松坂英樹県議  2007年2月県議会(2月22日)

公共事業と談合問題

●まず第一番目に、公共事業入札と談合問題でお伺いをいたします。昨年の官製談合事件により県政の信頼は大きくゆらぎました。あいつぐ税金や福祉の負担増であえぐ県民の生活を尻目に、談合によって税金を横取りしていたことは許せないという厳しい声がうずまいています。県当局と県議会には事件の全容を解明するとともに再発防止に向けた真摯な取り組みが求められています。

 私はこの問題の一つ目に、県土整備部長に談合情報による再入札の問題をお尋ねします。官製談合事件への県民の怒りが高まる一方で、談合情報が寄せられて再入札になるケースが後を絶ちません。県民から見れば「あれだけ騒がれたというのに、まだ談合をやっているのか」とあきれるのも当然です。私は有田振興局管内での再入札のケースを調査してまいりましたが、県全体として、今年度において談合情報によって談合の疑いありと再入札になった数々のケースの状況について県はどう認識し、どう対応してきたのでしょうか。

 これまでも、05年6月県議会で私は県庁南館建設工事に関わっての談合疑惑の問題を取り上げました。談合情報が寄せられ、疑わしきものはやり直しをすべきだと主張しました。当時の談合対応マニュアルにもとづいた対応の結果、機械設備工事は再入札となりましたが、建設と電気設備工事は問題がないとされ続行されました。その後、談合情報対応マニュアルの改正や損害賠償金額の引き上げ、指名行為をなくした郵便入札などの入札制度改正を行ってきたわけですが、今後、さらに透明性を高めるための改善方向についてどう考えておられるのかも合わせてご答弁を願います。

●次に、小規模事業者登録制度についてお伺いします。私は公共の仕事の発注については、その透明性と競争性を高めてゆく努力とあいまって、小額の事業については手続きが簡素で下請け零細業者に直接仕事を回す工夫が、今日的にもとめられていると考えます。

 長引く地域経済の落ち込みのもと中小零細業者の経営は深刻です。さらに自治体が発注する仕事は入札参加資格がいるため、小額のものでも入札参加業者が受注し、現場では入札参加資格などを持たない中小零細業者が安い下請け単価で仕事をしているケースがあります。小規模事業者登録制度というものができてきたその考え方は、小額の随意契約をしてきたような修理・修繕などの仕事を、競争入札資格をもつ業者ではなくて、直接地元の中小零細業者に、ひとり親方のような業者にも、数多く発注できないかと始まった制度です。この小規模事業者に登録を希望する業者は、チャンと税金を納めていること等の簡素な資格要件で登録することができ、よその下請けでなく直接受注できるので有利です。この制度が東京23区の中をはじめ全国の自治体で広がりつつあり、和歌山市でも02年度からこの制度がはじまり、市財政をささえる納税者を支援する制度としてたいへん喜ばれていると聞きます。

 県の仕事の発注方法について、一般競争入札の拡大などの競争性・透明性の強化とともに、こういった県内中小零細業者を支援する方法はきちんと仕分けをして考えて、こういう工夫を県としても積極的に検討し導入してゆくべきだと考えますがいかがでしょうか。県土整備部長にご答弁を願います。

●次に、官製談合事件の全容解明の問題にかかわって知事にお尋ねします。昨年の談合事件で県民が感じたのは「口でいくらいいことを言っていても、やってることが汚いことやっていたんや」「いくら全国トップレベルの透明性の入札制度といっても、その制度をあつかう当事者が談合してたら何にもならん」という、ウワベと裏の世界の矛盾そのものでした。ですから上っ面だけでなく魂いれてやってほしいというのが願いなんですね。

 仁坂知事は選挙公約で談合問題の再発防止をかかげ、公共調達検討委員会を立ち上げました。ところが、その検討委員会の4つの目的の中には「官製談合事件の全容解明」は入っていませんでした。しかし、1月臨時議会では「ああいうことが二度と起こらないシステムを作るためには、当然あの事件がなぜ起こったか、どのようにして起こったかを頭に入れておく必要がある。その限りにおいて実態把握をするのは当たり前だ。検討委員会の作業の一つとしてビルトインされていると考えていい。」という趣旨の答弁を共産党県議団の藤井議員の質問や他の議員の質問に対しても答弁されました。また一方で、昨日の議会答弁では「いずれ司法により解明されるものであると考えている」という趣旨の答弁がありましたが、人任せの印象をうける答弁でした。私は県行政と公共調達検討委員会が県民の信頼を回復するにふさわしい、全容解明の真摯な努力がなされるよう改めて、強く求めるものです。

