2007年6月定例会 松坂 英樹 一般質問


1、「限界集落」対策について

《質問》松坂英樹

   まず第一に限界集落の問題について質問いたします。いわゆる「限界集落」という言葉は、65才以上の高齢化率が50%をこえる集落をさす言葉として、15年前ぐらいから提唱され、問題提起されています。私の住む有田川町においても、旧清水町管内の26の集落のうち過半数の15の集落が「限界集落」となっているのが現状で、加速度的に高齢化が進んでいます。
   この「限界集落」がかかえる問題は、冠婚葬祭などの社会的共同生活の維持が困難になっているということにとどまらず、医療や福祉、交通や災害など色んな面で切羽詰った課題をかかえていると思います。「限界」とか「消滅」などの定義には異論もあるようですが、今日はあえてこの「限界集落」という言葉で問題提起をしてみたいと思います。
 さて、私は今回の質問にあたって二つの、いわゆる「限界集落」を調査してまいりました。一つ目は有田川町の旧清水町地域にある室川地区です。ここの高齢化比率は93%。リアルにいうと15人の住民のうち65才より若い人は一人しかいません。そして半分以上が一人ぐらしの独居老人世帯です。
 訪ねたお宅は70才台の夫婦二人ぐらし。ご主人が脳梗塞で倒れてからはリハビリの生活が続いています。つい先週の金曜日でしたが、体調のせいでしょうか「朝晩はまだ冷えるので」とホームこたつにご夫婦で足を入れて座っておられました。「去年までは山椒とりに畑に行ったんやが・・・」と体調がよくないのを嘆いておられました。
 ご主人が倒れて車に乗れなくなったので、奥さんが週に一回程度自転車で林道を国道まで下りてそこからバスに乗って買い物に行くそうです。このお宅は比較的安定した暮らしのお家ですが、毎年値上げとなる税金や国民健康保険の掛け金がすごくしんどいとおっしゃっていました。
「そうや、この下に住むわしのいとこが、こないだ車でまくれこんで入院しとる」といいます。聞いてみると、70才のその方は、雨の日の夜、家まであと少しという距離で、ガードレールのない林道から下の川原へ数メートル転落したそうです。骨折など大ケガをしたものの、幸い自分で這い出してこれたとのことでしたが、街灯もなく真っ暗な雨の夜に、どんなに痛くて、どんなに心細かったことでしょう。
 また、お隣のおばあさんは、「ここらは合併でよけ過疎がすすむよ。山を背負うて住んでるもんには雨がこわい。雨はほしけど降ったらこわいんよ」といいます。とりのこされる不安というのが益々増していると感じました。
 次に訪れたのが、有田川をはさんで向かいにある沼谷地区です。この集落の高齢化率は73%。区長さんは「ここは大半が80才以上でなあ」といいます。その区長さんご自身も今年で80才。でも区の中では現役バリバリの中心人物で区長会長もつとめる行動派です。54戸のうち17戸が一人ぐらしだといいます。60までの若手は4家族、14才以下のこどもは一人になってしまいました。
 区長さんは語ります。この集落のメイン道路である林道も、皆でお金を出し合い、むずかしい人には皆で補のうて苦労してつけた道や。町道にして管理してほしいと願い出てもなかなか通らない。長い道のりの草刈を区民総出でするのも限界だ。自分の身ひとつで歩いてくるのがやっとの老人が半分なんだと言います。
   集落の息子や娘たちは町へ出て行って暮らしているが、呼び戻しても仕事がない。賃金の取れる仕事があればいいが、コメは作るだけ赤字だし山の手入れもすすまない。わしらの親父の代は50すぎたら若いもんにまかせてほとんど仕事をせなんだもんやが、今は80になっても90になっても現役や。どこの枝谷でも生活保護以下の暮らしをしている人が多くなってきた。こんなホンマの実態を県の役人や政治家は知らんのとちがうか。と率直にご指摘いただきました。
   今、農業の担い手で若い人らが来てくれていて、とても喜んでいる。しかし、こういった事業も、田んぼや畑が荒れてしまわないうちにしなければ、荒れてしまった田や畑は簡単にもどらない、ここ5年10年が勝負、交流や担い手対策は早く手を打たんとあかんと口をすっぱくして町に言っているそうです。
