できるという規定も新たにもりこまれました。このこと自身が地方分権への逆流だと思うところですが、今回もこの規定にもとづいて新行革指針の通知がなされました。地方分権の推進という立場に立つ知事はこのことをどのように受け止めておられるのか、市町村への対応はどのようにされたのか。お尋ねします。

 自治体の行財政改革は、人からいわれるまでもなく最小の経費で最大の効果をあげることを日常不断に追求し、住民に奉仕するための組織と行政サービスをつくりあげていくことにあります。

当然、その自治体ごとの改革すべき課題があって、とりくまねばならないテーマや手順も異なってくるはずです。それを全国なべて一律の課題でしばりあげるようなやりかたや県に市町村に対してまでその役割を求めることには賛同できるものではありません。知事の所見を求めるものです。

 

《答弁 木村知事》

市町村については、地方分権の立場から、すすめていこうという助言、一緒にやっていこうという観点での関与ということを考えている。こうしなかったら、ああしなかったら、けしからんとかいう気持ちはまったくない。

 

3)財政改革プログラムについて

今や三位一体改革と地方行財政改革は期を一にするものとなってきました。三位一体の改革が自治体の行財政改革を促進する役割をも担っています。   

国の経済財政運営と構造改革に関する基本方針、骨太方針2003で、地方財政計画の歳出の見直し、地方交付税総額の抑制と財源保障機能の縮小、投資的経費の抑制などがかかげられ、これに呼応する形で多くの都道府県がよびかたの違いこそあれ、財政の自主再建プランの策定に着手しました。

それに加えて、16年度の地方交付税の大幅カットが再建団体転落への警鐘を鳴らし、地方財政の危機感を一気に高めることになりました。多くの自治体がこの地方財政危機をのりこえるために、財政再建のための計画を策定し、実践に足を踏み出しています。

本県では、平成16年度から20年度までの5年間を計画期間とする財政改革プログラムが行政内部で策定され公表されております。 

その最大の目標は、計画期間の最終年度の赤字を再建団体転落ラインにとどめることに設定されていることから再建団体転落の回避となっています。地方自治体が自治体の機能を発揮して、住民に犠牲を強いるだけのものではなく、住民サービスの向上のための自主的な行財政改革の推進を願うものです。そこで、財政改革プログラムについて、総務部長に2点お尋ねします。

 

@    16年度決算と今後の見通し

16年度の決算が発表されております。財政改革プログラムは16年度当初予算をベースとして組み立てられています。16年度決算に対してどのような評価をされているのでしょうか。16年度当初97億円の財源不足で県債管理基金からの繰り入れで出発しましたが、普通会計決算では実質単年度収支が21億円余の黒字となっています。財政調整基金の取り崩しはなく、県債管理基金は18億円余の取り崩しですんでいます。一般会計では、県債管理基金からの取り崩し22億円となっていますが、起債の繰り上げ償還が20億円近くできており、実質単年度収支は1億7千万円の赤字ですんでいます。財政改革プログラムに影響はあるのでしょうか。

また、17年度の収支見通しとそれ以降の見通しをどのようにもっているのでしょうか。

 

A県民の声の反映と全体像を明らかにしてもらいたい

県民の視点に立っての行財政改革のありかたの議論が必要ではないかということです。総務部長は、昨年の9月議会で財政改革プログラムを策定するにあたっては、県民の意見も聞きながら実施していきたいと言われていましたが、どのように聞いてきたのか。プログラムそのものに対するパブリックコメントなどおこなわれたのでしょうか。

 県の改革プログラムでは、数値目標がかかげられているだけで中味がよくわかりません。職員の430名削減といわれています。これまで企業局の廃止や試験場からの事務職の引き上げなど行われてきましたが、今後、どのようにしてすすめるのか。教育委員会でも約400名の削減がいわれていますが、児童・生徒数の減に対応するだけのものなのか、県立学校の統廃合を視野に入れたものなのか。県民生活とのかかわりが見えてきません。徹底した事務事業の見直しといわれていますが、県単独の住民生活に密着した福祉医療制度や小規模作業所への補助金などどうなるのか、全体像が見えてきません。改革プログラムの全体像を県民にわかりやすく明らかにすることを求めます。

また、県政に対する県民の声、要望、苦情など広く募集し、県民の生活意識や行政需要をしっかりと把握することが必要だと思います。同時に県政についての広報と説明責任を十分に果たす手立ても必要です。財政改革プログラムも昨年12月の県民の友に掲載されただけです。これでは、県財政と改革の方向は行政におまかせになってしまい、結局、住民に犠牲が強いられるだけのものとなってしまいます。

 

