2006年9月県議会

雑賀光夫県議(9月21日)

1 医療・福祉問題について
 @     障害児施設通園の負担について
 A     介護福祉用具の貸与問題
 B     作業所通所等の問題
 C     産婦人科不足について
 D     療養病床の削減

2 鳥獣被害対策について
 @   いのしし・鳥獣被害の実態と対策
 A   いのししの生態などの把握
 B   狩猟・檻への公的施策

3 住友金属での重大災害
 @        労働災害の増加・事故隠し
 A        「安全教育」の懲罰的内容
 B        ネットワークによる実態把握
 C        重大災害の新聞報道

4 和歌山県教育史(史料編)について

★ 雑賀光夫県議

JR黒江駅プラットホーム改善のお礼

質問に入る前に、ご報告とお礼を申し上げたいと思います。私は、昨年の6月の議会で、JRの安全問題にかかわって、乗降人数が多いJR黒江駅のプラットホームと電車の段差問題をとりあげました。企画部長からバリアフリー法の活用など前向きの助言・答弁をいただきまして、海南市・地元地域で一気に機運がもりあがりました。結果としてバリアフリー法にはよらなかったのですが、県から3分の1の補助をいただき、このほどプラットホームかさ上げ工事が完成し、みなさん喜こんでおられます。この場を借りて、関係者のみなさんにお礼申し上げておきたいと思います。ありがとうございました。

医療・福祉問題

★ 雑賀光夫県議第一回質問

 さて、最初の質問にはいります。正直に申し上げておきますが、私は福祉の問題には詳しくございません。こうした私ではありますが、昨近の介護・医療制度などの改革の中で、「これは」という問題にぶつかるわけであります。素人の私なりに、ぶつかった「いかにもではないか」と思われる問題について、県担当部長としてどうお考えなのかお伺いしたいと思います。

障害者通所施設と保育所

第一点 9月10日に和歌山市民会館で、障害者自立支援法フォーラムが開かれました。このフォーラムは障害者団体10団体が県下で連鎖集会として開いている取り組みの和歌山市・海南市・紀美野町集会でした。市民ホールはいっぱいで入りきれない方は、ロビーでテレビを見る状態でした。主催団体を代表して和歌山県手をつなぐ育成会の鈴木俊男理事長が障害者自立支援法を「自立と相反するもの」と批判され、障害者と保護者からの切実な願いが語られました。その中のひとつでございます。3人のお子さんを持っているお母さん。一人が障害を持ち、こじか園という知的障害児通所施設に通わせています。あとの二人を一般保育所に通わせている。一般保育所の保育料は、第一子で3万円、第二子は半額の1万5000円、第三子は無料だそうです。合計4万5000円となる。ところが、一人が管轄の違うこじか園にかよっている関係で約85000円になるというお話でした。

 これは制度が改悪されたからやむをえないということではすまされません。私は制度の谷間ということをいいますが、まさに制度の谷間、欠陥であります。

 こういう制度の欠陥は、和歌山市だけのものなのか、全県的に一般的にある問題なのか、福祉保健部長はどう考えるかお伺いいたします。

      小濱孝夫福祉保健部長答弁

医療・福祉問題についての5点のご質問にお答えいたします。
 まず、知的障害児通園施設と保育所通園の費用負担についてでございますが、知的障害児通園施設は、障害のある幼児に対し療育訓練をとおして発達を促すことを目的とし、一方、保育所は保育に欠ける乳幼児を保育することを目的とするもので、施設の役割や保護者負担など制度の相違がございます。
 このため、両者を統合した軽減措置はございませんが、保育所徴収金につきましては国に対して軽減措置を講ずるよう近畿府県とともに要望しているところでございます。また、障害のある子どもを持つご家庭の負担を軽減するため、児童扶養手当や税の減免措置などの支援制度もあります。
  なお、障害者自立支援法の施行に伴い、10月からは障害児通園施設の利用に見合った負担や食費の実費負担をいただくことになっておりますが、過大な負担とならないよう、また、保育所の負担との均衡が図られるよう低所得の方への減免措置や食費負担の軽減措置がなされております。

自立支援法と共同作業所

★ 雑賀光夫県議第一回質問

 

第二点 地元の「かたつむり共同作業者」などにお伺いして出されるのは、「自立支援法で利用者の負担が大変だ。利用者負担が工賃を上回るのでは働く意欲がわかない」という声です。こうした中で、施設利用をあきらめる方もでてきているとお聞きします。また、田辺市、白浜町などで補助制度が実現したとお聞きします。

