2006年6月21日、藤井健太郎議員の一般質問(大要)を紹介します。


1、行財政運営

  (1)自治のビジョンと県民的議論
  (2)行財政改革推進プラン
  (3)市場化テストと事業仕分け
  (4)指定管理者制度

2、震災対策
  (1)地震防災対策の今後の対応
  (2)地震防災対策推進条例
  (3)一時避難場所の確保
  (4)防災ボランティアの受け入れ、支援のありかた
  (5)より広域的な自治体間の相互応援協定
  (6)事業所の安全管理と地域防災への協力要請

3 在日米軍再編と米軍艦船入港問題
  (1)在日米軍再編
  (2)民用施設と軍事訓練
  (3)非核証明書の提出


1.行財政運営について
 平成16年度から18年度までの3年間を改革期間とする三位一体の改革が一区切りついたわけですが、地方財政の強化や地方分権はどれだけすすんだのでしょうか。全国ベースでの国庫補助負担金の削減4.7兆円に対し、税源移譲は3兆円、地方交付税等の総額は5.1兆円の抑制という結果に終わり、地方自治体にとっては財政強化につながっていないと思います。

本県でもこの3年間の影響額として、予算ベースでみると国庫補助負担金の削減額250億円に対して税源移譲額は175億円でマイナス75億円、地方交付税とそれにかわる臨時財政対策債の削減額が409億円で、税収の伸びが72億円ある一方で国庫補助負担金と地方交付税等あわせて484億円もの減額となり、財源不足を基金からの取り崩しで補うなどたいへん厳しいものとなっています。

地方分権の成果についても、地方の自主性、裁量が一定拡大されたというものの、よりいっそうの歳出削減を余儀なくされるもとで職員定数、職員給与をはじめ行政内部の経費はもとより県民向けの県単独の事務事業についても削減がすすめられています。国の介護、障害者福祉など社会保障制度改革にともなう県民負担の増大に対して、県独自の軽減策の実施を求める県民の願いもかなえられていません。

そのうえに今、国においては、歳出・歳入一体の改革が強力にすすめられており、なかでも地方財政の歳出削減をめぐっては、公務員人件費の抑制とともに地方交付税の抜本的見直しをすすめる動きが伝えられています。交付税総額を抑制するために交付税算定の方法を人口や面積を基準にしたものを創設する、交付税財源である国税5税の地方への配分比率を引き下げることなどが検討されています。そもそも地方交付税は国が地方にかわって徴収する地方税としての性格をもっており、地方の独自財源として財源保障の機能を果たすべきものであります。さらなる交付税改革としての地方交付税等の一方的削減は、地方財政をいっそう厳しいものとすることは明らかです。

これらの動きに対して、全国知事会など地方6団体は、内閣と国会に対して12年ぶりに「地方分権の推進に関する意見書」を提出し、国と地方の税源配分を5対5とすることや地方交付税は国の一般会計を通さず特別会計に直接繰り入れて総額の一方的な抑制はしないこと、という地方税財源の強化・確保と地方分権の推進を強力にすすめる意思を表しました。

 国は地方自治体にいっそうの歳出削減を求め、自治体側は財源確保と分権をめざしてのせめぎあいの構図となっているわけですが、自治体としてもどのような自治体づくりをめざすのか、そこでの住民のくらしはどうなるのか。明確な自治と自立のビジョンを持って住民に説明するとともに県民的な議論ができるようにすることが、今まさに求められています。また同時に自治体が財政的な自立をめざしていく上で、一般会計についてはもちろんのことでありますが、特別会計や外郭団体が抱える未収金、債務残高や県からの貸付金返済などに解決の道筋をつけていくことも重要な問題となっています。それらを放置しておいて、行財政改革の名で県民に負担と犠牲を強いることには問題があります。

そこで、知事ならびに担当部長にお尋ねいたします。

1)自治のビジョンと県民的議論について

 竹中総務大臣が発足させた「地方分権21世紀ビジョン懇談会」の中間とりまとめでは、国から地方への流れを加速させ、道州制を視野に入れての国・地方のありかたが示され、交付税改革、地方行革の新指針の策定、自治体の破綻制度創設や一定規模以上の自治体については半分以上を交付税不交付団体にするべきなど、国から見た自治体の形づくりについての考え方をみてとることができます。 

