二〇〇五年九月県議会 松坂英樹 一般質問  質問と答弁(九月二七日)

1、アスベスト対策について

(1)  県民への影響、相談窓口での対応状況はどうか

(2)  学校施設等の調査状況について

(3)  アスベスト使用建築物の調査や対策へのたしかな情報提供を

《質問 松坂英樹》

 まず、アスベスト対策についておたずねします。できるだけ重複をさけた視点からお尋ねしますので、当局の答弁も重なる部分は簡潔に答弁をお願いいたします。

 このアスベスト問題は、国も甘い基準ながら対策が必要だという位置付けをし、一九七二年にはILOがアスベストによる職業ガンを公認するなど以前から指摘されてきた問題です。それが急に大騒ぎになってきたのは、この六月から国会でILOの「アスベストの使用における安全に関する条約」の批准が審議されるようになってからです。このILO条約は今から十九年前にできているわけですが、国は国内法の整備を怠って批准していませんでした。それが国会審議にかかったものですから、これまで決して表にでてこなかった被害実態が、クボタやニチアスなどのメーカー自らの手により公表されるようになりました。また、被害者の運動によりクボタ周辺の被害住民がテレビでも取上げられるなど、隠し切れなくなってきたということでもあります。政府の責任も重大であり、政府と原因企業による救済措置が強く求められています。

 私ども共産党県議団は去る七月二一日、木村知事に「アスベストによる健康被害の調査・救済と再発防止についての申し入れ」を行い、健康被害の正確な情報提供や企業への指導、実態調査と対策、公共施設や学校への対応、国への働きかけなど6点にわたって対応の強化をもとめてきたところです。

 私はこの間、子どもたちが通う小中高等学校や民間の事業所さんにも足を運び、実態と要望をお聞きしてきました。

 ある小学校では講堂の天井への吹き付け塗料にアスベストが含まれている可能性があるということで、専門業者に調査を依頼するとともに、子どもたちの使用や社会教育の貸し出しなどをストップしています。この学校では、県教委の調査と文部科学省の調査の指示にもとづいて、夏休み中に町の職員と業者さんが見に来てくれたそうです。音楽室が一番可能性ありということで調べたそうですが、ここは天井も整形品のボードが張ってあり「やれやれ大丈夫や」と安心したそうです。「そらそうと、講堂の天井をいっぺん見てくれやんか」と先生がお願いして講堂に行くと、業者さんが「こりゃ先生、こっちのほうが危ないわ。吹き付けや。いっぺんたしかめてもらおうか」ということになりその日は帰ったそうです。この講堂はけっこう古いものです。文部科学省は、設計図面で使用製品を確認しなさいと、いとも簡単に言ってくれますが、保管期限の切れた地方の古い建物の設計図など探すだけでもたいへんです。現場より設計図から入るというのは霞ヶ関の発想ですね。結局、設計図がみつかって「含有の可能性あり」ということがわかったのは2学期の始業式の前夜だったそうです。教育委員会と校長先生が緊急に話し合って、飛散しているということではないが、安全をとって調査結果が出るまで使用を止めようという判断をしたそうです。

 さてそれからがたいへんです。始業式もカンカン照りの校庭でしなければならず、校長先生の挨拶も超短かくしたそうです。しかし、雨が降ったら運動場は使えませんし、運動会にむけての練習が目白押しです。運動会の練習は、校庭とあわせて遠くはなれた公立の体育館まで町のバスで送迎してもらってやったそうです。しかし、送り迎えの時間にとられてしまいますし、これから音楽会など学校行事が連続します。校長先生は卒業式ができるのかまで心配しているそうです。一日も早い使用再開にこぎつけたいと願っておられました。

 また、別のある小学校は、体育館の壁への吹き付けが設計図面から「可能性あり」ということになり、使用中止の措置をとったということでした。ここでは時間のかかる含有調査とは別に、空気中の浮遊検査をまず行い、浮遊量がゼロという結果が出たとのことで胸をなでおろしていました。保護者からも「可能性がわかった時点ですぐに公表し、浮遊調査の結果も発表してくれた。対応がはやくてすぐに知らせてくれたので安心です」と喜ばれたそうです。

