藤井健太郎 2007年9月議会 一般質問

2007年9月18日


質問内容

1 前知事の官製談合・汚職事件の判決を受けて

2 新長期総合計画について

3 医療改革と後期高齢者医療制度について

4 多重債務者問題について

 

藤井健太郎議員
質問1 前知事の官製談合・汚職事件の判決を受けて

今議会の冒頭、知事は、前知事に対する判決を受けて、「多くの県民の信頼を裏切り、県政史上未曾有の不祥事を引き起こしたことは言語道断であり、県として、判決が確定し、判決理由や証拠書類等が明らかになった段階で、十分精査し、県のルールに従って適切に対応していきたい」、と今後の対応について述べられました。
 再発防止策については、できるところから取り組むとの姿勢で、すでに公共調達検討委員会の報告を受けて入札制度の見直しを順次すすめ、監察査察監の設置と査察制度の導入、職員倫理規則の制定を行いました。
 事件そのものの解明については、県自らの調査と解明への努力を求めてきたところですが、知事は事件の解明については捜査機関にゆだね、司法の判決結果を待つという姿勢でした。
 県として、この問題のけじめをどのようにつけていくのか。私は、県行政のトップである知事が関与していた事件ですから、県としてのきちんとした総括を行い、県民への説明責任を果たすべきだと思っています。
 仁坂知事は、これまでも判決が確定したのち県のルールで適切に対応する、と繰り返しいわれています。県庁内部での処理だけで終わらせることはないとは思いますが、県政史上未曾有の事件であっただけに、判決を厳粛に真摯に受け止め、その細部にわたって県として検証を行い、また、判決にふれられていない事項についても関連する問題を含めて、きちんと事件を網羅した総括を行い、文書化し、事件の全容と再発防止策について、県民に示していただきたい。そのお考えはあるのか。お尋ねします。                      
 

《答弁》仁坂吉伸知事 

 まず第一に、再発防止策については、既に実施の段階にございます。それから県としましては、これまでも申し上げてきたとおり、判決が確定し、証拠書類等が明らかになった段階で十分精査し、事実関係を把握した上で、県のルールに従って、責任を問うべきものは問い、また、損害賠償請求についても、適切に請求していくなど、県の対応について、県民の方々のご理解をいただけるよう、きちんと事件のけじめをつけたいと考えております。  


藤井健太郎議員
質問2 新長期総合計画について 

 新長期総合計画の骨子が提示されました。今回策定をすすめている長期総合計画は、コンサルタント依存ではなく、職員でのワーキンググループをつくり、有識者や県内自治体首長をはじめ、議員・県民からの意見聴取を行うなど、手作りの長期計画になろうとしています。
 計画策定の姿勢として、その目的に、和歌山県がめざす将来像を県民に示し、取り組む施策の方向を明らかにすること、そして、県民と共有できる将来像、目標を示すことで県民各人の主体的な活動の指針として活用されることを期待するとしています。
 前知事は、自らの選挙公約であるマニュフェストを長期計画にかわるものとして、行政運営の指針として位置づけ、その実現をめざしてきました。どちらかというと知事主導型の県政運営の指針でもあったように思います。
 今回の長期計画づくりにも当然、仁坂知事の公約が盛り込まれることとは思いますが、行政と県民が共有する目標をかかげ、それに向かってそれぞれの役割を果たしていく、行政と県民の共同作業として長期計画がつくりあげられ、行政と県民が共有する指針ということになれば、意義あるものになると思います。
 この10年ということを展望すれば、自治体そのものの形がどうなるのか、自治体財政がどのようになっていくのか、行財政運営の基盤そのものが揺らいでいるなかで、県民に約束できる将来像を描いていくことはきわめて困難なように思えます。それだけに、しっかりとした理念とそれにもとづく長期計画として、施策の方向性を示していくことが行政には求められています。骨子が示されて、これから中味の議論となるわけですが、知事、関係部長に基本的な考え方についてお尋ねいたします。 

(1)知事の長期総合計画づくりの基本的考え方、その理念についてお尋ねします。 

@ 行政と県民が共有できる目標づくりをかかげられていますが、一口に県民といっても、大企業の社長さんから、従業員といっしょに汗と油まみれになり働く経営者、金利・配当所得で生活する資産家から生活保護に頼らざるをえない人など、県民のおかれている状況、その立場によって県政に対する要望もさまざまなものがあります。
 そこで、計画の出発点をどこにおくのか。仁坂県政がとりくもうとする計画づくりにあたって、県民生活の現状認識について、現状をどのように把握されているのか。
 県内地域経済の特徴やくらしの指標の動向をどのようにとらえているのか。決して明るい未来が展望できるものではなく、多くの県民が将来への不安をいだいているのではないでしょうか。どのような現状認識をお持ちなのか。 