 また、全国知事会が設置した有識者による新地方分権構想検討委員会の分権型社会のビジョン中間報告では、分権改革について、暮らしの安全・安心をつくるなどの5つの視点から分権改革に向けての制度設計を組み立てて提言し、国民的議論を呼びかけています。今、まさに各方面で地方自治のありかた、その将来像をめぐってそれぞれの立場からの議論が熱くかわされているところでありますが、三位一体の改革にしても、地方分権の問題についても、住民にとっては重要な課題でありながら、今ひとつ県民的な議論の場が提供できていないように思えます。地方分権の推進によって、住民のくらしや「なりわい」がどうなるのか、少子高齢社会を向かえて誰もが安心してくらせる社会になるのか、地域の産業や雇用問題が前進するのか、子供たちの安全や教育など住民のくらしをよくしていくことになるのか、日々の生活での現在と将来の不安要素が拡大していくなかで、住民ニーズに果たして応えていくことができるのか、わかりにくい問題となっているのではないでしょうか。

そこで、知事にお尋ねします。知事は、将来の分権型社会として道州制に向けての取り組みをすすめられていますが、現在の自治体への税財源の拡充と地方分権の推進について、そもそもの目的はなんであったのかをたえず明らかにしながら、とりくみを強めていくことが求められているのでないでしょうか。

また、知事は自治や自治体のありかたについてどのようなビジョンをもって、県民に理解を求め、県民との議論や運動をすすめていこうとされているのか。

 

《答弁 木村知事》

  自治体がおこなっている仕事をできるだけ自治体の税金でまかなっていく、そのことが納税者の意識を高めるために必要なことだと思う。一方、国は国の本来の仕事に特化して、地方のことは地方に任せるような形が望ましいと思う。

  そういったなかで、地方毎に人口が多いところと少ないところ、企業が多いところと少ないところ、企業があるところと無いところ、いろいろな所があるので、今のまま税源移譲をおこなっても調整がものすごく大きくなり、税源をもつ自治体ともたない自治体の間で争いが出てくるということもあるので、今後は、たとえば道州制の様な形で、大きくしてそれぞれの圏域がエンジンをもち、自分のところの税金であまねくその圏域の住民が自発的にいろいろなことに対応できる形にしていくことが究極の地方分権の形に近づくのではないかと考えている。

 

2)行財政改革推進プランについて

県は平成18年3月に今後の行財政改革の根幹をなす計画という位置づけで、平成17年度から向こう5年間を計画期間とする「行財政改革推進プラン」を策定し発表しています。平成18年度から21年度までの4年間のとりくみの結果、一般財源ベースで人件費や民間開放などの事務システム変更による歳出削減額861億円、県税や退職手当債など歳入の新たな確保額609億円で1470億円の対策の強化となっていますが、平成21年度では財政調整基金、減債基金とも使い果たし特定目的基金を臨時的に活用したとしても128億円の財源不足がでると試算されています。実際の年度ごとの予算は国が示す地方財政対策によって左右されることにはなりますが、後年度に財政破綻を招くような無謀な事業をさけるためにも中長期の見通しをもった計画的な財政運営が求められています。そこで、担当部長にお尋ねします。

 

@県は、国の地方交付税改革の動きをとらえて、人口、面積要件を取り入れた新型交付税での基準財政需要額の試算を発表し、試算によっては減収ワースト10位になるとしていますが、そうなった場合、策定した行財政改革推進プランの中の歳入見こみへの影響はどのように生じてくると考えているのか。

 

Aプランの中で、中小企業振興資金の118億円の未収金、土地造成事業の企業債残高157億円、和歌山森林と緑の公社の長期債務残高141億円など特別会計や外郭団体が抱える債務が事業運営の如何によっては県財政を圧迫させると危惧が表明されていますが、特別会計や外郭団体がかかえる未収金・債務等により行財政改革推進プランが影響を受けることは想定されていないのか。

また、特別会計の未収金、県が出資や貸付を行い、指導監督すべき法人・団体などで、財政健全化へのとりくみが必要だと考えられている法人・団体はどのような団体でどのくらいあるのか。具体的な解決に向けてのプログラムはどこまでつくられて、どのように点検指導する体制になっているのか。

 

《答弁 原邦彰 総務部長》

 新型交付税など新たな国の制度が導入された場合の行革プランへの影響を予測することは困難だが、県としてはいろいろな機会をとらえ、地方の安定的な財政運営に必要な地方交付税が確保されるよう、十分留意していきたい。

 特別会計における貸付金や外郭団体が抱える将来にわたる債務等については、たとえば、償還指導室を設置して貸付金の滞納整理体制を強化したり、公営企業会計の中期計画を策定するなどして経営健全化を図っており、今後も積極的にとりくんでいきたい。

