2009年6月県議会 藤井 健太郎 一般質問
2009年6月24日
1.経済対策について
(1)県経済の現状と今後の見通し
(2)経済対策の雇用・地元経済への効果
(3)経済対策と財政再建
(4)期限を定めた事業の継続について
(5)地域活性化・経済危機対策臨時交付金の使途
(6)国直轄事業負担金について
2.消費者行政について
(1)消費者庁発足と県の対応
(2)消費生活センターの充実について
3.医療費適正化計画の特定健康診査について
(1)基本的な考え方、取り組み状況と評価
(2)全住民対象の特定健康診査に
(3)受診率と自己負担額の格差
(4)特定健康診査への財政的支援
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1.経済対策について
《質問》 藤井健太郎 県議
今議会に提案されている補正予算は、国の経済危機対策を受けて、予算規模471億円とバブル経済崩壊後の補正額よりも規模の大きい過去最大のものといわれています。経済対策分として460億円が組まれ、その中身では、公共事業にかかるものが240億円、公共事業以外では220億円となっています。
過去いくどか経済対策として公共事業を中心とする財政出動を国、地方とおこなってまいりましたが、本県にとっては、雇用拡大や所得向上など地域経済活性化に貢献したプラス面よりも、公共事業への投資額が税収など自主財源強化へと結びつかず、逆に地方債の増発が財政危機を深めるというマイナス面の影響の方が大きかったのでは、という思いが強く残っています。今回の経済対策が、苦境に立たされている県内事業者、県民の手に届くものとなるのか、地域経済と地方財政にどのような影響を与えることとなるのか。一時的なものにとどまることなく、持続的な内需の拡大へと結びついていくものとなるのか。
はたして、めざすところの雇用の創出・拡大や県民所得の向上に結びつくものとなるのか。注目されるところでもあります。
同時に見過ごせない問題として、国債に頼った大規模な経済対策が、国の財政をいっそう厳しいものとし、財政の健全化をめざす方向として将来の消費税増税やさらなる社会保障費の抑制に求める動きがあることです。近い将来に、増税や社会保障負担の増大が予定されているようでは将来への不安は解消されず、経済対策による一時的な消費の拡大が見られても、経済の失速をまたぞろ招く結果になりはしないか、懸念がされます。
今回の経済対策が県民の雇用の安定化と所得の底上げ、所得間格差の是正ともなり、地域経済の持続的な成長につながる端緒となるものであることを願うものであります。そういう立場から知事ならびに関係部長にお尋ねいたします。
(1)県経済の現状把握と今後の見通し
今年の1月から3月、第1四半期の国内総生産は戦後最悪の落ち込みを記録したと報道がありましたが、和歌山経済は全国から少し遅れて現れてくるともいわれています。私の周りでも、消費税納税ができずに融資を申し込むなど中小の事業者、個人商店など売上の激減と資金繰りの逼迫で経営状況は依然として厳しいものが見受けられます。
雇用をめぐっては、和歌山労働局の今年の4月調査において、県内の有効求人倍率は0.58倍。5年ぶりに0.6倍を切ったとの報道がされ、雇用情勢は悪化傾向を示しています。
厚生労働省の国民生活基礎調査では、全世帯の1世帯あたり平均所得が平成10年には年間655万円であったものが、平成19年には556万円と、この10年で100万円減少、全世帯の6割が平均所得以下となっています。昨年はさらに所得が減少していることが推測されます。一方、今年3月の生活保護世帯は全国で過去最高を更新、この10年間、最多記録を更新し続けているとのことです。
雇用の悪化と所得の減少が続いていると思われます。知事は、今議会の冒頭に、全庁あげて県内の業況把握に努めるとともに緊急対策等必要な施策を講じてきた、といわれていますが、県経済の実態の推移について、どのように認識し、今後の見通しをどのように考えておられるのか。
《答弁者》 知事
本県経済において、いろんな指標を見ますと景気の落ち込みは全国に比べ緩やかに推移しているものの、厳しい状況にあることには変わりはないということだと認識しております。
県といたしましては、昨年、緊急経済対策本部をいち早く設置いたしまして、資金繰り対策といたしまして、制度融資を迅速に見直して、その結果、昨年度は過去最高の融資実績となり、最近の資金需要はちょっと落ち着いてきているというような感じだという状況にあります。
