藤井 健太郎 2007年12月議会 一般質問と答弁
2007年12月13日
1. 新年度予算と財政健全化法
3. 多重債務者対策について
藤井健太郎 議員
今年も早いもので師走を迎え、新年度予算編成の季節ともなりました。県民生活をめぐる状況はいぜん厳しいものがありますが、一歩ずつでも前進していけるように、そういう思いから質問、要望をさせていただきます。
1.新年度予算と財政健全化法
《質問》藤井健太郎 議員
まず、新年度予算と財政健全化法について知事にお尋ねします。
今年の6月、地方公共団体の財政の健全化に関する法律、いわゆる財政健全化法が成立しました。これまでの地方財政再建促進特別措置法、いわゆる地方財政再建法では、都道府県においては決算での実質収支額における赤字額が標準財政規模の5%以上となった場合、市町村においては20%以上となった場合、財政再建団体の指定をうけなければ公共施設の整備のための地方債が発行できないこととなっていました。また、起債ができなくても自主再建の道もあり、自治体での自己決定ができていました。が、しかし起債に頼らない財政運営など実質的には不可能なことであり、財政再建団体指定の申請をすることとなります。この15年間ほどは財政再建団体の指定はなかったのでは、と思いますが、ご承知のように今年に入り北海道夕張市が財政再建団体の指定を受け、国の管理のもと18年間かけて財政再建をすすめることとなりました。かつて、炭鉱の町として栄え、人口11万人を擁した町が、今では13,000人に、財政再建完了後の18年後にはなんと7,300人の町になるとの見通しを立てています。収入の確保のために、個人市民税、固定資産税をはじめ保育料の国基準への引き上げなど、税、負担金や使用料などの大幅引き上げが、支出を削減するために職員数270人を103人に削減、給料の30%、ボーナスは60%カット、退職手当は最大75%のカット、市単独事業の原則廃止、4つある中学校、7つある小学校をそれぞれ1校ずつに統合、集会施設、体育施設、公園、図書館、美術館、養護老人ホームの廃止などをすすめる計画となっています。18年後には赤字を解消し財政の再建を果たしたといえるかもしれませんが、果たしてそれまで町がもつのか、市民生活はどういう状況になるのか。夕張市に残って懸命にがんばっている職員や市民を思うと心が痛くなってきます。行財政運営にあたっていた市長や幹部職員の責任はもちろんですが、国や道に責任はなかったのか、監査委員や議会のチェック機能はどうであったのか、学ぶべき多くの問題があるように思います。財政再建団体入りはなんとしても避けなければならない、そのためにも実質収支の改善をめざすという財政規律が働き、地方財政の厳しさがいわれながらも再建団体への指定はこの間、なかったわけです。
従来の財政再建法は実質収支の標準財政規模に対する比率、この一つが指標とされていましたが、今回の財政健全化法は、財政の健全性を判断する指標として、新たに実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率、将来負担比率、わかりにくい言葉ばかりですが、この4つが設けられ、毎年、公表が義務づけられることとなりました。要するに、これまでは一般会計のみの指標だったものが、公営企業、公社・第3セクターなどの会計にまで拡大され、それらを連結して赤字額がカウントされるようになったということです。4つの指標のうち一つが一定の基準以上になれば、早期是正団体となり、外部監査を受け、財政健全化計画を策定し国へ報告、健全化に向けての総務大臣または県知事の勧告がされることになります。さらに将来負担比率を除き、他の3つの指標の内の一つがさらに悪化した基準となれば、財政再生計画を策定し総務大臣の同意が必要となります。同意なき場合は地方債の発行ができず、計画どおりすすんでいない場合は予算の変更など必要な措置が勧告され、これまでの財政再建法と同じような国からの強い関与を受けることとなります。つまり、これまでの財政再建団体入りするよりも、より早い段階での手立てが、しかも公営企業や出資法人の会計が連結されての指標で判断されることになるということです。
前段階である早期是正団体となるのを避けるために、この指標が一人歩きしだし、金科玉条のごとく最優先されることになると、いろいろな疑問や問題点がでてきます。
一つは、自治体のいっそうのリストラと財政規模の縮小を招く結果になるということです。