 

3)市場化テストと事業仕分けについて

国は歳出削減をすすめる手法として、小さくて効率的な政府をめざし、官から民へ、国から地方へなどの観点から行政改革をすすめ、行政のスリム化、効率化をいっそう徹底するとして、地方自治体にも同様のことを求めてきています。今年の5月末に成立した行政改革推進法では、その基本理念において、行政改革のすすめかたとして政府及び地方公共団体の事務の必要性の有無及び実施主体のありかたについて仕分けを踏まえた検討を行い、民間活動の領域を拡大することなど行政事務の民間開放を大きく打ち出しています。地方公共団体もその基本理念にのっとり行政改革を推進する責務を有するとされ、民間開放をいっそうすすめる方策として、これまでの指定管理者制度、独立行政法人、PFIなどに加え、すべての行政サービスを対象として市場化テスト、事業仕分けの実施が位置づけられました。 

 市場化テストは官が仕事をするか民が仕事をするかを競争入札で決めようとするもので、事業仕分けは、その仕事そのものの必要性にさかのぼって検討し、行政の仕事として必要かどうか、また必要だとしても実施主体はどこが適当かを分類、整理し、仕分けをしていくもので、いずれも行政事務の効率化を民間に委ねることによってすすめることが特徴となっています。 

本県においては、国に先立ち行財政改革推進プランのなかで、職員定数見直しの手法として事業仕分けにより民間委託を推進し、事務量の削減を図るとされており、あわせて官民競争入札制度、市場化テストについても和歌山版市場化テストガイドラインを策定し、県庁南別館の施設管理を実施するほか対象を拡大するとしています。 

そこで、行政事務の民間開放という観点から担当部長にいくつかお尋ねします。

 

@県が市場化テストや事業仕分けに取り組もうとする理念と目的は何か。その結果は県政と住民にとって、どのような効果をもたらすと考えているのか。

 

A地方公共団体が直接責任を負って実施していた事務や事業を民間開放していくことになりますが、規制緩和と抱き合わせの民間開放ということになると、耐震偽装問題に見られるような行政の公的責任が問われる事態の発生も懸念されます。県は公共性の確保と行政の公的責任をどのように明らかにしていくのか。民間開放していく基準のようなものは考えられているのか。

 

B情報公開、個人情報保護の規定整備はどうするのか。

 

C公務の民間への開放がすすめば、行政の専門家の育成がより困難となり、ひいては公共サービスの安定的な提供を困難にするのではないでしょうか。

公務員の専門家の育成についてどのような方針をもっているのか。

D事業仕分けについて、具体的にお尋ねします。仕分けする対象事業の範囲はどこまでを考えているのか。民間開放の方法はどのように考えているのか。事業仕分けの結果は最終的にどこで決めるのか。事業仕分けの民間評価委員会の構成と役割は何か、住民の参加はどのように保障するのか。今年の6月30日までと期限をきっての意見募集が現在行われていますが、それ以後も意見表明できる場はあるのでしょうか。

《答弁 原邦彰 総務部長》

 市場化テストや事業の仕分けにより、真に県が担うべき行政サービスの維持向上に重点的にとりくむことができると考えている。
 公共性の確保や行政の責任、情報公開や個人情報保護については、県が直接実施している行政サービスを民間委託する場合は、さきに導入した指定管理者制度にならい、十分配慮する必要がある。民間開放の基準については、ゼロベースで議論していきたい。

 特別に公共性が必要とされる分野については、職員の資質の向上をはかり、責任ある行政をすすめていきたい。

 およそ1600件の事業について県民の意見募集をしている。参考にしながら、仕分け案を作成し、民間評価委員会に諮ったあと、庁内の検討会をへて結果を公表したい。

4)指定管理者制度について

 平成15年の改正自治法によって旧来の管理委託制度が廃止され、改正以前の委託施設について県が指定する団体に管理運営させる指定管理者制度が発足しております。指定管理者制度は、従来委託できなかった株式会社など営利を目的とする法人、団体にまで委託の範囲を広げ、単なる管理業務の委託だけではなく、利用許可などの行政処分、条例の範囲内とはいえ利用料金の設定ができ、使用料・利用料はみづからの収入となり、利用者の増加をはかることと県からの委託費をより節減して運営することで利益をあげることができる制度となっています。そのことから、県は住民サービスの向上と行政経費の削減につながると説明してきました。現在、これまで直営だった3施設を含め41施設が指定管理者として公共施設の管理運営にあたっています。41施設のうち、公募して新たな団体が指定されたもの13施設、公募して旧来の団体が指定されたもの12施設、非公募で指定されたもの16施設となっています。18年度当初予算では、41施設の委託費合計額が前年度比15億円の削減となり、全体として経費が削減されたことについては目に見えてわかりますが、個々の施設の利用状況、利用者サービスの内容やプライバシーの保護はどうなっているのか、また、そこで働く従業員の労働条件はどのようになっているのかなど、公共施設としてふさわしい運営管理がされているのかどうかも問われてくると思います。

