2008年9月県議会 松坂 英樹 一般質問と答弁







2008年9月17日

1、県内小中学校耐震化について
(1)耐震化状況と年次計画についての認識
(2)倒壊の「危険性の高い」施設と「危険がある」施設間への対応
(3)耐震2次診断の実施が急務ではないか
(4)耐震診断結果公表義務付けについて
(5)国に対して補助拡大を求めるとともに、和歌山県としても補助制度を早急に打ち
     出すべきではないか

(6)市町村への財政的支援について

2、鳥獣被害対策について
(1)鳥獣被害の現状と対策について
(2)鳥獣被害防止特別措置法にもとづく事業について
   @県内市町村の取組状況について
      A県民・市町村が活用しやすいよう県の支援を強めるべきではないか
(3)広域的な被害対策について

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1、県内小中学校耐震化について
(1)耐震化状況と年次計画についての認識

《質問》 松坂英樹 県議
   まず初めに、県内小中学校の耐震化についてお伺いいたします。中国四川省の大地震を節目にして、全国的にも、また県民にとっても、学校施設の耐震化が地域の大きな関心ごとになっています。学校施設は子どもたちの命に直接かかわる施設というだけでなく、地域の防災拠点としての機能をもった施設でもあることから、県民全体の課題でもあるのは言うまでもありません。
   6月には国会において超党派での法改正が実現し、改正地震防災対策特別措置法では、倒壊の危険性が高い校舎の耐震改修や改築の補助がかさ上げされました。5年間で学校施設の耐震化を計画していた教育振興基本計画のスピードを上げ、危険性の高い校舎については3年間での対応を完了させようというのが国を上げての取組となっています。
   先の議会でも県内学校施設の耐震化の問題が取上げられました。教育長答弁によると、県立学校については耐震診断100%、耐震化率は86、7%です。一方、小中学校では、耐震診断95、3%ですが耐震化率は60、9%でした。耐震診断が、子どもが利用しない施設や改築計画中のもの等を除くと、ぬかりなく耐震診断されているという状況は評価できる点です。
   報告された県内学校施設の耐震化状況を詳しく見てみると、県立学校の耐震化が順調に進んでいる一方で、県内市町村の小中学校耐震化率は、全国平均より低い数値となっているとともに、市町村別の数値と取組状況にはかなりのアンバランスがあります。順調に計画的に対策を進めている市町村の努力を高く評価するものですが、なかなか進まない自治体に焦点を当てた取り組みが必要になっています。このままでは対策の進む自治体と進まない自治体との差がいっそう開く傾向にあると考えます。この僅か数年の間で耐震化を飛躍的に高めようとすれば、進まないところがなぜ進まないのか、どうやってここのところを進めるのかがカギとなる、こういう思いで今回の質問をさせていただきます。
 まず第一の質問の観点は、県内の状況をみると、市町村の耐震化計画が年度別に具体的に計画されている所が少ないのではないかという点です。5年間で耐震化をすすめますと教育振興基本計画でなっていても、来年どこをやって次の年はここまでいってという、具体的な計画、年次的な計画がなければ絵に描いた餅となってしまいます。県内小中学校の耐震化状況と市町村の年次計画について現状をどう認識しているのか。また耐震化計画を進める上でどこに問題点があると考えているのか。まずこの点を教育長にお尋ねします。