今日、国の地方財政計画の歳出削減が続き、県も含めて県内自治体の財政規模は縮小しつづけています。そうなれば歳出に占める扶助費・人件費・公債費の比率が高まり地方財政の硬直化がすすむのは当然のことです。地方財政の危機の主要な原因は、90年代バブル崩壊後の経済対策としての公共事業が、起債を財源として集中的に行われたものの税収増には結びつかず、借金返済を膨らませたこと、それと三位一体改革による地方交付税などの大幅カットがあげられます。三位一体の改革では税財源の移譲があったものの補助金カットと交付税などの削減で、本県財政も大きな影響を受けました。改革期間の3年間で実に343億円もの財源がなくなっています。地方税財源の強化充実がすすまない限り、自治体はいっそうの歳出削減を迫られることになります。そうなれば県民のくらし向け予算のいっそうのカットや官公需のさらなる縮小など地域経済にも悪影響を与えることとなります。
国が地方自治体に財政悪化の早期是正のための指標を示し、基準数値を示すのならば、自治体財源の縮小ばかりをすすめるのではなく、国の責任において地方自治体の財源保障と充実をはかることが、まずなされるべきではないでしょうか。
二つ目に、自治体の行政需要への対応はそれぞれの自治体のかかえる課題によって変わってくるということです。大災害に見舞われたときの復旧もあるでしょう、和歌山で言えば、国民体育大会をめざしての施設づくりや全国水準からみて遅れている道路整備、公共下水道整備、施設の耐震化補強など多額の投資を必要とする課題も残されています。
また、公立病院をもつ自治体の財政負担、所得の低い人の多い自治体の国民健康保険、介護保険などへの一般会計からの補填、小規模自治体での学校建替えなど、地域の実情やそのときどきの行政需要によって財政状況がかわるわけで、全国一律の指標で早期健全化が必要と判断されることには疑問があります。
三つ目に、早期健全化指標の一つの将来負担比率の中に全職員が退職したときの退職手当総額を将来負担として計算することになっています。民間企業の退職手当引当金制度をならったのかもしれませんが、全職員が一気に退職することなどありえないことです。非現実的で過大な将来負担についてまで財政健全化の指標とすることには疑問があります。
四つ目に、新指標の基準値は法定ではなく政省令で定められる、つまり国民が関与することなく国の裁量で決められることです。地方自治体の意見を反映する確かなしくみが必要だと考えます。地方財政については、極力、国の関与は排除し、それぞれの自治体が自らの判断で適切な財政運営のための計画をつくることが肝心で、国が定めた指標については、斟酌基準にし、国はアドバイス、助言にとどめることでいいと思うところです。大事なのは、それぞれの自治体で規律ある財政運営をすすめることです。
そのためにも当局は財政に関するごまかしのない正確な情報を県民に提供し、監査委員、議会はチェック機能を充分果たしていけるようにすることが重要です。行財政運営の短期、中期、長期の見通しと計画をつくり、議会に報告をすることが求められます。
そこで、知事にお尋ねします。
1)財政健全化法をどのように受け止めて対応していこうとするのか。財政健全化を自己目的化することなく、住民のくらしの向上、地域実態に応じた施策の展開がはかれるような財源の確立が必要です。
また、市町村への助言のありかたをどのように考えているか。繰り上げ償還の指導を強めていくことや財政の健全化、公営企業の健全化計画の策定など求めていくことになるのか。それぞれの自治体が自主的な判断で改善にとりくむことは論をまちませんが、県からの関与の度合いによっては、自治体病院の運営、公共下水道事業などのすすめかた、財政規模の小さい市町村での学校や公共施設の耐震化、建て替えなど事業のありかたにも大きく影響してくるのではないでしょうか。
《答弁者》 知事
本年6月に成立いたしました財政健全化法については、財政状況の把握の仕方が多面的となったこと、あるいは財政悪化の早い段階から自主的な財政健全化を促すものとなった点で評価できると考えております。
すなわち、財政健全化法では、連結実質赤字比率・実質公債費比率・将来負担比率の3つの健全化判断指標を新たに整備し、健全性の判断が多面的になっております。
また、財政健全化法では、財政悪化の早期段階で早期健全化団体となり、議会や住民と一体となって財政健全化計画の策定等に取り組むことが義務付けられる等、地方の自己規律による早期健全化を促す制度設計となっております。
