2008年12月県議会 雑賀 光夫 一般質問

2008年12月10日


1.「同和行政の終結」について
(1)高校入試における「副申書」について
(2)いまなおのこる旧同和子ども会の突出し
   た扱いについて

  ・バランスを欠いた補助金制度
  ・補助金申請の手続きは正当か
(3)学校に配られた生涯学習のための「資料」
   について


2.「新行財政改革推進プラン」について
(1)「老人医療費補助」削減などここまでひどいことをする必要があるのか
(2)旧同和関係予算(旧同和子ども会、和歌山の部落史など)が手付かずというのは
   バランスを欠くのではないか


3.和歌山県プレジャーボートの係留保管の適正化に関する条例に
  もとづくとりくみの進捗と津波防災の観点からの施策について


4.すべての主権者が選挙権を行使できるように
(1)投票所が遠すぎる問題、郵便投票の手続きの条件緩和、介護タクシーの利用につ
   いて

(2)投票所のバリアフリー化、椅子にすわってでも投票できる記載台の設置について

5.旧美里町の裏金問題について
(1)「裏金」の性格について
(2)住民の信頼にこたえる警察の徹底捜査について





1.「同和行政の終結」について

《質問》 雑賀光夫 県議
   議長のお許しを得ましたので、質問に入らせていただきます。

   第1の柱は、同和行政の終結についてであります。
 前回の議会で「プラスパフーズ協業組合」への融資の焦げ付きのことが大きな問題になりました。それは、同和対策事業として24億円にものぼる融資をしたが、すぐに倒産して回収不能になった問題でした。
 私は、昨年の12月の決算審査承認案件に反対する討論で「私が追及したような、同和子ども会のようなことを放置しているわけですから、この問題を、『過去の負の遺産』ということで見過ごすことはでません。」と申し上げました。
 そこで本日は、ゆがんだ同和行政が今なお続いている問題についてお伺いしたいと思います。

 その前に、同和行政とは何かということについて申し上げておきましょう。
 同和行政がはじまったころ、同和地区の生活は劣悪であり、同和地区には切実な生活課題・教育課題が山積していました。そこで「同対審答申」「特別措置法」による同和対策事業がはじまったのです。
 同和対策事業は、そもそものはじめから矛盾をもっていました。特別対策をしようとすれば、日本国民の中にあってはならない旧身分の線引きをせざるを得ないという矛盾です。それでも、同和地区の生活実態が劣悪であり、部落差別が厳然として存在するという状況の中では、「線引きしてでも特別対策をする」ということも積極的意義をもち国民の合意を得ることができたのです。
 しかし、同和対策事業と社会の進歩の中で、同和地区をめぐる状況が大きく変わりました。いつまでも「線引き・特別対策」を続けることは、同和地区内外の垣根をつくるという弊害の方が大きいという段階に来たわけです。2002年で特別措置は終わりました。旧身分による線引きは、ゆるされません。
 ところが、線引きにもとづく行政施策が今なお残されているということを指摘しなくてはなりません。

(1)高校入試における「副申書」について

 第一は、高校入試における「副申書」の問題です。マスコミ関係者が気づき、昨日の夕刊、今朝の朝刊にすでに報道されています。
 高校入試では、学力試験とともに中学校の成績が参考資料として高校に送られます。それを「調査書」といいます。その調査書にそえて「副中書」というものがつけられる場合があります。学力を中心にしたデーターだけでは現せない参考資料です。不登校であったとか、農業後継者であるとかを記載することは意味のあることです。
 ここに、県教育委員会が各高校長に、「副申書」の内容についての報告を求めたものがあります。情報公開請求で手に入ったものです。これは和歌山市の高校のものです。生徒名はなく番号になっている。出身中学校は黒塗りになっています。「副申書の記載内容」というところに「地区出身」という文字がいくつかならんでいます。実際の調査書にはもっと丁寧に書かれていたのでしょうが、「旧同和地区出身だから配慮ねがいたい」ということだと校長は受け止め「地区出身」と書いている。
 旧同和地区であろうとなかろうと、生活困窮家庭もあれば、病気に苦しむ子どももいる。個々の子どもがかかえる困難な問題が書かれていたのならわかります。ところが「旧同和地区出身」ということが中学校から高校に報告されている。
 ここには二つの問題があります。第一は、なくなったはずの旧身分の掘り起しがおこなわれ、旧同和地区出身生徒というレッテルが貼られているという問題です。第二は、高校側がどう受け止めるにせよ、中学校側が「旧同和地区出身」と書くことが高校入試合否の配慮事項になっていると思って、そのレッテル貼りをしているということです。高校側が配慮事項にしているとすれば、さらに問題です。
 教育長にお伺いいたします。公文書に「この子は旧同和地区出身である」と記載することが許されるのか、そのことが高校入試の合否判定の参考になることがあるのでしょうか。


