2008年12月県議会 文教委員会 概要記録

2008年12月12日

「同和副申書」について

《質問》 雑貿委員
   本会議で高校入試の副申書の問題を取り上げたが、この大変な問題が明らかになり、前向きに変えていくという回答を得たのは大変良かったと思っている。
   このことについて教育長から2回目の答弁の中で徹底を図っていくという回答をいただいたが、どういう方向で徹底を図っていくのかお聞きしたい。

《答弁》 県立学校課長
   再質問に対する教育長の回答は、市町村教育委員会や県立学校等へ指導を徹底していくという意味で答えさせていただいた。その中身は、平成15年に通知を出しているので、その趣旨を再度徹底していくということであり、それぞれの学校現場へ理解を求め、指轟をしていきたいと考えている。

《要望》 雑賀委員
   それはそれで結構である。今回の質問は、私がいろいろデータを集めたのではなくて、同和行政・同和教育の終結をめざす和歌山市連絡会という団体が情報開示請求をしたデータを基に質問をさせていただいた。今日はその代表の方が傍聴に来ておられる。その団体が7月25日付けで私が申し上げた中身で教育委員会に要請書を出している。もっと突っ込んだことを聞こうと思ったが、あれだけの回答を得て、それ以上はいいと代表の方からも意見をもらったので、今日はそれ以上申し上げない。また、その団体と懇談するような機会があれば、よく意見を聴いて参考にしていただきたい。

旧同和子ども会と学習支援教員

《質問》 雑貿委員
   知事に対して子ども会の問題で質問させていただいた。教育委員会が関係する問題としては、私がこの前質問した時のデータによると、学校にいる学習支援推進教員が中学校などではほとんど授業をせずに、子ども会専任教員のようになっているという実態があることである。同和行政として特別扱いすることは終結しているなかで、子ども会の問題は非常に大きな問題だと思う。学習支援推進教員の役割、特に学校ではほとんど授業をしていない実態をどう考えるか、教育長にお聞きしたい。

《答弁》 教育長
   学力向上推進教員については、ご指摘のとおり確かに昨年度までは授業の持ち時間がゼロという教員が1名いたが、授業を持たないということは学力向上という点で制度の趣旨に合わないので、担当課の方から強く指導してもらった。どれぐらいの授業を持っているかというと、昨年は小学校が平均10時間余り、中学校が6.3時間程度であった。今年度は小学校は、11.1時間、中学校が7.4時間ということで、少しずつ授業を大事にしていくという取組をしていただいていると思っている。なお、学力が十分身についていないという子どもたちについては、家庭条件等の原因があって、対処法を特定せずに、地域との連携等が学校の命題であるので、課題の大きなところに活用していただくために市で判断し配置していただいている。その趣旨に沿った活用をしていただいていると考えている。

《要望》 雑賀委員
   今お答えになった数字を聞かせていただくと、教育委員会として努力されているが、思うほど状況は変わっていないような気がする。副申書の問題を中心にして大きく新聞報道されているので、同和に関わる歪みはこの際正していただきたい。

パンフ「ふるさとを誇りに」

《質問》 雑賀委員
   本会議で予告した「ふるさとをほこりに」というパンフレットの問題であるが、どうしてこんなものを作ったのかという気がする。中身について議論しているとあまりにも時間がかかるので、そのことだけ申し上げておく。教育長からこのパンフレットは現場から要望があったと答弁いただいたが、どんな形で現場から要望があったのか。

《答弁》 教育長
   これについては、担当課の方からこういう形で要望があったと聞きお答えしたので、具体的なことは担当課の方からお答え申し上げたい。

《答弁》 生涯学習課長
   私どもは、保護者学級という形で市町村教育委員会を通じ小学校等において人権教育の学習機会を設けている。そういったなかで、様々な人権課題、人権問題について学習機会があるが、同和問題関係の学習をしているという内容がここ最近は20%〜30%ぐらいの割合となっている。市町村が学習内容を計画する時に、同和問題についてどのように教えたらいいのか、教材や資料はどのようなものがよいかというような相談を受ける。また、それ以外に市町村では人権教育の学習機会等を持っていただいているが、同和問題の学習を進めるに際して、教え方、教材について県の方で何か考えてもらえないだろうかというような要望を受けた。市町村の社会教育関係の担当者を集め、人権教育を進めるにあたっての研修会を行っているが、その中の意見交換でも要望が出ている。また、市町村教育委員会を訪問し人権教育の推進状況を把握しているなかでも聞かせていただいた。あるいはいろんな計画をした。進めていく際に、直接担当に相談の電話が入ったりしており、そういうことが数年来あったので、19年度にそういう資料を作った。

《質問》 雑賀委員
   もしもそういう要望があったとしても、パンフレットを見たときにこれはどうだろうかと思ったのではないかと考える。パンフレットの執筆の中心となった笠原秀己という方はどんな方か。