県内で、施設利用への影響はどのようになっているでしょうか。県内外で負担軽減の補助の動向はどうでしょうか。県として、こうした共同作業所を利用するみなさんに、どういう負担軽減などの支援をされるのでしょうか。

     小濱孝夫福祉保健部長答弁

 次に、障害者自 立支援法施行にあたっての作業所通所等の問題についてでございますが、本県の知的障害者通所授産施設の利用者の状況につきましては、6月時点で、調査回答施設の定員827人中、利用者負担を理由として退所された方が8人(1%)であります。利用回数を控えている方は10人(1、2%)となっております。
 障害者自立支援法では、利用者負担につきましては、国が全国一律のルールを定めておりますが、サービス提供は市町村が一元的に行うこととなっていることから、県内市町村においても地域の実情に応じて独自の軽減措置を行うところがあると聞いております。
 県といたしましても、利用者の就労意欲の促進が図られるよう、経営コンサルタント等専門家の派遣等をとおして、利用者が受け取る工賃水準が改善されるよう支援してまいります。
 今後とも、利用者が安心して必要な障害福祉サービスを受けられるよう引き続き注視し、その上で必要があれば、国に働きかけてまいりたいと考えております。

介護保険制度改定で福祉用具は

★ 雑賀光夫県議第一回質問

 第三点       介護保険制度の改定にかかわってお伺いいたします。
 今年の4月に介護保険制度の改訂があり、介護保険での福祉用具貸与サービスのうち、車いす、特殊寝台と付属品、エアマットなどが、9月までの経過措置期間をおいて一部認められなくなりました。

ケアーマネージャーの方にお伺いしますと、例えば特殊寝台では脳梗塞などで起きあがりが困難な人や腰痛のために床から立ち上がれない人などは大変困っているといいます。また電動の車いすでは、自力歩行での移動が困難な人なども、屋内の移動ができなかったり買い物に行けないなど支障が出ると心配されています。
 車いすというのは、日常的に歩行が困難だから使っているのです。とりあげられたら困るのです。特殊寝台を利用している方も、それを利用して精一杯の生活をしているのです。「特殊寝台に頼りすぎるのはよくない」という言い方もありますが、状況がよくわかっているのは、ケアーマネージャーなど関わっているみなさんです。
 このたびの厚生労働省通知でも、こうした福祉用具についても身体の状況に照らして一定の条件に当てはまる場合は引き続き給付されるとされています。この問題について、県へはどういう通達があり、県から各市町村へはどのような内容で指導したのでしょうか。

☆ 小濱孝夫福祉保健部長答弁

 次に福祉用具の貸与問題ですが、要支援、要介護1のいわゆる軽度者に対する福祉用具の貸与については、その状態像から見て利用が想定しにくい車椅子、特殊寝台等の品目が介護保険の給付の対象とされなくなりました。ただし、軽度者であっても、一定の条件に該当する場合は、保険給付の対象とされており、その該当性につきましては、原則として要介護認定における基本調査の結果を活用して判定するとされております。その際、車椅子については、基本調査結果による以外に、「日常生活範囲における移動の支援が特に必要と認められる者」に該当するか否かについて、適切なケアマネジメントを通じて、指定介護予防支援事業者及び指定居宅介護支援事業者が判断することができることとされています。これらのことは、これまでも福祉用具貸与事業者をはじめとする関係事業者や市町村に対し説明を行ってきたところでありますが、先般の厚生労働省の通知を受けて、改めて周知を図かったところであります。
 また、現在、国が示した事由以外で特殊寝台等が必要と考えられるケースがあるのかどうかを市町村に照会しておりますので、速やかに把握し、その実態を国へ伝えてまいりたいと考えております。

海南海草で産科医は

★ 雑賀光夫県議第一回質問

第四点       産婦人科医がなくなっていく問題です。

医師不足がいわれていますが、中でも産科の医師不足は、深刻であります。

私の出身の海南海草地方では、公立病院である市民病院にも野上公正病院にも産科がなくなりました。民間病院からも産科がなくなり、産科の病院はたった一つであります。少子化対策といわれているときこれでいいのだろうか。

 全県的な産科病院の状況と対策についてお伺いいたします。

 

☆ 小濱孝夫福祉保健部長答弁

 