(2)倒壊の「危険性の高い」施設と「危険がある」施設間への対応
   次に、耐震性のない危険な施設への対応について質問をさせていただきます。私は今回の質問にあたり、昭和56年以前に建築された学校施設に焦点を当てて調査をいたしました。
   先ほどの耐震化の数字約60%と紹介しましたが、これは新しい施設も古い施設もいっしょにした総合的な耐震化率なんですね。建築基準法が改正された昭和57年以降の建物は、構造上は耐震性が確保されているという考えですから、耐震工事のいわば対象からははずれるわけです。昭和57年以降の新しい施設の多い市町村は初めから耐震化率が高いわけで、スタート台が違うのです。要は昭和56年以前に建築された施設に対してどう取組んできたか、そして進んでいないのなら何がネックになっているのか、そしてそれを進ませようとすれば何が必要か。これを議論することが大事だと考えたわけです。
   配付資料をご覧いただきながらお聞きいただきたいと思います。県内小中学校全体の施設数は合計1,437棟となっています。このうち、耐震強度があるとされている昭和57年以降の建物542棟を除くと、昭和56年度以前の施設は表にありますように895棟となります。
   今回調査してみると、この895棟のうち耐震化済のものが333棟でした。この内訳は、診断の結果強度が充分あって耐震化工事の必要ないものが123棟。またすでに耐震工事が完了したものが210棟です。これに加えて、子どもが利用しない施設や改築予定施設等が耐震診断未実施となっており、県内全体で42棟ありますが、これも耐震工事計画からははずして考えることができます。
   この結果、耐震化されていない施設、耐震化が必要な施設の合計は520棟ということになります。ピンクの欄に、各市町村別に未耐震化棟数と耐震化率が一覧表となっています。この欄の耐震化率は、言いかえれば耐震改修の進捗率であり、全体の耐震化率とは違った角度で、たいへん参考になる数値です。ただおことわりしておきますが、老朽校舎を新しく改築をして耐震化もクリアしたところはこの数字には現れてこないわけでして、その努力は別にされていることを申し添えておきます。
   さて、そこで問題はこの520棟です。市町村別にもお示ししたこの棟数を耐震化しなければならないわけですが、この中には耐震強度の著しく低い施設があります。構造耐震指標、Is値と呼ばれていますが、このIs値が0.3未満のものは、大規模地震、「震度6強で倒壊する危険性が高い」施設とされています。改正された法律ではこの施設に対する対策の緊急性・前倒しをはかるために、補強工事をする改修、そして立て替える改築、ともに国庫補助率が「かさ上げ」されたのです。
   そして、この危険性の高い施設以外は、「倒壊の危険性がある建物」と呼ばれていますが、耐震性がなくて耐震化が必要とされていることには何らかわりはありません。
   そこで教育長にお尋ねします。耐震性が確保されていない県内520棟の施設の内、耐震化が急がれる施設、Is値が0.3未満の「倒壊の危険性が高い」施設は何棟あると認識されているでしょうか。また、残りIs値が0.3以上あるが耐震基準に満たない「倒壊の危険性がある」施設は何棟になりますか。またそれぞれにはどういった手立てが必要と考えられているのか、ご答弁を願いたいと思います。


《答弁者》 教育長
   学校施設は、児童生徒の生命を預かっている場であるとともに、災害発生時には地域住民の緊急避難場所としての役割をも果たすことから、その安全性の確保は、極めて重要なことと考えてございます。
   耐震診断の実施状況は、平成20年4月1日現在、小中学校で実施率95.3%となり、実施済み全棟数520棟の内、未だ228棟が耐震2次診断を実施しておりません。
   現時点での診断結果では、Is値0.3未満の「倒壊の危険性が高い」建物が約100棟、残り420棟が「倒壊の危険がある」建物と判断されております。
   なお、耐震化率につきましては全国1位の伸び率となりまして対前年7.7%増の60.9%となってございます。
   学校施設の耐震化につきましては、それぞれの市町村において耐震2次診断や補強工事の予定を定めました耐震化年次計画を策定をし、これに基づいて耐震化を実施をしているところでございます。
   市町村によっては、平成25年度になっても耐震2次診断すら実施できない状況のところもございまして、その原因としては、財政的事情に加えて小中学校の統廃合等の問題が関係しているところもあると考えられます。


(3)耐震2次診断の実施が急務ではないか

《質問》 松坂英樹 県議
   3点目に、耐震診断の問題についてお尋ねします。私はこの昭和56年以前の施設への対応を調査してみて、耐震化事業の今後の鍵を握るのは耐震診断の部分だと考えました。
   耐震診断には1次診断と2次診断の2種類がありまして、1次診断は構造的強度をおしはかる基本的な診断ですが、図面を基にした比較的簡単なものであるのに対し、2次診断は本格的に校舎をくりぬいて構造物を検査するという違いがあります。2次診断では文科省の補助制度とともに、国交省の3分の1補助の制度も約半数のところで活用されています。
   ところが、資料の黄色い欄をご覧いただくとわかるように、先ほどの520の施設の内、1次診断だけしか実施していない施設が228施設もあるわけです。市町村ごとに見てみると、耐震化の方向性が定まらない自治体は、耐震化工事はもとより2次診断が進んでいない実態があると思います。
   ここで大事な点は、国の新しいかさ上げ補助事業に乗ろうにも、この2次診断の数字が出ていないと申請できないんですね。また危険性が高い施設から順序だてで冷静に計画的に耐震化をはかるにも、2次診断の正確な数値なしにはすすまないと思います。
   ですから、文字通り実際に耐震化事業にかかろうとすれば、今年、来年のうちにこの2次診断をどう飛躍的に具体化するかがカギではないでしょうか。2次診断を進める上で、県教育委員会として何が必要で、どうしなければならないと考えているのか。教育長の答弁をもとめるものです。


