2006年6月23日、村岡キミ子議員の質問(大要)を紹介します。

1、医療問題
  (1)医師、看護師不足対策 
  (2)医療制度改革をどう受け止めているのか
  (3)地域医療と県民のいのちと健康を守る立場から県としての独自の支援を考えているのか

2、障害者自立支援法施行
  (1)施行後の障害者とその施設の動向調査をし、把握しているのか
  (2)利用者が施設を退所したり、手びかえたりする実態など、国へとどけられたい
  (3)応益負担を応能負担へもどすこと
  (4)報酬計算は月単位にもどすこと
  (5)県独自の利用料の軽減措置を
  (6)障害程度区分認定調査員は専門家の配置を

3、学童保育と地域子ども教室について
  (1)学童保育の設置目標数ととりくみ
  (2)設置運営基準を国としてつくること。同時に県としてもつくられたい
  (3)地域子ども教室事業の3年間の総括をしっかりおこない、地域活動に発展させるため、この間のとりくみへの感想は


1、医療問題

いま、医師不足で自治体病院も中小病院も危機的状況にあります。なかでも、医師不足を理由に診療報酬が減額されるからです。

医療法が定める必要医師数に対して、70%以下だと1割、50%以下だと1・5割もの入院基本料が減額されるのです。医師不足の影響は、病院経営にも患者にとっても深刻です。そこに4月1日から3・16%もの診療報酬が引き下げられましたから、なお問題は深刻となっています。

入院患者にたいする看護職員の配置でも、一般病棟ではこれまで入院患者10人にたいし、看護師1人が入院基本料金は1日当たり12090円が、12690円に、そのうえ、新たに患者7人に対し、看護師1人という配置基準設定がされ、入院基本料は15550円、しかも病棟では夜勤は月1人72時間以内とする規制が入りました。県でこの条件を満たせる病院はいくつあるでしょうか。

いままでは、夜勤は1人が10回でも11回でもできましたが、できなくなりました。それだけに、多くの看護師を必要とするわけです。看護配置が低いと診療報酬も低くなります。

3交代勤務では、月9日以内となります。看護職員の夜勤は、2人以上で月8日以内という要求には近づいたものといえますが、慢性的な看護師不足のもと、いろいろな事情で夜勤のできない人も多くありますから、職場では「回数は増えても」と調整しながら入院患者の看護がつづいています。こうした職場の努力がどうなるのか、気になります。病院の経営はどうなるのかも気になるところです。

入院の在院日数が長いから診療報酬を引き下げる。医師、看護職員不足等の対策が不十分のまま、「先ず医療費削減ありき」では、良い医療、看護の保障はいつまでたっても、できないのではないか。

6月14日、医療改革法が強行採決によって成立しました。参議院での審議でも多くの問題点がうきぼりになりました。公聴会、参考人公述をふくめて法案への批判や不安の声が相次ぎました。負担増反対の署名には短期に1700万人が賛同しました。

7月から療養病床の患者を医療の必要性が低いとされる患者の診療報酬は大幅に削減されます。病院収入が減るため、退院を患者に求めることになります。10月からは70歳以上の現役並み所得者は窓口負担が2割から3割に、療養病床に入院している70歳以上の居住費と食費は自己負担に月3〜4万円の負担増、そして療養病床を38万床から15万床に、2012年までに減らします。

2008年4月からは70歳〜74歳の窓口負担が1割から2割に引き上げられます。

さらに75歳以上のお年寄りに新たな後期高齢者医療制度をつくり、全高齢者から保険料を徴収します。保険料は月5000円とも6000円ともいわれています。15000円のわずかな年金からも保険料を天引きするとしています。65歳以上の国保加入者の保険料を年金から天引きすることをともなっています。

そのうえ、重大なのは滞納した場合、1年以上たつと保険証をとりあげ、資格証明書にされ医療費は10割、いったん払うことになります。

さらには、保険のきく診療ときかない診療を組み合わせる混合診療を導入、これまで差額ベッドや高度先進医療など例外を除いて原則的に禁止されてきましたが、国内未承認薬などを加え、適用範囲を広げていこうとしています。

以上、改悪内容を申し上げましたが、まさに医療費削減さきにありき、そのものです。どこまで高齢者を痛めつければ気がすむのでしょうか。強い怒りを禁じえません。

わたしは、これらの改悪法が地域医療をまじめに支えてきた和歌山市内と有田地方の5つの中小病院を訪問して、事務長さんなどと懇談してまいりましたが、みなさん異口同音に地域医療がこわれるのではないだろうかというお話でした。一般病床から療養病床に施設整備して3年もたっていない。それに要した借金も返済は終わっていない。そんなときに療養病床の縮小とは非情だ。どうしたらよいのか混乱している。患者の受け皿の整備もないのに、退院はすすめられない。まったく無責任きわまりない。医療現場を十分知ったうえで事をすすめるべきだ。こんな怒りの声が寄せられました。