   ここの区では合併前に区の集会所を改修しないかという話を町から打診をうけたそうです。ひとりぐらしのお年寄りが共同生活できるようなものができないかと盛りあがったそうですが、建設負担金や維持費の捻出が個人や区費ではむずかしいと立ち消えになりました。ひとりぐらしのお年よりは、町の子どもの家に呼ばれて引っ越すと、毎日の仕事がなくなって途端に弱って表情も硬くなり足腰も弱ってしまいます。施設に入所したお年よりも弱る一方だそうです。でも、ここにいれば、言葉は悪いですが「ええ死に方できる」というんですね。昨日まで畑で仕事してたけど朝になったら死んじゃったというように、みな80過ぎて長生きできるというのです。住み慣れた場所から移すのではなく、みんなで支えあえる、そうすれば認知症にもなりにくい。この集落の中に、託老所ではないですが、共同生活の場があれば、ときどき家にも見に帰れるし、毎日畑にも行ける、話し相手もあるし、体の調子が悪くなったときも安心です。そういう手助けがあるだけで、ほんとうに幸せな人生の最後が送れるのにと住民はいいます。
   安心して、人おらんでも、生活できる、自分の暮らしてきた所で一生を終えることができる、そんな中でこそ健康を守ろうという仲間意識も育ちます。そして個人ではどうしようもできないことを、行政がどう助けるか、どれだけ点のように見える住民のところを守れるかというのが使命だと学びました。
   村では若手のトマト農家の方にお話をうかがうと、「うちの子どもら、今は学校で外へ出てるけど、皆、沼谷がええっていうんよ。ここで住んだら町へようもどらな」とぞっこんほれ込んでいます。
   農業の担い手事業でIターンで清水へこられた若い2人が、80才をこえたトマト農家から、今年、新たに畑をあずかって取り組んでいます。また農業研修で来ている青年はハウスでの花づくりに夢中です。寒暖の差が大きい地理的条件を生かし、「トマトの味がちがう」「ここ沼谷でしか出せない花の色がある」と市場の評価も高いそうです。このように地域資源を生かし活力のある地域再生は決して不可能ではないと確信しています。
   和歌山の面積のどれほどをこの限界集落がささえているのでしょうか。豊かな水資源と大気をはぐくむ森林をだれが守ってきたのでしょうか。GNP換算70兆円という森林の公益的機能にふさわしい位置づけをしなければならないと思います。
   限界集落を訪問して歩くと、垣根に上がるすべりやすい道の奥で劣悪な住環境の中、古い布団にもぐりこんでじっと寝ている高齢者にお話をうかがうと、ほんとうに胸がつまされます。現代社会の格差の象徴のひとつでもあり、高齢者の人権問題として重い課題です。
   先ほど、集落内での共同生活の場がうまく計画できなかった話をしましたが、既存の事業や制度で「限界集落」を見たり、それをあてはめたりするのではなく、その実態にあわせた支援策を講じること、そんな集落や自治体に支援の手を差し伸べるべきだと思うのです。
   他にも例を挙げますと、空き家になっている公営住宅の問題、これは入居基準が窮屈なんですね。また、廃校となった校舎や跡地の活用でも、住居として活用とすると浄化槽にお金がかかるとかで立ち消えになるとか、コミュニティーバスの議論のときに繰り返し出てくる話ですが、毎日走っているスクールバスにお年寄りが便乗できないのかという問題も、規則や補助金の関係でできませんとなっている、こんな決まりが壁になってうまくいかない、こんなことをどう政治の力で解決するかを市町村といっしょになって県が知恵も力も出すべきです。
   京都の綾部市では、「水源の里条例」というものをつくって限界集落をささえようと、空き家の有効活用など定住促進、都市の住民との交流、地域資源を生かした特産物の開発、健康・医療など生活基盤の整備を中心とした振興策に5年間取り組むこととしています。
   市町村合併の中でより一層加速しつつある「限界集落」、和歌山の地理的条件からしてもこの「限界集落」問題は待ったなしの放っておけない問題として大いに焦点を当てて取り組む必要があるのではないでしょうか。
   そこで知事ならびに農林水産部長にお尋ねします。仁坂知事は、県内における限界集落の実態や課題をどう認識しておられるか、また、田辺市が始めたように、限界集落の実態調査に本格的に取り組むべきではないか、そして、限界集落をささえる県条例と支援措置を検討するように求めるものですがいかがでしょうか。ご答弁を願います。