本来、このような事は別に法律で決まらなくても、それぞれ自治体でそれぞれがおやりにならなければいけない事だと思っております。和歌山県におきましては、先に、我が県のこのままでいった時の財政見通しを公表しました。これを健全化するために県議会の皆様と一緒になって、これから考えていこうという方式でございます。ただし、全ての公共団体がこういうことをやらないかんという事を決めておくということも評価できることであります。
次に市町村への対応でありますけれども、県と市町村は対等の関係であるという地方自治の基本理念を踏まえると、市町村財政に対する県の過度の関与は適切とはいえず、一義的には各市町村の自助努力、自主的な判断に委ねることが基本と考えております。
しかしながら、市町村が財政再生団体等となる場合には、県民生活への影響は小さくないと考えられますので、財政健全化法に規定する各指標の状況等を踏まえつつ、関係法令に基づき、市町村行財政の適切な運営について一定の助言等を行うことは必要と考えております。
《質問》藤井健太郎 議員
2)財政健全化法で国が定める4つの指標と現在の県財政の姿はどのようになっているのか、そしてどう評価しているのか。
《答弁者》 知事
財政健全化法は、平成20年度決算から全面的に施行される法律でありまして、4つの新しい財政指標の計算方法の大枠は年内に政省令で定められる予定ですけれども、現時点の情報に基づきまして、これは、計算基準が示されている3つの基準について、平成18年度決算について試算してみますと、「実質赤字比率」、「実質公債費比率」、「連結実質赤字比率」の3指標については、いずれも12月7日に出ました基準では、早期健全化基準までには至っておらんという試算結果が出ております。
しかしながら、先般お示しした長期財政収支見通しの試算結果によりますと、平成21年度には、ご承知のとおり、財政調整基金及び減債基金が枯渇する見通しとなっておりまして、近いうちに「実質赤字比率」について、早期健全化基準、ひいては、財政再生基準を超えることもありうることになっております。
このことは、引き続き国に対して地方税財源の拡充に向けた制度改正を強く働き掛けていくと必要があると同時に、我々としても早急なる行財政改革を進めるための新しいプランを作って実行に移していくことの必要性を示しているものと認識しておリます。
《質問》藤井健太郎 議員
3)知事は「財政は厳しい、財政構造をかえる必要がある、持続可能な財政構造 立が必要」といわれています。今後10年間の財政見通しを示されましたが、2年後には財政調整基金・減債基金が底われし財源不足となる見通しが立てられています。
3年目以後、退職手当債、行政改革債の発行など財源対策をすすめるためにも職員数削減や行政経費削減に向けた新たな計画づくりに迫られているわけですが、いずれにせよ具体的な手立てを早急にうたなければならないことは明らかです。
知事は、県財政の全体的な姿をどのように考え、どこに問題があって、何をかえなくてはいけないのか。持続可能な財政構造とはどのようなものを考えているのか。
また、一般会計、公営企業会計、特別会計の状況、公社・出資法人の会計実態と債務保証・損失補償の内容、将来債務なども含めて全体像と問題点を明らかにしていく必要があるのではないでしょうか。
《答弁者》 知事
まず、持続可能な財政構造の意味についてでございますけれども、一般論として答えるとすれば、財政健全化法の4指標がいずれも早期健全化基準を超えない水準で保たれ、かつ、将来的にも保たれるであろうと合理的に予想されるような財政構造ということになるうかと思います。
これを本県の財政構造にあてはめて考えてみますと、先程申し上げましたように、長期財政収支見通し、現在発表しておりますものによれば、近い将来早期健全化基準を超えることも予想されますので、現在の財政構造は持続可能とはいえないと認識しております。
すなわち、県財政の問題点として、当面、特にクローズアップしないといけないのは、「実質赤字比率」の主要構成部分である一般会計の財政収支でありまして、今後、一般会計の収支不足額を段階的に縮小していくことが不可欠であると考えております。
《質問》藤井健太郎 議員
4)新年度予算編成と財政健全化法との関連をどうするのか。
財政健全化法は09年4月1日施行、08年度決算にもとづく指標で判断されることになります。したがって来年度の予算編成から影響をもつこととなります。4指標の数値を下げることをめざしての編成となるのか。財政健全化法の枠内であれば了とするのか、それとも独自の目標をもってとりくむのか。新年度予算の内容にどのように影響してくるのでしょうか。
《答弁者》 知事
