松坂英樹県議の質問と答弁(大要) 2006年9月20日

1、鳥獣被害対策

《質問》松坂英樹県議

 通告に基づいて質問に入らせていただきます。まずはじめに、鳥獣被害への対策についてお伺いします。実りの秋を迎えましたが、農家の皆さんは年々いっそう深刻となってきているイノシシ・シカ・サルなどによる鳥獣被害に悲鳴を上げておられます。「明日収穫しようと思っていた作物を全滅させられた」「芋でもこんな細いのまで全部食べていった」など、中山間地で苦労して農業経営をがんばっている農地でも、また、わずかな年金をたよりに暮らしているお年寄りの家庭菜園まで、「もう何も作れない」という状況となっているところも珍しくありません。まさに被害総額いくらという表面だった金額には出てこない大きなダメージを受けています。

 先日、有田川町吉原地区の中山間事業のグループの方にお話を伺う機会がありました。山の斜面を開発したパイロット園が広がる農地で、62軒の農家で作っているグループです。続発するイノシシ被害に自分たちの手でも取り組もうと、イノシシの捕獲オリを5つ購入して設置したそうです。夏前に設置して以来、すでに11頭のイノシシを捕獲したそうです。おかげで被害はかなり減ってきたというお話でした。

 ところが、同時に費用の面などで大変苦労をしていると悩みを聞かせていただきました。夏場だったので捕獲したイノシシの肉がおいしくないということで引き取り手ができず、結局、火葬場に行って火葬してもらったというんですね。イノシシ2匹で100キロ近くあったので、1キロ300円の火葬料金で24000円もかかってたいへんだったといいます。イノシシを火葬場に持っていったというのは初めて聞きました。

それに加えてですが、オリを設置する際には、地元区内の狩猟免許を持った方に指導してもらってやってきたが、その方も高齢でもあるし、自分たちもこれから勉強して免許も持って、自分らでやれるようになろうということで、役員3人が狩猟免許を取りに行った。そしたら免状を取るのに一人2万円ちかくかかった。それに加えて狩猟登録するのに毎年2万円ずついるという。こんなに次から次へと費用がいってはたまらない。なんとかならないかというのですね。

 私は、火葬場である有田聖園事務組合へも出向いて調査したところ、イノシシのほかにも捕獲されたサルやアライグマなどが持ち込まれているということを知りました。
 これまで、有害鳥獣の捕獲という点では、猟友会の皆さん、ハンターの皆さんにご協力を願ってきたわけですが、狩猟免許者の減少や高齢化、夏の猛暑の時期の有害対策の困難さにより、今後はこのような農家自身が農地を守る取組みが広がっていくと思います。そうなると今回の例は特殊な例ではなくなってくるし、それにむけた対応が必要になってくると思うのです。
 こういった点をふまえてお尋ねするのですが、県はイノシシ保護管理検討会においてイノシシを特定鳥獣にして対策を検討しようとしていますが、これによってどう対策が強化されるのでしょうか。また、鳥獣被害対策では、農家や住民自身の取組みへの指導や支援がいっそう求められてくるのではないでしょうか。

 次に、サルの被害という点では、有田川町の岩野河地区を中心にこの前後の有田川中流域に被害が続出しています。ある岩野河の住民の方は一つの大木にたかっているサルを数えたら110匹まで勘定した、まず150匹ぐらいはいるだろう、と話してくれました。

ここのサル被害の深刻な点は、特にタイワンザルとの混血の問題です。尻尾の長いもの、中くらいのもの等が群れの中に混じっているとの報告も数多く出されています。和歌山市から海南市へのタイワンザル対策が一定の効果を上げた今日、生態系への影響の点からもこの地域への調査と対策が急務となっていると考えます。

 以上、イノシシの特定鳥獣指定について、鳥獣被害対策への支援強化について、有田川中流部のサル被害対策について、の鳥獣被害対策3点について環境生活部長よりご答弁をお願いします。

