2005年12月8日、村岡キミ子議員の質問と答弁(大要)

1、アスベスト対策
  (1)    民間事業所におけるアスベスト使用
      大量に使用してきた事業所への指導
      住友金属労働者、退職者、周辺住民の健康不安
(2)      現行の救済制度が適用されない健康被害者への対応
(3)      健康被害の救済にかんする新法への県民の実態反映を 

はじめにアスベスト対策について、質問いたします。

この問題で県においては、県有施設使用状況調査や、除去工事がすすめられ、民間建築物についても使用状況の調査、除去費用への融資制度の創設などがおこなわれてまいりました。公害防止条例の1部改正によって、建築物の解体等においてアスベストの飛散を防ぐ措置がとられたことや、融資制度は近畿で初めての特別融資であったことなどは評価したいと思います。保健所における健康相談もおこなわれ、11月18日現在で238件の相談が寄せられているとおききしています。

 県の施設については、今議会の補正予算案で、除去工事の費用も計上されているところですが、今後はいま県で調査されている民間の事業所の実態把握と対応がよりいっそう求められると考えます。

 知事からは、民間建築物の使用状況調査の結果、1039件の報告のうち113件に露出した状態でのアスベスト吹きつけなどが確認されていると説明がありましたが、これらにどのように対応されているのか、お聞かせください。

 アスベストを大量に使用してきた住友金属などで働く労働者から、いくつか訴えがありました。このことを紹介し、質問いたします。

 その方は、9年間、アスベストを使用する職場にいたということです。溶けた鉄を入れる取り鍋の下にノズルがあり、保温のためにスカート状にアスベストを巻いたりして使っていたということです。手で触っても大丈夫なくらいに冷めて、アスベストを捨てるときには飛び散ったといいます。初めの3年くらいは市販のマスクをつけていたそうですが、その後は防塵効果のあるマスクが支給されたということです。最近、咳や痰がよく出るので不安だとおっしゃっていました。

 住友金属のなかではこのほか、クレーンのブレーキシューなどでも使用されてきたということもおききしています。

もともと鉄鋼の職場では、アスベストの使用規制が例外扱いされてきたところに問題があると指摘されているところです。

ことし7月20日付けの新聞各紙は、鉄鋼メーカーのなかで、過去10年間に中皮種で亡くなった人が14人あったことを日本鉄鋼連盟が発表したと報じました。連盟の会長は、製鉄所の配管用の代替品に切り替えていく計画を前倒しですすめていく方針を明らかにしたとも伝えられていますが、早急にすすめていくことを希望するものです。

住友金属においても、事業所の責任で代替品への切り替えと労働者の健康管理にとりくまれれることが重要だと考えます。

住友金属などアスベストを大量に使用してきた事業所の実態は把握について、調査結果をお示しください。それについての指導や要請は、どのようにしてこられましたか。

さきに紹介したような健康への不安をお持ちの方は大勢いらっしゃると思います。現在働いている労働者、そしてOB、さらに周辺住民もふくめた対応が必要だと考えます。住友金属の対応について、どのように掌握されているでしょうか。環境生活部長からお答え願います。

アスベストについてはもう1件、日本共産党県議団へ、和歌山市内にお住まいの70歳の女性から、電話がありました。

50年ほど前、20歳のころに3、4ヶ月だが、アスベストを扱う仕事していたことを思い出し、不安になって労災病院で診察をうけ、CT検査の結果、石綿肺、「じん肺」と診断された。私と同じような人がいるのではないか、というお話でした。

その方は、有田の初島にある会社のなかで、朝8時半ごろから午後5時ごろまで、石綿をハンマーで砕いて袋に詰める仕事をしておられたそうです。

17年ほど前に胃がんの大手術をして、定期的に検査をしてこられましたが、主治医から2年ほど前、「肺がきたない」といわれたことがあったそうです。その後、石綿でも吸ったのか、といわれたことがあったそうですが、そういわれてみれば短い期間だがそんな仕事をしたということを思い出したということです。

そしてことし夏、新聞,テレビでアスベストによる健康被害がとりあげられるなかで不安になり、新聞をみて労災病院に専門の医師がいることを知って診察を受けられました。らせんCTの検査の結果、「石綿肺」、「じん肺」の所見が認められ、半年に1度、検査するようにといわれました。