《答弁者》 教育長
   耐震2次診断の早期実施は、耐震化年次計画を策定する際に、校舎等の耐震性能をより正確に把握する必要があることから大変重要でありますので、積極的に当該市町村に働きかけてまいりたいと考えます。


(4)耐震診断結果公表義務付けについて

《質問》 松坂英樹 県議
   4点目に、耐震診断結果の公表の問題でお尋ねします。今回、国の改正された地震防災対策特別措置法では、耐震診断実施と結果公表、この2つが法的にきちんと義務付けられました。「うちの子どもが通う学校は大丈夫か」という親や地域の不安にできるだけ正確にこたえ、今後の対策を危険性の高いところから合理的に進める上でも、まず情報を公開し明らかにする必要があります。またここ数年の市町村事業の中で学校耐震化が相対的重点になるかどうかは、危険度情報の共有・透明化による住民の世論や意識にかかっているという点でもたいへん重要な問題だと考えます。
   県立学校施設の耐震診断結果公表はもちろんですが、市町村がすみやかに耐震診断結果を公表するよう、県教育委員会としても指導すべきだと思いますが、この点についても教育長からお考えをお示しいただきたいと思います。


《答弁者》 教育長
   耐震診断の結果の公表につきましては、今回の法改正によりまして、市町村に義務付けられたところでもあります。県立学校に関しましても公表をしてまいりたいと考えます。
   保護者や地域住民等への情報を提供することによりまして、学校施設の耐震化への関心と理解が高まり、より一層耐震化が促進されるものと考えております。
   今後、耐震化を更に加速させるためには、市町村における防災上の最優先課題として位置づけ、危機感を持って取り組んでいただくよう、働きかけてまいりたいと考えます。


(5)国に対して補助拡大を求めるとともに、和歌山県としても補助制度を早急に打ち
   出すべきではないか


《質問》 松坂英樹 県議
   さて今後、和歌山県内の耐震化率を上げ、子どもの命を守るためには、県内小中学校の設置者である市町村の努力はもちろん第一義的に重要です。しかし耐用年数も見据えながら10年・20年かけて順次すすめるというなら可能ですが、短期間に耐震化をやりきろうと思えば、財政的な困難がともないます。義務教育の学校施設である以上、国の財政措置がどうしても必要だと考えます。ところがこれまでの国の予算のつき具合では20年以上もかかってしまうような計算でした。しかし今回の補助かさ上げと連動して、来年度予算に対する文部科学省の概算要求では耐震化予算が前年度比71、3%増の1801億円が計上されました。市町村の事業化を進めるためには、全国市長会も要望しているように、国レベルでのさらなる補助拡大が必要であり、国に対して強く働きかけるようにすべきだと思いますがいかがでしょうか。
   また、今回の国の補助かさ上げに含まれなかったIs値0.3から0.7までの施設は、危険性が高く緊急性がある施設には含まれなかったものの、耐震性が確保されていなくて耐震化工事が必ず必要な施設です。3年間0.3未満の施設の方ばかりに目が行ってしまっては、教育振興基本計画期間のこりの2年間でこれらを対策できるわけがありません。ここへの計画的な対応、耐震診断の促進策も重要になります。そのためには県独自の補助制度も検討する必要があります。先進県だった静岡や福井、そして高知などの県に続いて、香川、徳島でも県独自の支援策を始め、広がってきています。
   特に、この8月に発表された徳島県の例などはたいへん参考になると考えます。特徴の一つ目は、対象がIs値0、3から0、7までの施設に注目し、国が支援できていない部分を県が国と一体となって市町村を支援しようという制度です。これは道理があります。
   そして二つ目は、市町村の単年度負担を軽減しようという発想だということです。耐震補強費用は、かさ上げ対象外の施設は国補助が2分の1で、その残り2分の1は市町村負担です。その市町村負担の75%は起債が充当できる、平たくいうとローンが組めるわけですが、残りの25%は単年度負担となり手元の現金がいるわけです。この単年度負担の7割を県の市町村振興資金で無利子貸付をする。こうすれば単年度負担は補助かさ上げ並に改善されます。さらに償還がはじまる3年後には、償還額の7割を補助して負担を軽くしてあげましょうという仕組みです。高知県の県単制度は、このIs値0.3から0.7の施設に対し改修経費の6分の1の補助をします。耐震診断にも補助があります。
   これらの県独自制度は、耐震改修が必要な施設を数多く抱えている自治体や、財政的困難を抱えている自治体にとってはとてもいい制度、かゆい所に手が届く制度ではないでしょうか。もちろん、これですべて救われるわけではありませんが、問題の焦点を絞って県が支援する部分を作ったということは市町村にとってたいへんな励ましとなることでしょう。
   私は07年2月議会でも学校耐震化のため県の補助制度創設を質問しましたが、当時は前向きな答弁はありませんでした。今こそ国や市町村とともに、県内小中学校耐震化推進のため、和歌山県としての補助制度に一歩踏み出すべきではないでしょうか。教育長のご答弁をお願いいたします。