《答弁》楠本隆環境生活部長
 鳥獣被害対策に関する3点のご質問にお答え申し上げます。まず、イノシシの特定鳥獣の指定についてでございますが、中山間地域におけるイノシシによる農作物被害の問題につきましては、これまでも県議会において様々なご議論を賜っておりましたが、これらを踏まえ今年度にイノシシ保護管理計画検討会を立ち上げ、イノシシにかかる特定鳥獣保護管理計画を策定し、捕獲をいっそう促進するため狩猟期間を延長するなど対策の検討を始めたところでございます。
 今後は、この検討会の検討結果を踏まえ、特定鳥獣保護管理計画の策定作業を迅速に進めてまいりたいと考えております。

 次に、鳥獣被害対策への支援強化についてでございますが、農作物に被害を与える有害鳥獣の捕獲は、市町村が積極的に取り組んでいる重要な被害対策のひとつであります。県としましてもその重要性に鑑み、捕獲に要する経費や捕獲用オリの購入に要する経費に対し有害鳥獣捕獲事業等補助金を交付して市町村への支援を行なっております。
 また、これとは別に、平成17年度から有害捕獲許可を受ける従事者に必要な狩猟経験年数の条件を緩和するとともにイノシシの捕獲許可日数や一人当たりの捕獲数を拡充するなど許可基準の見直しを行い、効果的な捕獲の推進に努めております。
 最近の鳥獣被害の拡大を踏まえ、市町村が取り組む有害捕獲に対しまして、今後とも引き続き積極的に支援してまいりたいと考えております。

 次に、有田川中流部のサル対策についてでございますが、タイワンザルは、もともと日本に生息していたものではなく、人間により持ち込まれた種であるため、タイワンザルの増加によりニホンザルが減少することは、本来の生態系に被害を及ぼすと言う問題が生じます。タイワンザルは一般的には、ニホンザルと比較して尾が長いと言われていますが、それだけでは充分な確認が難しく、タイワンザルとニホンザルを性格に区別するためには、適切な調査とそれに基づく分析が必要であり、また、それらに伴う経費と時間も必要になってまいります。
 ご指摘の有田川中流部のサルにつきましては、有田川町を通じ、地元の住民の方々の目撃情報等を収集、分析し、今後の対応を検討してまいりたいと考えております。

 2、ポジティブリスト制への対応について
《質問》松坂英樹県議

 次に、農薬ポジティブリスト制への対応についてお伺いします。この制度は食の安全性を確保する点では一歩前進といえるものです。しかし、農家の中からは、農薬登録や使用基準の不合理などによる混乱や不安が根強く出されています。有田地方でも、夏場の数少ない柑橘類として栽培されていたバレンシァオレンジが、一般的な栽培方法では、この規制をクリアしにくいということで大部分が伐採されてしまいました。

 先の六月議会、また午前中の質問でもこのポジティブリスト制への対応について何名かの議員から質問がされました。その中で、農薬登録拡大の必要性や、農薬使用や栽培方法などの農家への指導徹底、農作物の改植への補助がある点などが答弁されましたが、新たな設備投資などへの具体的な支援メニューまでは示されませんでした。山椒がありウメがありといったような中山間地では地形的条件からの困難さがあるとの声もあります。また、このポジティブリスト制に前向き対応して、自らの農産物の安全性やこだわりを押し出したいという積極的な農家もいます。こういったやる気のある農家から、ドリフト防止ネット等、農薬の飛散を防止するこういった物を設置する際の支援が強く要望されています。
 この点では、来年度予算編成に向けて、高品質で安全・安心な農産物生産という点からも支援策をぜひ検討すべきではないでしょうか。農林水産部長の答弁をお願いします。

《答弁》西岡俊雄農林水産部長
 ポジティブリスト制への対応について、議員お尋ねのドリフト防止ネット等への支援につきましては、現在、該当する助成制度はございません。しかしながら、防止ネットにつきましては、防除暦や低減ノズルの使用などとともに、周辺農産物への農薬の飛散に配慮するというドリフト対策の一つでございますので、産地の特性など、引き続き生産農家の意見も聞きながら、技術面、また経費など経営両面からも検討してまいりたいと考えてございます。