さて、この全容解明の問題でひとつのカギになる問題ですが、秘書課で管理していたいわゆる裏金の問題です。1月臨時議会後の1月23日、知事定例記者会見の時に、秘書課で管理していた木村前知事の親睦団体の支出や使途について明らかにしてゆくのかと聞かれて、知事はこの問題を「公私混同の問題。どちらかというと後ろ向きの話であり熱心にとりかかるのは好きではない」とコメントされました。この問題は、臨時議会でも議論がありましたし、昨日の一般質問でもやりとりがありました。

私は、これは私的なお金だ、公私混同だという問題ではおさまらないと考えます。発注者である県当局の最高幹部が談合に組み込まれてゆく、また自らその役割をはたしていたベースというか体制・体質が土台にあったのだと思うのです。そういう土台の上にある一つの現れとして親睦会があり、会費や、談合の裏金までもが流れていたとの疑いがあるわけです。21会といわれるものは木村知事以前の時代からあったというものですから、木村前知事個人の問題だけでもないわけです。県民は、なぜそんなところにお金があったのか、何のためのお金で、何に使われたのかを知らなければならないし、再出発をする県政としては、県民に明らかにする、きちんとお示しする義務があると思います。和歌山県として自らの説明責任だと言えると思うのです。

県民の信頼を回復しながら再発防止にとりくむには、制度改正の立脚点となる原因究明、全容解明がなされなければなりません。県として事件の検証と官製談合を生んだ体質の点検にとりくみ、「県自らが説明責任を果たす」、この姿勢で臨むべきではないかと考えますがいかがですか。知事のお考えをお示し下さい。

教育問

●続いて、教育問題について2点、教育長にお尋ねします。まず、軽度発達障害児への相談体制強化について伺います。近年、軽度発達障害の子どもたちへの対応が重視されるようになってきました。県の発達障害者支援センター「ポラリス」のパンフレットでは、「軽度発達障害とは、脳の機能障害が原因と言われます。コミュニケーションがとりにくい、落ち着きがない、社会的なマナーが身につきにくい、友達とうまく遊べないなどの行動は、本人の努力のなさや親の育てが原因でおこっているのではありません。その特性を正しく理解し、個々に合った関わりをすることで様々な力を身につけることが可能です」と解説されています。学習障害(LD)、注意欠陥多動性症候群(ADHD)、知的な遅れのない高機能自閉症やアスペルガー症候群などという言葉も一般的になってきましたが、こういった、いわゆる「気になる子ども」に対して、その子どもたちの立場にたった適切な対応が十分になされているとは言えない状況です。

私はこの間、何人かの現場の先生方にお話を伺ってきましたが、教科書開きましょうと言っても開けない、音楽室へ行きましょうと言ってもどこかに飛び出してゆく、友達に注意をされたらパニックを起こして止められない、こういう状況の中でしっかりとその子どもによりそえずに、私がなんとかしなければと自分の力量のなさのせいにして悩む先生や、ある先生は髪の毛はボロボロになってしまいながら、その子どもをその年度ずっと手をつないで授業をしたという苦労話、また「あの子はADHDだから」と解釈したりレッテルをはってしまう傾向があるなど、この子のために何とかしたいがどうしていいかわからない、というような教育者としてのこらえきれない心の痛みを感じました。

また、子どもたち本人も、いじめや低学力・不登校など2次障害に悩み、学級の荒れや、虐待、親の対立をひきおこしているケースも少なくありません。親は一緒に教室にいる子どもの親同士の関係、子ども同士の関係に気をつかい苦しんでいます。

 そんな中、教育現場で多く聞かれた声としては、親に子どものことが気になるのでぜひ一緒に相談に行きませんかと誘うのだが、このハードルが一番高いというのです。「うちの子はそんなことない」と、なかなか障害を持っているかもしれないということを受け入れられない親も多く、また、いっしょに相談に行くにも、養護学校は就学指導のイメージがあって敷居が高い、和歌山市の愛徳医療福祉センターまで行くのが遠い、琴の浦の子ども障害者相談センターも相談がいっぱいで職員の方もたいへんな激務、市立病院の小児科の専門の医師のところは予約が1ヶ月も2ヶ月もつまっているといわれる状況です。また自治体や地域によって相談や支援の格差もあります。