 またある中学校は、玄関エントランス・応接室・会議室などの天井吹き付け、美術室・図工室の天井裏の鉄骨への吹きつけなど10箇所が「可能性あり」ということで専門業者に調査に出していました。案内された美術教室・図工室の天井はボードが張ってあり、「おかしいなあ、普通教室といっしょで整形品なのになんでかな」と始めは分からなかったのですが、よく聞いてみるとその特別教室は後で増築した教室で、普通校舎のような鉄筋コンクリートではなく鉄骨の建物だったのです。だから天井裏に吹き付けがあったのです。

 「目視で確認してください」「図面で確認してください」と簡単にいいますが、専門家でもない者にとって、特に子どもたちをあずかる現場の責任者はたいへんな責任の重さを感じておられました。

 また私は、「県からアスベスト調査の書類を送ってきたんやけど」という小さな民間事業所にも足を運びました。「倉庫の2階が事務所になっているので耐火構造にせなということで一階の鉄骨に綿状のふきつけがされてるんや。ロックウールやから大丈夫やろと皆言うんだが、設計図といわれてもワシわからんし、調査するにもどこへ出したらええんや?金もかかるんやろう?それでもしアスベストが入ってるとなったらおおごとや。改造にもえらい金がかかる。役所が建築基準かなんかでコレ使えと決めておいて、そのとおり使ったらあとでアカン、やりかえよってそんなんワシとこ皆かぶらんなんのかえ」とおっしゃいました。ごもっともな話だとお聞きしました。

 私がこの間回らせていただいて感じたことは、「何をいったいどこまで調べたらいいのかよくわからない」「調査するにも専門業者がない、あっても満杯」「あるとわかったらどれだけの対策が必要なのか見通しがつかない」「お金もどれだけかかるかわからない」というように、アスベスト対策のガイドラインやマニュアルも監督官庁によってバラバラだという中で、具体的にわかりやすく県民の不安に答える必要があるということでした。そこで以下三点についてまずお尋ねします。第一に、健康被害の問題など、県民への影響と相談窓口での対応状況については福祉保健部長よりご答弁を願います。次に、学校施設などの調査方法や状況については教育長にご答弁を願います。そして第三に、調査マニュアルや関係者へのアドバイスなど、アスベスト使用建築物の調査や対策への確かな情報提供が必要だと思いますが環境生活部長の答弁をお願いします。

《答弁 嶋田正巳 福祉保健部長》

 県民への影響、相談窓口での対応状況につきましては、七月八日、各県立保健所に相談窓口を開設以降、九月十五日現在、一八八件の相談に応じました。その相談内容としては、「住宅及び施設に使用されている建材に関する相談」が多く、その他、健康影響不安に関する相談としては、アスベストが原因で発症する病気に対する不安や専門医療機関についての問合せがありました。

 県といたしましたは、引き続き健康相談に応じるとともに、肺がん検診の受診率向上や精度の向上、正確な情報提供により、関係機関と連携し、県民の健康不安の解消と健康状態の把握に努めてまいりたいと考えております。

《答弁 小関洋治 教育長》

 アスベスト対策についてお答えします。学校施設の吹付けアスベスト等の使用については、これまでに各議員にお答えしましたとおり、児童・生徒の安全確保の観点から、県独自の第一次調査と文部科学省依頼の調査を実施し、現時点で、アスベストを含む吹付けが判明した学校では、当該個所について、使用禁止を継続しているところです。

 文部科学省調査は、特に、有害なアスベストが全面的使用禁止となった平成八年度以前の建物で、学校および社会教育施設等を対象に行っております。

 その実施にあたっては、各市町村の担当者に対して、対象となる部材や疑問点などが生じた場合の対処方法についても、詳細に説明をするなど、調査の徹底と統一を図りながら進めている所であります。