3、乳幼児医療費助成制度について

《質問》松坂英樹県議

 3つ目の質問に入らせていただきます。乳幼児医療費助成制度についてであります。県は今年度から、この乳幼児医療費助成制度の対象年齢を拡大し、通院についても小学校入学前までを助成対象とすることにしました。所得制限が新たについたものの、これは永年の県民要求にこたえたものであり大変積極的なものだと評価してまいりました。
 この助成制度は実施主体が市町村であり、10月1日からのスタートに向けて事業要綱が出揃ってきたとおもいます。今回、県が導入した所得制限をもうけずに計画をした市町村もかなりあります。また和歌山市では、対象年齢を入院については小学校卒業前までに拡大したといううれしい知らせも聞いています。私は、子育て支援という意味で、財政が厳しい中でもこういった計画をもった自治体を積極的に評価すべきだと思いますし、県もこの後押しをうけて、今後、所得制限廃止や対象年齢引き上げなどのいっそうの改善策を検討すべきではないでしょうか。福祉保健部長より県内の実施状況と合わせてご答弁を願います。

《答弁》小濱孝夫福祉保健部長

 乳幼児医療費助成制度について、県内自治体の実施計画状況はどうか、所得制限廃止や対象年齢引き上げなどの改善を検討すべきではないか、についてお答えいたします。
 乳幼児医療費助成制度につきましては、乳幼児の疾病の早期発見と治療の促進及び子育て家庭の経済的負担の軽減を図るため、通院医療費の助成対象年齢を、3歳未満から義務教育就学前の児童まで拡大し、各市町村において、本年10月から実施いたします。
 所得制限を設けるのは14市町村、設けないのは16市町で、和歌山市では入院の対象年齢を拡大しているところでございます。
 議員御提案の所得制限廃止や対象年齢引き上げにつきましては、他府県の状況を踏まえ、必要性や効用を勘案したものであり、本制度が10月からスタートするものであることにご理解いただきたいと存じます。

《要望》松坂英樹県議

 部長からは、県内30市町村のうちで半数以上の16市町村において所得制限なしの制度要綱が作られたことが答弁されました。これはたいへん積極的なことだと歓迎すべきだと思います。今後のことについて聞いたわけですが、今制度がスタートしたところなのでという答弁でした。次をせかすようでなんですが、これ大事なことです。
 有田振興局管内でも所得制限をもうけなかった自治体が2つ、もうけた自治体が2つと半々にわかれました。対象年齢が拡大されたということは、どこへ行っても喜ばれていまして本当に胸をはっていいと思うのですが、住民にとっては、所得制限があったりなかったりという点ではとまどいがあるし、市町村としては胸を痛めているところだとおもうのです。 
 今回の半数をこす自治体が所得制限なしで制度をつくったということや、さらに対象年齢を拡大した和歌山市などを積極的に評価して、さらなる改善にむかっていただくよう重ねて要望をしておきたいと思います。


4、郵便局再編問題

《質問》松坂英樹県議

 4つ目の柱である郵便局再編の問題に移らせていただきます。
 この度、郵政民営化への準備として、郵政公社は全国的な事業再編に乗り出しました。その一環として県内でも17の集配局が廃止され、近隣の局にその機能が統合されることになっています。この再編計画で住民へのサービスがどう変わるのかという心配の声が県内各地から上がっています。 
 私が住む有田地方でも、有田川町の旧金屋町にある金屋郵便局と旧清水町にある押出郵便局が集配局でなくなり、それぞれ湯浅局、清水局に業務が統合されます。私はこれによってどう影響が出るのか、お話を伺いに2つの郵便局を訪ねてまいりました。
 両局の局長さんは「サービスの低下はありません。不在郵便物も局で預からずに毎日配達に持って出るようになります」と丁寧に説明をしていただきましたが、その地域や配達実態を聞けば聞くほどたいへんさが実感できました。