 そこで、担当部長にお尋ねします。

@指定管理者制度での施設の公平公正な利用と利用状況、サービスの内容、プライバシー保護、従事する人の労働環境など管理のありかたについての検証をするということや検証結果を公表するという方針はあるのか。

A今議会に情報交流センター・ビッグユーについての維持運営管理委託料4億482万円が18年度から23年度までの債務負担行為として予算計上されています。
 ビッグユーは、施設開設時点から指定管理者制度で運営されているわけですが、どのように評価されているのか。

 今回の債務負担行為の限度額は前回と単年度比較するとどのように設定されているのか。また、どのような運営方針をもって今後に臨もうとしているのか。

《答弁 原邦彰 総務部長》

 管理の状況や個人情報保護の状況に注意するとともに、導入後の利用状況やサービス内容等を調査し公表する予定である。
 
Big・Uは平成17年1月以来、現在まで約40万人の利用がある。自主的な事業の展開や民間ならではの柔軟な発想を生かした利用者サービスの充実など、複合施設としての特性を活かした様々な効果が生じたものと考えている。

 今後はこれまでの成果をいかし、人材育成、産業支援、ITの普及促進等をよりいっそう充実させるとともに、国際的なITフォーラムや企業研修の誘致などに積極的にとりくんでいく。

 

2.震災対策

 県は独自に東海・東南海・南海地震が同時に発生した場合、和歌山県北部を東西に走る中央構造線による地震が発生した場合、田辺市内陸直下地震が発生した場合の三つの地震について、最悪の状況を想定した県内の被害予測調査の結果を公表しました。

 東海・東南海・南海地震が同時発生した場合では、最大見こみで人的被害では死者5000人、負傷者8300人、建物全壊・焼失10万5000棟、避難所生活者24万人の被害想定をしています。その被害の規模は、今年の5月に確定された阪神・淡路大震災での被害状況の死者6434人、全壊住宅10万4906棟に相当する被害の大きさとなっています。

 東海地震については、1978年(昭和53年)に制定された大規模地震対策特別措置法により、予知観測体制の整備、地震防災計画にもとづく地震災害の防止・軽減対策などが多年にわたり蓄積され、関係自治体職員、事業所や住民の防災意識も高くなっています。

 一方、東南海・南海地震への国の対策は、2003年(平成15年)に東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法が施行され、県内すべての市町村が地震防災対策推進地域の指定をうけたところであります。

 東海地震は近い将来に発生する可能性は高いといわれ、東南海・南海地震が30年以内に発生する確率は約50〜60%、同時または相互に近接して起こるといわれています。 

 日本は地震頻発期に入ったとされており地震防災への備えは緊急の課題となっています。文部科学省が今月発表した公立小中学校の校舎や体育館などの耐震化率は、東海地震の影響を受ける神奈川85%、静岡81%と全国1位、2位をしめていて、東南海地震の影響を受ける三重が78.7%と3位、愛知67.6%で6位、一方、和歌山47.1%で32位と出遅れている状況にあります。

 今年5月に発生したインドネシアジャワ島中部の地震は中程度の地震とのことですが、死者6200人、家屋の全半壊10万軒を越す大惨事となりました。被災住民への支援活動が各方面からすすめられているところですが、巨大地震が頻発しているなかで震災対策への備えがどうだったのかという問題も指摘されています。

 今回の県独自の地震被害想定調査の結果は、県の地勢、人口密度、町なみ、産業集積、建築物の耐震化の状況、道路輸送の整備状況など地震の規模のみではなく県の地理的要素・社会的要素も大きく影響しているものと思えます。この結果を今後のまちづくりにどう生かしていくのかがまさに問われています。