産婦人科医不足について、お答えいたします。

過酷な勤務や訴訟の増加などオら、新たに産婦人科医を希望する医師が減少するともに、分娩を取りわない産婦人科医が増えるなど、国的に産婦人科の医師不足は深刻為状況になっております。平成16年未の国の調査では、県における人口10万人あたりの遍婦人科医師数は 9,2 人で、全国平均8,3人を上回っているもの和歌山医療圏に集中し、地域的に偏在している状況です。こうしたことから、議員ご指摘のとおり、海南・海草地域においては産婦人科医が非常に少ない状況にあります。

県といたしましては、わかやまドクターバンク制度に加え、今年度から産科をはじめ小児科、麻酔科の師を確保するため医学生や臨床研修医等に対する修学資金制度や医師求人情報ホームぺ−ジの開設を行ったほか、診療体制の維持が困難となった中核的医療機関への医師供給等を行う「地域医療支援事業」の創設;考えており、今後とも、産科医を含む地域医療体制の確保・充実に努めてまいります。

 

療養病床削減と介護施設

★ 雑賀光夫県議第一回質問

 第五点 「心臓が悪くて長い間入院していた高齢の姉が退院してほしいといわれています」という相談です。私もよく知っている民間病院なので、事務長さんにお会いいたしました。
 事務長さんは言いぬくそうにいわれます。「実は、院長の奥さんも(この方もお医者さんですが)、長いお付き合いのこの患者さんに出てくれといえるの、とおっしゃるんです。でも、今の医療制度のもとでは、退院してもらわないとうちの病院は倒産するしかないんです。」 
 いま、療養病床を大幅に削減する方向が出され、それにあわせて診療報酬の改定が行われた結果でしょう。私も相談者もそれ以上の無理をお願いすることができずに、相談者の方は、アパートの二階の狭い自分の一室にお姉さんをひきとっています。
 療養病床からだされても、老人・介護施設の受け皿がない。その実態をどう把握しておられるのか。どうすればいいのか。福祉保健部長の見解をお伺いいたします。

☆ 小濱孝夫福祉保健部長答弁

次に、療養病床削減と介護施設不足の問題についてでございますが、療養病床を有する病院の意向や入院患者のサービスニーズ等を把握するため、本年10月1日時点で調査を行った上で、来年秋頃を目途に、ケア体制の計画的な整備を図る「地域ケア整備構想」を策定することとしてございます。
 この構想を平成19年度に策定する医療計画や次期介護保険事業支援計画に反映させ、療養病床の介護老人保健施設等への円滑な転換など計画的な体制整備に努めてまいりたいと考えております。

★ 雑賀光夫県議再発言

 ご答弁、ありがとうございました。要望意見と再質問を申し上げたいと思います。
 医療・福祉の問題では、わたしはあえて「詳しくない、素人だ」と申し上げて、素人だからできるような問題を羅列したような質問をいたしました。私でなくても、議員であれば誰でも県民の皆さんから相談を受け、国の政治が根本にあるから、返事に苦慮しているような問題が多かったと思っています。

県民のみなさんにとっては、本当につらい問題であります。障害者作業所からの退所された方が1%、8人といわれましたが、これを1%だけかと見てはなりません。8人の一人ひとりが、大変な思いで退所を余儀なくされたのでしょうし、どうするのか悩んでいらっしゃる。退所せずにやりくりせずにつつけている方の中にも困っている方がおられる。今後、増えることが心配されます。

今朝になって手に入ったのですが、滋賀県で共同作業所を支援する補正予算が提案されたそうです。その提案をみると「『何故、稼ぎよりも多い利用料を負担しなくてはならないのか』という根元的な疑問に答え」利用者負担の補助を補正予算で提案しています。障害者・作業所関係者の声を「根元的な疑問」と受け止める行政姿勢に学ぶ必要があると思います。
 介護の問題では、厚生労働省の新しい通知は、元々の方針の再確認だということですが、最近の生活保護申請などで全国的に問題になっているように、市町村の担当者をいたずらに萎縮させ、できるだけ給付を圧縮せざるを得ないようなことが起こるのではないかという心配の声がよせられます。全国的にそういう声が多いから、厚生労働省として再度の趣旨徹底となったのでしょう。いたずらに給付の圧縮にならないよう指導いただきたいと思います。
 本来、弱者のためのものであるべき福祉が、弱者に厳しいものになっている中で、地方自治体は、国がやることだから仕方がないで済ますのではなく、県民が困っている実態を、国に突きつけていくべきだろうと思っています。