いずれの中小病院も医師、看護師確保に苦労されている。声もいつになく切実でした。

そこでお尋ねします。

@どのような対策を考えていますか。高齢者のみなさんからは、「病気になっても入院できへんな。医療を受ける権利も生きる権利もなくなったんやな。死ねというとんのか」、「医療・介護難民がいっぱい生まれるやろな」と、ため息まじりに訴えられたお年寄りに、答えるすべがありませんでした。

本県の70歳以上の人口は2005年3月31日現在、18万2050人、全人口の17・1%、75歳以上の高齢者は、11万8238人、一1・0%、全国順位16位となっています。

Aこれほどまでに、お年寄りに負担を強いる大改革をどのように受け止めておられるのか。素直な所見をおきかせ願います。

B地域医療を守り、県民の医療と健康を守る立場から、県独自の支援を考えていることがあれば、お聞かせ願います。

 3点について、福祉保健部長の答弁を求めます。

《答弁 小濱福祉保健部長》

 わかやまドクターバンク制度や医師臨床研修連絡協議会の設置に加え、平成18年度から「医師確保修学資金制度」の創設や医師募集など県内のあらゆる医療情報を発信するホームページを開設する。全国知事会において政府要望をおこなうとともに、6月15日、厚生労働省にたいし抜本的な対策をつよく提案・要望した。
 看護職員対策としては、今年度から離職防止対策として看護職員の不安やストレスの軽減を図るための「「ナース相談窓口」の開設等、実施している。
 
 高齢者の負担増等については、利用者の視点にたった適切な制度運営がなされるよう、市町村および後期高齢者医療広域連合にたいし、必要な助言や指導をおこなう。 
 療養病床の再編については、国において検討中である経過措置等の情報の早期収集につとめ、療養病床の介護老人保健施設への計画的な転換等、地域全体で高齢者をささえる体制づくりをすすめていく。

2、障害者自立支援法の施行のもとでの施策について

障害者自立支援法が4月に施行されました。法律にたいして最も批判が多かったのが、障害がある人の負担が、応能負担から応益負担の1割負担に変えられたことでした。生きていくために必要なサービスを受けることが、なぜ「益」とされるのか。十分な所得保障もないのに、障害が重いほど負担が大きくなるという生存権を否定するようなやり方への怒りと不安の声が相次ぎました。
 県は昨年、法案が国会へ提出される前に、関係する県民の声を県内各所で聴取し、その声を国にまとめて提出されました。こうしたとりくみは、かつてなかったことではないでしょうか。
 この姿勢は、関係者からも大変歓迎をうけたところであり、わたくしどもも評価するものです。
 法律の施行から2ヶ月あまり経過した今、利用者や施設関係者などの声に県があらためて耳を傾けて、必要な施策を講じていただきたいと願うものです。この立場からいくつかの問題について、質問申し上げます。
 先日、県共同作業所連絡会が、施設の利用状況や今後の見通しなどについて5月から6月にかけてアンケート調査をしました。わたしは、その結果を拝見するとともに、施設関係者のみなさんからもお話をうかがいました。
 このアンケートで明らかになったことのひとつ目は、応益負担で利用料金の負担が重いため、施設の利用を続けられなくなっているケースや、昼食を施設が出す給食から安価なものに切り替えるということが起こっていることです。知的障害者の授産施設の利用をやめた人が3月から4月にかけて16人あり、やめるかどうか考えている人も10人ありました。合わせると26人です。アンケートへの回答は20施設、施設利用者の合計は548人ですので、約5%にあたります。また、利用を控えている人も4月以降、毎月10人前後ありました。
 また、障害者自立支援法は、小規模通所授産施設や無認可の作業所が、「地域生活支援」や「就労支援」といった新事業をすすめることを求めています。551人の利用者がありますが、ことし10月以降、新事業へ移行して経済的負担が重くなったときのことを考えると、通えるかどうか思案中だという人は28人ありました。そのうえ、施設の側から、新事業のことを説明しきれていないケースや、利用者の気持ちを把握できていないという回答もあり、今後増える可能性が指摘されています。

知的障害者の授産施設で給食をやめた人は、カップラーメンを食べていたり、売れ残って安くなった弁当を食べるなど、栄養面からはあまり好ましくない状態におかれている人もありました。
 また、施設の利用をやめた人のなかには、「高齢で年金ぐらしの両親に負担をかけるわけにはいかない」と家にこもってしまった方もあるとおききしました。
 ふたつ目は、施設は、4月から日々の利用人数に応じて支援費を請求しなければならなくなり、収入が減少しているという問題です。
 1ヶ月22日が基本とされていますが、ある施設では4月に実際に開けたのは20日間でした。利用者のなかには、体調が悪く施設にいけないこともあるため、平均すると75%程度の出席だったといいます。激変緩和措置などもありますが、施設の収入は大幅に減ったといいます。ことし1月から3月までは毎月470万円前後だった収入は、四月には380万円まで落ちこみました。
 