これにつきましては、財政健全化法が全面的に施行されるのは、まさに平成20年度決算からであり、新年度予算の執行結果が法の適用対象となるということを念頭において新年度予算編成を行う必要があります。
具体的には、平成19年度当初予算における151億円の財政収支不足額を、今後、段階的に解消していくという基本方針の下、平成20年度予算編成における収支不足額の縮減を持続可能な財政構造への転換に向けた一里塚と位置付けまして、県税徴収率の向上とか、あるいは未利用県有財産の処分による歳入確保、それから、事務事業の見直しによる歳出削減等、あらゆる手段を総動員して財政の健全化に取り組んでまいたいと考えております。
2.後期高齢者医療制度について
《質問》藤井健太郎 議員
次に、後期高齢者医療制度について、知事ならびに福祉保健部長にお尋ねします。 新長期総合計画の素案が示されました。その中で、健康づくりを推進していくとして、「健康長寿日本一わかやま」をめざすとあります。健康で長生きしたい、人間だれもの願いではないでしょうか。ところが、県の平均寿命をみると、2000年の数値が直近のものとなっていますが、男女ともに全国41位という水準です。日本一をめざすには前途多難なものが予想されます。平均寿命を考えるうえで、病気の予防も含めた医療の果たす役割はきわめて重要なものがあります。
早期発見・早期治療、生活習慣病を悪化させない日常の医学的管理が必要であり、気軽に健康教育、健康相談、健康診断が受けられて、その後のフォロー体制も整っていることが必要です。
そのためには保険料や医療費の自己負担が負担能力の範囲内であること、提供される医療が必要十分な内容の給付であることが求められます。
このたび、県下全市町村で構成される後期高齢者医療広域連合の議会において、75才以上の後期高齢者医療にかかわる条例が議決され来春4月から実施されることとなりました。
後期高齢者医療制度が、健康長寿日本一をめざそうとする本県においてどのように運営されていくのか。県民の老後の安心を保障できるような医療制度となっているのか、そうしていくことができるのか、が問われているところです。
そもそも、後期高齢者医療制度は、増えつづける医療費をどう抑制するのか、その対策の柱として75才以上の高齢者を対象として独立した医療制度としてつくられました。高齢者の医療の確保に関する法律では、これまでの老人保健法で明記されていた国民の老後における健康の保持という規定にかわって医療費の適正化が明記されています。
そのことから、いくつかの疑問や問題点を指摘することができると思います。
どういう医療が提供されるのか。いまだ示されていません。保険料も診療報酬も別立てとなり、医療の中味は出来高ではなく定額制にして保険が使える医療の上限を設けることも検討されています。後期高齢者医療がこれまで継続して受けてきた糖尿病、高血圧や心臓病などの医療内容を薄めることはないのか。必要な検査、治療の継続は保障されるものとなるのか。その上で75才以上の高齢者にとって、特別に必要とされるものが加味されていくのか。医療費抑制のための医療制度では、必要とする医療の提供が保障されたものとなるのかどうか大いに心配されます。
保険料も決められました。2年ごとに改定がされ、医療費が増えたり75才以上人口が増えることに応じて保険料が引きあがる仕組みとなっています。
また、保険料を滞納した高齢者に保険証にかわって保険のきかない資格証明書が発行されることとなります。果たして、75才以上の人に保険証をわたさないことができるのでしょうか。高齢者は日頃、健康に自信がある人でもちょっとした変化で急に体調がくずれることがあります。
また、すべての高齢者が経済的に余裕に満ちた生活を送っているわけではありません。本県での高齢者単独世帯は世帯数の11%、高齢者夫婦のみの世帯は12%、高齢者のみの世帯が全世帯の33%、全国的にみてもどちらも非常に高い割合となっています。05年国民生活基礎調査では高齢者世帯の43%が年収200万円以下、100万円未満も17%となっています。一般世帯よりも経済的に厳しい状況におかれていることがわかります。高齢者のみの世帯が多い本県ではよくみておく必要があると思います。そして、高齢者が出費で一番負担を感じているのが医療費の負担です。高齢者1,000人のうち病気やけがで自覚症状を感じている人は約500人、半数の人が何らかの病気をもっています。経済的負担能力の低い、いつ医療が必要となるかわからない高齢者に保険料滞納を理由に保険証をわたさないことには大いに疑問を感じます。