《答弁者》 教育長
   高校入試における「副申書」につきましては、調査書に記載されていない事項について、志願者に特別の事情のある場合、その状態を中学校長から高等学校長に説明するために提出されるものでございます。
   障害の特性や教育的環境など生徒本人に帰さない理由により能力が十分に発揮されていないというふうに考えられる特別な事情がある場合、中学校長が調査書の内容を補足する必要があると判断すれば、志望の理由や状況等を記入して高等学校長に提出することができることとしてございます。
   この制度は、生徒一人ひとりの実情をより的確に把握し、それぞれの個性を生かした進路希望の実現を図る上で必要なものであり、中学校と高等学校間の信頼に基づき適切に運用されていると考えてございます。
   副申書は、判定に係る参考資料ではありますが、その記載内容だけで合否を決定するものではございません。
   しかし、議員ご指摘のレッテル貼りと受け取られるような報告は、こうした趣旨に沿うものではございませんので、速やかに是正していかなければならないと考えております。


《再質問》 雑賀光夫 県議
   生徒の体が弱くて学校を休みがちだったとします。「持てる力を伸ばしきれなかった」ということで、体力もついてきたから高校で伸ばしてやってほしい、こういうことを副申書につけるとします。それは分かりますね、あっていいことだと。しかし、その中にどういう表現か分かりませんが、「この子は同和地区に育ち」というようなことをつける意味はまったく分かりません。それこそ人権侵害問題でしょう。親の立場としても、子ども自身でも、そんなレッテルは貼られたくないと思います。
 そこで、ご答弁の「レッテル張りと受け取られる報告」というのは、私がここに示した高校の校長が県教委にあげた、この報告の書き方が悪いと言われたのだと思うんですが、私が問題にしているのはそうではありません。中学校から高校へ公文書で書き方はどうであれ、旧同和地区の子どもだということが分かるような書類を送ることに問題がある、こう考えるわけです。
 「報告の仕方が悪い」と言われるのなら、他の高校の報告も見てみましょう。
 和歌山市の別の普通高校では、「地域を取りまく環境が不十分なため、持っている能力が十分伸ばしきれていない」、同和地区という言葉はないんですが、これは「地区出身」の言い換えでしょう。あるいは、「地域を取りまく状況」と報告した学校があります。その中でひとつびっくりしたのが、こんな記述があるんです。有田地方のある高校から、「地区子ども会会員」という報告があがっている。同和行政で「窓口一本化」というものが問題になったことがあります。よその県ではすごく問題になったんですが、和歌山ではそれほど多くはないと思っているのですが。それは和歌山の民主的な解放運動があったわけで、それでもいろんな問題があるとは思います。実はかつて、この地域でこの子ども会の役員が中学校を回って、この副申書を書いてほしいというふうに言ってきたという話を聞いたことがあるんですが、私は「ホンマかいな」と思っておりました。ところがこの副申書を見たら「子ども会会員」という言葉が書かれている。これは「子ども会会員」という、ある子ども会に所属をしているから優遇してほしいという言い方でしょ。こういうことまで出てくるわけです。こういうことも含めて、その高校から県教育委員会が受けた報告の問題ではなく、中学校から高校に送る副申書の中身が問題であるということを申し上げているのですが、教育長の再答弁を求めたいと思います。


《再答弁者》 教育長
   この点につきましては、中学校から「副申書」を提出される場合は、この子どもたちがおかれている状況の中で、特別な事情があるということで中学校長が判断をした場合に、その主体性を持って高等学校に提出をする。高等学校のほうはその現実や様々な思いを受け止めて、特別な事情があると判断をした場合に、高等学校としては公平な判定会議の審議を経て、学校長が決定するものというふうに考えております。
   なお、この度の件に関しまして、当該高等学校の校長のほうが、直接的ではない表現をこのように表記していたということを反省していると述べておりますように、実際、昨夜私どもが改めて確認した範囲では、「副申書」にそういった直接的な言葉で記載しているというケースはございませんでした。
   この「副申書」に関しまして、それ自体が、やはりその差別につながるような、今議員がおっしゃった、その「線引き」あるいは「レッテル貼り」につながるような表現で記載されるというようなことは適切ではないというふうに考えてございますので、このことについて更に徹底を図ってまいりたいと考えます。