しかしこの問題は親の不理解という問題だけではありません。お医者さんなら、あそこは心臓えらいからいってみたら」とか「糖尿やったらあの先生とこへ行ってみたら」というふうに行くんですよね。「あんたとこの子どもさん、なんかおかしいから行ってみな」ではあかんのです。親同士も「あそこで話きいてもろたらよかったで。こんなに子どもに接したら良なったで。ここへ行ってみたら?」となれば、「あれぇ、ぜひ行ってみよ」となるのですが、そういう環境が整っていないのです。

そんな中ですが、県の発達障害者支援センター「ポラリス」がとりくまれている巡回相談や、親の会等が開いている相談窓口、大学との共同研究や相談活動など、相談や支援をいただいている親や学校からはおおいに喜ばれていますし、幼児期の早期発見・早期の療養や対応で、子どもたちが学級の中で、生き生きと仲間といっしょに生活できている状況も増えつつあることは教訓的です。

親や教師が軽度発達障害を持つ子どもたちの特性や行動をよく理解し、「困った子」ではなく「困っている子」として、子どもの立場によりそって対応してゆくことが求められています。「困った子」によって大人たちがどうしていいのか困っています。しかし、「困った子」と言われているその子どもが、自分が伝えれなくて、大人にわかってもらえなくて「困っている子」のだ、ということに気づくことが大切です。そのためには本当に適切で早期の相談や支援が重要だと思います。しかし、その相談体制は求められているものからすれば、まだまだ十分とはいえないと感じました。

そこで伺います。学校現場で対応する「人の配置」をはじめ、発達障害支援センターや子ども障害者センター、養護学校の相談担当、これらの組織体制や人的体制の強化、医療機関との連携、親の会・大学などの相談活動との連携もふくめ、親や教師が相談にかかりやすい、身近で幅広い体制の強化が求められると考えますがいかがでしょうか。ご答弁を願います。

●次に、小中学校の耐震補強の問題です。この間、県内学校施設の耐震診断は努力のかいあってすすんできました。しかし、耐震補強工事はいまだに低い数字のままの自治体も少なくなく、12月末現在で、耐震化100パーセントの自治体は日高町と太地町の二つだけ、耐震化率の低い方からは有田市の12.2パーセント、白浜町の20.7パーセントと続きます。昨年4月の調査では、県立高校の耐震化率は74パーセントと全国10位となっていますが、公立小中学校の耐震化率は全国平均を7.6パーセント下回って全国32位となっています。この市町村レベルで耐震補強工事が進んでいないことが和歌山県の課題だと言えます。

私は先日、耐震補強工事が切望されているという有田市の初島小学校と広川町の広小学校を調査してまいりました。初島小学校は耐震診断の結果、耐震補強が必要だとされ、何よりも築52年で老朽化が進んでいます。学校を案内いただくと、校舎の壁の外側3メートルぐらいをフェンスがずっと囲っています。壁のコンクリートが次々に剥げ落ちてきて危険なので、子どもが校舎に近づかないようにフェンスがあるとのことでした。まるで崩壊間近の遺産のような感じでビックリしました。また、校舎の中には今回の耐震調査のためにコンクリートに穴を開けた跡が何十箇所も壁や柱にありました。職員の方の話では、ガーッと穴を開ける工事の音が何日も続き、耐震調査だとわかっていながらも、あまりにぶっそうな校舎なので「お願いだからこれ以上穴をあけないで」と、半分冗談、半分本気でハラハラしたそうです。また、築49年の広小学校では、「稲むらの火、防災の町として、子どもたちがいる場所は一番大切にしたい所です」と熱をこめてお話いただきました。

私ども共産党県議団は、これまでも県として市町村への耐震補強工事の補助制度を作るべきだと提案してまいりました。学校数や老朽化の度合いというのは市町村の大小や財政状況とは無関係に存在します。市町村の責任だけではできないと思います。全国的には、県として補助制度を持つところは、県立学校の耐震化が終了するなどの先進県であった静岡・福井に加えて、この18年度からは和歌山と同じように条件も悪くて決して進んでいる方ではない高知県でも補助制度を設け1億円の予算を組んでいます。現在の状況をふまえ、本県としても補助制度を創設して市町村を支援すべき時ではないでしょうか。