《答弁》 生涯学習課長
   このパンフレットの最後にも書いてある作成協力者であるが、人権教育を進めるうえでのファシリデーターであり、訳すと参加体験型学習における進行役である。そういった進行役をどう育てていくのかという集まりである「じんけん楽習塾」が大阪府八尾市にあり、そこで19年7月まで中心的にかかわり、各地で人権学習のファシリテーターをどう育てるかということの実践を積んでこられた方である。本県教育委員会では平成16年度から人権学習に際してのファシリデーターの養成に努めており、その方にファシリデーター養成講座の講師や研修会の講師としてお世話になってきた。協力者ということで原案を作っていただき、最終的に生涯学習課が作成したものである。

パンフレット執筆適任者は

《質問》 雑賀委員
   2006年8月に八尾市で事件があり、丸尾勇という人物が公共工事をめぐる恐喝で逮捕された。その人物は元暴力団員で人権団体という2つの顔を持っていると報道されている。その当時、八尾市はその人物が係わるいくつかの団体に3,100万円の委託事業をしていたと言われている。その1つが八尾市の人権協会という団体である。人権協会の副会長がその人物であり、事務局長でその中心となっていたのが、この笠原秀己という人物である。そういった事件の関係で人権協会の事務局長を辞めさせられている。そういう経歴についてはご存知か。

《答弁》 生涯学習課長
   今、委員がご指摘になった事実については、すべて把握していない。一部は把握している。

《質問》 雑貿委員
   そういう渦中にある人物であるということを知らなかったのは、調査が不十分であるように思う。今から言ってどうなる問題でもないが、人権教育のパンフレットを作るなら和歌山にも人材はいくらでもいる。和歌山の同和教育や人権教育の到達点をちゃんと知っている、和歌山の皆さんにとってどんなものが求められているのかをよく知っている方がたくさんおられる。例えば、最近まで和歌山大学におられた梅田修先生は、和歌山県内のあちこちで実態調査に参加し、今の和歌山の同和問題の解決の程度はどうなのかということをご自分で調査もされている。そういう先生が大勢いるのに、こういう経歴の方に依頼し、パンフレットの中身も使う人にこれはどうかと言われるようなものを作っている。特におっしゃることがあればお聞きするが。

《質問》 吉井委員
   今委員が言われた問題は重要であると思う。笠原という人物が事件に係わったかのような発言であるが、この人に対しての人権問題を含んでいる。私もこのパンフレットを何度も読んだが、そんなに問題があるとは思わない。犯罪者が作ったというのであれば問題であるが、今回は全く問題はない。何度読んでもどこがおかしいのか分からない。そういうことを含め、この間題は大事であるから、疑惑がある人あるいは問題がある人が作ったのかどうか、教育長に明確に答えてもらいたい。

《答弁》 教育長
   この件について、担当課をはじめ庁内でいろいろ協議を行った。その結果、丸尾氏の事件についても報告を受けている。この方は恐喝事件で逮捕されており、その事件に関して八尾市人権協会そのものが責めを負う立場でなかったと聞いている。たまたまそこの事務局長をされていたということであるが、平成19年8月に辞めている。これはその組織そのものが新しく模様替えをしたことによるもので、笠原氏自身がその責めを負う立場にはなかったということで報告を受けている。いろいろご心配の向きはあろうかと思うが、この人の登用について、事件との関係で不適切であったとは考えていない。また、パンフレットについては、いろいろ議論したが、ここに記載している様々な内容は、確かに詩は古い時代のものだが、具体的な記載の内容については、中学校の教科書に記載されている内容で構成されており、一般的な宣伝の資料として使うということではなくて、PTA等で同和問題について勉強する時の資料として作られたもので適切なものであると判断している。

《質問》 雑賀委員
   私としては、和歌山県内で和歌山のことをよく知っている人がおられるから、そういう人をもっと登用した方がいいのではないかということで申し上げた。

雑賀委員
   私は、このパンフレットについては問題があると思っている。同時に、これが和歌山で行ってきたものとかなり違った大阪の同和教育が反映されていると思っている。そういうことが、問題になった人権協会と関連するのではないかということを申し上げ、和歌山でもどういうことをやってきたのかよく分かる方がいらっしゃるのだから、そういう方に頼んだ方が良かったのではないかと申し上げている。

《ここで、笠原氏について指摘したことで吉井議員とのやりとりあり。省略》

定時制・通信制の教科書・補食有料化

《質問》 雑賀議員
   もう1つは、新行革プランの中に定通制の教科書や補食の有料化の問題が出ている。これは、次の議会にまわる話だが、この間題についての教育委員会の考え方のスタンスはどうか。

《答弁》 総務課長
   ご質問の教科書の無償給与、それから補食給食に係ることについて、この事業の目的は勤労学生の経済的負担を軽減することにより、修学を奨励し教育の機会均等を図ることにある。この助成制度は重要なものであることは十分認識している。しかしながら、社会情勢の変遷や定時制・通信制課程の入学生徒の変化・多様化という状況から、制度の一定の見直しを行うことはやむを得ないと考えている。なお、見直しの内容については、現在行財政改革本部と協議を重ねているところである。