《要望》 雑賀光夫 県議
   今回で一番の問題は、中学校から高校に送られた「副申書」の問題です。県の教育委員会の「入学者選抜実施要項」には問題はないと思っています。また、「副申書」の内容を要約したことが問題ではないと思います。問題は「副申書」そのものにはどういう書き方をされていたにせよ、同和地区出身であることが「入学者選抜」の特別の事情であるかのような印象を与えるような記述があったとしたら、それが問題だと思っているわけです。
 教育委員会、特に担当する県立学校課の皆さんは、こういう報告は高校からとらなくても別にかまわなかったわけです。しかし、とったわけです。「こんな報告をとらなければよかった。とらなければ、こんなことを追求されなくてもよかったのに」と思っているかもしれませんが、そう思ってはいけないと思います。やはりとったことで問題がはっきりしたのです。ここに校長さんが書いたことそのものが「副申書」に書かれている内容とイコールではないにしても、それに近いことが「副申書」に書かれているということが分かったわけですから、来年からそんなものをやめて問題を出ないようにしようかと、こう思ってはいけません。その調査をしたことを問題にしているわけではありません。その調査によって明らかになってきた「副申書」の問題、これは聞いた皆さんから「今でもそんなことがあったのか」と昨日も何人かの方から聞かれましたが、そういうことがあったことが分かったわけですから、それは改め是正し、やめたらいいわけです。もちろん、本来は法期限が終わった2002年できちっとしておくべきで遅かったというお叱りは受けるでしょうが、しかし今大事なことはそういうことをやめることだと思っています。そういう点で今回の問題は、県政のいろいろな分野に残っている線引き行政を終結させる、ひとつのきっかけになればいいなと思っています。
 以上、これは要望事項です。


(2)いまなおのこる旧同和子ども会の突出した扱いについて
   ・バランスを欠いた補助金制度

《質問》 雑賀光夫 県議
 第二は、旧同和地区の子供会の突出した実態の問題です。
 「旧同和子ども会」を引き継いだ子ども会の問題について、昨年の9月県議会でとりあげました。
 同じ子ども会でありながら、補助金が12万円の子ども会と60万円の子ども会がある。その半分を県が補助するしくみになっています。そして、12万円の補助金しかもらえない子ども会は、ローテーションを組んで何年かに1回しか補助金をもらえないという実態がある。
 さらに60万円の補助金をもらえる子ども会・ほとんどがあるいはすべてが旧同和地区の子ども会なのですが、ある子ども会の場合、ひとつの小学校区に13単位もの子ども会があることになっていて、その小学校の児童生徒数をこえる人数の子どもが入っていることになっている。子ども会の運営予算が780万円。小学校の予算を上回っている。さらに実績報告も不自然なことを指摘しました。環境生活部長の答弁は、全く納得できないものでした。私は「今日は知事に質問せず問題を聞いていただきましたので、調査してほしい」と要望しておきました。その年の12月に共産党県議団と知事が懇談したおり、知事から旧同和子ども会の問題について、「雑賀さんのお話でよくわかりました」と言われたと記憶しております。ところが今年度になっても県の施策として全く改善がありません。和歌山市が子ども会1単位につける補助金を最高額の60万円から50万円に引き下げたので、それに連動して県の補助金も減らされているのですが、県の制度枠組みには全く手がつけられていません。
 知事にお伺いしますが、私が問題にする一部子ども会への補助金が一般子ども会・子どもクラブとバランスを欠いているという問題などについて、昨年の質問も含めてどう受け止められ、どうお考えでしょうか。