和歌山市が今年、医療機関にアンケートを行い、資格証明書での受診の実態調査をおこなっています。腹痛を訴えて11月11日来院し即日入院、肝がんの進行がみられ12月17日死亡。婦人科受診で子宮がんが発見され、早期手術すすめるが以後、受診なし。視力障害訴えて来院、血糖値高く即日入院など、重症化した事例がいくつか報告されています。
後期高齢者医療制度が始まるにあたり、健康長寿日本一をめざそうとする本県にとって高齢者の安心につながる医療制度としてその機能をはたしていけるのか、医療費抑制が最大目的の医療制度となってしまうのか、問われているところでもあります。
そこで、知事ならびに福祉保健部長にお尋ねいたします。
1)後期高齢者医療制度を知事はどう受け止めているのか。
医療制度のありかた、その中での高齢者医療制度のありかた、保険料負担のありかた、医療の給付内容について、資格証明書の発行について、私なりの思いをもうしあげてきました。果たしてこの制度で安心の老後が期待できるのか。安心して受けられるような医療制度として運営していけるように国への申し入れや広域連合への指導や助言、また県としての努力が必要であると思うところですが、知事の所見についてお尋ねします。
《答弁者》 知事
後期高齢者医療制度については、人口減少社会のなかで、少子高齢化が急速に進みまして、医療費負担が増大していくことが見込まれております。国や地方ともに財政が厳しく、多額の借金を抱えており、医療保険制度を維持していくためには、受益と負担の関係が如何にあるべきかということを問わなければいけない、非常に難しい問題であろうかと思います。
こうしたなかで、来年度から始まる後期高齢者医療制度は、増大する老人医療費を負担する現役世代と高齢者世代との間で、互助の精神のもとに、負担と給付の開係を、分かりやすくするために創設された制度であると認識はしております。
新しい制度においても、高齢者の方が、必要な医療を適切に受けられるようにすることが重要でありますので、実施状況を注視しながら、広域連合や市町村に対して助言を行ったり、必要な対策をうってまいりたいと、こういうふうに考えております。
《質問》藤井健太郎 議員
2)制度の中止、撤回、または実施の延期を国に求める考えはないのか。福祉保健部長にお尋ねします。
提供される医療の中味が知らされないなかで、来年4月1日実施が決められ、保険料率も決められました。果たして来年4月1日実施でいいのでしょうか。また、県民の制度への理解と納得がどこまで得られているのでしょうか。
中止や延期を求める理由は、この制度が実施されると、新たな保険料負担となり高齢者の負担増大となること、保険料が負担できなければ保険給付の差止めとなること、高齢者だけ医療内容の薄まる別立ての診療報酬となることが懸念されることなど、高齢者にとって必要十分な医療制度とはならないのではないか、ということが一つ。
また、医療費の抑制というのなら、健康づくりの増進や病気の予防に積極的にとりくむことが先決ではないのかということが2つ目の理由です。
《答弁者》 福祉保健部長
現在、来春の後期高齢者医療制度開始に向け、和歌山県の後期高齢者医療広域連合及び各市町村において精力的に準備が進められているところでございます。
後期高齢者医療制度は、保険料負担に経過措置を設けるなど様々な配慮がなされており、県といたしましても、来年4月の全国の一斉実施に向け、制度の運営開始が適切に行われることが重要であると考え、広域連合及び市町村への助言や県民への啓発を行ってまいりたいと、このように考えてございます。
《質問》藤井健太郎 議員
3)高齢者の税負担、社会保障負担が増大してきています。県として後期高齢者の保険料負担を軽減させる方策を考えられないか。お尋ねします。
県内9市の国保税との比較をしてみると、単身世帯の場合は国保税の方が高く、高齢者2人世帯では後期高齢者医療の方が保険料が高くなるように見受けられます。
扶養家族だった人への保険料軽減が経過措置として年限を区切って行われますが、恒久措置ではありません。低所得者軽減は本人の収入のみではなく、世帯の所得でみることになっています。したがって、本人所得では軽減されることになるとしても同居している子どもの所得が一定額あれば7割・5割・2割の軽減はされないことになります。保険証は一人一人に渡され、保険料や医療費の自己負担割合は75才以上の人のみの所得について計算されますが、保険料の軽減をするかどうかの所得については若年者を含めた世帯の総所得でみることになっているのです。
《答弁者》 福祉保健部長