《答弁》仁坂吉伸知事
(1)県内における限界集落の実態や課題をどう認識しているか
 現在における、いわゆる限界集落の実態や課題をどう認識しているかと言うことでありますが、本県には、山村過疎地域を中心に65歳以上の高齢者が半数を占める集落が増えているものと考えております。
 こうした集落では、例えば、これまで集落内で行っておりました冠婚葬祭などの地域住民同士が相互に助け合う生活扶助とかあるいは草刈り・道普請などの共同活動、また、農林地の保全や文化活動の継承などの集落機能の低下がみられ、今後を考えると非常に厳しい状況にあると受け止めております。

《答弁》下林茂文農林水産部長
(2)実態調査に取り組むべきではないか
 県といたしましては、これまでも山村過疎地域の振興に取り組んでまいり、例えば紀州備長炭やユズ・センリョウ等の地域特産物の生産等を支援するとともに、集落道、あるいは給水施設などの身近な生活環境の整備にも一生懸命力を注いで参りました。
 しかし、お話のとおり集落の現状には大変厳しいものがあると思ってございます。
 そかし一方におきまして、地域の恵まれた自然環境等を背景にいたしまして、都市交流も進んでまいりました。
 そうした中で、県内への移住者が増加するなど新たな兆しも見られてございます。
 いずれにいたしましても、地域の活性化につきましては、住民の主体的な取り組みというのが基本でございますので、今後とも関係市町村とともに、生産あるいは生活の両面からその実態の把握に努めてまいりたいと考えてございます。

《答弁》仁坂吉伸知事
(3)限界集落をささえる県条例と支援措置を
 これにつきまして現在策定を進めております新長期総合計画において、農山漁村の地域資源を活かした新たな地域づくりについて検討を行うこととし、この問題についてもその中で考えてまいりたいと思っております。
 いずれにしましても、集落機能の維持が困難になりつつある地域の今後のあり方については、住民の主体的な意向を尊重しながらも、様々な選択肢を検討していかなければならないと思っており、議員ご提案の条例制定についてでございますが、それ以前にこの問題についてどう解決していくのか、議論すべき事項も多いものと認識してございます。

《答弁》仁坂吉伸知事
(1)(3)再質問
 今の再質問、いろんなことをたくさんご指摘になりました。私は、そういう要素が全部この問題に絡み合っているということを強く認識しております。
 従ってこれは大変難しい問題であると言うことを申し上げたいと思います。
 たとえば、いわゆる限界集落を考えますと、跡継ぎになるような方々が村を離れなければいけない事態、それが幸せかどうかという議論はありますけれど、どうしても残れないという事態になっているとすれば、それに対し手を打つというのもまた、一つの必要なことだと思います。
 私は、農林水産業、特に林業振興をもう一度考えないといけない、自立できる林業を作っていくことが和歌山県にとって、とても大事だと。そのためには間伐材その他紀州材の活用、低コスト林業ということに手を打たないといけないと申し上げているのも趣旨の一つであります。
 今、お住まいの方々がどれだけお困りか、そういうことに思いをはせることもまた大事であります。と同時にその方々がどういうような医療サービス、あるいは福祉サービスを受けられるか、それから例えばお年寄りになって車が運転できなくなった時、我々県民が、これをどういうふうに財政的に支えていくことが可能であるかどうか総合的に考えていくことが必要だということを申し上げているわけでございまして、総合的にという言葉を単に美辞麗句で言っているわけではありません。