《答弁者》 教育長
   国の補助制度につきましては、先ほどご指摘ありましたように、今年6月に地震防災対策特別措置法が改正され、大規模な地震により倒壊等の危険性が高い公立小中学校施設の耐震化を図る場合、耐震補強では従来の国庫補助率を1/2から2/3に、また改築の場合は、1/3から1/2とする支援策が講じられまして、従来に比べ大幅に市町村の財政負担が軽減されることになりましたので、これを生かして耐震化を促すとともに、引き続き補助制度の拡充を、国に要望してまいりたいと存じます。
   県独自の補助制度の創設につきましては、ご紹介のあった事例などを研究させていただきたいと考えますが、限られた予算の中で県立学校の耐震化を完了させるということを最優先の課題として推進しているところでございますので、今のところ大変難しい状況にあることをご理解いただき、計画される市町村におきましては、先ほど知事のご説明にありましたように、様々な制度の活用を含めご検討頂ければというふうに考えております。


《再質問》 松坂英樹 県議
   今回の質問に対する答弁で、Is値が0.3未満の施設が約100棟あるということが初めて明らかになりました。県内に約100棟もあるのかと、これは正面から向き合わなければならない数字です。そして同時に、裏返して言えば残りの400棟は国の補助かさ上げの対象外にされてしまっているということでもあると思います。ここが後回しにされないようにしなければならない、このことを強調したいと思います。
   また、教育長からは、耐震化についてはまず耐震診断が最優先だという認識、そして、耐震診断結果については公表の義務化ということがはっきりと示されました。今後、誰でも市町村に問い合わせれば回答を得られることになりますが、この学校耐震化の問題は、親や地域のまさに関心の的となっています。地域と学校関係者が力を合わせて子どもの命を守る方向で、この数値公表を機に、取り組みをうんと進めていただきたいと願うものであります。
   私は今回の質問で昨年に続いて、学校耐震化に向けた県単独のこの補助制度は必要ではないかと提案をさせていただいたわけですが、これについて教育長からは、限られた予算と、まずは県立学校の耐震化の完了を目指すということで、大変難しいというご答弁だったと思います。
   食い下がるようで恐縮ですが、この問題はなんとしても進めていただきたいと思うんです。教育委員会が、市町村教育委員会に対して熱心にアドバイスしていることも承知しています。そして市町村に言うからには、まず自ら県立学校の耐震化も進めて模範を示していることも評価しているものです。しかし、目を三角にしてがんばれがんばれと言うだけでは動けないのが市町村の実態です。財政難で喘ぐ自治体に対し国の財政措置・補助が少ないために、自治体の財政事情によって大きな安全の格差というのが生まれようとしているんです。財政的余裕がある町はできて余裕のない町はできない、子どもの命にこういう安全格差は許されないと思います。国はその危険校舎1万棟0.3以下しか視野に入っていない。市町村は目の前の校舎と財政と、にらめっこを続けている。この間に入って、先の520棟という具体的な和歌山の目標に責任を持つのは、県教育委員会だと私は思います。県内のこの取り組みの中で、市町村の学校数であるとか、施設の状況であるとか、財政状況だとか、いろんな理由によってアンバランスがあるときに、市町村の課題や状況をよく理解しながら手を差し伸べる、それは県としての存在価値だと私は思います。
   今一度、教育長におたずねをいたしますが、補助制度は困難だという答弁がありましたが、一度に耐震補強補助制度創設が困難であるなら、例えば耐震診断の補助からでもスタートできないのでしょうか。また、県立学校の耐震化のほうが100%に近づいてきているなかで、これが完了してから考えるというのではなくて、その進捗や着地点を見つめながら、市町村にも少しずつ支援できないかといったことも考えてはおられないのでしょうか。こういったいろんな工夫が教育委員会の中で検討されているのでしょうか。現段階では困難だとおっしゃるその議論の中身をもう少しお示しもいただきながら、率直なご答弁をいただけたらと思います。よろしくお願いいたします。