《答弁者》 知事
   青少年を取り巻く環境が悪化しているなか、子ども集団活動は、希薄な人間関係、あるいは生活習慣の乱れ、直接体験の不足等を解消し、青少年の健全な育成を図るうえで大変重要なことであると考えております。
   昨日の議会においても、藤本議員から青少年活動についてどう思うかというご質問がありましたが、それについては、高く評価しているんだと申し上げたと思いますが、同じことがこの活動についても言えるんじゃないかと思います。
   この補助金は、組織的・継続的な子ども達の集団活動を通じて、子どもの健やかな育成を推進している市町村に対して、市町村が交付した額の2分の1を補助するものです。
   これは、例えば、制度の問題として、旧同和地区のみに固定的に配分してしまうということになっているのであれば、雑賀議員がおっしゃるような意味はわかるということになり、制度を公平に直すということになります。
   しかしながら、現在の制度は、その活動日数や内容の充実度に応じ、申請に応じて交付するということになっていますので、活発に活動し効果をあげている子ども集団に対して、市町村がそれを評価して交付する時に、申請に応じて県もその半分の額を交付しているものでありますので、活動水準に応じて出しているということは、決して制度としてはおかしくないと考えています。
   他の例で申し上げますと、文化団体に対して、県は2年ほど前までは、一律になにがしかの活動費を支給しておりました。しかしながら、それを全廃いたしまして、活動をされている団体に対して、その活動の補助をしようということに切り替えました。
   そういう意味では活動水準の高いグループが、市町村を通じて申請してこられた結果、それぞれの地元にどれくらいの額が交付されているのかは、あくまで結果論であって、制度としては、私はよくできた制度ではないかと考えています。


《再質問》 雑賀光夫 県議
   「同和地区だからといって特別のことをしているのではない、活動が盛んな子ども会に手厚く支援をしている」という趣旨のご答弁だったと思います。
 しかしそれは実態を掴んでいないと思います。旧同和地区の場合は児童館があり、子ども会の指導員がいるわけです。和歌山市では学校の先生が勉強を教えに行き、そのために本部である学校での仕事は極度に軽減された教員が配置されている。これは学校の教員配置の面で、あるいはその運用の面で旧同和行政を引き継いだゆがみとして、前にも指摘したことがあります。そういうところに活動量が多いという書類報告にもとづいて、年間780万円もの補助金が出る。あまりにもバランスを欠くのではないか。知事はそういう実態を本当に把握しておられるのでしょうか。一度調査してみられたらいかがかと思います。私はこういうたいへん小さい問題で、今この場で知事が隅々まで周知しておられるとは思っていません。当たり前です。けれどもこの同和行政の問題というのは、やはりトップの判断がないと進まないのです。だからあえてこういう小さい問題も知事に質問するわけでして、今知らなくても私は決して怠慢だという気はありませんが、もう少し実態を調べてみる気はないかどうか、その点について再質問いたします。


《再答弁者》 知事
   昨年、共産党県議団からの要望の際、「差別はいけないという思いを原点にして、非合理なことはしないように取り組んでいきたい」と回答したと記憶しております。
   子ども会の問題は、先ほども答弁しましたように、制度としては非合理とは思っていません。
   しかしながら、私の一般的な態度といたしまして、聞く耳は持たないという冷たい権威主義者にならないように努めなければということをモットーにしていますので、いつもできるだけ耳を高くしていろんな人の話を聞いていこう、そしてまた、考えていこうということをやっていきたいと思います。
   一般論として言いますと、すべての制度は検証と見直しをして行かなくてはいけないものですから、そのように今後ともよく聞いていきたいと思います。


   ・補助金申請の手続きは正当か

《質問》 雑賀光夫 県議
 次に、環境生活部長にお伺いいたします。私は、こうした子ども会関係者を訪問して、「子ども会への加入確認や会費の徴収はどうしているのですか」とお伺いしたことがあります。ある子ども会の担当者からは「そうしたことはしていません」との返事が返ってきました。
 本当に子ども会は、子ども会への加入を確認して会費を徴収しているのか、先に指摘した実績報告の不十分さもふくめて、立ち入り調査をされてはどうかと考えますが、いかがでしょうか。


《答弁者》 環境生活部長
   各子ども集団への補助につきましては、市町村に対する補助であり、市町村から提出された申請書等で事業内容や経費を碓認のうえ適否を判断しております。
   議員ご指摘の点につきましては、今後も、市町村に対し、適切に指導してまいりたいと考えております。


《再質問》 雑賀光夫 県議
   和歌山市の申請にもとづいて、あるいは和歌山市を指導するというふうにお答えになっているわけですが、県が補助金を出す場合にはその補助金の行き先まで調査する権限があると思うんです。国が出した補助金で、県の使い方がおかしかったら国のほうで調査することができる。これが筋道ですから、当然これは県として調査する権限があるのではないのかと。まず、あるのかないのかという問題と、そしてその権限を発揮して調査することを考えるつもりはあるのかないのかと、この点について再質問であります。
 また、この席には代表監査委員もいらっしゃいますから、監査の際もひとつこういう点に十分留意をして監査をしていただきたいと要望しておきます。