 たとえば金屋局では外勤職員が9名います。一日平均3800通の配達があり、300部程度の新聞の郵送もあずかっているそうです。外勤職員の方は、朝9時に局を出てから夕方4時半ごろまでかかって、お昼も局にもどらずに、配達や貯金・保険の業務に一軒一軒まわるということです。旧金屋町は谷が手のひらのように放射線状に伸びており、地形的にも山間僻地をかかえる局です。この外務員さんが、分社化によって郵便配達会社の職員と、貯金・保険の会社の職員に別れ、それぞれの人が湯浅町にある湯浅局の統括センターからバイク別々に回るということになります。広範な山間部に点在する家庭を回るのに、郵便・貯金・保険の3つの業務をひとまとめにして回っていたからこそ効率的だったものが、かえって別々に回ることによって、一人ひとりの職員の受け持ちエリアも広くなり、これまでのようなサービスが維持できるのか甚だ疑問です。

 旧清水町の過疎地にある押出郵便局では、3名の外勤職員が地域を回っておられました。ここでは「ひまわりサービス」の話が出ました。一人暮らしのお宅には、ポストに郵便物を入れるだけでなくて「おばちゃん郵便やで、調子どうな」と一声かけて安否確認をするひまわりサービスが、旧清水町と協定を結んで行なわれていました。遠い局から広い地域を回ることになれば、こういったきめこまやかなサービスが続けられるのかも不安になります。また、局長室には簡易保険の成績優秀の賞状が所狭しと並んでいましたが、これは職員さんのがんばりとともに、こういうへき地では民間の保険業者は経費の関係であまりこない、そんな中で地域からはたよりになる相談相手なんだなという感じをうけました。
 今回の再編を民営化・分社化にともなうやむをえない措置なのだと郵政公社は説明しますが、集配局からはずれることにより、地域に働く場がなくなることは事実です。当該局としては集配業務がなくなって仕事が減るわけですから、窓口業務だけでこういったへき地の郵便局の経営が成り立ってゆくのは非常に困難であり、民営化後に「赤字局の統廃合」などということにされるのは目に見えています。国鉄民営化でも同じような道をたどったのではないでしょうか。

 今回の集配局再編計画では県内の対象局は17局ですが、再編計画の基本は、郵便番号仕分け機を置く「統括センター」への二段階的な集約であり、配達センターを残すのはその過渡的措置にすぎないわけで、先々統括局に集中されることになります。近畿県内の各府県の統廃合の計画数を比べますと、大阪は77局から68局への統合で90%が残ります。しかし京都は74局が27局で36%、兵庫は142局が46局で32%に、奈良は59局が15局で25%、滋賀は53局が12局で23%、そしてこれらを上回って和歌山県では67局が12局になってしまい、なんと18%にまで減ってします。削減率ナンバーワンということになります。こういった意味でも、郵政民営化と郵便局再編で和歌山県は近畿で最も大きな影響を受ける県といえます。

 このまま二段階的統廃合が進めば、郵政民営化法案の審議の中で「特定集配局は、地域の中のネットワークの中心で、価値は高い」「過疎地の郵便局は維持される」「郵政民営化でサービスはよくなる」と平気で答えた竹中大臣や小泉首相の答弁を根底から崩すものとなっています。
 私たちは、地元自治体などの反対を押し切って統廃合を強行するなと主張してきましたが、県としてこの集配局廃止統合と郵政民営化による影響をどうみるのか、また、サービス低下や過疎地・地方切捨てにならないよう、郵政公社や国に対して働きかけるべきではないか、この2点については木村知事よりご答弁を願います。

《答弁》木村良樹知事
 郵政民営化に伴う郵便局の再編は国民の利便性をしっかりと守って行われることとなっておりますが、中山間地域においては、郵便局は地域唯一の金融機関として国民生活と密着しておりますので、特に、窓口業務のみを行なうこととなる郵便局が所在する地域において住民の利便性が損なわれることがないよう、再編後の状況を県としても充分注視してまいります。

《要望》松坂英樹県議

 今回、この問題で質問を準備して担当課から話を聞こうとしたら、県の組織にこの問題を担当する組織・課が存在しないということがわかり、だれが答弁するのかとたいへんだったようですが、県民、特に過疎地の住民や自治体が心配している時に、県としてこの問題に心を痛めている部署や職員がいないということにははっとさせられました。私が指摘をしたかった最大の問題は、郵便局再編が民営化をはさんで2段階的にねらわれているということ、そしてその影響は、過疎地切捨てで、地域のネットワークやサービスを低下させる結果をまねくことになる、こうなってはダメだという指摘でした。
 県民・市町村とともに、過疎地や地域のネットワークづくりに心を砕くよう、そして申すべきはしっかりとモノ申すよう重ねて要望しておくものです。