そして、診断書をもって、労働災害の相談で労働局を訪れました。

勤めていたのは大手の会社の下請けであったことは確かであるそうですが、会社名はもちろん、雇用主も覚えていない。従業員は2人だけという、ごくごく小さな作業所だったとしか覚えていないということでした。労基局では、そのため、その女性が確かにアスベストを吸っていたという証明は不可能で、現行制度の適用は無理といわれ、健康管理手帳さえも申請できない現実があります。労災対策の枠を超えた緊急対策が求められるところです。

女性は17年前の大病は精神的にもしんどかったが、そこからやっと立ち直ったと思ったら、また、思いがけないことになった。なんと運の悪いことか。いや、50年なにもなかったんやからよかった、と思えばいいのかもしれんけど、いつ発病するか不安になる。不安は尽きない思いを訴えられました。潜伏期間の長いアスベストにかかわる疾病は、その変化を医学的に把握することが、健康管理をすすめるうえで重要なことだと考えます。

そこでおたずねします。この女性のように現行制度が適用されない県民の健康被害にたいする救済措置を求めたいと思います。年2回の健康診断が必要です。かかる費用は、医療保険適用になるのでしょうか。もし、保険適用外であれば、1回2万1千円の負担が必要です。この女性は、月3万円の国民年金でくらしています。こうした人への救済措置を国に求めることは当然ですが、ぜひとも県としての対応を検討していただきたいと思います。福祉保健部長の見解をお聞かせ願います。

この女性は、同じような不安をかかえている人はほかにもあるに違いない。そんな人たちと連絡をとりあいたい、情報がほしい、こういうお気持ちだとおっしゃていました。

政府は、来年の通常国会には、健康被害の救済にかんする新法を提案するとしています。先月29日に発表された仮称「石綿による健康被害の救済に関する法律案」の大綱では、救済する被害者を、石綿が原因と認定された「特定疾患」の患者とその遺族とされていますが、特定疾患の範囲は明記されていないことや、救済費用については、国、アスベスト関連企業の負担額は明示されていないなど、解決すべき課題は多いといわざるをえません。

和歌山県内で起こっている県民の不安にこたえられる救済となるよう、県としても県民への十分な情報提供と実態の把握につとめ、法律制定にたいして、すべての被害者が救済されるよう政府に強い姿勢で必要な意見をあげることを求めたいと思います。環境生活部長の答弁をお願いします。

 

《答弁 楠本隆 環境生活部長》

 

民間事業所の調査は、県と公害防止協定または環境保全協定を締結している住友金属工業をふくむ5事業所を対象に実施した。飛散性の高い吹き付けアスベストについては大部分が除去されている。1部は分析調査中。保温材やスレート等の含有建材については、順次代替えをすすめるなど対策を講じている。

民間建築物では現時点で113棟において、アスベスト含有の可能性があり、除去等の対応がされていない97棟について、状態の確認をしたうえで、適正な保全管理や除去等の必要な措置を促すなどの指導をしている。

労働者の健康不安については、住友金属では、過去にアスベストを使用していた退職者から問い合わせがあった場合等には、健康診断を実施している。現従業員は、アスベストの取り扱い状況の有無も確認し診断しており、現在、労災認定の対象になるような健康被害はないと、聞いている。

また、周辺住民から被害の情報はない、とも聞いている。国との連携を強化し、今後も適切にとりくむ。

国が示した健康被害の救済に関する基本的枠組みのなかでは、被害者を隙間なく救済するしくみを構築するため、労災補償の対象者以外のもので、石綿を原因とする中皮種、肺がんにり患した者およびその遺族であれば幅広く救済できるときいている。

全国知事会では、10月27日、治療等の早急な実施、健診、医療費補助等の措置などを盛り込んだ緊急提言を国へ要請した。県としても、法律の動向を注視し、機会あるごとに必要な意見を申し上げていきたい。

 

 

《答弁 嶋田正巳 福祉保健部長》

 