《再答弁者》 環境生活部長
   まず、調査権限があるかどうかについてでございますが、県の補助金交付規則に立入検査権は規定しております。
   次に、直接調査を行う気があるかどうかについてでございますが、当該補助金にかかわらず、補助金の適正な執行を碓保していくことは当然であると考えます。


(3)学校に配られた生涯学習のための「資料」について

《質問》 雑賀光夫 県議
 第三に、県教育委員会が学校現場にお配りになった、人権教育学習パンフレット「ふるさとをほこりに」についてお伺いいたします。
 小学校に児童数のきれいなパンフレットが送りつけられてきました。1ページめくってみると、「ふるさと」と題した詩が載せられています。お手元にお配りしているので、ご覧下さい。
      ふるさと
   “ふるさとをかくす”ことを
    父は
    けもののような鋭さで覚えた
       ふるさとをあばかれ
       縊死した友がいた
       ふるさとを告白し
       許婚者に去られた友がいた
と書き出されています。それ自体は、有名な詩なのですが、40数年前に作られた詩で、今日こうして紹介されると、かなりショッキングな強調です。今日の状況には合いません。
 以下、お父さん、お母さんが同和問題について子どもに話をすることになっています。「結婚・就職差別があった」と過去形になっていますが、今も差別が生きていることを強調しています。
 今の時代に、部落差別が続いているということを一面的に強調することは、かえって誤解をまねくのではないか。
 1995年に和歌山市でおこなわれた実態調査でも、20代の若い人たちで95%は旧同和地区の内外の結婚になっていたのです。100%になることはないわけですから、基本的には垣根はなくなっているのです。
 教育長にお伺いいたします。
 第一に、この資料はどれだけの冊数を作成して、費用はどれだけかかったのか、どういう使い方を想定されたのかを明らかにしていただきたい。
 第二に、その内容は、学校現場でも戸惑いを生んでいます。そのことをご存知でしょうか。
 適切な内容だとお考えなのかお聞かせ下さい。


《答弁者》 教育長
   人権教育学習パンフレットにつきましては、県内の全公立小学校及び県立特別支援学校で実施しております保護者学級や市町村教育委員会が実施する人権教育に関する学習会等で活用できるよう、平成17年度から、『子どもの心によりそって〜大人のための子どもの権利条約〜』や『違いを豊かさに』、『ふるさとをほこりに』というふうに順次、作成をしてまいりました。
   このうち、今日配布されました『ふるさとをほこりに』につきましては、PTAの学習会等で同和問題について学ぶ際の資料として作成しておりまして、部数は、55,000部、費用は981,750円となっております。
   内容につきましては、県内の小・中学校で使用されております教科書の記述を基本に作成しておりまして、保護者が、学校で学んだ子どもから尋ねられたときに、正しく受け応えができるようにするとともに、学習会に参加した人が、同和問題に出会ったときに正しく受け止め、判断し、行動できることをねらいとしておりまして、人権教育の学習教材の一つとして適切であると考えてございます。
   なお、県教育委員会では、市町村教育委員会等から、議員ご質問のような学校現場における状況は伺っておりませんが、この作成の主旨を十分に理解したうえで、このパンフレットが活用されるよう努めてまいりたいと存じます。
   以上でございます。


《再質問》 雑賀光夫 県議
   再質問ですが、「パンフレット」の中身については時間がかかりますから改めて文教委員会で論議もしたいと思っています。特に、こういう中身のことがどうして書かれることになったのか。大阪の方に依頼をしたようですが、いったいこの大阪の方がどういう経緯をお持ちの方かということも含めて、私も調べたこともありますので文教委員会で論議をしたいと思っています。
 ただ、ここで答えてほしいことが一つあります。それは先週、教育委員会の生涯学習課から市町村教育委員会を通じて、「ふるさと」パンフレットの利用状況についての調査が入ったようです。文書ではなく口頭で問い合わせたようです。市町村教育委員会は校長さんに「どうなっていますか」というふうに、また電話をした。そうすると校長さん達は、「そんな問い合わせがあったら、おろさないと悪いのかなあ」と困っておられるという話を聞きました。私としては困るわけです。「雑賀がこんな質問をするから、この忙しいときに」と、現場の先生方から私が叱られかねない、大変困った立場におかれています。
 しかし、この「パンフレット」が利用されることを担当課が期待しているのは「保護者学級」というものです。その「保護者学級」というものはそもそも、どんな内容で実施するかは各学校に任されていると思います。だから、使われていないからといって「パンフレット」の押し付けをしてもらっては困ります。
 ここで教育長にはっきりしていただきたいのは、「保護者学級」の実施について学校の自主性を守る、学校への押し付けをしないということをこの場所で言明していただきたい。