2、地上波デジタルテレビ問題

《質問》松坂英樹
 地上波デジタル放送にともなうアナログ放送の停止が2011年にひかえています。今使えているテレビがある日突然使えなくなる、こんなことがいいのかと大問題だと思うのですが、2011年までの道筋は修正を重ね続けていて、全く不透明なのが現状です。
 元来、公共電波による放送は国と放送事業者の責任であまねく国民に提供されるべきであり、デジタル化によって国民が納得できない不利益をこうむったり、自治体が後始末をになわされる性格のものではないはずです。アナログからデジタルにかわることでのメリットが大々的に宣伝されていますが、電波が届かない所が出てきたり、共聴組合の施設にも費用がかかったり、山間部ではケーブルテレビの料金が高くつかないかなど、和歌山県民への影響を考えてみると様々な疑問や問題点が横たわっていると感じ質問いたします。
 まず一つ目は、 現在自分の家のアンテナでテレビが見れているご家庭で、2011年にデジタルだけになるとテレビが見えなくなる家が出てくるという問題です。テレビのデジタル化によってビルなどによる電波障害が減り、エリアが増える、きれいに映ると宣伝されていますが、テレビの中継局数が減り、出力がすごく小さくなってしまう予定です。資料によりますと、たとえばテレビ和歌山ではアナログ43ヶ所の中継局が34ヶ所に減り、出力は約10分の1に低下します。ホームページに示されているNHKや民放各局の計画書によると、これまで家のアンテナで見れていたご家庭の7パーセントがカバーできなくなって見えなくなると平気で書いているのです。たいへんです。和歌山は、地形的にも、遠くに見える中継局にアンテナをむけてテレビを見ている家が多いんですからこれは影響がモロに出ます。いったいどの地域が受信困難になってどれくらいの県民に影響が出るのか、自分の責任でないのに突然テレビが見えなくなるという家庭がでないために県はどうするのか、どうやって解決しようとしているのか。お示しをいただきたいと思います。
   2番目には、地形の関係や障害物によって電波がとどかず、共同でアンテナをたてて、共聴組合などを作ってテレビを見ているご家庭の問題です。和歌山県は山間地など電波状況の困難な地域が多く、私の住む有田川町の金屋や清水等の山間地ではほとんどの家が共聴で、合わせて57組合あります。私が、今回の質問をするきっかけになったのは、広川町の津木地区と湯浅町の山田地区の共聴組合の役員さんからの相談だったんです。そして私、認識を新たにしたのは、平地でも街中でもずいぶんこの共聴組合が多いんですね。たとえば旧吉備町内でも5つ、湯浅町で9つ、広川町で12、和歌山市でも37あります。
   この共聴組合をつくってテレビをみているご家庭では、この共聴の受信施設をデジタル対応にするのに多額の費用がかかります。標準的な共聴施設で約300万円から500万円、一世帯あたり約5万円程度だと言われています。一人暮らし二人暮らしのご家庭や地域などでは、デジタルになるからテレビを買い換えるかチューナーを買え、加えて共聴でも5万円出せとなると、負担が困難になるのは明らかです。
