2004年度決算にたいする反対討論(12月14日、藤井議員)

 

議案第231号「平成16年度和歌山県歳入歳出決算の認定について」

議案第232号「平成16年度和歌山県公営企業決算の認定について」

いずれも認定に反対の立場から討論いたします。 

平成16年度は、18年度までの3年間の「三位一体の改革」の初年度の予算でもありましたが、前年度当初比で地方交付税など約290億円が削減されました。県は職員定数や給与の独自カット、民間委託の推進、県単独補助金や事業の縮小・廃止、県単独公共事業の縮小などをすすめ、それでも財源不足となるため県債管理基金から97億円を取り崩しました。地方分権をすすめる手法として三位一体の改革がすすめられたところですが、16年度は地方交付税の一方的な削減が行われ、地方財政はいっそう厳しさを増し、県民生活への影響が大いに危惧されました。

 

 決算審査では、県の行財政運営がどのように行われたのか、当局はどのように総括し、その教訓を今後にどのように生かしていこうとされているのか、そういった観点から議論を通じての所感を述べて、反対討論にしたいと思います。 

 

 一般会計決算では財源不足の穴埋めとしての県債管理基金からの取り崩しが当初予定した97億円が22億円で済み、16年度の実質収支は前年度よりも9千万円多い35億円余の黒字決算としました。これは、税収が当初見込みより伸びたこと、多額の事業を翌年度へ繰越したことや予算計上していても不用額を出したことなどによるものです。不用額を出した事業の中には、県民生活に直結する事業も多々見られました。しかし、一方では当初予算で予定していた職員定数や給与のカット、民間委託、補助金の廃止や事業の縮小は確実に執行されています。職員と県民が痛みを分かち合っての黒字決算ではなかったでしょうか。

 

 税や貸付金の未収額が176億円になっています。一般会計で54億円、特別会計では122億円が収入未済額となっています。一般会計では県税が最も多く33億円となっていますが、前年度決算よりは収納がすすんでいるように見受けられます。経済状況が依然として厳しいもとで高額滞納へとすすまないようにこまめな相談活動など早期の適切な対応が求められているところでもあります。新たに、橋本市のダイオキシン撤去と広川町での硫酸ピッチ不法投棄処理の行政代執行の未収額11億円が生まれました。収入未済額が前年度より10億円余ふくらんでいるのはこれが原因となっています。行政の不作為で時効にしてしまわないように回収に力を尽くしてもらいたいと思います。

 特別会計では、中小企業振興資金の貸付金の未回収が117億円で、その内、高度化資金は53法人、282億円の貸付に対して36法人が延滞、未償還額が112億円にもなっています。特に地域改善事業にかかわる法人の未償還額は97億円となっています。すでに経営破綻した法人もありますが、貸付の原資は税金であることからも回収についての厳正な対応とこの事業についてのきちんとした評価と総括が求められるところです。

 

 県民生活に身近な予算がうまく使えていない、多くの不用額を出してしまった事業もいくつか目につきました。

 高齢者の住宅改修事業が当初予算で1戸あたり100万円から60万円に縮小され、予算の総額も1800万円から1400万円に削減されていましたが、決算では756万円しか活用されませんでした。1戸あたりの利用額も20万円前後です。これは16年度から介護保険の住宅改修と同様の軽微な改修にしか利用できなくしたためです。身体に不自由がある高齢者の在宅での生活は住宅のバリアフリー化や入浴施設の整備などから始まります。所得の低い人が利用しやすい制度への改善が必要です。      

 大地震に備えて旧耐震基準の木造住宅の耐震化工事をするための県単独の助成として100戸分3000万円が予算化されていましたが、4戸分しか受付られませんでした。

 紀州材の地産地消を県が率先してすすめるとして、小学校などへの机やイスの整備に3300万円が予算化され、執行されたのは1600万円。

 教育関連施設のシックハウス対策としての内壁材の木質化に7500万円が予算化され、執行されたのは4100万円といずれも半分にとどまりました。 

中小企業向けの制度融資で、16年度に新設された雇用創造対策資金、ビジネス評価資金は利用がゼロ、再生支援資金は利用が1件など、せっかくの事業が十分活用されていないことが見られ、住民のニーズに合うような工夫や改善はもとより当局のさらなる真剣な取り組みを求めるものです。

 