《答弁 楠本隆 環境生活部長)

 アスベスト使用建築物の調査や対策への情報提供についてでございます。吹付けアスベスト等の対処方法についての情報提供といたしまして、既に県のホームページにアスベスト関連情報を掲載し、県民の皆様方への周知・啓発につとめているところでございますが、更に、県民向けのアスベスト取り扱いマニュアル等を新たに作成をいたしまして、市町村および建築関係団体等関係者に配布する予定にしております。

(4)  アスベスト使用建築物の改修・解体・撤去に際しての適切な指導や立入調査について

(5)  アスベスト対策の条例改定について

《質問 松坂英樹》

次に、今後は老朽化したアスベスト使用建築物の解体が予想されますから対策をする必要があるわけですが、特に目の前の課題として公的施設等のアスベスト撤去・改修がすぐにもラッシュとなります。大気汚染防止法、労働安全衛生法、廃棄物処理法、建設リサイクル法などいくつもの関係法律が入り組みます。子どもたちを始め施設利用者の安全、周辺住民・作業員の安全確保にきっちりと取り組まなければなりません。この点では正確な事前指導がされ、現場や処分地への立入検査ができる用意はできているのでしょうか。

アスベスト使用建築物の改修・解体・廃棄に際しての適切な指導や立入検査について、並びに昨日追加提案されましたアスベスト対策の条例改定について、考え方や対応を環境生活部長よりお答え願います。

《答弁 楠本隆 環境生活部長》

 アスベスト使用建築物の改修・解体・廃棄に対する指導や立入検査についてでございます。本年七月に、建築物の解体にあたって飛散防止の徹底を図るために、県建設業協会および県内産業廃棄物処理業者など関係業者に対しまして、大気汚染防止法および廃棄物処理法など遵守について指導を行なったところでございます。

 更に、八月より随時、非飛散製アスベスト廃棄物処理事業場に対し、立入調査を実施している所でございます。

 また昨日、大気汚染防止法で適用除外となっております小規模な建築物の解体作業に対する規制を徹底するため、県公害防止条例の一部を改正する条例をお願いしている所でございます。今後とも、適正処理について事業者を監視・指導し参る所存でございます。

次に、今回改正する県公害防止条例の内容についてでございます。現行の大気汚染防止法におきましては、「延べ床面積五百uかつ吹付け赤面の使用面積が五十u以上の解体工事」につきまして、知事に対する届出が義務付けられているところでございます。

しかしながら、小規模な建築物の解体工事につきましては適用外となっておりますため、これらの解体における飛散の防止を徹底するため、面積要件の撤廃等を盛り込んだところでございます。

(6)  アスベストの除去、改修にあたっての補助制度や支援について国にもはたらきかけ、県としても検討すべきではないか

《質問 松坂英樹》

 次に、アスベストの除去・改修にあたっての補助制度や支援についてお伺いします。

 アスベストの含有量調査をするにも、一箇所三万円かかる、いや今は五万円だなどといわれています。発見されたアスベスト材を撤去するにも、場合によっては部屋をビニールでつつみ、一台数十万円もする集塵機を使い、宇宙服のような格好で作業し、別室のクリーンルームまで作ってそこで着替えたりしなければならないといいます。アスベストの調査や除去、その上にもとどおりに使えるようにする改築費用がかかるとなれば、財政難になやむ地方自治体は頭をかかえ、不景気であえぐ中小業者にとっては命取りになりかねません。ぜひ国に対して特別の財政支援策を早急に講じるよう要望すべきです。そして県としてできることはすぐに始めるべきです。

 島根県ではアスベスト除去等対策資金の創設を決め、この九月十六日から受け付けをはじめました。埼玉県では彩の国環境創造資金制度の活用を発表するとともに県内民間金融機関にも低利融資の要請をしました。また東京都内では、千代田・中央・新宿・渋谷・品川・港区などが中小企業向けにアスベスト除去だけでなく除去後の機能回復工事も対象とした融資制度を拡充し、民間住宅にむけては除去工事への融資をはじめアスベスト調査・除去費用の二分の一を助成することまでふみこんだ自治体も出てきました。