いのしし・鳥獣被害について

★ 雑賀光夫県議第一回質問

 第二の柱として いのしし・鳥獣被害対策についてお伺いします。
 最近、海南海草地方では、どこにいってもいのしし・イノブタ被害の話ばかりです。たぬきやアライグマもあります。いのししなのかイノブタなのかは両論ありますから、ここではいのししと呼んでおきたいと思います。
 ここ数年の鳥獣被害問題をふりかえってもますと、4年前には、台湾ざるが大問題になっておりました。
 海南市では北野上小学校のあたりに通学路にサルが出没し、民家の屋根などにサルの群れがいるのがみられました。県も県外から専門業者を呼んで専門的な対策をしました。はじめは失敗もあったようですが、その後、大きな成果をあげることができたと思います。いまでは、こうしたサルの群れは見られません。
 そのころから問題になっていたのがいのしし被害でありました。3年ほど前に、北野上の高津という地域では、特産品の桃を守るために農家の皆さんが総出で、山のふもとを防護策で囲んでいのししを山に封じ込めることに成功しました。その後、隣の孟子という地域でも農家のみなさんは力を合わせて農地を防護策で囲むような形でいのししを締め出しました。
 この二つの地域ではいのしし対策は、一定の成果をあげているといえます。
 昨年から、いのしし被害が大きくなってきたのは、海南市南部の中山間地であります。前回の議会で紹介した富夢想野というレストランがある別所という地域、3年ぐらい前からはじまったいのしし被害が、今年はひどくなっています。藤白山のふもと、冷水地域でもひどい。藤白山をこえて下津でも被害が出始めました。また大きな農地もない市街地に近いところにも、いのししの出没をお聞きします。
 私は、いま、いのしし被害対策のために専門的な検討が必要だと思います。
 第一に、いのししが増えているのか、そうでないのに、山に住めなくなって田畑を荒らすのか。こうしたことを専門家の力をかりて調査する必要があると考えます。

第二に、個体が増えているなら、本格的な個体をへらす方策を考えるべきです。猟友会のみなさんの協力を得るのですが、一般にみなさん高齢化されている。大変ご苦労です。
 狩猟できる方を増やす施策、檻を増やすことなど積極的な施策が必要です。
 さしあたりの対応としての防護策ですが、海南海草地方では県の補助制度をよく活用させていただいています。先に紹介した高津・孟子では成功しています。しかし、別所という地域は、山の中に畑がとびとびに散在している。この地域全体を防護柵で囲もうとするのですが、地域の皆さんは、「網の中にいのししを飼っているようなものだ」といわれます。有効な防護柵の活用が必要です。そこで関係部長にお伺いいたします。 
 第一点、いのいしし、あらいぐまなどの被害の実態をどう把握されているのか、またどういう対策をなさっておられるのか。
 第二点 いのしし個体数・生態研究の専門的知識をふまえて対応が必要だと思います。県として個体数の把握・生態研究などどこまでできているのか。
 第三点、いのししの個体をへらす狩猟・檻への公的助成などについてのお考えはいかがか。被害対策についてどういう指導をなさるのか。
 以上は、農林水産部長、生活環境部長への質問であります。

☆ 西岡俊雄農林水産部長答弁

 平成17年度における本県の農作物の鳥獣による被害金額は、約3億円と把握してございます。内訳といたしましては、イノシシによるものが、全体の約40%に当たる1億2千万円と最も多く、次いでサル、シカ、アライグマの順となってございます。
 農林永産部におきましは、従来からの電気柵、また、議員お話のありました防護柵の設置に加えまして、近年、増加傾向にございます、アライグマの捕獲檻に対する助成を新設いたしまして、環境生活部と連携して取り組んでいるところでございます。
 さらに、「農作物鳥獣害対策アドバイザー認定制度」を創設いたしまして、イノシシをはじめとする有害鳥獣からの被害防止を図るため、3年間で20名の地域リーダーを育成することとしてございます。現在、すでに、7名が認定研修を受講中でございます。
 今後とも、こうしたマンパワーの充実を図りながら、農作物の被害防止に努めて参りたいと考えてございます。

     楠本隆環境生活部長答弁

鳥獣被害対策に関する2点のご質問にお答えいたします。まず、イノシシの生態把握についてでございますが、イノシシは個体数の変動が激しく目撃が困難であるうえに、他の動物に比較して繁殖力が高く、行動範囲が広いことなどから、有効な個体数の調査方法は確立されておりません。しかしながら、農業被害がここ数年1億円を超える水準で推移していることや平成17年度の有害鳥獣捕獲数が約1、6000頭、狩猟による捕獲数が約5,200頭で合計6,800頭にのぼり、5年前と比較して有害鳥獣捕獲では5倍」狩猟による捕獲では2倍と飛躍的に増加しておりますことから、かなりの個体数が県下全域に生息していると考えております。したがいまして、農業被害を軽減するためにも急激に増加した個体数を削減することが急務であると考えております。