施設の収入の減少は、人件費にしわ寄せがいかざるをえません。福祉には、専門的な人の手が大切ですが、収入の減少は、障害がある人へのサポートにも、職員のくらしにも影を落とすことになります。

施設の収入のなかには、利用者の負担も含まれています。多くの人がこれまで要らなかった利用料を払わなければならなくなり、平均1万円の負担増になるといいます。
 施設に払われる報酬が日割り単位に変わったのは、入所施設でも同様です。グループホームの利用者は、お正月やお盆には帰省します。しかし、それでは施設の収入減になってしまうという仕組みに変えられてしまったわけです。
 自立のために働きにいった施設で工賃を上回る利用料を払わなければならない。そして、利用者と事業者を分断させるような、こんな理不尽なことをいつまでも放っておくわけにはいきません。
 
県は昨年6月、国へ提出された「障害者自立支援法案」に関する提言のなかで、「現在の利用者が施設からの退所を余儀なくされることのないよう、柔軟な対応が必要である」とのべられていますし、障害がある人とその家族からも負担が増えることへの不安の声も国へ届けられました。
 そして、いま紹介しましたように、利用者が施設からの退所を余儀なくされたり、施設の収入が激減するなど、懸念されていた問題が現実のものとなってきていることも、ぜひ国へ届けていただきたいと思います。

県として、法施行後の障害者とその施設の動向をどのように調査し、把握していますか。調査は繰り返しおこない、必要な提言が継続されることを期待するものです。小泉首相は、法案審議のなかで、「法律を実施し、問題があると分かればしかるべき対応をとる」と答弁しています。応益負担を応能負担に戻してほしい、施設の報酬は切り下げられた単価を月単位の計算に戻してほしい、こうした要求は切実です。国へ提言をすると同時に、県独自にも利用者の軽減措置をとることも求めたいと思います。全国各地の自治体では、独自の軽減策がとられています。京都府では、利用者の負担上限を住民税非課税世帯は国基準の半額にするなど、きょうさんのまとめでは、8都府県と243の市区町村で利用料や医療費の軽減策がとられています。和歌山県でも、こうした負担軽減策にふみだすべきだと思いますが、いかがでしょうか。

 障害程度区分認定についても意見が寄せられています。各自治体に、障害がある人に面談し、聞き取りをするスタッフがおかれていますが、障害者のことがわかる人を配置してほしい、適正な判定がされるのだろうか、従来受けられてきたサービスが抑制されるといった問題が起きないか、という声があがっています。

 専門性が発揮できるような人員の配置が必要だと考えますが、どのようにお考えでしょうか。

以上3つの点について、福祉保健部長、お答えください。

 いま、障害者福祉の関係者が直面している問題は、施設の存続にもかかわる問題です。作業所が果たしてきた役割を考えるとき、そこをつぶすようなやり方は絶対に許せないというのが、みなさんの気持ちです。

 多くの人たちの努力で、障害がある人が働き、暮らす場は増えてまいりました。しかし、いまでも地域で障害をかかえて、ひとりぼっちで暮らすなど、大変な苦労をしていらっしゃるケースはまだまだ残されています。

 私のもとに、数例寄せられておりますが、一例をご紹介させていただきます。

 精神障害にくわえて、病気のため弱視になっている58歳の女性は、通院も服薬も拒否しているため、病状は非常に悪いうえ、対人関係もつくれない状態にあるといいます。家のなかは散らかり放題。布団を敷いて休めるという状態ではなく、ホームレスに近いような状態で、訪問した障害者施設の職員も言葉を失った、人間らしい暮らしが保障されていないと話していました。そして、もっと若年の段階で作業所や支援センターなどのサポートが必要だったと思う。そうした社会資源がなかったことが最大の問題だと思います、と話してくれました。

 地域にもっと多くの社会資源が必要であるにもかかわらず、それに逆行して、障害者の負担を増やす、サービスを抑制する、施設の経営もあやうくする。自立支援法とは名ばかりで、むしろ自立し、人間らしい暮らしを保障することを妨げるようなやり方は、見過ごすことはできません。

利用者の負担を元に戻すこと、自立をささえる職員のがんばりに報いることができる制度に改善されることを願って、意のある答弁をお願いいたします。

《答弁 小濱福祉保健部長》

 利用者の利用抑制等については、現在調査中であり、結果を分析したうえで対策等検討していく。利用者の定着や事業者の経営基盤の安定につなげるため、授産施設等に経営コンサルタント等の専門家を派遣し、施設経営の強化や利用者の工賃アップが図れるよう支援している。利用者が安心して必要な障害福祉サービスを受けられ、不当に抑制されることがないよう注視していく。