高校に通うとアルバイト料が下がる

《質問》 雑賀委員
   教育委員会も厳しい状況のなか、できるだけ守ろうとがんばってくれている。現場で聞いた話だが、通信制については、授業がないため教科書だけでは勉強できないので、教科書以外に学習書というのが必要とのことである。教科書だとだいたい5,700円だが、これに学習書を合わせると18,000円程度になる。これが削られたら大変だということであった。それから、現場でどんな苦労をしているかというと、通信制の1単位あたりの授業料が170円から200円に上がったが、それ以外に学校で使うお金270円と合わせて440円集めていた。ところが、授業料が30円上がったので、270円を250円にして合計450円として負担増を10円にしたということである。わずかな額であっても大変なので、教育委員会は制度を残せるようがんばってほしい。
   そのなかで知ったことだが、教科書の無償給与を受けるためには、基本的には雇用証明書を出して働いてるといことを証明しなければいけないが、通信制、定時制に通っているから雇用の証明を出してもらいたいと言うと、高校生だとわかってパート賃金が下げられてしまう。私は、今までそんなことは全く気が付かなかった。高校生いくら、一般いくらとパート賃金は掲示されているが、同じ仕事をしているのに高校生だとわかると賃金が下がってしまう。だから雇用証明書をもらうわけにいかない。仕方がないから求職中とすることで教科書を無償にしてもらうとのことである。社会が働きながら勉強している若者を励ますべきであるのに、高校生だからと賃金を下げるのは、働く青年が勉強するということを社会は励ましていない。教育委員会の権限でどうこうできるものではないが、子どもを抱える、学校を抱える教育委員会として、働く青年がうちの学校に来ることを社会の側で激励してほしいと、そういうメッセージを発するべきではないか。教育長の考えはいかがか。

《答弁》 教育長
   私も定時制の生徒をみてきたので、賃金に差があることはかわいそうだと感じる。労働関係の部局に聞いてみると、最低賃金を守っているのであれば当局から企業に注文をつけるのは非常に難しいとのことである。例えば一般700円に対して高校生680円といった差があり、それによって生活を支えていく方と高校生のアルバイトとは多少格差をつけているということは、一般的な常識としてはそうだろうなと思うが、定時制、通信制の生徒については、正規雇用を申し込んでもなかなか職がなく、アルバイトに頼らなければならないというなかで働きながら学んでいるのだから、経済団体等との話し合いの機会があれば、意見を出してみようかと思う。なお、雇用証明がなくても、ハローワークに求職しているというような学校長の証明で、無償給与が受けられるよう配慮はしている。

《要望》 雑賀委員
   現実にはそういう配慮をしていただいている。教育委員会が社会に対してアピールしていくことは、働きながら定時制、通信制に学ぶ生徒が自分たちのことをわかってくれているなと励ましのメッセージになる。今回、青陵、陵雲からいろいろと話を聞くなかで、小さいながらも体育館を新築するとのことでありがたい。学校の要望をしっかり聞いてやってほしい。同時に、運動場の問題で、日曜日は通信制が優先的に使えるようになっているが、桐蔭高校の生徒がたまたまクラブをやっていたら、通信制の子どもたちは何も言わずに戻ってくるので、先生がまた申し入れに行くようだが、通信制の生徒は自分たちに優先権があっても言うことができない。そういう心境を考えると何とかしてやりたいと思う。その点、そういう生徒たちに寄りそって、教育委員会もがんばっていただきたい。

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参考のため紹介

《要望》 吉井委員
   歴史教育のなかでいろいろなことがあるが、一番大事なのは自分の地域に誇りを持つことであり、ひいては自分の国を愛する態度を育てる事につながる。自信と誇りを持つことが一番大事である。事実は事実として教えていくのが大事であり、反省すべきところは反省していかなくてはならないが、自分の国の悪いことばかり教えていては自信や誇りを持つことはできない。関連して、同和問題のパンフレットのことであるが、私は何回も読んだ。そんなに悪いところはないと思うが、ただ、和歌山県でどういう差別事件があったかということが欠けていると思う。和歌山県で特異な差別事件があったと思う。そんな事件を教える必要はないのではないかという意見もあるが、私は教えなければならないと思う。こういう事件があり、こういう対処をしたということは歴史的にそういう事実があったのであるから教えるべきである。例えば、私が住む町でも同和問題は解決したとして解決宣言をしている。ところが、地区に住んでいる人は差別がなくなって問題が解決したと思っている人は誰もいないと思う。涙を流しながら笑って解決したということを高らかに宣言して、これから立ち上がろうという思いでその宣言に賛成したと思う。何も差別は終わっていない。差別が終わったということを一つの輝きとして受けとめ努力している状態である。歴史を含め和歌山県にこういう事件があり、全国にこんな事件があったと いうことを差別がなくなるまで教育としてやってもらいたい、啓発をやってもらいたいと要望しておく。


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