次に、イノシシの個体数を減らす狩猟・檻への公的施策についてでございますが、中山間地域におけるイノシシによる農作物被害が問題になっていることから、今年度イノシシ保護管理計画検討会を立ち上げ、イノシシにかかる特定鳥獣保護管理計画を策定し、狩猟期間を延長するなど対策の検討を始めたところです。その対策の一つとして狩猟免許所持者の確保に関し、特に被害を受けている農業者自らがイノシシを捕獲するための狩猟免許を取得するよう啓発を行い、狩猟免許所持者数の増加を図ってまいります。

今後は、この検討会の検討結果を踏まえ、特定鳥獣保護管理計画の策定作業を迅速に進めてまいりたいと考えております。
 また、これとは別に、市町村が行うイノシシの有害捕獲に対しまして、捕獲に要する経費や捕獲用の檻の購入に要する経費に対し補助を行っているところでございますが、今後ともこれらの施策を中心として市町村、関係団体と連携を図りながらその捕獲を推進してまいります。

★ 雑賀光夫県議再発言
 いのししなど鳥獣被害にもふれたかったのですが、時間がありません。 
【発言したかったこと……被害が金額で示されたのですが、最近のいのしし被害の現れ方をみますと、金額だけで推し量れないという感じをもっています。というのは、桃の産地である高津では、被害をあるていど食い止めた。最近被害の多い山間地の別所では、家の周りの小さい畑のスイカやジャガイモをやられた。たけのこをやられたなどの報告がたくさんあります。市場での価格としては大きくないかもしれませんが、いのしし被害はひろがっているように思います。

 その状況を踏まえて「イノシシ保護管理計画検討会」をたちあげ、狩猟期間の延長や狩猟免許者の増加をはかっているということですが、成果を期待いたします。
 
なお、山にいのししが住みづらくなっていることも、人里にいのししが出てくる要因の一つでしょう。野生の鳥獣が住みよい山にして、人間と鳥獣の共存をどう図るのかという課題があることも申し上げておきたいとおもいます。】 

住金の労働災害と安全対策

★ 雑賀光夫県議第一回質問

 第三の柱は、住友金属での労働災害にかかわる問題であります。
 最近、地域・産業格差をふくみながらも景気が上向いているひとつの表れとして、住友金属が増産に転じており、収益も上がっているということは、明るいニュースとして報じられています。和歌山県の活性化や雇用の改善の引き金になれば大変うれしいと考えておりました。

しかし、その影の部分として、労働災害・死亡災害が増えていることは、大変残念なことです。最近、わたしのところに、公表されていない情報をふくめて各所から情報がはいってくるようになりました。
 私は、以前に県地評の事務局長などとして、民間労働組合なかかわったことがあります。その1991年のこと、住友金属では1年間に7名の死亡災害という異常事態がおこりました。
 私たちが収集したデータ-では21件の休業災害があるはずでした。しかし、国会議員が立ち入りした調査でも会社は「14件です」といいます。そこで私は、労働基準監督署に出向き、私たちがつかんだ事案について、一件一件つきあわせをし、どの事案が報告されていないのか突き詰めました。すると報告されていない事案の2件は、住金和歌山製鉄所の構内でおこっているが、尼崎の会社から派遣されている労働者だからというので、尼崎の労働基準監督署に報告されているというのです。あと3県は、極微災害、休業しなくてもいい災害だというのです。その実態を下請け労働者が教えてくれました。「○○さんなら、毎日会社にきてるよ。下請け会社の専務が車で送り迎えして、事務所にすわらせておくんだよ」

こういう追及の中で、21件中1件だけをのこしてつじつまがつくところまで労災隠しを含めて明らかにしたのです。
 ここに持ちましたパンフレットはそのときの記録、私の労働組合運動の記念碑的なものでございます。
 その後、住金での重大災害が少なくなったのは、会社や現場労働者のみなさんの努力によるものですが、私たちの追及も大きな力になったと自負しています。それだけに、災害が減少したことをよろこんでおりました。