A 地方自治体の目的は住民のくらし、健康、福祉を向上させることにあります。めざすべきは県民全体のくらしの底上げをはかることであって、県政がくらしの格差をより拡大する役割をはたすようでは困ります。行政と県民がめざすべき方向と課題、解決の方向について果たして共有できる計画となるのか。
 そのためにも住民の計画づくりへの参画と住民参加のありかたが問題となってきます。また、目標達成に向けての計画の見直しと修正も臨機応変に必要となってくるのではないでしょうか。 

B 長期計画と各基本計画との関連について 
  長期総合計画は、理念重視か具体的な数値目標を織り込んだ施策重視型とする   のか。わかりやすくしていくためにも具体的な施策と数値での目標が必要ではな   いでしょうか。どのような指標を数値化していこうと考えているのか。

      また、すでに各ジャンルでの基本計画がありますが、整合性はどのようにとっ
  ていくのでしょうか。長期総合計画が上位計画となりますが、それにあわせて修
    正されることになるのでしょうか。

 以上、知事から答弁願います。
 

《答弁》仁坂吉伸知事 

 暮らしを取り巻く現状の認識をどう見るかということでございますが、就労と子育てが両立しにくい社会環境などのもとで出生数が減少していること、それから高齢化率が全国10位でしかもひとり暮らし高齢者が増大していること、医師が地域的に偏在し、特定診療料での医師が不足していること、また、経済面では、一人当たり県民所得が全国33位であり、事業所数や従業員数も減少傾向にあることなど克服すべき課題も少なくないと認識しております。
 新長期総合計画は、行政と県民が共に推進することで実現できるものと考えております。
 このため、策定に当たりましても、有識者や市町村長との議論、広報紙等を活用した県民からの意見募集などを通じ、行政と県民がこれら現状の認識を深め、共同して課題解決に向けての検討を進めることで、県民と共有できる計画にしてまいりたいと考えております。
 新長期総合計画には、和歌山県がめざす将来像と和歌山の元気の創造に向けて取り組むおよそ10年の施策の基本方向を盛り込んでいくこととしておりますが、時代の変化が激しく、計画との乖離が大きくなれば改訂等をしていくことも必要と考えております。
 計画に基づく施策の実施に当たりましては、厳しい財政状況にあることから、年度ごとに事業評価手法を取り入れた施策検討を行い推進してまいりたいと考えております。また、県民みんなで描く共通の目標設定や県民にわかりやすい計画づくりの視点から、必要な数値目標を掲げることとしております。
 なお、各分野の基本計画につきましては、その基本部分を新長期総合計画に盛り込んでまいりたいと考えております。 


藤井健太郎議員

長期計画づくりの入り口について、お尋ねをしました。これから、いくつかの各論にわたって、将来のめざす姿、それにむけての施策の方向について、どのような考えをお持ちなのか、関係部長にお尋ねします。

(2)中小零細商工業と県民の雇用について、そのめざす方向について。

@ 今年3月に県が発刊した「紀の国産業白書」によると、従業者4人以上の製造業の事業所数は平成7年から16年までの10年間に、3,507から2,473へと1,034の事業所、約30%も減少しています。同時期の新たな工場立地は71件です。
 従業者数は、68,765人から53,130人に15,635人、約23%の減少となっています。
 小売業では、平成6年16,594店舗から平成16年13,864店舗へと2,730店舗、約17%減少、従業者数は63,818人から64,204人へと、大規模小売店の出店ラッシュもあり、わずかばかりの伸びとなっていますが、平成14年からの3年間では4,822人の減少となっています。
 農林水産業を含む民営の全事業所数、従業者数でみると、平成13年から16年の3年間に56,411事業所から52,861事業所へ3,550、約6%の減、従業者数では372,664人から343,577人へと29,087人、約8%の減となっています。
 なかでも製造業の規模別事業所数でみると、4人から19人までの中小事業所が平成16年では、製造業全体の77%を占め、従業員数では72%を占めています。

 まさに県民のなりわいの場でもあるし、地域経済を支える重要な担い手でもあります。ところが、事業所数、従業者数の減少は、これらの中小零細規模の事業所において顕著にあらわれてきています。和歌山の地場産業でもあった木材、建具、家具や縫製業などが町から姿を消しつつあり、商店街では空き店舗が増えています。あと10年たてば、この町はどうなるのか、そういう不安の声もよく聞きます。町全体の将来像への展望が描きにくくなってきているわけです。
 中小零細の事業所、従業者の減少、小売商店の減少をどのように考えておられ、将来の姿をどのように描きだそうとしているのか。県民にどのような方向が示せるのでしょうか。 