また、加太コスモパーク用地にカゴメ株式会社を誘致するため、県が誘致用地を造成し、カゴメ株式会社等が出資する現地法人加太菜園株式会社に1uあたり年間100円で賃貸しました。16年度の加太菜園からの賃貸料収入は、10.7ヘクタール、5カ月分で446万円、一方、県が加太コスモパーク用地を所有する県土地開発公社に支払った賃借料は87ヘクタールで4億9千万円余、1uあたり566円ということです。加太菜園に賃貸した10.7ヘクタール、5カ月分の差額2000万円が実質的には県からの助成金となりますが、投資に対する事業評価の体制が不十分なように見受けられました。当初いわれていた経済波及効果が実際にはどのように本県で表れていくのか、きちんと費用対効果について、県民に説明できるようにしておくべきです。

 建設土木工事等の入札における落札率も依然として高いものがあります。提出していただいた資料によると、1000万円以上の普通建設事業1109件中で予定価格の97%以上で落札している工事が690件と6割を占めています。99%以上での落札も46件ありました。一方で、70〜80%での落札も数多く見られることから、入札の経過に不自然さを感じさせるものがあります。

 国の直轄事業負担金・出資金で、大滝ダムの地すべり対策、住友金属沖埋立地の南防波堤築造工事、関西国際空港2期工事をはじめ141億円が支出されていますが、無条件に負担するのではなく事業内容に精査を要すると思われるものもあります。

 森林と緑の公社へ2億4千万円貸付けていますが、回収できる目途が立っていません。県の貸付残高は利息を含めて88億円となっています。公社の債務残高は農林漁業金融公庫分を合わせて141億円。公庫への返済のため県が公社へ貸付を行っているのが実情です。将来、公社が木材を売却した時に精算するとしていますが、まさに「捕らぬ狸の皮算用」となっています。

 三位一体の改革が県財政をいっそう厳しいものにし、自治体リストラともいうべき事態が進行しています。限られた予算の中ではありますが、安易に職員や住民に負担を転嫁するのではなく、県民生活を擁護し、くらしと福祉の向上をめざす事業の内容や予算の執行を望むものであります。

 

公営企業会計の事業については、平成16年度末で企業局を廃止し、17年度から知事部局の所管としたところです。企業会計方式で継続して行う事業としては、こころの医療センター、工業用水道事業、土地造成事業の3つとし、電気事業については佐田・岩倉・美山の3発電所を関西電力に売却して廃止、駐車場事業会計については一般会計で運営することとしました。

こころの医療センター繰越欠損金6億7千万円、発電事業繰越欠損金12億5千万円、工業用水道事業繰越利益剰余金6600万円、土地造成事業繰越欠損金7億3700万円、駐車場事業繰越欠損金6億4千万円と、工業用水道事業を除いて、いずれも前年度よりも収支の悪化が見られます。

こころの医療センターでの認知症患者の入院受け入れは、公立病院としての期待も寄せられているところですが、病床の利用率は70%で、緊急入院も含め入院受け入れ体制の改善強化が必要ではないかと思われます。

発電事業については、関西電力に42億5千万円で売却し、未償還企業債の全額償還にあてていますが、売却損を20億円出し、繰越欠損金の要因となっています。また、発電所の民間事業者の売却にあたっての地元説明と同意に不十分さを残しました。

駐車場事業については、発電所の売却代金と留保金の一部、10億円余を駐車場事業の国からの借入金と企業債残高の償還にあて、一般会計からの借入金3億5800万円は駐車場固定資産と相殺して、17年度からは一般会計で運営することとしました。大新地下駐車場の利用台数、利用料金とも年々落ち込み、営業収益は3000万円で当初予算の47%と半分にも達していない状況です。一方、営業費用は1億1400万円となっており、駐車料金の3倍の費用がかかっています。中心市街地での都市施設としての駐車場の役割は大きいものがありますが、利便性や利用率の向上につながる取り組みの前進を望むものです。

土地造成事業については、当初予算で34億円の土地売却収入を見込んでいましたが、2億7千万円の収入に終わりました。支払い利息分3億3千万円も賄うことができませんでした。埋め立て造成など事業運営に要した企業債の未償還残高は157億円となっています。県が債務保証をしていますので、最終的には県民負担となってきます。いっそうの用地売却と活用の推進をはかるとともに将来の見通しを示していただきたいと思います。

 

以上、申し上げまして討論を終わります。