《答弁 原邦彰総務部長》

(平成16年度決算と財政改革プログラムについて) 

現在のところ、税制改革プログラムで想定している財政の姿と大きなかい離もなく、財政は推移している。17年度以降の見通しは、財政環境がすぐに好転するとは考えにくい。ひきつづきプログラムにそって改革をすすめていく。

(財政改革プログラムへの県民の声の反映について)

今後も、県民の友、マスコミへのPRなどを通じて、情報公開や県民の声の把握に努め、内容も十分説明していきたい。

 

4)国直轄事業の地方からの点検(要望)

国直轄事業含めて予算が数億円単位の大型公共事業の総点検をしていただきたい。ということです。

今年の予算編成要領で、大規模施設整備の抑制が掲げられました。

総事業費5億円以上の事業については緊急性や効果等を検証する。着手ずみの事業についても先送り、規模の見直し、事業費の縮減を検討する、構想中については、新規着工を凍結するということでした。時機を得た対応だと思います。

総務部長は、2月議会で、事前協議を経ていない新規整備事業の要求はなかった、計画中の事業については、規模、構造等を見直し、後年度負担にも留意して可能な限り、工事費等の抑制に努めたと、県庁南別館の建設費を例にして答弁されました。

県負担金を伴う国の直轄事業についてもぜひ視野に入れていただくことを要望したいと思います。

たとえば、住友金属西防波堤沖の埋立地、第2工区は発電所立地用地となっています。県のホームページによりますと、LNG、液化天然ガスを使用燃料として合計370万kWの出力を備えた火力発電所が平成11年度に準備工事着手、12年度に本体工事着手、16年度中に1号系列164.4万kWが稼働し、25年度までには2号系列205.6万kWが稼働するとなっています。それにあわせて、10万tクラスのLNGタンカーが寄港できるように、平成12年度から国が直轄事業として総工費300億円の予算で1000mの南防波堤の築造工事をすすめています。第3工区は県の公共岸壁として共用開始されていますが、南防波堤はLNGタンカーの寄港を主目的として建設されています。しかし、肝腎の発電所は事業者の供給計画によると、毎年のように先送りされ、今では平成27年度以降、10年先の運転予定となっています。現在、国はこの防波堤の完成年度を平成27年度以降とし、明確に決めずに工事だけはすすめています。毎年、多額の県負担金が予算計上されていますが、緊急性があるようにも思えません。見直しを提言すべきではないでしょうか。今回は、私の意見として申し上げておきます。

 

2.社会保障について

平成16年、昨年の12月に内閣府広報室が「日本21世紀ビジョンに関する特別世論調査」の結果の概要を報じています。その中で「豊かで快適な国民生活のために重点をおくべき分野」という設問に対して、少子高齢化対策が1位、持続可能な社会保障制度の構築と雇用の確保が同率で2位となっています。同時期に行われた内閣府の「高齢者の日常生活に関する意識調査」では、将来の自分の日常生活への不安を感じる高齢者が68%になっていること、また、「国民生活に関する世論調査」では、日常生活での悩みや不安を感じていると答えた人が66%あり、その内容は老後の生活設計が不安52%、自分や家族の健康44%、今後の収入や資産の見通し39%という順になっています。これらの結果を見ても、現在と将来の生活に対する不安や悩みを多くの国民が感じていて、子どもを産み育てられる環境づくりとなる少子化対策や現在と将来のくらしの不安を取り除いてくれる医療・介護・年金など社会保障制度の拡充に期待を寄せていることがわかります。

 今年、2月議会での私の社会保障に関する質問に対して、知事は、県民の中で弱い立場にある人が厳しい状況に置かれないように、県として弱者に優しい県政に少しでも配慮していきたい、と答弁され、

 福祉保健部長は、持続可能な制度となるよう再構築を進める、地域密着型で福祉サービスが必要な人にこたえる仕組みづくりが大切と答えられました。この夏、失業中の夫が脳卒中で倒れて救急車で病院に運ばれ、集中治療室で治療を受け一命はとりとめたけど、幼児を含め4人のこどもをかかえるなかで、国保料が払えていなくて、保険証がなく医療費が払えない、生活もどうすればいいのか途方にくれているという相談がありました。こういうときに社会保障が有効に機能することが求められています。倒産、失業、病気や事故による生活苦、いつわが身におそってくるかわかりません。まさに、弱者にやさしい県政であり、また地域でも住民どうしが支えあっていけるそういう町づくりの推進がほんとうに求められていると痛感いたします。

 そこで、知事ならびに関係部長にお尋ねします。

 