 そこで知事ならびに担当部長にお尋ねいたします。 

1)地震防災対策の今後の対応

知事は今回の県独自で作成した被害想定の結果を受けて、国などの関係機関への働きかけの強化も含めて、地震防災対策の重点をどのように考えているのか。

《答弁 木村知事》

 現在、県有施設耐震化や教育施設等の耐震化をどんどんすすめてきている。自主防災組織の設置促進、避難路や避難タワーの設置とか、いろいろやってきている。しかし、自治体としてやれることは、ある程度限界もあり、国についても引き続き本腰をいれて対策をとってくれるよういろいろなかたちで働きかけていきたい。

2)地震防災対策推進条例

地震防災対策の推進について、想定される被害をより少なくしていくという点に着目して、安全で災害に強い地域社会の形成を目標に、行政、防災機関、住民、事業所の役割分担を定め総合的な防災施策の体系を明らかにし、その実現のための方針を示し、協力体制を構築していく必要があります。そうしたとりくみをすすめていくためにも地震防災対策推進条例の制定と防災対策の内容、求められる数値目標、達成時期を示した計画づくりを急ぐ必要があるのではないでしょうか。担当部長にお尋ねします。

以下、具体的な課題について、何点か到達状況と残された課題、今後のとりくみ姿勢について担当部長にお尋ねします。

3)一時避難場所の確保

県民の防災意識を高める取り組みがさまざまに行われているところですが、地域での一時避難の場所の確保と避難のための訓練をすることにより、地震防災がより身近なものに感じられ、自主防災活動へのとりくみも高めることができます。和歌山市内の中心部で木造住宅が密集している地域の自治会・消防団で自主的に事業者と交渉し駐車場を一時避難場所として確保して避難訓練にとりくんでいるところがあります。体の不自由な人がどこにいるか地図に入れて、車イスで介助をしながら避難する練習や炊き出しをするなど住民の意識を高めることに努力されています。訓練にはほとんどの世帯が参加しました。一時避難場所づくりと援護を要する人を含めての避難訓練の実施が地域の防災意識を高めるためにも有効だと感じたところです。県内での一時避難場所を確保するとりくみはどのようになっているのでしょうか。県や土地開発公社などが所有する土地で、利用計画や処分の目途が立たない未利用地を住民の一時避難場所として地域への開放をすすめてはどうでしょうか。

4)防災ボランティアの受け入れ体制、支援のありかたの整備

 災害救援ボランティアの活動が活発化してきています。阪神淡路大震災を機に新潟中越地震でも全国からかけつけました。参加者も各分野の専門家、技術者、学生、勤労者など多様化し国民的活動にもなってきています。県でもボランティアの登録が始められているようですが、保険への加入、現場での業務のコーデイネイト、必要備品の整備、宿泊、などなど体制整備の内容や手順の充実、マニュアルづくりと受け入れ訓練など、いざというときもたつかないようにしておく必要がありますが、どのように準備がすすんでいるのでしょうか。

5)より広域的な自治体間の相互応援協定

 東海・東南海・南海地震が同時に発生したとなると、自治体間の相互応援協定の必要性がより広域に及ぶことになります。近畿圏内など近隣地域に頼った応援協定では互いに被災すると実効性をもたないことになります。より広域的な相互応援体制や国による支援体制の確立が急がれます。19年度の国への要望の中には、津波・高潮対策、木造住宅耐震改修支援、被災者生活再建支援の拡充、緊急輸送道路の確保など盛り込まれていますが、より広域的な被害に対する即応体制の確立を国に強く求めていく必要があります。

6)企業・事業所の安全管理と地域防災への協力の要請

 和歌山市内のガソリンスタンド経営者のなかには燃料タンクが償却期限を過ぎ更新時期を迎えていることや原油価格の高騰も重なって、タンク劣化による災害への懸念から廃業を選択する事業者の方が目立ってきています。県は老朽化した橋梁など公共建築物の耐震化、長命化にとりくんでいるところですが、民間事業者で危険物を扱う事業所の安全管理と防災体制の確立、燃料タンクや工業施設プラントの老朽化への対応、保守管理、保安体制など万全のものとなっているのでしょうか。また、大規模事業者のみならず中小規模事業所も含めて防災教育や防災訓練の実施や津波避難ビルとしての利用、重機・機材や物資の提供、避難施設としての開放などなど、地震防災対策へのとりくみ状況や地震防災への協力要請はどのようになっているのでしょうか。