 和歌山県としても既存の事業が活用できるもの、既存の事業の枠を拡大して対応できるもの、新たな支援策を講じるべきもの、これらをタイムリーに打ち出し、また県民に早く知らせ、県民の不安解消と適切な対策工事の実施に力をつくすべきではないでしょうか。知事ならびに教育長から答弁をお願いいたします。

《答弁 木村良樹 知事》

 まず、アスベストの問題ですが、昨日条例案を追加提案して、和歌山県も一層先進的な県に踊り出たわけですけども、これは条例案だけではいけないので、実質的に健康を守るような対策を色々とっていかなければなりません。

 それからまた、対象施設をもっている人にとってお金がかかるということも事実だと思います。現在も制度融資等で対応できる部分はあるんですけども、これはまた他県の状況などを見ながら県も積極的に進めていく必要があると思います。国のほうもこれだけ全国的に大きな話になったので色々な制度を検討しているところと思いますが、県のほうも引き続き働きかけを強めていきたいと、このように思います。

《答弁 小関洋治 教育長》 

今後、除去等の対策を講じる場合は、現行の国庫補助制度とは別に予算措置をとる必要があるため、新たな補助制度の確立について全国都道府県教育委員会連合会と連携を取りながら国に対して働きかけてまいりたいと考えております。

《要望 松坂英樹》

アスベスト対策で三点要望をいたします。今回の質問ではアスベスト使用している建物の対策を中心にお聞きしましたが、健康被害での県民への影響については、調査・救済にむけてぜひ取り組みを強化していただきたいと思います。

 県内にはアスベスト製造工場はわずかでありましたが、住友金属はじめ大規模な工場もたくさんあるわけで、住友金属の労働者からは、工場内いたるところの配管の断熱用にアスベストを長い間扱ってきたという下請け業者さんのことや、大型クレーン操作の方からはアスベストを使用したブレーキライニングこの音を聞きながらクレーンを操作するそうですが、このブレーキライニングが3週間で20ミリもすりへる、その粉塵の中でずっと作業してきたことなどが報告されています。

県内で中皮腫でなくなった方がこの九年間で四九人ということですが、アスベストとの関係は県では分からないという担当課のお話でした。しかし、労働災害の分野は国の仕事だからということでちょっとよそごとのような感じもました。もっと県民の健康と命にかかわる問題として、今後とも被害者の救済と県民の今後の健康対策にしっかりと取り組んでいただくよう要望しておきます。

第二点目に、アスベスト使用建造物への対応についてですが、調査や対応についての県民向けの新しいマニュアルも作るという答弁をいただきました。ありがとうございました。その上に立って、撤去や改修にあたっての指導と立入調査について要望しておきます。廃棄物関係の立ち入り調査にはふれていただいたのですが、撤去・改修現場の指導や立入調査はもっと構えてかからないとダメだと思います。大気汚染防止法にもとづいて立ち入り調査をするというのですが、私調べてみますと、九年間でわずか二五件だったと聞いています。これくらいなら実地の指導も立ち入り調査もできるでしょう。ところが今度の条例改正で面積要件をなくして小規模のものまで目配りをすることになる、こうなると数も膨大ですし、なによりラッシュになることが予想されます。対策会議でもよくつめて、関係期間ともよく協議し、人的体制も含めてしっかりとした対策ができるようして、作業員の方の安全や利用者の方・周辺住民の方の安全を確保されるよう強く要望しておきます。