後期高齢者医療制度の保険料には、国民健康保険制度と同様に、軽減措置、徴収猶予・減免の制度があり、低所得者に配慮された制度となってございます。
軽減措置は、同一世帯内の被保険者と世帯主の総所得金額により、保険料の均等割額に対し、7割、5割、2割の軽減を行うものであります。
広域連合が平成18年度の所得に対して行った試算では、被保険者の約40%の方が7割軽減、他の軽減割合と合わせますと、約半数の方が軽減対象になる見込みであると伺ってございます。
県では、制度設計に伴い、新たに、保険料軽減分の補填、高額療養費の負担、財政安定化基金の創設などの財政措置を新年度から講じていく必要があるものと考えてございます。
さらに、県といたしましては、今後、生活習慣病の予防の徹底に努めることにより、県民の医療費負担の軽減につながる取り組みも進めてまいりたい、そのように考えてございます。
《質問》藤井健太郎 議員
4)65才以上の高齢障害者について
県は65才以上で新たに重度障害となった人への医療費助成制度を廃止しました。その理由の一つに老人保健法の適用をうけて1割給付にとどまる。ということがいわれていました。老人保健法だと保険料負担は従前とかわりませんでした。
今回、老人保健法での適用を受けていた人は自動的に後期高齢者医療に加入することとなりますが、脱退も認められています。というのは、扶養家族だと新たに後期高齢者医療の保険料の支払いが必要となってくることから、保険料負担のいらないこれまでの扶養家族にとどまるのか、それとも後期高齢者医療に加入するのか、どちらを選択するか本人が決めるということになってくるのです。
従来から加入している国保や健保を選択すると、保険料負担がかわらなかったりいらなかったりしますが、窓口負担は3割負担になります。後期高齢者医療を選択すると自己負担は1割となりますが、新たな保険料負担が必要となってきます。どちらにしても負担が増えることにはかわりません。この際、重度心身障害者医療助成を元に戻し、65才以上で新たに重度障害となった人も助成の対象にしていくべきではないでしょうか。
《答弁者》 福祉保健部長
現行の重度心身障害児者医療費助成制度は、若年期から重度障害になられた方は一般的に経済的基盤が脆弱な場合が多いこと、また65才以上で新たに重度障害者になられた方については、現行の老人保健法により医療費の自己負担が1割とする措置や生活実態に配慮し、低所得者に対し自己負担の限度額の措置が講じられていることを考慮した上で、県の厳しい財政状況を踏まえ、県単独医療制度全体の中で、重度心身障害児者医療費助成制度の存続が何よりも肝要であると、そのような観点から、65才以上で新たに重度障害になられた方については昨年、平成18年8月から対象外としたものであり、ご理解を賜りたいと思います。
なお、65歳以上の重度障害のある方の来年4月以降の保険制度は、議員ご指摘のとおり、ご本人の選択が可能となっておりますが、後期高齢者医療制度に加入した場合、現行の老人保健法と同じく医療費の自己負担は1割で、月ごとに上限額が設けられるなどその軽減措置が講じられておるところでございます。
3.多重債務者対策について
《質問》藤井健太郎 議員
次に、多重債務者対策についてお尋ねします。
県の多重債務者対策協議会が11月28日に設置され、楠本環境生活部長が会長に就任されました。報道によりますと対策協議会は和歌山弁護士会、県司法書士会、県警など9団体で構成、当面、多重債務者相談会を振興局単位で開催していくということです。
これまで、対策協議会の早期設置と取り組みを急ぐことを訴えてきたところです。ご承知のように貸金業法が改正され、利率の引き下げ、過剰融資の禁止、強引な取り立て行為の禁止など前進がはかられました。しかし、法の完全実施は3年後となります。多重債務に陥っている人への新たな融資が絞り込まれ、資金繰りに逼迫する状況が懸念されるわけですが、すでに現実のものとなってきています。資金繰りに追われた末の自殺や犯罪に結びつくことが心配されます。多重債務問題は、相談に結びつけば必ずといっていいほど解決の道筋が開ける問題です。利息制限法の年利29%で借りていたものを出資法の20%までの利率で計算しなおすと、すでに元金の返済を終え、過払いとなっていたという事例もあります。
対策協議会の活動に大いに期待するものですが、ゆっくりと、とりくむ時間はありません。より多くの人の解決に結びつけるためには、取り組みを急ぐ必要があります。
そこで、今後のすすめかたをどのように考えているのか。環境生活部長ならびに商工観光労働部長にお尋ねします。