また、雇用対策としては、これはどちらかというと政府に先駆けてでありますが、「和歌山で働きませんかプロジェクト」など機動的に実施しておりますけれども、非正規労働者の雇止め等が全国に比べ少ないことでもわかるように、県内企業が雇用の維持・確保に必死でがんばっているというところもありまして、有効求人倍率という指標でみますと、もちろんだんだん低くなってきておりますけれども、他の都道府県の落ち込みに比べると緩やかで、近畿ではトップ、全国で5位という状況を保っております。
ただ、長い間、停滞をしてまいりました和歌山県のいろんな経済主体は、その分だけ蓄積が少ないというところもあると思います。それから、本県の産業構造は、素材や産業部材の製造、下請けといった企業が多いということで、他地域より本県の不況の影響が遅れて出てくる懸念もある可能性もあると考えております。
県といたしましては、今後とも産業別担当者制度等を活用して、県内の景気動向を的確に把握しながら、必要な対策を適宜適切に講じてまいりたいと考えております。
また、このような不況期にあっても、将来の成長分野の育成は重要であります。産官学連携による研究開発や農商工連携による新商品・新サービスの開発を支援するなど、様々な施策をこの補正予算にも盛り込ましていただいてがんばろうとしているところであります。
また、この際、将来の産業活動の基礎となる基礎的な基幹インフラの整備についてもがんばってまいりたいということで、将来の底力の拡大につなげていきたいと、こういうふうに考えております。
(2)経済対策の雇用や地元経済への効果について
《質問》 藤井健太郎 県議
経済対策の補正としては、昨年12月議会に30億円、2月議会に144億円が計上され、今回の460億円と合わせると634億円となります。
知事は、今回の補正における経済対策の効果について、県内ではどのような効果が期待できると考えておられるのでしょうか。とくに、対策を必要としている雇用や中小事業者の仕事の確保、県民の所得向上への貢献はどの程度のものが期待できるのか。具体的に示せるものがあれば、示していただきたいと思います。
経済対策の中心ともいえる公共事業がもたらす経済効果について、県土整備部長にお尋ねします。社会資本整備としての公共事業の果たす役割は多方面にわたりますが、経済対策として論じるとき、投資額が与える直接効果と供用開始後の産業界や日常生活に及ぼす経済効果が考えられます。今回は直接投資額が及ぼす効果に焦点をあててお尋ねします。
経済対策としての補正額460億円のうち240億円は公共事業にあてるとし、総事業費で981億円になるということです。
今年の1月に、県内事業者で施行可能な工事については、原則として県内事業者に発注するよう依頼文書が出されています。今回補正で見込まれる公共事業で県内事業者への直接発注となる事業量はどのくらい見積もれるのでしょうか。
981億円の総事業費のうち、およそ9割近くの862億円は近畿自動車道紀勢線の4車線化、京奈和自動車道の延伸、紀ノ川・熊野川の改修、和歌山下津港海南地区の防波堤築造、日高港浚渫などの国直轄事業となっています。発注者は国や民営化された高速道路会社になろうかと思いますが、地元事業者の受注機会の拡大についてはどのように考えているのでしょうか。資材などを含めて地元経済への還元の手立てなど考えられているのでしょうか。
また、公共事業の前倒しにあたっては、経済対策としてそれなりの事業効果の期待できる事業を選択していく必要があろうかと思います。投資額に対する効果、事業の緊急性の精査などどのようにおこなわれてきたのでしょうか。今回の事業選択において、その事業効果について個々の事業ごとの検討がされてきたのか。当該事業を選択した基準はどのようなものがあるのか。お尋ねします。
知事にお尋ねします。公共事業には、建物・橋梁の耐震化や堤防の修復補強などの地震津波対策、介護施設や保育施設の整備、公営住宅・生活道路の改修や改良、農林漁業での生産基盤の整備などくらしに密着した公共事業が数多くあります。今回の補正でも一定額の予算化がされてはいますが、そういった事業にいっそう重点をおくべきだと考えます。それは住民の日々のくらしのなかでの生活環境の改善となり、地元事業者の直接の仕事の確保にもつながってくるからです。地元経済に効果をもたらす公共事業のありかたについてどのように考えておられるのか。
《答弁者》 知事
一つ一つの政策についての雇用効果が何人くらい雇える予定だとかというようなことについては、昨年末以来の補正予算あるいは対策がそうでありましたように、今回の補正予算におきましても、現下の県内の景気を早急に回復し、雇用機会を創出するとともに、県民所得の向上を図ることを最優先に位置付けているところでございます。
なお、事業の選定にあたりましては、長期総合計画に掲げる「和歌山県がめざす将来像」の実現を一気に加速させるために、今後、実施しなければならない事業を早期に着手し、将来に備えるということを念頭に編成したところであります。