 精密検査の結果、異常が認められる方の経過観察のためにおこなわれる検査については、医療保険の対象となる。


2、 住友金属の下請け業者の保護を
   (1)下請けの単価引き上げ要求は切実。地域経済と雇用をまもるために下請け企業の実態調査を


 つぎに、下請け業者保護について、雇用と地域経済を守る観点から質問いたします。

 11月29日、総務省が発表した労働力調査によると10月の完全失業率は4.5%となり、前月とくらべて0.3%悪化しました。近畿2府4県の有効求人倍率をみると、和歌山は0.76と最低で、地域経済と県民の雇用問題の深刻さをあらわしています。

 県経済に大きな影響力をもつ県内最大の企業である住友金属の下請け業者の状況について県行政としての対応を求めるものです。

 99年から始まった住友金属のリストラは県民に大きな不安を広げました。当時の西口知事は住友金属の社長と会談し、要請文を手渡しました。西口知事は「一言不満を申し上げたい」ときりだし、「経営改革プラン」という名のリストラ計画の、県への事前の説明が不十分だったと指摘したうえで、関連企業の進出や新たな産業へのとりくみを要請したと当時の新聞は報じています。

 当時、下請け業者の間では、「30%のコスト削減」、つまり下請け単価の削減ということですが、これができなければ取引停止になる、という不安が広がりました。

 いま、下請け業者のみなさんからは、当時住友金属は取引停止というようなことは一切ないということともに、業績が回復すれば下請け単価の見直しをすると約束したのではなかったか。約束が守られているといえるのか。こういう声があがっています。

 99年には関係会社、元請会社、下請け企業があわせて200社を超えていたとされますが、いまでは関係・元請会社は約半数に減少、下請け企業も廃業が相次ぎ、あわせて60数社が廃業や撤退に追い込まれているとききます。住金に残れた下請け企業では、大幅な人員の削減と労働条件の切り下げが労働者に押し付けられているという訴えが寄せられています。

 労働者と下請け企業、職場の日本共産党が下請け単価を元に戻せと運動をするなかで、住友金属は生産ラインをになう作業請負では、昨年来、10%を超える単価引き上げが実行されました。設備の保守・点検をになう工事請負においても引き上げたというのが、住友金属の説明ですが、下請け業者の声としては、現実はなかなかそうなっていないということです。製鉄所の所長が2次、3次の下請けにも配慮を求めたということに、現状が示されていると思います。元請のところで上がっても、住友金属が100%出資の関連会社を発注者とする入札制度のもとで、引き上げ分が下請けまでは回らないというのが実態で、経営の困難は深刻だとおききしています。

 以前の入札では、いい技術をもっている企業をみきわめるという意味があったが、いまは設備保全の費用をカットするためのものになってしまっている、という怒りが関係者から寄せられています。

 保全の費用については、住友金属が経営改革プランを発表した当時、10月20日付の鉄鋼新聞では当時の製鉄所所長が、設備保全では、コストミニマムに移行する。定期的な修繕という考え方をなくしたい、とのべて、コスト削減を明言してきた経過もあります。定期的な修繕は現在、おこなわれつつありますが、設備のトラブルはしばしば発生しているといいます。しかし、単価が低くて、地元の業者はやりたがらない。これでは、地元経済の活性化にも、業者の育成にもマイナスだという点からも、単価の改善が必要ではないか、などとした声が寄せられているところです。

 住友金属は11月9日、史上最高の1732億円の経常利益をあげ、来期も2500億円もの利益が見込めると発表しています。

 しかも、「壮大な実験だった」と幹部が語る多角化事業の失敗などで、1兆6千億円を超えた有利子負債も半分以下の7961億円にまで減らしてきたと発表しています。

 いま多くの経営者が、法令順守、コンプライアンスをうたうようになってきています。

 下請中小企業振興法は、親会社が守るべき事項として、下請け企業に仕事を発注する際には、優越的地位を利用した不適正な単価をおしつけてはならないことなどを定めています。

 また、マスコミでも先日、「コンプライアンス」と題するコラムが掲載されていました。朝日新聞の10月26日付ですが、コラムニストは、「かつて経営状態が深刻だということで業者に対して単価を下げさせ、今現在そのメーカーは高水準の業績を上げているのに、請負単価を戻していないとすれば、それは詐欺的行為だとは思いませんか」と告発していました。「圧倒的な力関係をもとに下請け業者に相対するメーカーの姿勢とそれにもとづく契約はコンプライアンスとどうつながるのだろうか」と、問題提起しておりました。