《再答弁者》 教育長
   これは同和問題、同和教育についての研修会等で使える資料が欲しいという市町村等からの要請を受けて、作成したものでございまして、強制をする性格のものではないというふうに考えてございます。


2.「新行財政改革推進プラン」について
(1)「老人医療費補助」削減などここまでひどいことをする必要があるのか

《質問》 雑賀光夫 県議
 第2の柱として、「新行財政改革推進プラン」について、私は先の同和行政の温存との対比で問題を提起したいと思います。
 第一点、このたびの「推進プラン事務局案」というものは、私たちから見て絶対に削ってはならない、県民の命綱のような施策まで削ろうとしていることであります。
 その一例として、老人医療補助の打ち切りの問題は、これまできびしい所得制限で対象者が少なくなった。言いかえれば、本当に苦しい、最小限度の方だけが補助対象になっているわけです。それを切り捨てる。信じられないことです。
 どういうお考えで、こういうものにまで踏み込んだ「推進プラン」を提案されているのか、総務部長にお伺いいたします。


《答弁者》 総務部長
   先般、公表させていただきました「新行財政改革推進プランの実施について」は、今年度取り組んでいる県有施設・外郭団体・補助金の見直しについて、広く皆様方のご意見を承るということを目的として、「行革本部事務局案」として公表させて頂いたものでございます。
   ご指摘の「県単独老人医療費助成制度」をはじめとする「県単独医療費助成制度」につきましては、4つの制度を合わせて、平成20年度当初予算で、29億円余の多額に上っておりまして、厳しい県財政の下で、将来にわたって安定的な運営が困難となっていることから、廃止もしくは一部自己負担導入などの制度の見直しをお願いできないかとの提案をさせて頂いたところであります。
   今後、議員の皆様をはじめ、市町村長、あるいは県民の皆様から頂いた様々なご意見、ご要望を参考にさせて頂きながら、また、県財政の状況も勘案しつつ、予算編成過程や行財政改革推進本部での議論を経て、見直しの全体像を決定してまいりたいと考えております。


(2)旧同和関係予算(旧同和子ども会、和歌山の部落史など)が手付かずという
   のはバランスを欠くのではないか


《質問》 雑賀光夫 県議
 第二点、このプランには私がこれまで「これこそが無駄な行政だ」と指摘した、ゆがんだ同和行政にかかわる部分が全く含まれていないことであります。
   先に触れた子ども会補助金がそのひとつであります。教育委員会で作成した同和啓発のパンフレットもそうです。もうひとつ例を挙げれば、私が何回か問題にした「和歌山の部落史」という事業があります。10年かけて1億2,000万円かけるものです。私は「部落史」という切り口で和歌山の歴史をまとめることが適当かどうかなどなど、さまざまな観点から批判してきました。ここまで県民の生活に切り込んだ「行財政改革」を提案するのに、私が「旧同和対策」とみなしている事業は見直しの対象にもあがらないのは、きわめてバランスを欠くと考えるものですが。「新行革推進プラン」事務局案をおまとめになった立場から、総務部長はどうお考えでしょうか。


《答弁者》 総務部長
   今回、見直しの重点として取り組んでおります「補助金」につきましては、公表させて頂いた事務局案で例示させて頂いたもののみならず、平成20年度当初予算で計上いたしましたすべての補助金460件を対象としているところでございます。
   また、「補助金」以外の全ての「事務事業」につきましても、見直し対象から除外しているというわけではありませんで、例年実施している「事務事業評価」や「予算編成過程」等を通じ、聖域を設けずに、見直しに向けた検討を行ってまいりたいと考えております。


3.和歌山県プレジャーボートの係留保管の適正化に関する条例に
  もとづくとりくみの進捗と津波防災の観点からの施策について


《質問》 雑賀光夫 県議
 第3の柱として、プレジャーボートの係留保管の適正化にかかわってお伺いいたします。
 和歌山県プレジャーボートの係留保管の適正化に関する条例が制定され、住民に対する説明会がおこなわれています。私も海南市内の2箇所での説明会に参加いたしました。
 ところで、このプレジャーボート対策について、津波防災の観点がどうなのかという心配の声があがっています。私は、本年2月県議会で「係留地に指定する場合は、津波が発生した際、船舶が凶器にならないよう、基本的には住宅密集地を避けること、しっかりした係留施設、付近の堤防のかさ上げなど津波から守るなど」強調し、当時の県土整備部長からは「船舶が被害拡大の原因とならないよう取り組んでまいります。」と答弁をいただいています。
 ここで県士整備部長にお伺いしますが、まず、条例の施行後、県はどのようなとりくみを行ってきたのか。また海南市の場合、大型水門の計画はありますが、その完成まで相当の年数を要しますが、今後、係留施設を設置する場合は、津波防災対策としてどのような対策を行っていくのでしょうか。