今回措置した事業の一例を申し上げますと、議員ご指摘の「県有施設や橋りょうの耐震化」あるいは、「介護施設の整備」、「保育所の耐震化」や「公営住宅の改修」、こういうものはやらなければならないということの宿題になっているような話でございましたので、こういうものについても所要の予算措置を行ったところであります。
《答弁者》 県土整備部長
現下の経済・雇用情勢に対応して、県内事業者の健全な育成・発展を図るために、公共工事等の発注にあたっては、県内事業者で施工・履行が可能と見込まれるものにつきましては、原則県内発注ということにしております。
今回の補正予算では、高速道路暫定2車線区間の4車線化に関する約745億円、その他国直轄事業約117億円、県事業約110億円など総事業費約981億円となっております。
この内の県事業約110億円につきましては、今申し上げましたとおり、従来からの県の方針として、特殊なものを除き大部分は県内事業者への発注を予定しております。
また、国直轄事業等の発注につきましても、県内事業者への発注に努めると聞いておりますので、今後とも、あらゆる機会を通じて、国等に働きかけてまいります。
次に、補正予算の事業箇所の選定についてお答え致します。「経済危機対策」の重点分野に応じまして、「国土ミッシングリンク」の結合の観点、地域活性化の観点、および安全・安心確保の観点などから事業を選択しております。具体的には、例えば「国土ミッシングリンク」の結合による地域間の連携強化や地域の競争力の強化を図る、こういった項目で近畿自動車道紀勢線や京奈和自動車道の整備を行うなど重点分野に沿った箇所を選定しております。
また、これらの箇所はいずれも、地域からの要望が強く既に事業を進めている箇所のうち、早急に整備が必要で前倒し可能な箇所でございます。
(3)経済対策と財政再建について
《質問》 藤井健太郎 県議
財政出動と財政再建についてどう考えるのか。過去の経験から起債にたよる単独事業が税収増につながらず、財政危機を招き、より強力な行財政改革の実行をせまられ、ひいては県民サービスの後退、県民負担の増大につながってきました。昨年3月には新行財政改革推進プランが策定され、財政調整基金などからの繰入にたよらなくても収支の均衡がはかれる財政の姿をめざしているところです。今回の大型補正の財源は、またもや地方債に頼ることになるのではと気をもんでいましたが、追加する公共事業に伴う地方債180億円に対して国の公共投資臨時交付金160億円の交付が見込まるとのことです。国の地方財政へのしわよせを極力少なくする措置だと見受けられますが、今回の補正にかぎったものに終わるのでしょうか。前倒ししている事業は単年度で完了する事業ばかりではないと思われますが、こういった国の措置、地方への財源補てんは来年度も続けられるのでしょうか。総務部長にお尋ねします。
《答弁者》 総務部長
地域活性化・公共投資臨時交付金につきましては、国の経済危機対策における追加公共事業等の地方負担額への配慮という位置づけでありまして、現時点においては、恒久的な措置ではないと認識しております。
なお、今回、前倒しで実施する公共事業等は、単年度で終了する事業に限られておりませんが、来年度以降の公共事業等への対応につきましては、その年度における公共事業等に対する財源措置を十分踏まえながら、新行財政改革推進プランの枠組みの中で、適切に対処してまいりたいと考えております。
《質問》 藤井健太郎 県議
国では、大規模な景気対策により国の財政状況はさらに悪化し、これまでにかかげた財政再建目標の達成は不可能と判断。新たな財政再建計画づくりをすすめることになったと報道されています。
6月9日、政府が経済財政諮問会議に新たな財政再建目標を盛り込んだ「経済財政改革の基本方針2009」の原案を提示、あわせて中期的な財政健全化の道筋を示した試算結果を公表しています。
それには目標を達成するために消費税率を現在の5%を2011年度から2017年度にかけて段階的に12%まで引き上げる必要があるとしています。
さらに、原案では社会保障費についても自然増分について毎年2200億円の削減を継続していくということです。昨日、来年度は自然増分の削減は見送ることが閣議決定されたようですが、骨太の方針06で定めた2011年度までに累積して社会保障費の伸びを1.1兆円抑制することにはかわりないということです。売上や所得が増え続けていけばともかく、そうでなければ、増税と社会保障負担がのししかることになり、逆に地域経済と県民のくらしを悪化させることになりはしないか。知事の所見はいかがなものか、お尋ねしておきたいと思います。
《答弁者》 知事