1)社会保障のあるべき姿

 国の方では、ご承知のとおり「社会保障構造改革」が着々とすすめられてきています。すでに年金改革が実施され、改正介護保険法が来年4月から本格的実施にうつされます。廃案となった障害者自立支援法も特別国会に再提出が予定され、来年は高齢者医療制度を中心に医療制度改革がすすめられようとしています。ここ1〜2年で社会保障制度改革が集中的に行われようとしています。

 こういった国の動向ともかかわって、住民が求めている、住民が期待する社会保障制度のありかたについて、知事はどのように考えているのか。また、和歌山県政でどういう姿の社会保障、福祉のありかたを描いているのか。お尋ねします。

 

《答弁 木村知事》

  持続可能性が非常に大事。本当に社会保障が必要な人が生存していくのに必要な社会保障ということについては、今まで以上にきめ細かに対応していかなければならない。

 

2)生活実態の把握

県民の生活はどのようになってきていると認識されているのか。どのように把握されているのか。所得の減少が続くもとで、税・社会保険料などの負担は確実に増えてきています。国民年金の未加入や年金保険料の未納が増え、国民健康保険料が払えない世帯も増加傾向、生活保護率も上昇を続けています。所得間格差も開きつつあるように思えますが、どのような状況になっているのか。

 

《答弁 嶋田正巳福祉保健部長》 

県民の平均所得は、平成10年から14年にかけては微減である一方、国の制度改正等により県民の税や社会保障の負担が増大している。国民年金や国民健康保険料の未納も増大している。

社会保障負担については、生活実態を正確にみきわめたきめ細やかな配慮が必要だと認識している。

 

3)税制改正による保険料負担の増大への対応

 16・17年度税制改正によって、65才以上の公的年金所得者の最低控除額が140万円から120万円に切り下げられ、老年者控除50万円も廃止、住民税では65才以上の所得125万円までの非課税措置の廃止が行われました。個人住民税については来年度からの実施となります。収入は増えないのに、非課税世帯から課税世帯へ、税負担が増えることはもちろんですが、国民健康保険料や介護保険料にもはねかえってきます。和歌山市の試算では、国民健康保険料で2万1千世帯が影響を受け、なかでも法定減免からはずれ、国保料が4倍近くに増える世帯もあるということや介護保険料でも今回の改正により本人非課税から課税となり、保険料区分が変更し保険料が1.25倍の負担増となる人が8500人見込まれることが明らかとなっています。県は、この問題をどのように受けとめているのか。県民生活への影響をどのように考えているのでしょうか。お尋ねします。

また、17年度の税制改正にあたり、政府与党の税制改正大綱には、「個人住民税の制度改正に伴い、国民健康保険料等の負担が増大する問題については、地方分権の趣旨に鑑み、関係市町村において、必要に応じ適切な措置を講ずることを期待する。」と住民負担が増大することを認め、この解決を自治体へ委ねるとしています。住民からすればぜひ、この期待にこたえてもらいたい、市町村まかせにせず県も一緒に考えてもらいたい、と思うのですが、どのような対応を考えておられるのか。お尋ねいたします。

 

《答弁 嶋田正巳福祉保健部長》

国において、激変緩和措置などの対策を検討している。県としても、保険料が上昇することになる方への対策をひきつづき国に要望していく。

 

4)改正介護保険法の一部実施について

 介護保険が発足して今年で5年目です。制度見直しを5年ごとに行うとなっており、持続可能な介護保険制度の構築ということで、高齢者の自立支援と尊厳の保持を基本として、予防重視型システムへの転換、施設給付の見直し、新たなサービス体系の確立、サービスの質の向上、負担のありかた・制度運営の見直し、介護サービス基盤の整備などを柱とする改正介護保険法が基本的には来年4月施行となります。が、その中の施設給付の見直しだけ、今年の10月1日から前倒し実施されます。その内容は、ショートステイを含む介護保険3施設、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、の居住費と食費が保険給付からはずされ、全額自己負担になるというものです。通所系サービスの食費についても保険給付の対象外とされます。10月1日実施を前に、いくつかの施設を訪問して実情を聞かしていただきました。どこへいっても苦慮されています。これまで食事代は管理栄養士がいて適時適温給食がされていれば日額2,120円の算定で利用者の自己負担は780円、保険からはその差額が施設に支払われていました。今回の改正で保険からの支払いがなくなり、自己負担の標準額が1380円となったのです。利用者は600円の負担増となり、施設の収入は740円減額となります。100床の施設なら利用者全員では年額2190万円の負担増に、施設は2700万円の減収となります。居住費は、2人部屋以上で月1万円、ユニット型個室では月6万円が自己負担となり、その分施設への保険からの支払いは減額となります。所得の低い人には補足的給付ということで自己負担の上限が設けられますが、すでに居住費については利用者に負担を求めている施設もあり、個室では7万円近い負担増を想定している施設もありました。