《答弁者》 県土整備部長
   周辺状況を勘案したうえでの放置等禁止区域などの指定案やプレジャーボート収容計画案を作成いたしまして、地元説明会や和歌山県プレジャーボート等対策検討会を開催するなど、ご意見をいただきとりまとめを行ったところです。
   今後は、この対策を着実に進めてまいりたいと考えております。
   また、国土交通省が調査中の海南地区津波対策事業の早期着手完成を強く働きかけますとともに、プレジャーボートの適正な係留の確保や、必要に応じて流出防止の防護柵等設置の検討を行うなど、津波来襲時の二次被害防止に努めてまいりたいと考えております。


4.すべての主権者が選挙権を行使できるように
(1)投票所が遠すぎる問題、郵便投票の手続きの条件緩和、介護タクシーの利用
   について

(2)投票所のバリアフリー化、椅子にすわってでも投票できる記載台の設置につ
   いて


《質問》 雑賀光夫 県議
 第4の柱として、選挙という主権者の権利行使の保障についてであります。
 高齢化社会がすすんでいます。いろいろなお宅を訪問して、県政報告をしながらお話をお伺いすると、政治に対する怒りの声が噴出します。「選挙でその声を国政に届けなくてはなりませんね」と申し上げると、「足が痛いので投票によう行かん」とおっしゃる方が多いのです。
 選挙というのは、成人のすべての方が参加することを想定したものです。主権者として最も大切な権利行使を保障するための施策が必要です。
 第一に、投票所をできるだけ近くに設置すること、郵便投票の要件を緩和すること、介護タクシーが利用できるとのことですが、それを広く知らせることなど必要ではないかと考えます。
 第二は、投票所のバリアフリー化はもとより、足の悪いお年寄りが椅子に座って、あるいは車椅子で投票できる低い記載台を用意している投票所もあるようです。県内の投票所で実態はどうなっているのでしょうか。
 以上二点について選挙管理委員会委員長にお伺いします。


《答弁者》 選挙管理委員会委員長
   投票区の設置にあたっては、国からの通知に基づき、投票所までの距離あるいは地域の特性等を十分考慮し決定されるよう市町村の選挙管理委員会に助言しています。
   郵便投票を利用できる対象者につきましては、現行は介護保険の状態区分が要介護5の方に限られておりますが、一般的に一人での歩行が困難と思われる要介護4の方についても、郵便投票を利用できるよう、国に要望しているところです。
   また、投票所への送迎につきましては、要介護の方であれば、介護保険の通院等乗降介助サービスを利用することが可能と聞いております。
   選挙管理委員会といたしましては、市町村と連携しながら制度の周知を図り、投票総参加に向けた取り組みを進めて参ります。
   次に、投票所のバリアフリー化等についてでございますが、入口に段差がある投票所ではスロープを設置するほか、人的介助で対応しております。
   椅子に座って利用できる投票記載台については、昨年の参議院議員選挙においては投票所938カ所のうち525カ所で設置されております。
   また、未設置の投票所におきましても、事務机などを活用したり、事務従事者が介助したりすることで、記載をしていただける体制がとられています。
   選挙管理委員会といたしましては、市町村選挙管理委員会に対し、高齢者や身体障害者等の方々に配慮し、誰もが投票しやすい投票環境の向上について引き続き助言して参ります。


5.旧美里町の裏金問題について

《質問》 雑賀光夫 県議
   第5の柱は、旧美里町の「裏金疑惑」解明についてであります。
 6月県議会でも、旧美里町の「裏金」問題についてお伺いいたしました。そのころは、紀美野町ではいわゆる「100条調査委員会」による調査がすすめられ、県監察査察室としても調査にのりだしたばかりでした。
 このたびの問題は、総額2億8,000万円とも3億6,000万円ともいわれる「裏金」を、百貨店からの贈答、ゴルフ場の1万円の優待券、「かじか荘」の宿泊券のばらまきや宴会、段木元町長腹心の町会議員による養殖事業への補助金、工事発注や不動産購入など多岐にわたっていますが、最後に残った696万円は、段木氏の私宅の金庫に入っていることがはっきりしています。
   しかし「100条調査委員会」では、証拠書類は段木氏の指示で焼却されていたこと、段木氏などが「裁判での係争中」を理由にした証言拒否があって、今後の真相解明と責任追及は司法の場に移されることになりました。