 私は、住友金属が99年当時、知事に約束した、地元との共存共栄を実行することを期待するものです。下請け単価が元に戻り、下請け企業の経営の安定と労働者の家計がよくなること、そして雇用の場も広がることが求められていると思います。

 99年の住友金属の「経営改革プラン」発表直後に、県はさきにのべたような要請文を提出するとともに、副知事を座長とする「特定企業対策連絡協議会」が開かれました。その後も住友金属も議題にした協議会が開かれているとおききしました。

 その会議のなかで、下請け業者の苦境について、検討されたでしょうか。下請け業者の実態について、単価の問題をふくめた調査をすることが必要ではないでしょうか。商工労働部長の答弁をお願いします。

 

《答弁 下宏 商工労働部長》

 

 特定企業対策連絡協議会においては、平成14年に住友金属が「中期経営計画」を公表した際に、下請け事業者等の経営安定について、要請をしてきた。現時点では民間取引の実態を把握することは想定していないが、住友金属とは定期的な情報交換の場を設定しており、今後も適宜適切に、意見交換などを実施していきたい。

 現段階で、下請け企業の実態調査をする考えはない。下請け関連企業が健全な伸展が図れるように、情報交換の場で適切なお話をしていきたい。


3、測量・設計業務等業者選定ガイドライン

 (1)県内業者へのガイドライン適用の猶予期間の延長を

 つぎに測量・設計業務等業者選定ガイドラインについて質問します。このガイドラインは、県工事で測量・設計の入札に参加できる業者の基準を明確にするために、ことし6月1日に適用されました。ただし、県内業者については、来年の6月1日までの猶予期間が設けられたところです。

設計業務においては、国家資格である技術士と、社団法人 建設コンサルタント協会が認定したシビルコンサルティングマネージャー、RCCMという資格をもつ人が複数名必要になっています。従来は各振興局の建設部が内規で基準をもっていた状態から、業務の難易度にそった基準が設けられるということは、業者選定の透明性を高めるという意味があると考えるものです。しかし同時に、資格をもった人がいない、あるいは有資格者がひとりしかいないという業者では、資格をもつ人を雇うか、勉強をして資格をとる必要があるということになります。したがって、複数の資格者をもたない小さな業者からは、仕事が減るのではないかという不安がでています。もちろん、たんに不安だというだけではなくて、これを機会に技術力を高める努力を自分の会社でしなければならないという意欲をもった経営者の声もおききしています。

難易度の比較的低い、構造計算を要しない業務などでは、有資格者を求めるのではなくて、実務実績を参考に選定するということになっているものの、公共事業が縮小されているもとでは、不安の声がでることは無理からぬことだと思います。

最近4年間の測量・設計の委託業務総額を振興局建設部ごとにみますと、那賀、有田、西牟婁の建設部と、東牟婁の串本建設部では増減がありほぼ横ばいといえる一方で、海草建設部では2004年の業務総額は2001年の52%、伊都や日高でも8割前後に減少しています。

ガイドラインの適用は県内業者は1年間の猶予があるとはいえ、技術士もRCCMも、試験はそれぞれ11月におこなわれます。年に1回きりの試験です。有資格者を雇用するというやり方もありますが、さきに紹介したように業務量が減少しているもとで、社員を減らさざるを得なくなっているのがつらい、ともらす経営者もいらっしゃるのが現実です。人件費を増やすことには躊躇することもあるのではないでしょうか。

そこで提案です。1年の猶予について、2年から3年程度に見直すことを検討してはいかがでしょうか。技術を身に付ける有資格者を増やし、県内業者を育成することからも、猶予期間の見直しが必要ではないでしょうか。

県土整備部長の答弁をお願いします。

 

《答弁 宮地淳夫 県土整備部長》

 

 ことし4月施行された「公共工事の品質確保の促進に関する法律」で、「公共工事に関する調査及び設計の品質が確保されるようにしなければならない」と定められた。  

優れた技術力を有する測量設計業者の透明性ある選定が、喫緊の課題となっており、基準を策定、施行した。猶予期間後は、年度途中でも新たな資格取得者や資格保有者の雇用があれば、随時申請を受け付けるようにしている。