《再答弁者》 教育長
   議員ご指摘の点は、重々よく理解ができますし、私としてもいいお答えをしたいのは山々でございますけれど、なにぶんにも教育委員会という立場をご理解頂きまして、私ども担当者の方も何とかしたいということで、苦しみもがいているのが実情でございますので、私どもとしては、引き続きもがき続けたいというふうに考えますので、ご理解頂きたいと思います。


《要望》 松坂英樹 県議
 教育長から率直なご答弁をいただきました。
 なんとかしたいと、もがき続けたいという決意だったと思います。私は今からでも、県教育委員会して繰り返し検討を続けていただきたいと思います。来年度予算に向けて、一歩でも半歩でも進めていただくよう積極的に検討し、財政当局にも予算要求をしていただきたい。そして、教育の現状のこの予算枠の中にとどまることなく、別枠でも予算を求めるぐらいの、そういうことがいると思います。ぜひこの学校耐震化、安全の格差を生まないように強く要望いたします。


(6)市町村への財政的支援について

《質問》 松坂英樹 県議
   学校耐震化問題の最後に、知事に対しても質問をさせていただきます。耐震化事業そのものは、教育委員会の仕事であるわけですが、県内市町村の中で耐震化が進まない理由の大きな問題の一つが、市町村の財政的理由であるならば、市町村の財政そのものへの支援・県との連携というものが必要ではないかと考えて、あえて知事にもお伺いするものです。
   市町村にとって学校施設の改築や補強はたいへん頭の痛い問題です。なぜなら一般的な施設や道路という公共事業と比べて、補助率や起債の充当率が低いために、市町村の持ち出しが多い、単年度負担が重いということです。
   例をあげますと有田川町の田殿小学校は最近建て替えた学校です。知事も農免道路の開通式典でおいでいただいた学校です。学校本体の事業費が8億円かかったそうです。しかし文部科学省の補助基準が低いためにそのうち約5億円あまりしか補助対象とならなかった。これの3分の1補助ですから、結局国からの補助金は2億円にもならなかったわけです。学校建設には校舎だけではすみません。旧施設の撤去費用や、体育館、プール、グラウンドの拡張、様々なことが絡んできます。この間の竣工式会場となった集会所施設は地域との交流施設であり、もちろん別会計となっています。市町村の持ち出しが大きいんですね。
   ですから市町村は、築40年、50年たっている校舎をこれから「補強するのか」「改築するのか」も悩んでいますし、もちろん児童数減少による将来計画もあるでしょう。しかし、この先必ずやってくるであろう大地震に対して、それまで待つわけにはいかないというのが世論の声であり、改正された法の趣旨でもあります。
   市町村にとって学校施設の改築や補強はたいへん頭の痛い問題です。なぜなら一般的な施設や道路という公共事業と比べて、補助率や起債の充当率が低いために、市町村の持ち出しが多い、単年度負担が重いということです。
   例をあげますと有田川町の田殿小学校は最近建て替えた学校です。知事も農免道路の開通式典でおいでいただいた学校です。学校本体の事業費が8億円かかったそうです。しかし文部科学省の補助基準が低いためにそのうち約5億円あまりしか補助対象とならなかった。これの3分の1補助ですから、結局国からの補助金は2億円にもならなかったわけです。学校建設には校舎だけではすみません。旧施設の撤去費用や、体育館、プール、グラウンドの拡張、様々なことが絡んできます。この間の竣工式会場となった集会所施設は地域との交流施設であり、もちろん別会計となっています。市町村の持ち出しが大きいんですね。
   ですから市町村は、築40年、50年たっている校舎をこれから「補強するのか」「改築するのか」も悩んでいますし、もちろん児童数減少による将来計画もあるでしょう。しかし、この先必ずやってくるであろう大地震に対して、それまで待つわけにはいかないというのが世論の声であり、改正された法の趣旨でもあります。
   市町村教育委員会とともに悩んでいる市町村当局に対しても充分に要望を聞き、相談に乗る必要があるのではないでしょうか。財政負担軽減のため、市町村振興資金の活用や起債の充当率を上げる制度など、単年度負担を減らすための制度等の財政的援助や支援がどうしても必要ではないでしょうか。
   県民の安心・安全の確保という観点から、国・県・市町村、教育委員会など関係方面が連携して有効な手立てができるよう働きかけるべきだと考えますが、知事のお考えを示していただきたいと思います。