三点目に、建物の調査・撤去・改修への支援についてですが、木村知事からは積極的にすすめてゆくという答弁がありました。国の方向性を見定めながら、県としては既存の事業を積極的に活用してゆくとのことでした。これは中小企業振興対策資金の環境枠や小企業応援資金のことをイメージされての答弁だとおもいます。また教育長からは今ある補助制度以上のものをしていかなければならないということだったと思いますが、学校関係では昭和六二年のアスベスト対策での四百万円以上の工事への補助制度があるわけですが、それ以上のものが必要だと感じての答弁だと思います。しかし、アスベスト対策会議ではまだここらへんの「どういう支援が使えるか」という所まで会議のテーブルにのっていなかったと思うんですね。ぜひ、こういった支援策が活用できると言う事を県民や中小業者のみなさんにもアピールしていただき、また国に対しても自治体や住宅向けの財政支援をぜひ強くせまっていただけくよう要望します。

2、土砂埋立てや残土処理の管理規制について

 (1)  湯浅町山田山における過去の不法投棄現場への新たな土砂・残土搬入計画に対する対応について

(2)同計画地に表示されているような「老人ホーム」計画はあるのか

《質問 松坂英樹》

 次に、二つ目の柱、土砂埋立てや残土処理の管理規制についての質問にうつらせていただきます。

 今から四年前の十月、湯浅町の山田山において畑の造成を名目に、残土へ産業廃棄物を混入して投棄したとして、廃棄物処理法違反で業者が逮捕される事件がありました。私は以前の質問で、この問題等を示しながら環境保全のための条例制定をすすめるべきだと求めてきました。混入された廃棄物は掘り起こされましたが、それは確認できた分だけであり、二十万立法メートル、十トントラック三万三千台分という大量の土砂が今も谷間に積み上げられたまま放置されているのが現状であり、水質検査をして監視をつづけています。環境の面からも災害の面からもこういったことを繰り返させないための行政の対応が求められてきました。

 ところが、この過去に事件のあった問題の土地に新たな残土搬入の動きが昨年暮れから始まり現在にいたっています。お配りしているよう資料のような看板が、山田川ぞいの入り口だけでなく、切り立った山の上の広川町町道側にもつけられて、建設機械が入って工事をはじめました。あっという間にプレハブ小屋が建ち、ダンプの足洗い場ができました。現地立ち入り調査にいった保健所に対して現場にいた県外の業者は「近く残土を入れる予定だ」と返事を繰り返しています。

写真の看板をご覧下さい。「湯浅老人ホーム建設予定」「マサ土販売」「良質残土受入」と口上を並べていますが、要は残土を搬入するということです。よく平気でこんなこと書けるものです。「土佐犬注意」などともあり、まさに威圧的な態度で文句をいうなという態度です。この業者は伐採届も出さずに入り口の斜面を切り開きはじめましたから、保健所・振興局・湯浅町が連携をとって現場に入り、届出が必要な事や廃棄物が投棄されないようにすることなどを指導し、連日監視を続けてこられました。おかげで不法投棄や無茶な工事をされるまでにはいたっていませんが、決して安心できる状況ではありません。

湯浅町はこの事態を重く見て、生活環境の保全と災害の防止を目的とした「湯浅町土砂等による土地の埋立て等の規制に関する条例」を3月議会に提案し、議会が慎重に審議して六月議会で成立、八月から施行されています。

私はこの地元区の区長さんにお会いして、ご要望をお聞きしてきました。区長さんからは三年前の残土問題の時の苦労が出されました。区としても「あんなに土砂をたくさんほりこんで大丈夫か」と心配したが、どうにもならなかった。何度も区の会ももった。業者にやめてくれと言っても、「いやなら山の上から土を入れる」と言われ、急な谷の上から土砂を入れられると災害の危険性がよけいに高くなると思い、それ以上のことを言えなかったこと。臭いがひどいと訴えに行くと「わしら命はほしくないんや」と逆にすごまれて恐怖を感じたこと。最後にはエコポリスの手によって不法投棄の証拠が抑えられて止まったわけですが、地元区長さんは「もう前回の二の舞いをふんではならない、前回詰めきれなかったこと、たとえば不法投棄の証拠が出るまで手が出せなかった事や土地所有者の責任とか、そういう教訓をもとにこんなことが今後おこらないようにしてほしい」とおっしゃいました。災害のおそれという点では、区長さんご自身も昭和28年の水害を経験されていて、万一あの大量の土砂が崩壊して山田川をふさぐと、土石流となって下流はたいへんなことになるのではと心配されていました。