A 合わせて、県民の雇用と所得について、どのような将来像を描きだそうとするのか。高齢者、障害者、母子家庭の雇用の将来はどう描くのか。県は雇用促進プログラムをつくって県の実施する施策が雇用にどのように結びつくのか推計をすすめてきました。その総括と新たな計画づくりの検討も必要となってくるでしょう。また、今日、労働法制の緩和により、派遣、請負、パート労働が広がり、雇用形態の流動化が不安定雇用と低所得につながっています。 正規雇用の拡大と県民所得の向上に向けての方向はどのように考えておられるのか。
 

《答弁》永井慶一商工観光労働部長

 平成18年事業所・企業統計調査によりますと、県内の事業所数の減少率は全国平均を上回り、小規模企業の割合が大変高い中で、小規模企業の減少が顕著であり、地域経済・地域社会を支える中小零細企業の存続が大きな課題であると受け止めております。そこで、新長期総合計画では、
@   地域産業の経営革新などによる成長力の強化
A   地域資源を活用した新事業・新産業の創出
B   産学官連携など様々な機関との連携強化
などにより、事業活動が継続でき、さらに発展が可能な産業づくりを目指して参りたいと考えてございます。
 具体的な方向としましては、経済のグローバル化に伴い競争力が低下している地場産業では、産地の方々と十分協議しながら、市場競争力の強化を図るための新商品開発や販路開拓に対する効果的な支援策を検討して参りたいと考えてございます。
 また、商店街振興に関しましては、まちづくりと一体となった取り組みが極めて重要となっていることから、中心市街地の活性化や、少子高齢化対策、地域コミュニティの形成などの地域づくりに取り組む市町村を支援し、「地域住民が魅力を感じる商店街づくり」を目指して参りたいと考えております。
 次に県民の雇用と所得についてでございますが、本県の将来を担う若者が、自らの可能性に挑戦し、ふるさとで生き生きと働いていける社会づくりを目指してございまして、新長計では、「ジョブカフェ・わかやま」を拠点とした若者の雇用対策を主要施策に位置づけて参りたいと考えてございます。
 また、障害者など就職を希望しながらその機会に恵まれない方々については、福祉部門との連携のほか様々な取り組みを検討して参ります。
 さらに、若者の職業意識の醸成や非正規労働者に対するスキルアップなどの施策と、成長性の高い企業づくりの施策が相まって効果を上げることで、雇用の安定化につなげられるものと考えてございます。
 いずれにしましても、まちづくりと一体となって、県内に働く場所を増やすことが、県民所得の向上、引いては格差社会の是正につながるものと考えており、雇用の確保を主眼として検討を進めて参りたいと考えております。  


藤井健太郎議員

(3)県民のセーフティネットづくりとそのめざす方向は、とりわけ生存権保障のかなめでもある医療保障の問題について。 

長期計画骨子では、県民が安心して医療サービスが受けられるような環境整備といわれています。この中味は、医療の提供体制の充実をさしているものと思われます。
 初期救急から、二次、三次の高度医療までのネットワークづくり、医師・看護師などのマンパワーの拡充が求められていますが、これらは長期的に整備する課題ではなく、緊急の課題でもあります。
 平成15年4月に県が策定した和歌山県保健医療計画の中で、県がめざすべき医療保障像がしめされています。いつでも、どこでも、等しく保健や医療についてのサービスが受けられるようにする、とあります。これは、夜間・休日であれども時間を問わず、都市・山村の場所を問わず、お金の負担能力の有無を問わず、県民が必要とする医療保障制度の構築をめざすものと受け止めるものですが、長期計画でめざすべき医療保障像をどのように描かれているのでしょうか。
 医療保障は、医療サービスの提供施設と医療従事者について整備すれば足りるものではありません。今日、国においては国民医療費の増大に対して、医療保険制度の改編が矢継ぎ早にすすめられています。医療保険制度が県民の医療を受ける権利を保障するものとして機能させていくことが求められています。自立支援医療などの一部自己負担金を伴う公費負担の医療制度、自治体独自の医療費への助成制度、乳幼児、母子、重度心身障害者児、老人医療など必要とする人に保障されなければなりません。
 医療の必要性は、必要とする人の経済的負担能力とは無関係に現れます。被用者以外が加入する国民健康保険では、保険料滞納が保険給付の差し止めとなっており、負担なくして給付なしが原則とされています。保険料滞納者にわたされる資格証明書では保険給付をうけることができず、窓口で全額支払が求められます。そのため、資格証明書での受診はほとんど見られなくなりました。これでよし、ということではないはずです。必要とする医療がうけられずに取り返しのつかない事態になっているとすれば重大な問題です。医療を受ける必要性があって保険料の支払い困難がわかっているのに資格証明書がわたされることや、難病や精神などの公費負担医療の受給者にも資格証明書がわたされることのないようにしていかねばなりません。しかし、残念ながら実情はそのようにはなっていません。生計中心者が入院したことを訴えても、保険料納付と引き換えに保険証を渡すと言われたり、自立支援医療受給者でも資格証明書が手渡されています。
 全国の自治体のなかには、資格証明書発行の厳密な基準を設け、職員の適切な職権行使となるよう、加入者の医療を受ける権利を保障するよう努めているところもあります。県民のセーフティネットづくりは制度づくりに終わるものではありません。公務員が全体の奉仕者として、県民の生存権をいかに保障していくのか、その目と心構えによって支えられていくものです。資格証明書を発行しなくてもいいような将来像が描ければ、それが最良の方向だと考えるところです。
 長期計画においても、医療供給体制の整備とともに、それを支える医療保障制度の構築、運用についても明記されてしかるべきものだと考えますが、どうでしょうか。