   共聴施設に対する国の支援策がやっとはじまりましたが要綱や予算規模は実態からみれば全く不十分です。共聴組合のデジタル化支援に、県としてどう取り組み、支援していこうとしているのかお答え願います。
 3点目に、このテレビのデジタル化を機に、インターネットのブロードバンド整備も光ファイバーやケーブルテレビで一挙に解決しようとしている田舎の地域の住民負担が高いものにならないかという問題です。
   県はブロードバンド5カ年計画にもとづいて県内の情報基盤整備をすすめています。ブロードバンド整備によりインターネットもテレビも合わせて整備できるのはたしかに大きなメリットです。とはいえ、光ファイバーやケーブルテレビをはりめぐらせるには膨大な施設整備費用と維持経費の問題はさけて通れません。採算に合わない過疎地に民間業者が自主的に進出することはなく、市町村が事業主体となって整備事業を行うケースが多くなるとおもわれます。市町村単位では数十億円の事業費となり、上から最重要課題だといわれても、道路整備など他の重要課題も目白押しですし、いずこも財政危機は深刻です。
   他県では自治体まるがかえのテレビとブロードバンド整備で高額な住民負担が生じているケースが見受けられます。以下、いずれも国の補助事業ですが、岡山県の建部町ではケーブルテレビが月々1890円、インターネットは4515円で、セット料金は5775円です。新潟県糸魚川市ではケーブルテレビが月1500円でインターネットが5000円となっています。徳島県上勝町では、初期費用に52500円が必要で、月々2698円はテレビとインターネットだきあわせ料金となっています。
   これまで年間数千円の維持費でやっていた共聴組合と比べるとたいへんな負担です。「めしを食わずに、テレビだけ見ておれというのか」「おまんま食べな、生きとれん。いっそテレビをやめたらどうで」といった会話が、月3万ほどの年金ぐらしのお年寄りの中で交わされたそうです。そんなに簡単に切り替えられるほどみんな豊かではないのです。
 実際、テレビのデジタル化は財布にたいへんきびしいです。日本で今売れているテレビは6割以下が21インチ以下で、子ども部屋や寝室用の2台目、3台目となるとよけいにその傾向です。ところがデジタル対応テレビはその構造上、小さくて安いテレビがなくて、小さいのは機能が制限されます。販売店には、なぜ安くて小さいテレビがないのかという問い合わせが多いそうです。
   国策としてすすめたデジタル化によって必要以上に負担をしいられてはたまりません。日進月歩の技術革新がすすむ中で、急いで高額な設備投資に走り、それが過大な住民負担とならないか心配ですが、県はこの問題にどう対応しようとしているのでしょうか。以上3点について企画部長にご答弁を願います。