居住費と食費が全額自己負担になることによって、入所者が安心して生活を続けることができるのか、施設にとっても利用者に迷惑をかけずに安定した運営を維持するにはどうすればいいのか、が問題となってきます。

 入所している人の話を聞きますと、個室に入っているが今でも負担がしんどい、大部屋にかわりたいと施設にいっているが空き部屋がないといわれた。自分の年金だけで足りるのか心配、家族に負担を頼むのが辛いという話も聞かされました。ある施設では、この値段では個室の利用者が見込めず、値引きせざるをえない。食事の質を落とさずにやっていけるか検討しているという話もありました。

県は10月改正の問題点をどのように把握され、対応されようとしているのか。利用者が安心して生活しつづけられるためにも実情を把握し、国へのはたらきかけをはじめ県としても必要な対応を検討していくべきではないでしょうか。

 

《答弁 嶋田正巳福祉保健部長》

利用者が安心して入所していただけるよう、国、市町村、介護保険施設等との連携を密にし、低所得者対策などの適正な実施について必要な支援をおこなう。介護保険施設等にたいし、安定した運営が継続できるよう必要な指導をおこない、介護サービスの質の確保、向上に努めていく。

 

 

 

第2問

  国、地方自治体とも多額の借金返済をかかえて、一般行政経費の削減がすすむもとで、住民のくらしのセーフティネットとなる社会保障、福祉の予算がどうなるのか、国においても自然増分が確保されないという状況、一方で社会保障を必要とする人が増えてきている。直接くらしにかかわる重要問題。社会保障への住民負担の増がひいては社会保障を必要とする人を制度からはじきだしてしまって、さらに深刻な社会問題を引き起こす。そういうことにならないような改革が必要と考える。

 

1.行財政運営について

 国の新年度予算編成に向けての動向は厳しいものがある。地方交付税も前年度並みに確保できる見通しもなく、地方財政のいっそうの絞込みが予想される。

 17年度当初予算では、久々にプライマリーバランスとしては達成できているとしていますが、今後、赤字地方債の発行も視野に入れての予算編成をすすめることになろうかと思う。

 今、財政改革プログラムを、国の新行革指針にもとづいて見直し作業をすすめているということ。いっそう細かな内容のものになると思われる。

 私は、こういう厳しいときだからこそ、住民への情報開示と対話が必要。なぜなら最終的には住民が負担していくことになる。

 自治体では、住民と行政との信頼関係が大事。行政が住民に犠牲をおしつけてきているのか、自治体とみづからのくらしの将来のために必要な改革なのか、行財政改革をすすめる上で、住民の理解と協力は欠かせない問題。 

集中改革プランの作成にあたっては、職員数の削減や事務事業の見直し、単独補助金の見直しなどその内容について、削減する金額の裏付けとなる見直しの全体像、数字やテーマだけではなく、どういう具体的な内容を伴うのか、住民生活とのかかわりはどうなるのか、行政が決定したものを住民におしつけるのではなく、事前に明らかにして県民の意見を反映させていくことが必要ではないか。知事はどう考えている。 

 

 

2.社会保障について

社会保障アクションプランの作成作業がすすめられている。懸念するのは、このプランは財政改革プランの中で、社会保障関係経費の抑制のためとの位置づけになっており、受益と負担の適正化で経費の増加を抑制すると書かれている。負担と給付の公平性をはかりながらといわれるが、今、県民の生活が苦しさを増すなかで、いっそう税や保険料など社会保障経費の負担がふやされようとしている。 

税制改正や介護保険など制度設計の見直しによる低所得者負担の軽減や激変緩和の対策は第1義的には国の責任で行うべき問題、自治体としては、その制度による住民への影響はどうなっているのか、つぶさに見極め、必要な手立てをうっていくことが大事だ。それが知事のいうセーフティネットの役割を果たすということではないのか。所得に応じたきめ細かな配慮が必要。国に要望するにとどまっている。県が直接支援の手をさしのべていくことが重要だ。どう考えているのか。

また、受益と負担の適正化、負担と給付の公平の観点からだけでは、安定した社会保障制度を継続させていくことはできない。

社会保障制度の支え手を厚くしていく必要がある。現状は薄くなってきている。少子化の進行、常用雇用からアルバイト、派遣労働など不安定な就労状況となってきている。特に若年者の雇用環境の改善は安定した社会保障制度を維持していくためにも欠かせない問題だ、この点についてもどうしていこうとしているのか。