ふえる労働災害と労災隠し

 ところが、今年7月にはいって、重大災害がつづいています。7月18日、和歌山製鉄所で63歳の下請け労働者の方がパイプの束に挟まれてなくなられたという新聞報道がその翌日19日にありました。「北署の調べでは」と新聞報道されていますから、警察署としても発表されたのでしょうか。
 ところが、私の住む海南市、住金海南工場で7月2日に紀美野町にお住まいの55歳の住金社員の方がなくなっています。私たちが調べて、「しんぶん赤旗」が7月19日に、報道するまで、どこにも報道されていないように思います。 
この事故についてしらべているうちに、次のようなことがわかってきました。その一年前、この工場の今回の事故があった近くで、同じような事故がおこっている。そのときこの現場では、柵内にはいれば自動的にラインが停止する対策がうたれた。しかし、そのとなりの現場には、安全対策がなされなかった。だから事故が起こったというのです。

事故には、本人の不注意や作業ルール違反もあるかもしれません。しかし、人間には間違いがあることを前提にして、先に起こった事故を教訓にして安全対策をしなくてはなりません。
 こうした調査をしているさなか、さらに、8月24日、あらたな事故が起こりました。「本日、住金スチールにて休業災害発生(新人19才)」という文書が、会社内に配られました。「安全靴の先端金具ごとはさまれたため、相当の重症という情報」とし、「管理監督者および指導員にお願い」として「新人に対して、初作業など一人作業させないこと」などの注意を喚起しています。現場のみなさんが、事故防止に真剣になっておられることが、手に取るようにわかります。
 しかし、先日、労働基準局にいって、この災害についてお聞きしました。なんと会社は、この災害を「不休災害」軽微な災害として処理しようとしていることが判明したわけであります。

私は、この間、遺族や被災して苦しんでいる労働者を訪問し、現場の労働者の方からも「労働災害隠しはやめさせてほしい」「人を増やして被災しても助けを求められないひとり作業はなくしてほしい。」「老朽設備を改善してほしい」という声を聞きました。そこで、この場で事実を公表したわけであります。
 また、労働基準監督署を訪問したおり、「8月1日から、総合安全管理指定事務所に指定しました。年度途中で指定するというのは異例のことです」とお聞きしました。事故が多い要注意事業所という意味です。「住金は事故防止を労働者の注意に頼りすぎる」とも言われました。
 住友金属は、いま大きな利益をあげています。2004年3月期には687億円だった利益が、2005年3月期には、1732億円で史上最高益を記録しました。2006年3月期なは、大きく上回る2807億円であります。この利益を、安全対策にも振り向けてほしいと思います。
 住友金属は、和歌山にとって大事な企業です。はずかしくない企業として県民と共存共栄してほしいと、私は思っています。
 重大災害や、事故隠しの問題について木村知事の所見をお伺いいたします。

     木村知事答弁
 住友金属工業和歌山製鉄所は、本県経済の相当なウエイトを有しており、最近の好調な業績や今後の大規模な設備投資などにより、地域経済に幅広く大きな波及効果を及ぼすものと期待しております。
 しかしながら、労働災害については、本来起こしてはならないものであり、本年になって住金の構内で2名の方が亡くなられたことは誠に痛ましいことであると思います。今後、再発防止に住金として全力を尽くして頂きたいと県としても考えているところでございます。

労働災害をなくすために

★ 雑賀光夫県議第一回質問

 次に商工労働部長にお伺いいたします。担当課に労働災害問題についてお伺いすると、「労働災害については、労働局の担当なので私たちは新聞報道でみるしかないのです」という答えが返ってくるわけですが、県民の安全にかかわる問題に県政として無関心でいてはならないと思います。労働局と連携しながら、住金の問題にかぎらず、働くものの権利や安全を図る施策をすすめるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
 また、県は「特定企業対策連絡協議会」というものを住友金属との間で開催してきていたと思います。上山、石橋商工労働部長の議会答弁で、この連絡協議会を開いて来たと答弁しております。労働災害の問題も含めて協議する必要があると考えますが、いかがでしょうか。
 さらに、事故防止の安全教育についても問題があります。

 昨年、JR福知山線の重大な事故があり、「日勤教育」という懲罰的教育が問題になりました。事故防止の教育という趣旨ではありますが、事故を起こした労働者への懲罰的教育が、列車を遅れさせてはならないというプレッシャをかけ、結果として事故につながったのではないかという指摘があります。