1)対策協議会の構成団体はどのようになっているのか。それは、どのような考えにもとづくものか。貴重な経験と実績をもっている運動団体、支援者団体を構成員にすることは考えられないのか。とりわけ、かつて多重債務者であって、今は整理をして生活の再建を果たした人の体験から直接学び、広げていくことが、同じ問題で悩む人への励ましにもなり解決への展望を実感することができることにもなります。そういった人の協力を得ることが、対策協議会の活動の幅を広げることにもつながってきます。
《答弁者》 環境生活部長
´´「和歌山県多重債務者対策協議会」の構成員については、他府県の参加状況をも参考にしながら、機動的な開催運営ができるようにメンバーを選定いたしたところです。
その構成員は弁護士会、司法書士会、司法支援センター(法テラス)、国からは財務事務所、そして市町村として、市長会、町村会、県関係では警察本部、教育委員会、及び商工観光労働部、福祉保健部、環境生活部からなっており、幅広く議論ができる体制となっております。
ご指摘の、支援者団体のご意見につきましても十分にお聞きし、協議会の議論に反映させてまいりたいと考えております。
《質問》藤井健太郎 議員
2)対策協議会の今後の方針はどのようなものとなっているのか。とりわけ市町村での対策協議会づくりへの支援や相談窓口づくりをどのようにすすめていくのか。
重債務の相談は胸をはって相談に来られるような性格のものではありません。敷居をより低くしていくためにも、多くの窓口を開くことが大切です。
《答弁者》 環境生活部長
現在、県内各地で無料法律相談会を開催しているところであり、その内容なども参考に、また協議会の構成員のご意見もお伺いしながら、必要に応じて協議会を開催したいと考えております。
市町村に対する支援につきましては、この協議会に市長会や町村会も構成員として参加をいただいておりますが、ここへの参加により、市町村が弁護士会、司法書士会、法テラスなどの専門機関とのネットワークを活用して住民に対する相談対応に寄与することができると考えております。
また、市町村職員に対しては、弁護士、司法書士による多重債務者無料法律相談会への取り組みのなかで実地研修を実施しているところです。今後も機会を捉えて研修を計画したいと考えています。
《質問》藤井健太郎 議員
3)多重債務者の積極的な掘り起こしが必要と考えます。県税、各種の貸付金、施設の負担金、使用料や利用料が滞納になっていて、滞納処分されることについての相談を受けるなかで、多重債務に陥っている人がいることをたびたび経験します。庁内での多重債務者掘り起こしのネットワークづくりが有効ではないでしょうか。
《答弁者》 環境生活部長
地方自治体は、複数の部署で住民への様々な接触機会があり、多重債務者の発見につきまして機能を発揮できるものと考えております。そうしたことから、多重債務者の発見・相談窓口への誘導などの取り組みを協議するための庁内関係部署を構成員とした、「庁内会議」の設置についても検討したいと考えています。
《質問》藤井健太郎 議員
4)年金を担保にして融資を受け、それが元になって生活費の逼迫から貸金業者にたより多重債務に陥っている人の相談もあります。本来、生活の糧である年金をとりわけ障害年金や遺族年金など福祉的年金を担保にとるなどはもってのほかだと思うところですが、とにかく年金を担保にすることは原則禁止されているわけです。が、しかし例外的に独立行政法人福祉医療機構が金融機関を窓口にして年金担保融資をおこなっています。福祉医療機構自身の利用者調査の中で、年金にかわる生活費は新たな借金でまかなっている、または公的援助、生活保護のことですが、に頼る、そのように答えている人もあります。年金担保の融資にあたっては審査を厳密にし、その使い道や返済能力の見きわめをしっかりすることを申し入れるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
《答弁者》 環境生活部長
年金担保融資について法的に認められているのは独立行政法人福祉医療機構の行っている融資のみであることから、ご質問の主旨については、協議会の構成メンバーである財務事務所等も通じ、国に対し要請いたしたいと考えております。
《質問》藤井健太郎 議員
5)貸金業者が年金担保まがいの違法ともとれる行為に対する指導の強化が必要ではないでしょうか。裁判を起こして年金証書と通帳、印鑑をとりもどした事例もあります。そんなことのないようにしっかりと指導を強めていただきたいと思います。
《答弁者》 商工観光労働部長