《答弁》井畑文男福祉保健部長 

 県民のセーフティネットづくりにつきましては、県民の皆さんが、いつでも、どこでも、等しく保健や医療についてのサービスが受けられることを目指していくものであります。
 これを支える医療保険制度は、国民皆保険のもと、相互扶助によって成り立っており、被保険者が保険料を出し合い、医療を受けられることを保障している制度であります。
 運用面では、この保険料の収納確保のために、資格証明書があります。
 資格証明書の発行には、除外規定があり、ご指摘のありましたように、障害者自立支援法に基づく自立支援医療費や結核予防法に基づく医療費など、国の公費負担医療対象者と災害その他政令で定める特別な事情がある者は、資格証明書の交付対象者から除かれてございます。
 資格証明書の適切な運用については、市町村に対し、徹底を図っているところであり、セーフティネットとしての医療保険制度が、今後とも機能していくことを前提として、長期総合計画を策定して参りたいと考えてございます。 


藤井健太郎議員
(4)震災・災害対策のめざす方向について

 長期計画の骨子は、防災・減災社会の実現をめざすとして、県民への防災教育・啓発、耐震化などの基盤づくり、災害応急対策と被災者支援、復旧対策の推進をかかげています。
 今回は、行政側からの課題だけでなく、住民側の課題でもある自主防災組織づくりとその内容の充実、強化について、どのような方向性と将来像を考えているのか、お尋ねします。
 台風や大雨などは、気象予報の精度が向上し、注意報、警報の発令、避難勧告、避難指示など、準備期間がおけるようになっています。しかし、地震の予知はむずかしく、直前での予報がやっとの状況です。
 したがって、いつ起こるかわからない大地震に対して、被害を最小限にくいとめるためにも県民一人一人のくらしの中での備えが決定的に重要となっています。
 県の地震防災対策アクションプログラムの中でも、住民による自主防災組織づくりが課題としてかかげられ、目標を100%の地域につくるとおいて、すでに80%の地域にできているとのことです。
 和歌山市でも自主防災組織づくりのとりくみがすすめられていますが、形だけはできていても、中味はどうするのか、と思えるようなところも多くあります。それぞれの取り組みにはずいぶん開きがでています。
 駅前商店街を中心とするある単位自治会では、大地震が起きたとき、高齢者1人くらし、体に障害のある人など自力脱出ができない援護を必要とする家庭を町内の地図に入れて、誰が援護者となるかを決め、自分たちで決めた一次避難場所への避難訓練と応急手当、炊き出しの訓練を行い、家具の転倒防止対策の普及もすすめています。
 この自治会長はこのとりくみを地区内すべての自治会にも広げたいが、なかなかすすまない。それぞれの自治会内で少なくとも中心になる人が3人は必要、といわれていました。
 このようにしてやっている、こうすればいい、というモデル的なとりくみの紹介と普及、中心となる防災リーダーの養成など自主防災組織づくりへの支援を強化し、中味のある自主防災組織の100%実現をめざしてもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。 


《答弁》杉本雅嗣危機管理監 

 予防・応急・復旧のそれぞれの視点を踏まえた総合的な防災対策に取り組み、県民一人ひとりが自分自身を災害から守ること「自助」、地域社会がお互いを災害から守ること「共助」、国・県・市町村など行政が住民を災害から守ること「公助」、この「自助」「共助」「公助」が相互に連携し合う防災協働社会を構築してまいりたいと考えております。
 被害を最小限に抑えるためには、県民の皆さん一人ひとりが取り組む「自助」と、地域や自主防災組織による「共助」が大変重要であります。防災講座の開催などを通じ、県民の皆さん一人ひとりが住宅の耐震化や家具の転倒防止対策などに取り組んでいただけるよう、防災意識の一層の向上に努めてまいります。
 また、これまで、自主防災組織の育成に取り組んでまいりましたが、今後より一層の活動強化を図るため、中心的な担い手となる地域防災リーダーを養成するとともに、防災のまちづくりに積極的な取り組みを紹介するなど、市町村と連携を図りながら、地域防災力の向上に努めてまいります。
 