《答弁者》 知事
   議員ご指摘の小中学校施設の耐震対策につきましては、これは大変大事な話だと思っておりまして、学校施設は児童生徒が一日の大半を過ごすところでございます。安心して学べる環境づくりというのは、防災対策上極めて重要だということは、そのとおりだと思います。
   国においても、ご指摘にもありましたが、本年6月の地震防災対策特別措置法の改正によりまして、国庫補助率が嵩上げされておりますし、また「安心実現のための緊急総合対策」の一貫として、耐震対策が拡充される見通しであります。かなり大幅な予算措置がされると聞いております。
   小中学校施設の設置者である市町村が耐震化を実施する場合には、このような国の補助制度を活用して、できるだけ早期に100%の水準に達して頂きたい、こんなふうに思っている次第であります。しからば、そういう達する前に何らかの形で県が、たとえば肩代わりをするとか、そういうことが、良い事かどうかという事についてでございますが、2つのことを考えないといけない。一つはすでに今までのルールに従って頑張っておられる市町村という存在も考えておかなきゃいけないし、一方そういう行政のディシプリンだけで差し迫っている危機というのに対して子どもをどう考えるかという議論を一方では考えないといけないと考えております。従って県としては、市町村に対してこういう国の施策をできるだけ利用して早期にやっていこというような働きかけをするということが大事であると思いますし、また、それによってご指摘のような単年度負担の問題が解消されないということであれば、これは実は振興資金というんですが、県の貸付け制度を実は拡充して備えております。これは別にこのためだけに使えるわけではございませんが、したがってこういうものも相談に応じて使って頂くということによって、先ほど先進県といわれたような県と同じような実行的な措置ができるものだと考えております。
   県といたしましては、こういうような様々な方策を利用して、結果として100%、早くですね、子どもたちの安全が守られるようなところに持って行きたいと、こんなふうに考えてる次第でございます。


《要望》 松坂英樹 県議
   小中学校の耐震化をするために、県としても支援策が必要な段階であると今回の質問で求めたのに対して、国の制度の活用などをしてもらおうというスタンスだという知事の答弁がありました。くわえて、市町村振興資金も活用できるから、ぜひ使ってほしいという答弁もあったように思います。ぜひ知事も市町村の相談にのり、総合的な支援をしていただきたいとお願いをしておきます。