5、水環境条例の制定にむけて

《質問》松坂英樹県議
 
私はこれまでの質問で、河川の水質向上、水源の保全、濁水対策などからも、「水環境条例」の制定を契機に、和歌山県の豊かな自然環境を守り育んでゆく取組みが必要だと訴えてきました。
 このほど私ども共産党県議団では、近年同様の水環境とかかわる条例を整備した岩手県と宮城県に出向いて調査をしてまいりました。この地はリアス式海岸の良好な漁場を持つ地域であり、「山は海の恋人」というスローガンのもと、漁師が植林運動に取り組み、全国にひろがっているその運動の発祥の地でもあります。
 北海道と岩手・秋田・青森の東北3県は知事会議の合意事項ということで、同様の水循環を大切にする条例を整備し、岩手県では「ふるさとの森と川と海の保全及び創造に関する条例」という名前でした。また宮城県は「ふるさと宮城の水循環保全条例」という名前で、ここは当局ではなく議員提案によってできた条例で、約2年間の議論の上に条例を制定していました。それぞれ、条例にもとづき河川流域ごとに地域の水環境保全計画を立てて、事業に取り組み始めていました。
 私たちは、県当局からお話を伺うとともに、漁民が声を上げた現場にも出かけました。「山は海の恋人」等の多くの著書で有名な畠山重篤(しげあつ)さんに、気仙沼のカキ養殖場で直接お会いしてお話を伺う機会を得ました。畠山さんの著書は、学校の教科書にも掲載されていますし、今年の3月にも和歌山市で開かれた流域12市町村による「吉野川・紀の川流域協議会」の「水環境に関する講演会」に招かれているので、話をお聞きになった方もいらっしゃるかもしれません。

 私は始めて畠山さんのお話を聞かせていただいたのですが、たいへん感動しました。リアス式海岸のリアスという言葉はスペイン語の川という語源があって、川が削った湾という意味で川と海は切っても切れない関係だということからはじまり、気仙沼など、海の漁業資源が豊かなのは川の上流の山が鉄分などをはじめ豊かな栄養分を運んでくれているからなのだ。山があり川があってこそ、プランクトンが育ち、海藻類や魚介類が育つのだということ。このわかりやすい例として、ほぼ同じ大きさである鹿児島湾と東京湾はどちらが漁獲高が多いかという話になり、鹿児島湾は火山活動によってできた湾だから流れ込む大きな川が無くて真珠の養殖もできないのに対し、東京湾は水質はよくなくても、流れ込む多くの河川からもたらされる、山からの豊かな栄養分によって30倍も多くの魚がとれるときいてびっくりしました。

 また、三陸と和歌山の不思議なつながりについても教えていただきました。畠山さんたち気仙沼の漁師が植樹をしている山は室根山という名前なのですが、このムロという名前は和歌山の熊野大社からいただいた名前で東牟婁・西牟婁のムロと語源が同じだということや、カツオ漁での交流なども紹介されました。また牡蠣の養殖の勉強で訪れたヨーロッパの話も出され、世界遺産で和歌山の先輩であるガリシア地方はスペイン無敵艦隊の木造船をつくる材木を供給した「湿ったスペイン」といわれる木材王国で、高野熊野の和歌山と共通点がありますねと、自然科学だけでなく歴史や文化も重ね合わせるとおもしろいですよと話されました。 
 お話を伺って、山は山、川は川、海は海というふうに自然環境の問題を個別バラバラにとらえるのではなく、地域や縦割り行政の壁をこえて森林から河川そして沿岸へと流域単位で物事を考えないといけない時代だということを改めて痛感しました。