藤井健太郎議員
質問3 医療改革と後期高齢者医療制度について

 平成15年3月に、高齢人口がピークとなる将来の医療保険制度の設計が必要として「医療保険制度体系及び診療報酬体系に関する基本方針」いわゆる「医療制度改革についての基本方針」が閣議決定され、法制化の必要な制度の見直しについて、昨年6月に「医療制度改革関連法」が成立しました。
 今回の改革は、昭和36年に国民健康保険制度が整備され、国民皆保険が達成されたことと並ぶ最大級の改革といわれています。医療保険制度に自治体による医療費適正化計画づくりという仕組みの導入と医療保険制度始まっていらいの年齢で一線を画す高齢者だけの医療制度が創設され、その本格実施が来年4月から始まります。現在、県においてもその準備作業が急ピッチですすめられているとのことです。
 これまで、国民皆保険の歴史を見ると3つの時期に区分することができるように思います。1つは、医療保険制度の内容の充実、つまり保険給付率のアップの時期、窓口負担の軽減がすすみ、ついには老人医療費の窓口負担無料化の実現にまでいたりました。わが国の経済成長が支えてきた時期でもあります。
 2つ目は、高度経済成長が終焉し、臨調行革政治によって老人保健法が昭和58年に施行、老人医療費に一部定額の自己負担が導入され、平成13年には原則一割負担となり、15年には老人医療を除きすべての医療保険が窓口3割負担に統一されるまでの時期。基本的には制度そのものではなく、保険料と医療費の自己負担を増やすことによって医療費に対応をしてきた時期です。
 そして、今回、医療給付費の伸びの抑制を図るため、自治体での医療費適正化計画づくりと、とりわけ増えつづける老人医療費に対応するため県内全市町村による広域連合が運営する後期高齢者医療制度の創設など、地方公共団体が医療費と高齢者医療問題に正面から取り組むこととなりました。
 来年4月からスタートする後期高齢者医療制度は、県民にとっては新たな高齢者向け医療保障制度としてどのような内容のものになるのか、高齢者のくらしや命と健康にかかわる重要な問題でもあります。
 医療制度の運営主体は県内全市町村が参加する広域連合が担うこととなります。
 県は、広域連合に対して助言と指導をすることとなりますが、高齢者の必要とする医療の提供が阻害されることのないように適切な対応が求められています。
 後期高齢者医療の対象者は、75才以上の人と65才以上75才未満で重度障害の認定を受けた人とし、現在加入している医療保険を脱退し、新たに後期高齢者医療制度に加入し、加入者一人一人に対して保険証が渡されることになります。
 保険料は2年間を通した計算で、加入者一人一人に対する賦課となり、国保と同じく低所得者に対しては保険料減免制度が設けられています。県内どこの市町村でも原則として均一料金となり年金が月額1万5千円以上あって、介護保険料と合算した金額が受給する年金の半額以下であれば年金天引となります。窓口での医療費の自己負担金は1割負担、現役並み所得者は3割負担となります。これまで老人保健医療では保険料滞納者に対する資格証明書の発行はできなかったのが、後期高齢者医療では資格証明書を発行することとなり、その場合窓口負担は全額自己負担となります。
 後期高齢者医療の財源は、患者の医療費自己負担分を除き、加入者の保険料1割、75才未満の人の支援金4割、公費は5割(国2/3・県1/6・市町村1/6)となっています。75才未満の人は、自らの医療保険料と介護保険料、後期高齢者医療への支援金を支払うこととなります。
 加入者の保険料や受けられる医療の内容については、未定であり年内には明らかにされる見込みとなっています。来年4月1日からの実施とされていますが、すべての内容がわかるのは、直前でないとわからないということになっています。
 そこで、福祉保健部長にお尋ねします。 

@ 後期高齢者医療制度の県民への徹底した広報はどのように考えているのか。実施直前では、県民の意見を反映させることはできないのではないか。 


《答弁》井畑文男福祉保健部長 

 後期高齢者医療制度の施行は、大きな制度変更であり、住民に充分周知することが重要であると考えてございます。
 現在、後期高齢者医療広域連合と各市町村が連携を図り、制度周知の広報に取り組んでいるところですが、県といたしましても、県の広報誌やマスメディアを利用して、積極的に広報を展開していきたいと考えてございます。
 また、国におきましても、リーフレット・ポスターの作成及び政府公報の実施が予定されています。
 なお、保険料につきましては、県民の代表として、各市町村議会から選出された議員により構成されます広域連合の議会において検討がなされ、本年11月を目途に、条例で決定される予定となっておりますので、決定後、周知ができるよう広域連合、市町村と連携を図りながら取り組んでまいります。
 