《答弁》森崇企画部長
(1)地上波デジタル開始時の直接受信可能地域について
(2)共聴組合のデジタル化支援策について
(3)今後の光ファイバーやケーブルテレビ整備が過大な住民負担とならないか

   まず、地上波デジタル開始時の直接受信可能地域についてですが、現行のアナログテレビ放送は、平成23年7月に終了することとなっていることから、放送中継施設のデジタル化が順次進められておりますが、「地上デジタル放送推進全国会議」が公表している中継局整備ロードマップによりますと、現在、アナログ放送を直接受信している県内の世帯のうちの約7%が、アナログ放送終了後、地上デジタル放送が受信できなくなり共聴施設やケーブルテレビなどの代替手段が必要となるとされております。

 この約7%の地域についての詳細な情報は、現在、国及び放送事業者が作成中の市町村別のロードマップの完成を待つ必要があると聞いておりますが、県としましては、こうした地域における受信確保は、国及び放送事業者の責任において取り組むべきものと考えており、同様の課題を持つ33の道府県が連携して国及び放送事業者への働きかけを行っております。
 次に、共聴施設のデジタル化支援策についてですが、山間地等における地上デジタル放送の難視聴は、県としても重要な課題であると認識しており、昨年5月に「和歌山県ブロードバンド基盤整備5カ年計画」を策定し、光ファイバ整備とこれを使ったケーブルテレビを地上デジタル放送難視聴対策の柱として推進しております。ケーブルテレビを整備しない地域については、共聴施設をデジタル化改修する方法で対策を講じていくこととしており、市町村が地域の実情に応じて適切な方法を選択できるよう指導や情報交換を行っているところです。
 また、辺地共聴施設のデジタル化改修に対する国の支援策として、今年度から「辺地共聴施設整備事業」制度が新たに創設されており、県では既に関係市町村を集め説明会を開催するなど、この補助制度が有効に活用されるよう取り組みを進めております。
 最後に、光ファイバやケーブルテレビ整備による住民負担については、公募により選定される運営事業者により異なりますが、世帯当たりの住民負担額と市町村の負担額は業者選定の際の重要な判断基準になっており、これまでの県内の例では概ね世帯当たり、月額1,000円程度の料金で地上波テレビ放送を視聴できるようになっております。
 また、CS放送などの多チャンネル放送やインターネットなどは申し込みに基づく付加サービス方式となっており、必要な方が必要なサービスを選択して受けられる柔軟な料金体系のサービスが提供されております。


3、青年の雇用問題

《質問》松坂英樹
 3つ目に青年の雇用問題について質問をさせていただきます。昨年から私どもが実施した住民アンケートでも、この雇用問題はもっとも切実な問題のひとつです。
 子どもや孫が、学校を出てから県内で仕事ができるようになってほしい、との切実な声が数多く寄せられました。景気が一部で上向いていることから、数字的には雇用状況も好転しているようですが、この数字は、パートを含む数字であって、不安定雇用が半分近くをしめているという中での話です。地方では雇用状況の好転を実感することはできません。「和歌山の就職率は依然として横ばい、近畿の中では最低」とよく言われますが、県内の青年の雇用状況をどう把握しているのでしょうか。
 和歌山の雇用状況を好転させるためには、県内産業の回復・育成とともに、請負・派遣労働などの非正規雇用で労働者を使い捨てにするような労働環境をただして青年の働きがいのある雇用を生み出すことが必要です。そして同時に、就職に不安や疑問をもっている青年に対して相談にのる体制、青年を応援する姿勢がたいへん大事です。
 こんな中、県の「ジョブカフェわかやま」は、ニート・フリーター対策や就職相談・アドバイスの分野で成果を出してきています。昨年からはぶらくり丁に場所を移しワンストップで相談できる体制もとって利用者も大幅に増えたと聞いています。ジョブカフェ和歌山の利用状況についてお答え願いたいと思います。
   また、田辺市での田辺出前相談も週2回とりくんでいただいていますが、有田地方でもこういった移動ジョブカフェのようなことができないかとの問題意識をもっています。和歌山市のジョブカフェ利用者の中で有田地方の青年は約2%ということで、有田からは来にくい面もあると感じています。今年度からは大学へも出かけていっているとのことで、これらと合わせて、ジョブカフェを有田地方など県内各地に出張できないでしょうか。
 以上、1点目には、県内の青年雇用状況について、2点目には、ジョブカフェの利用状況と移動ジョブカフェの提案について、商工観光労働部長よりご答弁を願います。


《答弁》永井慶一商工観光労働部長
(1)県内の青年雇用状況について
 和歌山労働局の集計によりますと、常用雇用及び4ヶ月以上の常用的パート雇用である、35歳未満の若年者の職業紹介状況は、本年4月におきまして、月間有効求人数6,930人に対して、有効求職者は7,722人で、有効求人倍率は0.90倍と、全体の有効求人倍率と比較して高い数値となっております。また前年同期と比べましても0.1ポイント改善となっております。
 しかしながら、全国や近畿府県と比べますと、依然として低位にあることから、引き続き、企業誘致や県内企業の育成などによる雇用の創出に努めるとともに、和歌山労働局など関係機関と連携を図りながら、若者と企業との多様な出会いの場の提供など、雇用の安定に努めてまいりたいと考えてございます。