2、鳥獣被害対策について
1)鳥獣被害の現状と対策について

《質問》 松坂英樹 県議
   次に、二つ目の柱となる鳥獣被害対策について質問させていただきます。今回の質問に際して地元の被害実態と対策事業の現場を調査に回らせていただきました。有田川町の吉見地区、岩野河地区、湯浅町山田地区、広川町柳瀬地区などに伺いましたが、極早生ミカンの出荷を前に、サルの被害でまだ青いミカンがいっぱい食べ散らかされています。赤く色づくころにはどうなることかと頭をかかえておられました。また畑の中にはイノシシの通り道あり、遊び場あり、あちこちに糞も見られてお手上げ状態です。シカの被害も広がっているようです。
   踏み荒らされた田んぼもご案内いただきました。この地域では、サルよけのビニルハウスならぬ「金網ハウス」をというのがたくさんあります。金網の檻の中に人間が入って、動物園の逆ですが、その中で農業をしないと何も作れない状態です。また、防護柵で対応した地区の被害は減るものの、今度はそのお隣の地域に被害が出てきているという状況でした。イノシシやシカについては被害地域の拡大が見られ、サルについては駆除が進まないために個体数が増えているという声が出されています。また住民の方は、直接農産物への被害金額には現れないものの、自家消費用の野菜をことごとく収穫直前にやられてしまうと、金銭面というより精神面でのショックが大きいと地域の方々はおっしゃっていました。
   つい一月前には国道480号有田川町内で、飛び出してきたサルをよけようとした自家用車が、ガードレールをつきやぶって有田川に転落、ドクターヘリの出動する交通事故も起こりました。
   この鳥獣被害に対して有効な手がうてず、自然環境や生態系のゆがみを放置するならば、いわゆる「限界集落」をはじめ、県内のすぐれた自然環境や水資源を保全・管理している山間部に、耕作放棄地が増え、暮らしが立ち行かない状況がいっそう進むことになることから、農林水産業としてだけでなく地域政策としても重大な課題だと考えます。
   さて、このような状況の中、鳥獣害対策については、昨年12月に国会において「鳥獣被害防止特別措置法」が可決・成立し、国の予算額もこれまでの1.9億円から28億円へと10倍以上の位置づけがされました。この特別措置法では、市町村の協議会が実施主体となり、そこが計画実施する事業にハード事業では2分の1補助、ソフト事業では200万円を上限に10割交付されるという有利な中身になっています。
 私は、今回の特別措置法が、野生動物の生態保護を充分にふまえながらも、被害対策として積極的に活用される必要があると考えます。ところが、この特別措置法に基づく県内市町村の本年度の取り組み状況を調べてみると、事業の前提条件となる市町村被害防止計画をもったところはわずか3分の1であります。ソフト事業を今年度に手を上げているのも3分の1、ハード事業にいたってはゼロという実態だと聞いています。今回の特別措置法では、「被害の現場に最も近く、対策に苦慮している市町村が迅速に防止策に取り組めるようにしたもの」こういうふれこみでしたが実態はそうなっていません。いくら始まって間もない法律と事業だとはいえ、もっと積極的に活用されていいはずなのにと考えています。
 そこでお尋ねしますが、まず県内の鳥獣被害の現状と対策について県の認識を伺います。これまで国事業、県単事業、市町村単独事業にそれぞれ取組んできたが、被害状況はどう推移しているのか、どういう問題意識をもっているのか。ご答弁をお願いします。


《答弁者》 農林水産部長
   本県における鳥獣被害の現状と対策についてでございますが、近年の農作物被害の総額は、3億円程度で推移してございまして、農家や市町村等の取組や努力により、被害額の上昇をくい止めている状況でございます。鳥獣被害は、生産意欲低下のみならず、耕作放棄地の増加や集落の過疎化など、重大な課題であると認識してございます。
   そのため、県といたしましては、本年4月より狩猟や有害捕獲に関する窓口を農林水産部へ移管し、農作物被害防止を重点に取り組むとともに、防護柵や捕獲檻の設置への助成や人材育成といったこれまでの被害対策を拡充し、有害捕獲と一体化した「農作物鳥獣害対策強化事業」を立ち上げ、総合施策として実施しているところでございます。


2)鳥獣被害防止特別措置法にもとづく事業について
@県内市町村の取組状況について
A県民・市町村が活用しやすいよう県の支援を強めるべきではないか

《質問》 松坂英樹 県議
 次に、この鳥獣被害防止特別措置法にもとづく事業についてお伺いします。まず一つ目には県内の市町村の取組状況はどうなっているのか、なぜ先ほどいったような状況になっているのかをお尋ねします。
 私は今回の質問にあたり、直接この事業を担当する郡内3市町村の担当職員をたずねて意見や要望を伺ってきました。そこで出された声は、一言で言うと「国の事業はどうにも使い勝手がわるい」ということでした。例えば国の補助事業ですから、費用対効果を厳密に計算することが要求される。防護柵や檻を設置するにも、たとえば1反あたりの収量が設置前と設置後でどうかわって、何円収益が上がったか、そして柵の費用を耐用年数で割って出した1年あたりの単価と比べて、その費用対効果が1.0以上でないとダメだとなるといいます。一般的な公共事業・土木事業では当たり前なのでしょうが、その一般的な費用対効果の考え方を、試行錯誤もあり、収量や単価など数字にしにくいこの鳥獣被害対策の事業に機械的にあてはめるのはいかがなものでしょうか。また耐用年数などもけっこう気になるようです。
 これまでの対策は、事業費や規模に応じて国事業、県事業、市町村事業と使い分けていました。こういった時代から、市町村が地域的な計画をもってそれに当てはまるものであれば事業化できる、市町村が使いやすいようにする、そういう市町村の取組を国が2分の1負担して財政的に応援する、このことが文字通りにできるようになれば、現地に合わせた創意工夫や、身の丈にあった事業計画、地域的な協力がうんと進むと考えます。
   いずれにしろ、使いにくい事業はいくらあってもだめなので、いかに使いやすくするのか、使えるようにどう援助するのか、このことが重要になってくると思います。この特別措置法にもとづく事業を県民・市町村が活用しやすいよう県の支援を強めるべきではないか。この二点についてお答えを願います。