ミカン対策

●3点目に、ミカン対策について質問をさせていただきます。06年産のミカンは、収穫量が少なかったものの、価格的には対前年や2年前を大きくうわまわる価格を形成することができたとされています。また京阪神市場では価格的に高水準の結果を出し、全国的には単価的に愛媛県を抜いたといわれています。そしてこれまで和歌山県産ミカンが極端に弱かった首都圏の市場でも、東京大田市場の東一において和歌山ミカンのシェアが5%から9%へと倍近くに伸びたとお聞きしました。これは大きな一歩だと思います。そして同時に、生産量日本一といっても東京ではそのレベルのシェアだという現状でもあります。今年度のミカンがすべて終了した段階ではありませんが、06年産のミカンの生産・販売の状況を県はどう捉えているでしょうか。

●次に、普通温州ミカンの有望品種開発について伺います。他県が新品種を次々と開発・登録する中で、他県に負けない魅力ある和歌山らしい新品種を開発・育成することは、和歌山のミカンのブランド力アップに欠かせない課題として、私も何度も取り上げさせていただきました。今、農家の方の声を聞きますと、高品質な極早生・早生品種の普及とともに、年内出荷の12月の時期の和歌山らしい魅力ある商材が必要だ、地球温暖化の影響による暖冬傾向に対応して浮皮の少ない品種の開発をという声が数多く出されます。この課題には一昨年より試験場・行政・農家の協力のもとですすめてこられましたが、新年度予算の中で、県としてどう取り組んでいこうとされているのかお聞かせ願いたいと思います。以上2点は農林水産部長よりご答弁を願います。

●ミカン対策の3点目として、新年度の販売強化にむけた取り組みについて知事にお伺いします。私はかねてより、ミカンの販売強化の課題として首都圏でのシェア拡大とブランド力アップを提起し、長いお付き合いのある京阪神市場に軸足をしっかりと置きながら、やはり全国ブランドの地位を確立するために首都圏市場へも攻勢的な取り組みがいると主張してきました。東京の大田市場では、愛媛や熊本の知事は毎年トップセールスに来るのに和歌山は力が入っていないのではと言われてきましたが、一昨年には知事も足を運び、昨年には「紀州和歌山みかん日本一祭」に生産者と県がいっしょになって取り組みました。このような取り組みは、量販店への働きかけなど地道な販売強化の努力とあいまって、たいへん効果的で産地を励ますものとなっていると考えます。

 生産者からは「大阪市場の初売りや東京大田市場にぜひ知事にも行っていただきたい」「昨年のような東京ブランド力アップの取り組みを来年もやりたい」という声が出ています。和歌山県のミカンは今年度も生産量日本一が予想され、価格的にも愛媛を上回る勢い、この今年の到達の上に立って、ぜひ新年度においても、県の積極的な取り組みと知事のリーダーシップを期待するものですがいかがでしょうか。ご答弁を願います。

関西電力の水力発電所データ改ざん等について

●質問の最後に、関西電力の水力発電所データ改ざん問題についてお伺いします。先日、関西電力が各地の水力発電所において取水量などのデータを改ざんしていた問題等が公表されました。取水データの改ざんや申請もれなどが、県下の発電所もふくむ関西電力が所有する国内148箇所の水力発電所のうち146箇所にもおよび、出力が規定を超えたときに自動的に上限値にまで切り下げるプログラムを本社の指示で導入するなど、データの改ざんは歴史的・組織的に行われてきたとされています。こんなことをしては取水権の設定など有名無実であり、万一装置の異常があったとしてもそれがデータとして発見できないという危険性すらあります。

関電はこれまでも、火力発電所の検査データの捏造、原発の測定データの改ざんなど不祥事を繰り返してきました。今回の不正問題は感覚のマヒなどというものではなく、きびしく戒め、原因の解明と再発防止に努めなければならない問題です。

今回の改ざん等の問題は、県民に対してもまた水利権を許可している県に対しても信頼関係を損なう重大な問題だと考えますがいかがでしょうか。県は関西電力からどういう報告を受け、またこの問題で県はどう対処してゆこうとしているのか。これら点について県土整備部長の答弁を求めます。