この湯浅町山田山における過去の不法投棄現場への新たな土砂・残土搬入計画に対して県はどう対応してきたのか、また看板にあるような老人ホームの計画はあるのかないのか、環境生活部長・福祉保健部長より答弁を願います。

《答弁 楠本隆 環境生活部長》

 湯浅町山田山における土砂・残土搬入計画への対応についてお答えします。

 昨年の十二月頃から、過去に不法投棄が行なわれた現場付近において、議員ご指摘の開発の動きが見られることから、現在、休日を含めた監視体制を強化しながら、湯浅町、地元警察など関係機関が連絡して、注視しているところでございます。

 今後も引き続き、廃棄物が不法に投棄されないように、産業廃棄物適正処理連絡会議等を通じて、関係機関がより一層連携を深めまして、関係法令の適用により、未然防止に努めてまいりたいと考えております。

《答弁 嶋田正巳 福祉保健部長》

 湯浅町の山田山における「湯浅町老人ホーム」につきましては、そのような建設計画を、現在のところ、県としては了知してございません。

《要望 松坂英樹》

今回取上げた山田山の件ですが、この山田山周辺はは湯浅町と広川町、吉備町、金屋町とつながっています。特に今回紹介した広川町の町道側は広川インターを降りたら、民家の前をたった一軒しか通らずに山の中に入ってこれる道なんですね。地域住民の監視の目がとどきにくい道なんです。この先金屋町側にも道路が伸びる予定です。この地域については今後とも不法投棄を未然に防止するために、監視を強化していただくようお願いをしておきます。そして過去の不法投棄現場への進入路として山田川にかけられている仮橋は占有許可期限が切れたまま放置されているという状態です。この問題への対応も引き続きお願いをしておきたいと思います。

(3)  新宮港など県外からの土砂搬入について

《質問 松坂英樹》

さて、先の問題とは別に、先日新宮港にこの間荷揚げされている土砂について住民から相談がありました。村岡議員も現地へ調査に出向いたのですが、その土砂の成分分析によると普通の山や畑の土はPH四4ぐらいなのにPH十一、七というたいへん強いアルカリ性であり、専門家の意見としては建設工事の現場などでやわらかい地盤を硬くするためにセメントなどを混ぜた時にできる改良土のようなものがまじっているのではないかとのことでした。私どもがこの新宮港における本年一月から七月の土砂の荷揚げ実績をしらべてみると、全部で十九回の入港のうち、八回が大阪から、残りの十一回が遠く神奈川県の川崎港からのものでした。これら土砂は建設資材につかうための土砂ではなく、ただ埋め戻しをしているだけというんですね。私は、はるかとおい神奈川県からなぜわざわざこの和歌山まで土砂を捨てにこなければならないのか不自然さを感じています。

そこで新宮港など県外からの土砂搬入についておたずねします。県外からの土砂搬入は大阪方面からのトラック輸送がほとんどだと思いますがこれは把握できる仕組みがわが県にはありません。ただ船は入港時の記録があると思います。船によって県外から運び込まれている土砂の量はどうか、また新宮港に入荷したこの土砂をどうみているのか、県土整備部長と環境生活部長より答弁を願います。

《答弁 宮地淳夫 県土整備部長》

 本件港湾の公共岸壁において、県外から土砂として搬入されているものは、平成十六年度では、和歌山下津港で約二千トン、日高港では約二千八百トン、新宮港においては約二万八千トンとなっております。

 また、平成十七年度につきましては、八月末現在で新宮港において、約四万トン搬入されております。

《答弁 楠本隆 環境生活部長》

 新宮港における県外からの土砂搬入のうち、廃棄物処理法との関係について、お答え申し上げます。

 当該土砂が陸揚げ後、三重県内へ搬出されております事から、三重県の廃棄物関係部局とも連絡を密にいたしまして、そのものが産業廃棄物に該当しないかどうかも含めまして、現在調査中でございます。