貸金業の規制等に関する法律では、貸金業者に、年金などの「公的給付に係る預金通帳等の保管の制限」が課せられ、併せて、その運用を定めた金融庁のガイドラインでも、預金通帳・証書、印鑑等を預かる行為そのものが禁じられてございます。
そのようなことから、県では、貸金業者に対し、これら禁止事項に違反することの無いように立ち入り検査や研修会を通じて指導を行っているところでございます。
今後とも、財務事務所や警察本部などの関係機関やこの12月19日に発足予定の新しい業界の自主規制団体である日本貸金業協会などとも連携して、貸金業者に対し、法令を遵守するように積極的に働きかけて参りたいと存じます。
4.グリーンピア南紀のその後について
《質問》藤井健太郎 議員
最後に、グリーンピア南紀のその後について、福祉保健部長にお尋ねします。
全国13箇所あった年金保養施設グリーンピアが平成17年12月に全施設の譲渡が終了、施設の建設に直接要した費用だけでも1953億円かかったものが総額48億円で売却、結果的には年金保険料のたいへんな損失を招くこととなったわけです。 和歌山のグリーンピア南紀は昭和61年に建設費122億円で開設、施設は県と那智勝浦町、大地町が出資して設立した財団法人グリーンピア南紀によって運営されました。一時は予約がとれないほど人気がありましたが、時流にのれず平成15年3月末で閉鎖、閉鎖にあたって紀陽銀行に残った債務1億9400万円について、裁判所の調停を経て県は財団への出資額を超える1億3600万円余の負担を行うこととなりました。その後、土地と施設は那智勝浦町と大地町に2億7千万円で売却され、両町の活性化につながる有効利活用に期待がもたれました。
その後の報道などによると、平成17年12月に那智勝浦町と中国香港の事業者ボアオが土地・建物などの賃貸借契約を締結したとのことですが、町長が契約を白紙に戻すことを表明、現在、契約解除の条件について町と事業者が対立しているというように聞きおよんでいます。
県は財団を清算し、施設の譲渡を完了した時点で、個別の契約内容にまで関与する余地はないものと理解していましたが、那智勝浦町の当時の担当者の会議記録、議事録というものではないようですが、担当者のメモ書きのようなものがあり、グリーンピア南紀を閉鎖する前後のあらましが時系列で見てとれるものとなっています。那智勝浦町議会の場でも、参議院の厚生労働委員会でも明らかにされています。
それを見ますと、グリーンピア南紀が閉鎖される前後、跡地の利活用について地元自治体や関係機関、県も含めての協議が数回にわたりされており、町の担当者から県に相談が持ち掛けられていたり、打ち合わせ的なこともされていたことが読み取れます。問題になっている香港ボアオとの契約にいたる過程の中でのメモ書きとなっています。
県は財団清算後もどのようにかかわっていたのか、かかわっていた内容によっては、今回の事態についての県としてのしかるべき対応が求められることになるのではないでしょうか。福祉保健部長にお尋ねします。
1)財団清算後の経緯はどのようなものなのか。
2)県はどういう立場でどのようにかかわってきたのか。
3)県民の利益を損なわない、また過大な負担とならない方向での解決と今後の有効利活用が期待されるわけですが、県の今後の対応についてどう考えているのか。
《答弁者》 福祉保健部長
財団法人グリーンピア南紀は、昭和60年4月に設立され、昭和61年4月より年金福祉事業団より県を通じて紀南大規模年金保養基地「グリーンピア南紀」の管理・運営を受託してまいりましたが、平成13年12月の国における特殊法人等整理合理化計画により平成15年3月31日をもって「グリーンピア南紀」は運営停止され、同年7月には財団法人グリーンピア南紀は解散いたしました。
その間、年金福祉事業団が解散し、その業務を引き継いだ年金資金運用基金から県、那智勝浦町及び太地町に用地利用計画について照会があり、両町から利用計画を提出したと認識してございます。
その後、県が出捐する財団法人が運営していた経緯から跡地が両町に払い下げられる まで、年金資金運用基金と両町との連絡調整をおこなう他、財団法人の従業員の再就職についての「雇用問題連絡調整会議」を設立し、雇用対策について対応いたしてまいりした。
さらに、財団法人清算後も年金資金運用基金から両町への土地譲渡に伴う事務手続き等について、両町に助言をおこなっております。
跡地の利活用につきましては、取得した町が計画、実施していくことでありますが、地元の活性化のために有効活用されることを願っております。