《答弁》永井慶一商工観光労働部長
(2)ジョブカフェの利用状況と移動ジョブカフェの提案
 若年者就職支援センター「ジョブカフェ・わかやま」では、昨年4月のぶらくり丁移転を契機に、ハローワークの学生職業相談室を併設し、職業紹介部門の充実強化を図るとともに、利用者の相談スペースの拡充や交流室の設置など様々な対策を行ったところでございます。
 平成18年度の総利用者数は延べ8,818人、就職者数は372人で、前年度と比較しますと利用者数で2倍、就職者数で1.5倍の増加となっており、機能拡充による効果があったものと考えてございます。
 また、議員ご提案の移動ジョブカフェにつきましては、現在、田辺・西牟婁地域で出張相談を実施しているところでありますが、さらに本年度は、相談機能の充実を図るため、「ジョブカフェ・わかやま」に新たに、ジョブナビゲーターを配置し、大学での出張相談なども行っているところでございます。
 今後とも、和歌山労働局や県内各ハローワークと連携を深めながら、地域ニーズに応じたジョブナビゲーターの出張相談など、より効果的な取り組みを進めてまいりたいと考えてございます。


4、「稲むらの火の館」(津波防災教育センター)について

《質問》松坂英樹
 4つ目に、広川町の「稲むらの火の館」(津波防災教育センター)についてお伺いします。
 この津波防災教育センターの整備についてはこれまでも一般質問で取り上げさせていただいてきました。去る4月21日に、「稲むらの火の館」として、濱口梧稜記念館とあわせて、この津波防災教育センターが広川町と和歌山県の共同の施設として開館したことは感慨ひとしおです。開館以来、予想を大幅にこえる来館者でにぎわっているようです。関係者のみなさんのご努力に改めて感謝申し上げますとともに、この施設を十分に活用してゆきたいという立場から質問をさせていただきます。
 近い将来に必ずやって来るとされる東南海・南海地震への備えの中でも、防災意識の向上や地域の防災体制づくりは地道な努力なしには前進しません。そのためにも、今年三月に改定された県の地震防災対策アクションプログラムでも位置づけられたように、多くの県民に地震津波防災について学んでいただく機会を作る必要があり、この津波防災教育センターの活用はたいへん重視すべきだと思います。実際にこの広川の地を訪れ、この施設で学んでいただき、また濱口梧稜が建設した津波堤防も実際に見てその上に立っていただくと、知識としてだけでなく、胸にズシンとくるものがあります。
 震災記念館としてだけではなく、震災・津波から命を救った記念館は全国・全世界にもここだけしかないわけですから、地元住民は率先して学ぶとともに、広く県内外にも発信することが求められます。
 完成した施設への知事のご感想も含めて、この「稲むらの火の館」(津波防災教育センター)の地震津波防災への位置づけと、今後の活用方向について県のお考えをご答弁願います。


《答弁》仁坂吉伸知事
(1)地震津波防災への位置づけと今後の活用方向について
   この館は、濱口梧陵翁という郷土の偉人を顕彰することにより、津波への備えを学んでいただく全国にも例のない防災啓発の拠点施設であります。
 私も、館内をくまなく見させていただきましたが、立体映像により、地震・津波の恐ろしさをわかってもらうとか、被害の大きさをわかってもらうとか、またクイズ方式などを通じて、子どもから大人まで楽しみながら学べるような、実に様々な工夫が凝らされていると感じました。
 4月の開館以来大勢の方にご来館いただいておりますけれども、地震・津波などの大規模災害に備えるため、今後も将来を担う小・中・高校生はもとより、各地域での防災リーダー育成など、人づくりに活用し、併せて歴史的遺産である広村堤防とともに広川町あるいは本県を全国に発信してまいりたいと考えております。



    2007年6月議会


    松坂英樹プロフィール、質問一覧