(4)  環境保全・不法投棄未然防止・災害防止の観点から、土砂の埋立てを条例により管理・規制すべきではないか

《質問 松坂英樹》

私はこういった土砂の埋立てに関するルールづくりが全国的にはどうすすんでいるのかを調査に千葉県へ行ってきました。千葉県が全国ではじめて土砂の埋立てに関する条例を作ったのが8年前です。その先駆的な役割や残されている課題もふくめて県の担当者の方からお話を伺いました。その中で、首都圏の産業廃棄物や土砂・残土が千葉に大量に運び込まれていること、また土砂に関しては県外からの土砂搬入の7割が東京都と神奈川県から持ち込まれていることもデータでいただきました。千葉から良質の山土を販売するために船で運び出し、カラで帰ってくるのはもったいないので、建設残土や浚渫土、改良土などが運びこまれているという実態だそうです。

全国でも十四の都道府県、和歌山県内でも十三の市町村が条例を制定して秩序あるルールの確立をめざしています。条例の整備をはかるタイミングとしては決して早くはないし遅いぐらいです。

すでに整備された条例を調べてみると、一定規模以上の土砂を埋立てたりするときには、どこの土砂をどこへどれだけもって行ったのかがキチンと記録される事、埋立て全体計画を明らかにすること、環境や災害にかかわって配慮や対策がとられること、地元の同意が得られる事などが大事だという思いを強くしました。

過去の例のように、ダンプで一日何十台も土砂が運び込まれるのに、だれが運んでいるのかも、どこの土かも、どれだけ捨てられるのかも、誰も正確にわからないし、大雨による土砂災害も心配、それなのに住民も行政も、不安をかかえながら手をくわえて見ているだけしかないというのではダメです。土砂や残土処理を適正に管理・規制する条例整備にふみ出すべきだと考えます。

木村知事にお尋ねします。環境保全、不法投棄未然防止、災害防止の観点から、土砂の埋立てを条例により管理・規制すべきではないでしょうか。ご答弁をお願いします。

《答弁 木村良樹 知事)

 「土砂の埋立てに関する条例」ですが、県内市町村が実情にあった誘導や規制を目指して条例化しておりますが、県についても、ご質問にありますよう、いろんな県が既にやっているところもあるわけですから、前向きに検討していきたいと考えております。

《要望 松坂英樹》

  土砂埋立てに関する条例整備についてですが、知事からは他県の状況もふまえて前向きに検討してゆくとのご答弁をいただきました。ありがとうございました。

 二年前の六月議会で、環境面からこの問題を質問した時には「必要性・有効性について研究していきたい」という答弁をいただきましたが、一歩踏み込んだ前向きの答弁をいただいたと歓迎するものです。ぜひこのルール作りに向けて具体的に作業が進むように期待するものです。

 答弁の中でも市町村の条例化の話があったわけですが、今回の無茶な土砂搬入の動きがあって、湯浅町の相談をうけて県は町条例を作るように指導しました。それで今度は広川町側が危ないので広川町にも同様の条例をつくってもらったらいいと考えているといいます。しかし、こういうことを続けているとモグラタタキみたいでうまくないと思うのです。

今回、全国的にも首都圏を始め西日本にもこういう土砂埋立ての条例ができてきた、遠いところからわざわざ土砂が県内まで来るようになった。部長の答弁では新宮港は昨年二万八千トンだったのが今年になってすでに四万トンだということでずいぶん増えてきているのですが、県内の町村では条例整備ができた紀ノ川筋では一段落し、条例整備ができていない南の方へとの問題がうつってきている、こういうことだと思うんですね。

これを解決するには、基本的な土砂の埋立てのルールは一定の規模要件以上は県が網をかける、それ以下の小さな規模のものや、地域の特性にあわせて規制の厳しさをかえるなどは市町村の判断でドンドンやってもらって市町村の独自条例を優先させる、そういう体制を早くつくるべきだと思うんですね。知事はじめ関係部局の今後の具体化への努力を強く要望しておきます。