 ここで県内の河川に注目してみると、紀ノ川や熊野川などの1級河川では国が流域委員会を設けるなどの試みをはじめました。また古座川では古座川流域委員会が幅広い行政と住民・研究者によって活動を始めています。考えてみると、有田川など県内河川はいずれも流域面積が500平方キロメートル前後のコンパクトなものであり、地元住民にとっても流域全体をイメージしやすく、またがんばって取り組んだら効果も目に見えて現れやすいという地理的条件を備えています。この和歌山でこそ、山・川・海の豊かな自然環境を統一的に生かしてゆく施策が必要であるし、そのことがかけがえの無い和歌山の自然環境を磨き上げる原動力になると考えます。
 
私は環境問題に熱心な県として、行政と住民が力をあわせて流域単位で取り組んでゆく必要であると考えますが、現在県内では、流域単位での環境保全・向上の取組みはどの程度取り組まれているのかその状況をお示しいただきたいと思います。環境生活部長よりご答弁をお願いします。

《答弁》楠本隆環境生活部長
 次に、流域単位での環境保全の取組みについてのご質問でございます。本県は、多くの自然豊かな河川に恵まれております。そして、そのすべての河川において、その清流を守っていくことが、県民すべての思いでございます。
 本県では、恵み豊かな自然環境を守り、育て、そして次世代へ引き継ぐことを目指して、環境基本条例に基づき環境基本計画を策定しております。
 この中で、環境林整備面積や間伐実施面積、汚水処理人口普及率などに目標値を設定するとともに、例えば、企業の森や漁民の森に係る育成・支援、特定流域への水質上乗せ基準の適用、下水道等の生活排水処理施設整備、藻場・干潟の保全など、健全な水循環の確保に寄与するために、山・川・海に関する環境関連諸施策を関係部局と連携しながら総合的に進めているところでございます。
 議員のご指摘にもありましたように、各流域には、それぞれの地域特性があり、これらを踏まえた取組みが重要であるものと認識しておりますので、今後、流域単位での検証につきましても研究を行ってまいりたいと考えております。以上でございます。

6、紀の国森づくり税について

《質問》松坂英樹県議

 さて、最後に紀の国森づくり税についてお伺いします。私はさる2月議会でも森づくり税への県の対応を質問し、この税は早期導入を求める声もある一方で、各界から批判的意見が相次いだという経過をふまえ、県民に対する説明会や意見交換会を持って十分に対話と説明をつくすべきではないかと申し上げてきました。
 県としてはこの間、各振興局単位に南から順番に9回の説明会を開きました。私も有田振興局で開かれた説明会に参加し、説明会の様子を聞かせていただきました。しかし、参加者はわずか29人でした。資料をとりよせてみますと、9回の説明会の平均参加者数はわずか25名です。和歌山市では説明会が2回持たれましたが、県民文化会館が30人、紀北家畜保健衛生所では12人だったそうです。これは結果としてたいへんお粗末だし、これをもって県民に説明をしましたと言われては困ると思うのです。また内容も、税の仕組みにかかわるどちらかというと実務的な説明が大部分で、森林の現況や税の使い道についてはほんのわずかな説明だけでした。有田での会場からの意見は、使い道もはっきりしないものを県民に押し付けるのは納得できないという批判的な意見ばかりでした。
 一方、税の使い道について検討している紀の国森づくり基金活用検討会においても、アンケートや説明会の規模や取組みの姿勢について県の姿勢を不満とする意見が多く出されています。
 私は、これらの状況から、到底来年度から森づくり税の導入ができるような状態ではないと考えています。そこで、総務部長にお尋ねします。県内各地の説明会で出された意見の特徴はどうであったか、また説明会を通じて県民合意は進んだと言えるのかという2点についてお答えを頂きたいと思います。

《答弁》原邦彰総務部長
 紀の国森づくり税につきましては、「県民の友」などによりPRするとともに、8月21日から9月4日の間、県内計9ヶ所において、税の趣旨の理解を得ることと、使い途のご意見を頂くことを目的として、説明会を開催したところであります。その説明会で出された主な意見としては、使い途が明確になっていない既存予算で実施すべきといった意見もありましたが、一方では森林の本来機能を回復させるためには税額をもっと高くすべき郷土の自然を保護していく観点から親しみやすい税である里山整備や学校教育などの身近な事業を行なってほしいという前向きな意見もございました。
 この説明会によるアンケート調査では、出席者の7割近くの方からこの税について「理解できた」と回答なされております。
 いずれにしても、県民皆様の一層のご理解とご協力を得るため、引き続き説明会の随時開催を行なったり、更にはご指摘にもありました税の使い途の概要が定まった以降、啓発用パンフレットの作成配付など周知啓発活動に取り組んでまいります。