 障害程度区分認定調査員の業務は、市町村が実施するものであり、市町村が障害の種別や障害者の人数等を勘案して認定調査員の人員等について適切に配置するものと考えている。国が定める認定調査員研修を修了したものとされている。県としては、客観的かつ公平・公正な調査実施のため、研究を実施し、養成してきている。

3、学童保育と地域子ども教室について

 まず、学童保育についておたずねします。

近年、低学年の子どもたちの尊い命が奪われる事件、事故が多く発生して、心の痛む毎日です。学校の登下校など、放課後の安全対策がきわめて重要になっています。学校をはじめ保護者や地域住民等による見守り対策などがとりくまれているところです。

学童保育は共働き家庭やひとり親家庭になくてはならない施設となっていますが、働く親たちの切実な願いから生まれました。法制化されるまでは、みずからの家を開放したり、アパートの一室を借り、「かぎっ子をなくそう」と長い間の自主的運動と実践の積み上げのなかで発展してきました。

私自身も働きつづけるため、その必要性を実感してきたひとりです。幸いにして地域に民間の学童保育が設置されたため入所でき、安心して働くことができました。当時は学童保育とは名ばかりで、宿題をみる程度のものでしたが、それでも子どもの居場所があるという安心感はなによりも、ありがたい思いでした。

1997年、国は児童福祉法にもとづき、放課後児童健全育成事業の名称で法制化しました。法制化後は、急激に学童保育数と入所児童数も増え、その必要性と期待はますます高まってきていると思います。

国は少子化対策、仕事と子育ての両立支援、次世代育成支援対策の重要な施策であるとして、「必要な地域すべてに整備していく」方針をもつようになりました。2005年5月1日現在、学童保育数は2033市区町村に15300ヶ所となっているとききます。

本県の学童保育設置数は、小学校総数336校にたいし、113ヶ所、その設置率は33・6%です。全国水準では最も低い高知県につぐ46位です。

紀州っ子元気プランによる設置目標数はどうなっていますか。目標にたいするとりくみ状況をお聞かせ願います。

厚生労働省は、学童保育に対する補助金単価基準を入所児童数別と年間開設日数281日以上と、200日〜280日とした不十分なものです。障害児受け入れ加算は、開所281日以上のみ補助をきり、長時間開設加算のみを一施設当たりの年額支給としています。三位一体改革のなかで年々削られてきています。

学童保育の設置数を増やす方針はあるものの、質的充実の方針は明確になっていません。法律に位置づけた制度でありながら、国としての最低限保障されなければならない行政水準がいまだに確立されていません。設置運営基準をつくることは、国の責任だと考えるものです。国に求めていただきたい。

同時に県としても設置、運営基準を関係者の声もきき、つくられることを願うものです。福祉保健部長、いかがでしょうか。

すでに埼玉県ではつくられていますし、石川、群馬県などでも検討が始まっているとききます。

つぎに「地域子ども教室」についておたずねします。

地域子ども教室は、文部科学省がすすめる事業です。目的は地域のおとなの協力をえて、学校の余裕教室や校庭等に安全安心して活動できる子どもの活動拠点(居場所)を設け、放課後や週末におけるさまざまな体験活動や地域住民との交流活動等を推進するとしています。

対象は小学校から中学校までのすべての児童生徒が自主的に参加する、週1回程度、ほぼ毎日実施まで、地域の様々な分野のおとなが指導員として配置され、16年度から18年度までの3ヵ年で実施されます。16年度99ヶ所、17年度128ヶ所、18年度142ヶ所で、学校や公民館などの社会教育施設で実行委員会主催で多種多様の体験行事がおこなわれてきました。文部科学省の委託事業となっています。

こんご需要は増すばかりですから、拡充するための財政措置が必要だと考えるものです。

この「地域子ども教室推進」事業の終了にあたり、総括を協議会としてしっかり行うべきではないでしょうか。

教育長、この間のとりくみから、どのような感想をおもちでしょうか。お聞かせいただきたいと思います。

《答弁 小濱福祉保健部長》

 放課後児童クラブは、平成21年度において県内24市町村、140箇所の設置を目標としている。拡充は、市町村にたいして地域の実情にあわせたとりくみを依頼するとともに、国にたいしても財政措置の充実を要望している。平成17年度末で114箇所、ことし6月1日現在で117箇所に設置されている。設置・運営基準の策定については、他府県のとりくみ等もふまえ、研究していく。

 地域子ども教室は、子どもたちが社会性や自立心を身につけるだけでなくて、事業に参加したおとな自身が新たな学びやお互いのつながりを生みだし、地域の教育力の向上にきわめて大きな役割を果たしてきている。