3)広域的な被害対策について

   最後に、実態調査など市町村をまたがって広域的に取組む必要のある事業について伺います。先日、県の「鳥獣被害対策研修会」が有田川町で開かれ、私もお話を伺いました。特に印象的だったのが、イノシシにしろ、シカにしろ、サルにしろ、その生態をよくつかんだ対策をすることが非常に大切だというお話でした。
 以前、有田川町岩野河地区のサル被害対策で、県・町の職員さんらとともに地元の声や要望を聞かせていただきました。サルの被害も固体数も増えている。鉄砲で駆除するのも困難。檻などでサルを捕獲してほしい。そのためにもサルの生息実態調査をやってほしい。こういった要望が出されました。
   しかし、その当時は「被害があれば連絡を受けて猟友会に連絡し、有害駆除をする」という域を出ませんでした。県としても生態調査の必要性は強く感じながらも、その予算があれば急務である防護柵の設置など被害対策にまわさざるを得ない当時の事情もあったと思います。
 サル被害への対策は、むやみな駆除をするとかえって群れの分割により被害地域を拡大するということも、先日の研修会で専門家から指摘されています。威嚇や銃による捕獲には限界があり、山田山を中心に、有田川町・湯浅町・広川町にまたがって出没するサル被害に対応するには、モンキードッグなどによる追い払いや、一定の生息実態調査と檻などによる捕獲が必要だと考えます。
   今回の特別措置法のソフト事業は、こういった追い払いや調査事業も対象となるわけで、これまでにない対策が可能です。この機会に広域的な調査事業をぜひ検討すべきだと提案します。
   これらをふまえてお尋ねするわけですが、こういった市町村をまたがる広域的な被害対策への対応が今後よりいっそう求められると考えますが、いかがお考えか答弁を願います。市町村や地域協議会とよく相談する機会を設け、市町村をまたがる事業について県として積極的な役割を発揮をすべきだと考えますがいかがでしょうか。これら鳥獣被害対策についてはすべて農林水産部長に答弁をお願いいたします。


《答弁者》 農林水産部長
   鳥獣被害防止特別措置法につきましては、鳥獣被害が全国的な広がりを見せる中、地域の実状をよく知る市町村が主体となって対策に取り組めるよう、国において議員立法として本年2月に施行されたところでございます。
   これを受けて、既に、県内13市町で被害防止計画が策定され、そのうち10市町が国庫事業を申請し、モンキードッグによるサルの追い払い活動や刈り払いによる山際の緩衝帯設置、また、広域でイノシシの生息調査に取り組む市町もございます。
   さらに、本年度中には、9市町が新たに取り組むこととなっており、その結果、被害防止計画を策定する市町は22と7割を超えまして、全国的に見ても高くなると考えてございます。
   一方、これに伴うハード事業については、特措法の制定が2月ということもあり、時間的制約の中で、実施体制の整備や計画の策定に時間を要したことなどから、全国的にも応募件数が少ない現状でございます。
   ハード事業の採択要件については、従来より大幅に緩和されてございますので、地域の実態に即して事業ができるよう、より一層本制度の周知徹底と事業のPRを図って参ります。
   いずれにいたしましても、野生鳥獣の行動は、広範囲に及ぶため、県といたしましては、市町村や地域協議会と連携を図り、鳥獣被害防止特措法に基づく国庫事業を有効に活用しながら、生息実態の把握をはじめ、追い払いや捕獲など総合的な対策として取り組んで参りたいと考えてございます。


《要望》 松坂英樹 県議
   ソフト事業ではサルを追い払うモンキードッグの事業や、広域的なイノシシの実態調査など創意工夫が生まれていることに、がんばってくれていると評価をしています。その上に立って何度も申し上げるようですが、使いにくい制度はいくらあっても駄目なので、市町村と連携をとりながら県としての支援を強めてしっかりと取り組んでいただけるよう、強く要望しておきます。


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9月県議会 松坂英樹 一般質問=08年9月17日