藤井健太郎議員

A 保険料負担は国保と比べてどうなるのか。より高くなるのか。市町村国保で行われていた市町村独自での保険料減免制度はどのように生かされるのか。広域連合でも継続して行われるのか。
 

《答弁》井畑文男福祉保健部長 

 後期高齢者医療制度の保険料は、患者自己負担額を除いた保険財政の1割を負担することになってございます。
 被保険者の保険料負担能力に応じて賦課される応能分(所得割)と、受益に応じて等しく被保険者に賦課されます応益分(被保険者均等割)から構成され、個人単位で賦課されます。
 保険料には、低所得者の方などへの配慮もなされているところです。
 具体的な保険料につきましては、先ほどもお答えいたしましたとおり、後期高齢者医療広域連合が、保険料の試算を行ったうえで、本年11月を目途に、広域連合条例で制定する予定となっておりますので、県におきましても、その時点でモデル的な試算を行いたいと考えてございます。
 また、保険料の減免につきましては、広域連合の条例で定めることができることになってございます。
 県といたしましては、来年4月に始まる後期高齢者医療制度について、適切な運営が行われるよう、広域連合に助言を行ってまいります。
 

藤井健太郎議員

B 資格証明書の発行をなぜ行うのか。行うべきではないと考えます。老人保健制度の場合、発行されていなかったものが、なぜ発行されることとなったのか。 


《答弁》井畑文男福祉保健部長 

 後期高齢者医療制度では、保険料が徴収され、財源を確保すること及び被保険者間の負担の公平を図るという観点から、国民健康保険制度と同様に、短期被保険者証及び資格証明書の交付制度が導入されます。
 資格証明書は、特別な事情がないにもかかわらず、保険料を長期間滞納した被保険者に交付されるものであり、短期被保険者証は、納付相談・指導を行うために、有効期間の短い被保険者証を交付するものであります。
 県といたしましては、必要な医療を受けられないということがないように、広域連合及び市町村に対し、被保険者と十分話し合いを持ち、滞納者の状況を適切に把握しながら、納付相談を行うよう助言を行ってまいりたい、そのように考えてございます。
 

藤井健太郎議員

C 医療費適正化計画づくりとあわせて療養病床の削減が進められることとなります。全国で介護型13万床、医療型25万床、あわせて38万床を2012年までに介護型を全廃することが介護保険法に明記されました。医療型は10万床削減するとし、比較的軽症の医療区分1の患者ベッドは全廃、中程度の重症度2の患者ベッドは30%削減するとなっています。
 来年4月から本格実施にうつされるわけですが、県でのベッド削減の実施見込みはどうなのか。
居宅での療養が困難な人が療養病床に入院しているわけです。そのベッドの廃止、削減がすすめられようとしていますが、現在、入院している人の受け皿をどうつくっていくのか。すべての人に必要とする医療、介護が提供できる見通しなのか。 
 

《答弁》井畑文男福祉保健部長

 本年8月1日現在、県内には医療療養病床が1
,894床、介護療養病床が、828床あり、2,304人の方々が入院されております。
 このうち、医療の必要性が低いとされる6割程度につきまして、介護老人保健施設等への転換を進めることとなる見込みでございますが、療養病床再編後の医療療養病床の目標数につきましては、「医療費適正化計画」において、国の参酌標準を踏まえつつ、県独自の高齢化の進展なども勘案し、設定することとしてございます。
 このため、国において、入院患者にできるだけ負担をかけず、継続して適切なサービスが提供できるよう各医療機関の療養病床の円滑な転換を進めるため、医療機能強化型の老人保健施設の創設をはじめ種々の支援策が講じられているところでございます。
 県といたしましても、本年中の策定を予定しております「地域ケア体制整備構想」において、医療機関の意向等十分協議を行いながら、平成23年度末までの転換計画をお示しするとともに、この構想を平成20年度に策定いたします次期「介護保険事業支援計画」に反映させることとしてございます。
 今後とも、介護を必要とする方々の状態に即した適切なサービスが提供されるよう、計画的な体制整備の推進に努めてまいりたいと、そのように考えてございます。