社会保障の機能強化を図り安心社会を実現するということは、人々が安心して生活していくうえで極めて重要な課題であり、必要不可欠なことと考えております。
一方、少子高齢化の進展に伴い、社会保障費の大幅な増加が見込まれるなか、社会保障の給付について重点化等の効率化を図るとともに、制度の安定と維持のための負担のあり方と財源について、どのようなバランスにしていくかということが社会全体の大きな課題であると認識しております。
また、これに関連した消費税の税率につきましても、税制抜本改革の議論の中で、今後、国において検討が進められていくことと認識しております。
社会保障の給付と負担の水準がどうあるべきか、また、消費税の税率がどのような水準になるかという問題につきましては、今後、国民的議論を経て決定されていくべきものだと考えておりますが、当県といたしましては、和歌山県の県民生活や地域経済に影響を与える事柄でございますので、これを注視しながら、和歌山県に有利になるよう、県民の生活がよりよくなるように、いろんな働きかけをしていきたいと考えております。
(4)期限を定めた事業の継続について
《質問》 藤井健太郎 県議
経済対策として国からの交付金を基金に積み立てて行う事業や国の補助事業において、事業の年限が2〜3年と限られているものが多々見受けられます。
雇用、福祉分野の事業、市町村の負担を伴う事業など、事業の継続がどのようになるのでしょうか。緊急雇用創出事業は3年間としています。失業者が新たな職を得るまでの半年間のつなぎ雇用の制度と説明されています。かつて平成11年度から13年度までの3年間、同様の緊急地域雇用特別交付金制度がありました。県は期間の延長を要望する立場をとり、さらに3年間延長されたことがあります。今回の緊急雇用創出事業については、私はせめて有効求人倍率が1を越えるところまで、求職者数に見合う求人ができるところまで県にがんばってほしいと思っています。商工観光労働部長、いかがでしょうか。
《答弁者》 商工観光労働部長
世界経済全体が落ち込み、雇用情勢はかつてないほど厳しい状況となっており厚生労働省の調査によれば、昨年10月から6月までに雇い止めや雇い止め見込みの非正規労働者の方は、全国で21万6千人、本県でも760人となってございます。
今回の緊急雇用創出事業につきましては、これらの離職者の方が次の雇用までの一時的な就労機会を得ていくための緊急かつ暫定的な事業であり、また経済対策の重要な施策の一つであると認識してございます。
議員お話しの基金事業終了後の継続につきましては、経済情勢や雇用環境を十二分に見据え、的確な状況把握をしながら、その必要性も含め、適切に対応して参りたいと考えてございます。
《質問》 藤井健太郎 県議
また、母子家庭の母親に対する技能や資格取得にいたる間の生活保障としての給付金の拡充、女性特有のがん検診の受診費用の無料化、妊婦検診の無料化など、母子家庭の自立支援、母体と子供の安全安心、少子化対策にとって有効な施策であるし、県民の要望も多くあります。事業を継続していけるような手立てをどのように考えているのか。一時的に改善されても継続されなければ、結局、事業効果をあげることはできないのではないでしょうか。福祉保健部長はどのように考えておられるのか、お尋ねいたします。
《答弁者》 福祉保健部長
母子家庭就業自立支援事業の給付金の拡充は平成26年度までとなっておりますが、女性特有のがん検診推進事業につきましては平成21年度のみ、妊婦健康診査費助成事業については平成22年度までとされております。
国では、それぞれの事業の実施状況や施策の成果を踏まえつつ、事業の継続あるいは財源について、今後検討していく予定としております。
県といたしましては、これらの事業が、いずれも県民の生活に深く関わる施策であることから、安定的かつ恒久的な財政的措置を講じるよう国に対し強く要望してまいります。
(5)地域活性化・経済危機対策臨時交付金の使途について
《質問》 藤井健太郎 県議
国の経済危機対策として全国で1兆円、都道府県4000億円、市町村分6000億円が国で予算化されました。地球温暖化対策、少子高齢化社会への対応、安全・安心の実現、その他将来に向けた地域の実情に応じるきめ細かな事業を積極的に実施できるようにといわれています。本県の限度額は84億8000万円といわれており、6月議会では10億9600万円が事業化されているということです。
1年間の事業とされているので、残りは9月以降の補正で事業化していくことになると思われますが、今回の補正で事業化したものは具体的にどのような事業があるのか。また、今後、事業化していくものについての考え方はどうなのか。総務部長にお尋ねします。