3、広川町「津波防災教育センター」(仮称)について

(1)  事業概要と特色

(2)  広川町との連携・役割分担について

《質問 松坂英樹》

 三つ目の柱である、広川町「津波防災教育センター」についての質問にうつらせていただきます。

 今議会に提案された補正予算案の中で、津波防災教育センターの整備として本年度予算として約四千万円、債務負担行為として二億一千万円が計上されています。

私は二年前の六月議会、県議会での初質問でこの津波防災教育センターへの県の支援をと提案させていただきました。知事からは積極的な答弁をいただき、その後、町立とか県立とかにこだわらずにいっしょになって事業をすすめようとのことで準備をすすめ、国の補助制度にも第1号として指定され、広川町三億七千万円、国が二億五千万円、県が二億五千万円をそれぞれ分担して建設が実現する事となりました。県の二億五千万円は津波の恐ろしさを体感することができる3D映像のソフト・ハードの整備費用だということです。ご尽力いただいた関係者の皆さんに改めてお礼を申し上げます。

東南海・南海地震への住民の備えとして、科学的な地震・津波への知識とともに、3Dを駆使した現実のものとしての体験や「稲むらの火」のような物語として感性と心に訴えることもたいへん大事です。頭にも心にもズシンとひびく施設として、津波から命を守る記念館・津波防災教育センターとしてのその役割を存分に発揮していただきたいと期待をするものです。

 また一方で、今回作成する映像ソフトもこの先同じものばかり上映し続けるわけには行かなくなると思います。企画展の展示なども含め、新しい内容を加えてゆく必要も出てくるでしょう。こういったソフト面の更新・ハード面のメンテナンスも必要です。この津波防災教育センターを県と町が共同して整備をすすめてきた積極面が生かされ、県のもつ専門性やネットワーク、そして地元自治体による地域とぴったりつながった運営というふうにそれぞれの力を出し合い、いっそうの連携や役割分担についても、今後広川町とよく相談して進めてゆく必要があると思います。

 「津波防災教育センター」の事業概要と特色について、並びに広川町との連携・役割分担について危機管理監からご答弁をお願いしまして、私の第一回目の質問を終わらせていただきます。

《答弁 石橋秀彦 危機管理監》

  津波防災教育センターは、地震や津波に対する備えを教育啓発する事を目的に、広川町と県が共同で建設し平成十八年度末に、完成する予定になっております。

 本センターは、浜口梧陵記念館と同敷地内に三階建て、延べ約一千二百uとなっており、災害時には、海に近い周辺の避難住民のうち高齢者等いわゆる要援護者約二百名を収容できる施設となります。

 また、これらの津波避難機能のほか、防災教育機能、備蓄機能を有し、平成17年度内閣府の地域防災拠点施設整備モデル事業の採択を受けております。

 本施設の特徴は、日本でも初めての地震・津波防災教育に特化した施設であり、最新の技術を駆使した3Dハイビジョン映像により津波の怖さを体験できるほか、「稲むらの火」や浜口梧陵翁の精神を機軸に防災の重要性を県内の子ども・住民のみならず国内外にむけ発信する施設となっております。

 次に広川町との連携・役割分担についてでありますが、県が持っている防災に対する情報やノウハウを施設整備や展示内容に活かせるよう、設計段階から町と共同で進めており、まさしく県と町の施設整備として、他県には類の見ない取り組みをおこなっているところであります。

 また、完成後の管理・運営については、同敷地内に整備中の浜口梧陵記念館と一体的に行なう事が効率的という考え方から、広川町に委託したいと考えておりますが、本センターの利活用等につきましても、町並びに関係機関と連携を図りながらすすめてまいりたいと考えております。

*注意 この文書は、一般質問の発言原稿と県庁内でのテレビ放送を元にして加筆・編集したものです。正確な議事録は後日発行される予定ですのでご了承ください(約二ヵ月後)。