藤井健太郎議員
質問4 多重債務者問題について 

昨年の12月、国会において貸金業の規制等に関する法律の一部改正が、国民がかかえる多重債務問題解決に向けての総合的施策を推進することを目的に、与野党の全会一致の賛成で成立しました。その法律の中で、多重債務問題とはなにかが定義づけられています。かいつまんでいうと、貸金業者の貸し付けを原因として、返しきれないような多大な債務を負うことにより、生活が行き詰まってしまい、社会生活を送るうえでも、地域社会にとっても重要な問題になっているということです。
 これまで貸し金業者の貸し付けの特徴として、高金利での貸付、必要以上の過剰な貸付、そして過酷な取り立てなどがあげられており、借金を返すために借金を重ね、そのことによりヤミ金融の横行や途方もない高利での貸し付け業者が現れるなど、借り手側の責任だけで済ませられる問題ではなくなっていました。多重債務を原因としての離婚、家庭崩壊、虐待、ノイローゼ、果てには自殺にまで追い込まれる事態も生まれました。同時に、税や社会保険料の滞納、さらに、住宅家賃、子どもの授業料、給食代、保育料の滞納など地域社会にも深刻な影響を与えました。
 昨年の貸金業規制法の改正により、これまでのグレーゾーン金利を廃止し、出資法の上限金利を利息制限法の15%から〜20%にまで引き下げる、借り手の借り入れ残高の総額把握や返済能力を超える貸付の禁止、日中の執拗な取り立て行為の禁止や借り手の自殺による保険金支払いができる保険契約締結の禁止、などが盛り込まれ、これまでの問題点解決への展望を開くものとして期待が寄せられています。
 しかし、この改正ですべての借り手がかかえる問題が解決するわけではありません。法律の全面施行は約3年後であり、将来の予防には期待がもてますが、すでに多重債務に陥っている人やこの3年間に多重債務におちいっていしまう人まで救済することはできません。
 私のところに、生活に行き詰まっている人からの相談が寄せられますが、よくよく話を聞くと、貸金業者への返済を優先し、生活費をきりつめ、こどもの教育費、税や社会保険料をあとまわしにしている人も少なくはありません。タクシー運転手で母親の介護をしているため日中の運転だけで、月10万円足らずの収入にしかならず、貸金業者から借りたお金が膨れ上がり、その返済に追われ、母親の介護保険の利用料も払えず、家賃も払えなくなった。また、重度障害のある子どもと糖尿病で入退院を繰り返す妹の世話をしている人で、貸金業者からの膨れあがった借金返済のためヤミ金に手を出し、その返済を迫られたため年金担保で借り入れたお金全額をヤミ金に返済してしまい、生活に行き詰まったなどなど。これらの問題は、高金利の支払い分を利息制限法に置き換えて再計算したり、違法なヤミ金融資を摘発することで解決に結びつく問題でもあります。うまく弁護士や司法書士に結びついたところでは、過酷な取り立ても止まり、破産手続きの予定が利息制限法による再計算で過払いであることがわかり任意整理により100万円を超えるお金が手元に戻った事例など数多くあり、ほとんどが解決につながっています。
 しかし、うまく法律関係者とめぐりあえるのは、多重債務者の2割にしかすぎないといわれています。多重債務者問題は、きちんと話を聞いて、本人の生活の再建・自立への展望とあわせてとりくめば、ほとんど解決できる問題ともいわれています。
 そういう点で自治体は、税や社会保険料などの徴収と同時に各種の生活相談、生活保護をはじめ社会福祉施策の実施、生活福祉資金など小口の生活資金や事業資金融資、消費者保護など多面的に住民と結びついています。
 多重債務者の問題解決の視点から、相談体制をつくり庁内のネットワークが有効に機能すれば、相当大きな成果に結びつくことが期待されます。
 すでに長野県、岐阜県などでは県としてのとりくみがはじめられ、多重債務問題は個人の問題では済まされない、専門機関に丸投げしない、ゼロ予算事業で、対策会議を設置し、多重債務者の現状を知り困っている住民に手をさしのべることで地域社会の安全安心を守る、としています。鹿児島県奄美市では、多重債務者救済の最終目的は「生活の再建」、多重債務状態の放置は社会環境の悪化につながる。病気、離婚、児童虐待、犯罪、自殺、税等の滞納。これまで悪質滞納者といわれていた人を善良な納税者にかえていく、やりがいのある仕事という姿勢で熱心に取り組まれ、この4月に開かれた総務省・金融庁後援の日本弁護士連合会主催のシンポジウムでも、紹介されています。
 昨年12月、政府は貸金業規制法の一部改正を受け、内閣官房に「多重債務者対策本部」を設置し、「借り手対策」の課題を検討するため有識者会議を設け、そこでの意見とりまとめにもとづき、今年の4月20日に「多重債務問題改善プログラム」を決定しています。
 その主な内容は、借り手対策へのとりくみが必要であり、自治体は住民への接触機会が多く、多重債務者の掘り起こしや問題解決に機能発揮が期待できるとした上で、自治体に対し必要と思われる課題への取り組みを要請しています。
 都道府県には、@自らの相談窓口における相談体制・内容の充実、A関係部署、警察、弁護士会、司法書士会及び多重債務者支援団体による多重債務者対策本部または協議会の立ち上げ、B市町村ネットワークつくりの支援などが要請されています。
 また、同時に、多重債務問題解決として、セーフティネット貸付の提供の検討、金融経済教育・消費者教育の強化、ヤミ金撲滅に向けた取締りの強化などが課題とされています。
 そこで、環境生活部長にお尋ねします。 