《答弁 石橋危機管理監》

 地震防災対策推進条例は、先日公表した被害想定をふまえ、今後アクションプランを見直すなかで、防災協働社会の構築にむけたひとつの方策として研究していく。
 一時的な避難場所の確保については、市町村や地域住民が民間事業所と交渉し、津波避難ビルとして指定するなど、確保に努めている。県等の未利用地の一時避難場所への開放についても推進していく必要があると考えている。

 防災ボランティアは、個人及び団体構成員をあわせて約1600人が登録されており、募集・登録の充実に努めている。円滑な受け入れ体制については、ワーキンググループを中心に検討している。
 災害等発生時の相互の応援協定については、「近畿2府7県危機発生時の応援に関する基本協定」をことし4月締結した。国においては、東南海・南海地震発生時の応急対策について、関係都府県と連携を図りながら、食糧・生活物資の供給対応など、具体化にむけたとりくみが進められている。

3.在日米軍再編と米軍艦船入港問題

 今年5月11日から14日まで和歌山下津港本港区西浜第3岸壁に米海軍第7艦隊の誘導ミサイル巡洋艦カウペンズが入港接岸しました。目的は親善訪問とされています。

全国で米軍艦船の民用港寄港が今年に入り増大しています。1月から5月まで全国12の港に16隻が入港。今年の5ヶ月間で昨年1年間の13港17隻に迫るいきおいとなっています。

 5月30日の閣議で日米両政府の合意した在日米軍再編に関する最終報告が実現可能であるとの認識が示され、的確かつ迅速に実施すると明記した基本方針が決定されています。在日米軍基地の再編計画の対象自治体となっている沖縄県・名護、神奈川県・座間、山口県・岩国をはじめ横須賀の原子力空母母港化などに対して、自治体、住民から反対や了解できないとの声があがっています。また、在日米軍再編に対する施設整備費用は日本が負うことや在沖縄米軍のグアム移転費用負担など合わせると3兆円にもなるという報道もされています。

 日米安全保障協議委員会の在日米軍再編の最終報告では、在日米軍再編は日米同盟が新たな段階にはいるものであり、日米双方のコミットメント、日本との共同作戦をより強化するといわれています。

 和歌山下津港への米軍艦船の入港は2001年8月の巡洋艦ヴアンデグリフト以来5年ぶりになりますが、アメリカの世界戦略への日本の組み込みが強まるもとで、本県においてもいっそうの協力を求められることになるものと思われます。

そこで知事に3点、お尋ねいたします。

1)在日米軍再編について

在日米軍再編による日米同盟関係の強化がすすめられようとしているわけですが、知事は在日米軍再編をどのように受け止め、今後どう対応していこうと考えておられるのか。知事は、以前に沖縄県の最後の官選知事、島田知事が県民を守って自分も亡くなられたという本を読んでいるというお話をされたことがありました。日米同盟強化の動きの中で、住民の生命と財産を守る使命をもつ自治体の首長がどのような見解をもって今後対処していこうとするのか、私は重要なことだと思いますので、知事の見解を尋ねておきたいと思います。 

2)民用施設と軍事訓練

武力攻撃事態やその恐れに対する対処を想定した米軍支援法、特定公共施設利用法など有事法制では空港、港湾など自治体管理施設の米軍優先使用を求めています。今回の米軍艦船の入港は、親善目的としていますが有事を想定しての軍事訓練をもかねた入港と見ても不自然ではありません。白浜空港は平常時の軍事訓練には使わせない申し合わせがありますが、自治体管理の港湾施設その他の公共施設についても平常時の軍事訓練には使わせないことが必要ではないでしょうか。

3)非核証明書の提出

和歌山下津港の地元自治体である和歌山市は非核平和都市宣言をしており、非核三原則を将来とも遵守し、あらゆる国のすべての核兵器の廃絶と軍縮を全世界に強く呼びかけています。和歌山下津港の港湾管理者は県になっていますが、外国艦船の入港にあたっては、非核証明書の提出を求めるべきではないでしょうか。

《答弁 木村知事》

 在日米軍再編の問題をはじめ、防衛・外交など国家の基本的事項は、国が責任をもって実施すべきものであると考えているが、自治体は関係ないということではなく、いかなる事態の発生、状況においても県民生活の安全と安心を最優先すべきと考えている。

 港の施設使用については、米軍艦船は日米地位協定で日本の港に出入りできることとなっており、基本的に国が判断すべきものであると考えている。

 非核証明書の提出については、県から外務省に問い合わせたところ、「事前協議がないので、核の持ち込みがないことについて、政府として疑いを有していない」との明確な回答をえており、県として今後ともこのような対応をしていきたい。