《再質問》松坂英樹県議

 森づくり税に関しては総務部長に再質問をさせていただきます。
 答弁の中で、「説明会のアンケートによると7割の方がご理解いただいたと回答があった」とのお話がありました。ちょっと聞いたら、県民理解が大きく進んでいるかのような答弁であったかとおもうのですが、これは私ちがうと思うんですね。

 部長はどこかの説明会に出席されたのかどうか、アンケートを書いてみたかどうかは知らないのですが、私は説明会参加させていただきましたし、アンケートも書きました。このアンケートですよね。こういう設問なんです。性別や年齢、職業などを書く欄があって、その下の第1問で、「本日ご説明させて頂いた内容について、ご理解いただきましたか」と聞かれてるのです。@理解できたAあまり理解できなかった、はい、どちらかに丸をしなさい。というのです。まるでなにか授業を受けたの後のテストみたいな設問ではないですか。

 税の使途や税負担のあり方などへのご意見を色んな角度から聞いた上で、最後に今回の森づくり税の趣旨にご理解をいただけるでしょうか、ご協力いただけるでしょうか、と聞くのならまだしも理解できますが、今回のアンケートは職員の税の仕組みの説明がわかったか分からなかったかみたいな聞き方で、たいへんお粗末だとおもうのです。
 また、説明会で出された意見も並列的に報告されていましたが、会場での意見としては導入に批判的な意見が圧倒的に多かったと聞いています。
 私が言いたいのは、アンケート自身はお粗末ですが、アンケートの不十分さを問題にするわけではなくて、今回の説明会の参加状況やこのアンケートの結果でもって「理解がすすんだ」なんて思われてはこまる、そんなふうにとれる答弁を公式の場でされてはこまるといっているのです。

 税の使途についての県民の疑問が多い中で、使途を例示もできない中での説明はおのずと限界があります。説明会での質問に対する職員の受け答えにもその面での苦労がにじみ出ていました。今回、9回もった一連の説明会は、まず県民への説明の第一歩という位置づけではないんですか。使い道や導入に向けてのプロセスなども含めて、もっともっと県民の理解と納得を得てこそ県民運動となりえるのではないでしょうか。
 説明会もそれなりの宣伝に努力した。アンケートの感触はよかった。あとはこの調子でパンフレットとか作っていけば説明責任は果たせるというような感覚なんでしょうか。もしそうだとすれば、県の捉え方は甘すぎるといわざるをえません。
 今回の説明会をいったい県はどう見ておられるのか、私の質問に今一度ご答弁を願います。

《再答弁》原邦彰総務部長
 ご答弁申し上げましたとおり、これで充分と言うことではなくて、引き続き説明会の随時開催ですとか、特に税の使い途について明らかになっていないというようなご批判もあったようでございますので、特にその点についての検討も進めて、それがある程度概要が明らかになった段階で引き続き周知啓発活動に努めてまいりたいと思っております。

《要望》松坂英樹県議
 
 答弁にあったように、今後検討委員会の答申なども受けて、森林の現状や税の使い道などについても県民とキャッチボールをしてゆくことになるのだと思います。先日、水環境の問題で岩手県を視察した際に、岩手の森林税の使途もお聞きしました。いわゆるソフト事業とハード事業を半々にした高知県の例もありますが、岩手県では予算のほぼすべてをハード事業である森林整備にあてていました。このようにその地域の実態や県民世論とよくキャッチボールして、時間をかけて決めていった経過があると思うのです。私は、県民の理解と納得を得てすすめようとしなかった成立過程をみても、とうてい森づくり税導入を強行できる状況にはないし、強行するのはまちがいだということを再度申し上げ、県としてもしっかりと説明責任をはたすよう強く申し上げて質問を終わります。