(1)多重債務者問題に対する基本的姿勢、考え方はどのようにもっているのか。


《答弁》楠本隆環境生活部長 

 我が国における消費者金融の利用者は少なくとも約1,400万人、そのうち多重債務状態に陥っている人は200万人を上回ると言われています。
 その陥った原因は個々において、様々な事情があると思われますが、現在、多重債務問題は深刻な社会問題であると認識しております。
 国におきましては、議員ご指摘のとおり、貸金業法の改正により、貸付における総量規制の導入(総借入残高が年収の3分の1を超える貸付の禁止等)、出資法の上限金利の引き下げ(29.2%→20%)等の施策が講じられたところでありますが、今後、この問題の解決が健全な社会の形成に極めて重要であると考えております。 
 

藤井健太郎議員

(2)県として今後の方針はどのように考えているのか。 

@ プログラムで要請されている多重債務者対策協議会の設置とその構成はどう するのか。一刻も早く立ち上げることと、広く住民団体への参加をよびかけ、 多重債務者の声が反映できるような対策協議会にすべきではないか。 

A 相談窓口の整備強化をどうするのか。担当の専任者を設け、庁内や振興局をつなぐネットワークづくりをすすめ、多重債務者の掘り起こしと専任の相談員へのつなぎ、県民からの多重債務専用のホットラインの創設も考えられる。市町村への支援はどうするのか。解決までのフォロー体制づくりも必要ではないか。

B セーフティネット貸付について
 現在、社会福祉協議会の生活資金、母子寡婦福祉資金、市町村での小口貸し付け
 の制度があります。
 これらは、特定目的での貸付となっていて、多重債務者の解決までの生活つなぎ
 資金のような位置づけの検討が必要となってくるのではないでしょうか。

C 県民の金融経済教育、消費者教育の中で多重債務問題について、知識の普及と発生の予防につなげていくことが課題とされています。どのようにとりくんでいくのか。
 

《答弁》楠本隆環境生活部長 

 今後の取り組みとして、1.相談窓口の整備強化、2.金融経済教育、3.セーフティネットの構築、4.ヤミ金融対策、などが重要であると考えています。
 このため、県におきましては、現在、多重債務者対策協議会の年度内設置に向けた検討を行っているところでございます。今後、この協議会において様々な議論を行っていく予定でありますが、多重債務者の意見も十分反映されるよう努めてまいりたいと考えております。
 また、相談体制につきましては、既に、県の相談窓口において、弁護士相談などにより、債務の任意整理や自己破産などの解決方法を助言しているところでありますが、今後とも庁内ネットワークや市町村との連携を図りながら、さらなる充実に努めてまいります。
 また、金融経済教育につきましては、現在、教育委員会と連携して取り組んでいるところでありますが、県民の皆様を対象にした講座などには、多重債務に詳しい講師を派遣するなど、多重債務に陥らないような教育・啓発にさらに取り組んで参ります。
 また、セーフティネットにつきましても、今後、協議会の中で既存事業の活用などを含めて議論して参りたいと考えております。
 

藤井健太郎議員

D 貸し金業者への規制が強まることからヤミ金など悪徳業者の横行が懸念されます。取り締まりや被害予防への対策の強化はどのように考えられているのか。警察本部長から答弁願います。
 

《答弁》鶴谷明憲警察本部長 

 現在、警察ではヤミ金融事犯に対し警察の総合力を発揮した強力な取締りを推進するため、平成15年8月15日付けで、警察本部生活環境課に生活安全部長を取締本部長とした「和歌山県警察ヤミ金融事犯取締本部」を設置し、ヤミ金融事犯の検挙、被害防止のための口座凍結、広報啓発、被害相談等の諸対策を推進中であります。
 本年1月20日に罰則が強化され、その結果、検挙人員は平成18年中は8名であったのが、本年は8月末で11名となっており、口座凍結にあっては、平成18年中は11件であったのが、本年は8月末で19件と昨年から今年にかけて、検挙人員、口座凍結数ともに増加している現状であります。
 議員ご指摘のとおり、今後ともヤミ金融の横行が懸念されるところであり、警察としましては、今後も引き続き取締本部を中心に警察の総合力を発揮した取締りや口座凍結等の諸対策を強力に推進すると共に、県商工観光労働総務課と連携を強化して、各種相談等にも積極的に応じていく所存であります。

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