 住友金属の場合も、計画した安全担当の方は、安全・事故防止という善意からなのでしょうが、結果として事故隠しにつながる場合がございます。下請け会社へのペナルティというのもその一つです。
 さらに私の手元にとどいた書類に「特定ルール違反者に対する自己研鑽全社制度」という表題の書類があります。「(株)住金ユーナイテッド和歌山安全健康課」と記載されています。
 その書類には「違反合計点数」により「事故始末書」をかかせたり「特別作業(一週間)」を課すことにしています。「(2)特別作業は、当該課屋内外の共用スペース美化や緑化推進」とかかれています。ペナルティとして、草むしりをやらせるということであります。
 JR尼崎事故のあと問題になった「日勤教育」そのものではないかと思いました。

 商工労働部長にお伺いいたします。こうした労働者管理が、事故を少なくするとお考えでしょうか。和歌山を代表する企業である住友金属が、労働者の安全についても全国に誇れるものになってほしいと私は願っていますが、お考えはいかがでしょうか。

    下宏商工労働部長答弁
 
 労働災害については、労働安全衛生法に基づき、国が所管する事項ではありますが、死亡事敏が発生していることは誠に残念なことであり、住友金属には安全について十分配慮するよう申し入れをしているところであります。8月には、住友金属は和歌山労働基準監督署から「総合安全衛生管理指定事業所」の指定を受け、監督署からの指導のもと、安全管理の取り組みを進めてと、ると聞いております。今後、和歌山労働局に対し、企業内での効果的な再発防止策や安全思想の普及啓発、さらに労働者に配慮した安全教育についても要請を行ってまいりたいと考えております。
 なお、お話しの特定企業対策連絡協議会については、特定企業の経営動向が地域経済に及ぼす影響に対応するために開催するものであり、労働安全に関しては本協議会になじまないものと考えております。

★ 雑賀光夫県議再発言

 労働災害と安全教育の問題です。答弁は、「国の所管事項」ということで、まどろっこしいものですが、労働局としっかり連携していただきたい。また、リストラ問題などでは「特定企業対策協議会」というものも開かれたわけですから、労働災害問題についてもものをいえないことはないでしょう。
 私は、住友金属が、労働災害を軽視しているとは思っていません。私の友人のなかにも「今の会社は、生産優先より安全優先になっている」という人もいます。また、「事務所勤務だったが、8月から安全パトロールで現場を回ることになった。いつまでつづくのか」というお話も聞きました。

 ここに、「SUW労働安全かわらばん 6月号」という「かべ新聞」がございます。4月16日、機械に小指をはさまれた労働者の反省決意文が掲載されています。
 労働安全を労働者の注意だけにたよる、老朽設備や安全対策に投資していないところに問題があるのでしょう。
 事故にあいたいと思っている労働者はいないのです。不幸にして事故が起こったとき、労働者や下請け企業を事故隠しに追い込むようなペナルティや見せしめ的な反省文や懲罰的研修でなく本当の安全対策がなされることを望んでおきたいとおもいます。

労働災害の新聞発表

★ 雑賀光夫県議第一回質問
 最後に、こうした重大災害が増加し、しかも新聞報道もされていないことについて、私は問題を感じています。会社が事故を隠して届け出ないというのは論外ですが、7月18日の事故は発表されているようですが、7月2日の海南の事故は発表されていません。届けがあったのでしょうか、なぜ発表されなかったのか。警察本部長におうかがいいたします。

    辻義之警察本部長答弁

 お答えします。お尋ねの7月2日に発生いたしました海南鋼管での事故につきましては、発生当日に海南警察署に届け出がございましたけれども警察広幸削ましておりません。
 警察広報につきましては、発生した「事案の性質」や「公益性の有無」「人権の保護、捜査上の支障」等を総合的に検討し、発表すべきかどうかの判断をいたしておリます。
 労災事故の場合、過失の所在等も考慮し、発表の要否を慎重に判断しているところでございます。その点、ご理解の程、よろしくお願いいたします。

★ 雑賀光夫県議再発言
 次に、住友金属の労働災害問題です。
 警察本部長から、新聞発表の問題についてご答弁をいただきましたが、現に人がなくなっているわけです。病気でなくなったのではなくて、機械に巻き込まれてなくなったのです。過失致死というような立件の対象かどうかということとは別に、労働安全への警鐘をならすという意味で、発表されたほうがいいのではないかという思いをいたしますので、意見として申し上げ、今後の検討をお願いしたいとおもいます。