 「裏金を町民にとりもどす会」が結成され、11月22日、紀美野町で70数人もの住民のみなさんが参加して「住民集会」が開催されました。この間題を司法の場を含めて徹底追及していこうと話し合われたわけでございます。
 この住民集会で、10月11日の読売新聞が、海南警察署が起訴を求めない方針だと報道したことについて、参加者からは、「どうなのか」という不信に近い声も出されました。
 こうした状況を踏まえて質問いたします。

(1)「裏金」の性格について

 第一 監察査察室の報告には、冒頭で「旧美里町(長)が収入役名義の歳計外資金(いわゆる『裏金』)を保有していたことが判明し」と書き出されています。いわゆる「裏金」が、段木元町長のポケットマネーではなく、議会にはかられていない不正常な資金ではあるが、町の収入役をふくめて管理していた資金であるとの認識が示されていると思います。このことは紀美野町議会の「特別調査委員会報告書」でも繰り返し明らかにされております。
 県監察査察室の調査は「裏金問題」の全面解明ではなく、県職員のかかわりに限定したものですが、その前提になる「裏金」の性格は、公金であり、県職員への接待は官官接待であると認識しておられると考えますが、いかがでしょうか。


《答弁者》 総務部長
   旧美里町のいわゆる「裏金」問題についてでございますが、議員お尋ねの「裏金」の性格につきましては、現在、司法の場において議論をされていますが、紀美野町は、旧美里町の裏金については、口座が全て収入役名義であること、収入役の公印が使用されていたことから、町に帰属すべきもの、即ち公金であると主張しておられるものと認識をしております。
   また、去る10月、この問題に関係した県職員91名の処分を行いましたが、元美里町長をはじめとした公務員による、県職員を対象とした接待であったということから、その原資が公金であるか否かにかかわらず、官官接待であったものと者えております。


(2)住民の信頼にこたえる警察の徹底捜査について

《質問》 雑賀光夫 県議
 第二は、警察本部長にお伺いいたします。
 「読売新聞」に「起訴を求めない」という報道があったことについて、住民のみなさんは「観測気球としてリークしたのではないか」と言っておられる。警察として、そういうことでマスコミを使うことがあるのでしょうか。
 なんにしても住民のみなさんは、今回の問題での警察の徹底捜査を期待しております。本日は、警察本部長から徹底捜査の決意を聞かせていただくつもりでいましたが、新聞報道では、すでに案件は検察に送られたとのことです。お送りになった捜査内容はあき明らかにできないと思いますが、警察本部長として、十分な捜査をすることができたとお考えかどうかお聞かせください。


《答弁者》 警察本部長
   警察の報道のあり方についてお答えいたします。
   警察が行っている事件事故等の報道発表は、公共の利益を図る目的をもって行っています。
   具体的に申し上げますと、事件事故の発表は、県民に防犯上あるいは事故防止上の注意を促すこと、新たな犯罪を行おうとする者を思いとどまらせることなどに効果がありまして、公共の利益を図るうえでおおきなメリットがあります。
   そのため、警察では常に適切な警察広報に心がけております。
   次に、警察捜査についてお答えいたします。
   警察は、被害者の被害申告や告訴等の端緒を基に、犯人の追及探索、罪となるべき事実の存否等について、法の定めるところに従い、任意又は強制の捜査処分により真相を究明し、迅速かつ適正な処理手続きを日頃より行っているところであります。


《要望》 雑賀光夫 県議
   「裏金」といいましても旧美里町(長)の支持で収入役名義で、答弁にありましたように収入役の判が押され支出されていた。そして、初めは町民のために使ったようなことを言っていたようですが、どうにも説明がつかなくなると「自分の金だ」と開き直って、金庫に入っている金さえも「自分の金だから返さない」、これは道義的にも絶対に許せないと思っています。
 紀美野町はこれから司法の場でたたかうことになりますが、知事、県当局の皆さんも含めて可能な限りご支援をいただけますようお願いします。



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12月議会 雑賀光夫 一般質問=08年12月10日
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