「和歌山県教育史」(史料編)について

★ 雑賀光夫県議第一回質問
 最後に、第4の柱として「和歌山県教育史」(史料集)についてお伺いいたします。
 「和歌山の教育史」資料編が立派な本になりました。お送りいただいて大変うれしく思いました。というのは、私もこの史料集作成の一端を担わせていただいたという自負があったからです。
 この史料集の戦前部分で大事な位置を占める「紀伊教育」という資料があります。戦前の教育団体が発行したものですが、この教育団体の財産は、私が委員長をしました和歌山県教職員組合がうけつぎましたから、「紀伊教育」は、和教組の書庫に保管されておりました。

 「和歌山県教育史」が計画されたとき、担当者が和教組本部においでになり、私も一緒に書庫に入って、古い「紀伊教育」のバックナンバーを探したわけです。その後、この「紀伊教育」バックナンバーは、公的機関で保存していただいたほうがよかろうというので、古文書館に保管をお願いしたという経過がございます。そんな経過もあって、特別な思いで「史料集」に目を通したわけであります。「紀伊教育」がよく活用されているので「協力してよかったな」と思いました。
 いろいろな感想はありますが、とりあえず「和歌山県教育史」(史料集)をどういう観点から編集されたのか、教育史からどういうことを学ぶかなど、教育長におうかがいいたします。

    小関用洋治教育長答弁
 『和歌山県教育史 史料編』についてお答えいたします。
 県教育委員会では、本県教育の歴史を振り返るとともに、新しい時代にふさわしい教育の在り方を考える基本資料とするため『和歌山県教育史』全三巻の編さんに取り組んでおります。
 その第一冊目としてこのたび刊行した『和歌山県教育史 史料編』には、江戸時代から現代に到るまでの歴史史料772点を収録しました。編さんにあたっては、幅広い分野の多くの方々から史料のご提供をいただき、和歌山県教り育会が発行した雑誌『紀伊教育』を含め、貴重な史料を多数掲載することができました。
 現在は、明治5年の近代教育制度の創設及び戦後の諸改革に並ぶ大きな教育改革の時期であるといわれております。
 こうした時に、本書に収められた史料の数々を通してわが県の教育の歴史をたどることによって先人の営みを再認識し、次の時代の人々に正しく伝えていくことは、大変重要で意義深いことであると考えております。
 
今後は、本『史料編』などをもとにしながら、戦前編・戦後編で構成する『通史編』2巻を作成し、本県教育の姿をより明らかなものにしたいと考えております。
 その中で、県内の学校等に残された写真や旧制中等学校の校歌の合唱CDを作成するなど、県民の皆様に親しまれるものにして参りたいと考えております。

★ 雑賀光夫県議再質問
 最後に、「和歌山県教育史」について教育長から興味深いお話もいただきました。
 私が目を通して気になったのは、戦後の和歌山県の教育史で、立場はどうであれ大問題であった「勤務評定反対闘争」などどう取り上げられているのだろうということでした。勤務評定の条例制定があって、1975年の教育委員会と教職員組合が和解して、免職処分など取り消した資料だけがあります。はじめと終わりだけがあって、絵のない額縁みたいだと思ったのですが、担当者にお聞きすると、「この6倍もの資料から涙を呑んでけずった」ということでした。
 最近の時期になると、教育委員会が打ち出した施策がならべられるが、史料集に載せる意味があるのかな、年表の一項目で十分ではないかという気もいたしました。
 教育委員会が中心になってつくると自分が打ち出したことを載せたくなるのは人情ですが、教育の歴史は、いろいろな方々でつくるものです。民間教育運動というものへの視点が少し弱いのではないかという気がいたします。通史編纂で、私の心配がとりこし苦労におわることを期待いたします。また、歴史的評価がさだまらない、最近の時期については、無理に書かなくてもいいのではないかということも申し上げておきたいと思います。
 「和歌山県教育史」で年表の巻は出るのだろうか。民間教育運動についてもひろってほしいと思います。教育長にお伺いいたします。

    小関洋治教育長再答弁
 『史料編』についての色々なご感想なり見解を聞かせて頂きました。

これは最終的に1,000頁の予定が、1,100頁にぎりぎり増やしたという経緯があるぐらいで、最大限可能な限り史料は収録したものでございます。限りなくたくさんある中からの選択であったということをご理解頂きたいということと、年表については、全体の流れが理解できるという点で非常に有効なものでありますので、今後刊行する『戦前編』・『戦後編』の2巻の通史の中で充分工夫をこらした年表を掲載するように編集にあたっていきたいと思っております。