住民のくらしにより役立つ事業となることを期待するものですし。そういう点で県民への公募などしてはいかがかとも思うところです。
個人的には、住宅太陽光発電の枠の拡大、高齢者仕様住宅へのリフォーム・バリアフリー化への補助、個人住宅の耐震改修助成の充実、公共施設・教育施設などへの県産材の活用など、これまで予算枠の範囲内とし希望者多数の場合は抽選をしていたり、せっかく有益な事業であっても補助額が少ないため進まない事業などに、集中して取り組めるように活用してもらいたいと思います。このことについては要望として申し上げておきます。
《答弁者》 総務部長
地域活性化・経済危機対策臨時交付金につきましては、今後、実施しなければならない県単独事業を、将来に備え早期に着手するための財源として、あるいは、国の補正予算に伴う一部の補助事業の財源として活用を予定しているところでございます。
なお、今回の補正予算では新型インフルエンザ対策や地震対策の強化など県民生活への影響等を考え、早期に実施する必要があると認められる事業に対し11億円程度を予算化したところでございます。
(6)国直轄事業負担金について
《質問》 藤井健太郎 県議
今回の直轄事業費総額862億円、県負担額は総額126億円。事業費に対して全体で約15%の負担となっています。今回の補正後の21年度国直轄事業負担金は290億円となり、県単独事業費284億円を上回ることとなります。
地方分権の流れが加速化するなかで、これまでの国が言うがままの事業費と法で定めた負担率に基づき算定される自治体の負担額について、その内容の精査もできなかった自治体の側から意見が出てくるのは当然のことでもあろうかと思います。私もこの議場で直轄負担金のありかたの問題について、これまでに幾度となく、とりあげさせていただきました。これから国・地方の役割分担の議論のなかで見直し作業が本格化することに期待をするものです。
すでに、多くの議論がかわされてきたところでもあり、知事からめざす方向についても示されました。
私は、今回、直轄事業負担金が単独事業費を上回るほどの金額になっていることに鑑み、今回、補正予算に計上されている負担金の使われ方、直轄事業の内容や事業費の内訳などについて、県民にきちんと詳細に説明すべきと考えています。この議会で説明できるように準備はできているのでしょうか。この点について知事にお尋ねいたします。
《答弁者》 知事
今回の直轄事業の箇所につきましては、かねてから早期整備を強く求めている箇所で、真に必要性が検証され進められている継続事業を前倒しで行うものであります。
これがどういうものに使われたか、大きなものについては、すでにこの議場でもご説明申し上げましたと思いますが、大いに今後説明をしていきたいということでございます。当県に関する限りですと箇所付け、配分そういうものについては、我々がものすごく熱心に要請してきたことがむしろ実ったというような意味で、私たちとしても成果だと考えております。だから勝手に付けられて、請求書を回されたというようなものはありません。
また今回の補正につきましては、地域活性化・公共投資臨時交付金により、地方自治体の負担が軽減される措置がなされております。本県の直轄事業におきましても、事業費約862億円に対し、県の負担額は約126億円となっておりますが、実は今回の制度では、この9割相当額が交付金として交付される予定であります。県といたしましては、これは好機であると捉えて可能な限り、もともとやらなければならない、絶対やりたい、こういうものについては事業の進捗を図りたいと考えておりまして、それはかなり実現したと考えております。
なお、そうはいっても不当な支出がないかとか、単価はどうかといったことについても、ちゃんと県民の皆様への説明責任が果たせるように、国土交通省と十分協議して参りたいと考えております。
《再質問》(要望) 藤井健太郎
県議
知事の答弁で和歌山県の経済の状況の分析を語られまして、有効求人倍率がいま近畿でトップだということで自慢げにお話をされていたような感じですが、今まで和歌山県は確か最低でしたよね。他の県が高くて今回の経済危機でどんと落ち込んで、和歌山県がたまたまトップにきているという状況だと思うんです。
以前から県のほうでも雇用対策を一生懸命にやられてきたことをよく知っておりますが、なかなか効果が発現をしない。それは県内には中小事業者が圧倒的であって、大規模な雇用が見込める事業所がなく、企業誘致にも一生懸命取り組んでいると思いますが、今回の経済対策が最大規模ということで県民には説明をされておりまして、では効果はどうなのかというところはやはり気になるわけであります。緊急雇用なんかでも第一次分ではいくらで何人というように発表されていますが、そうして和歌山県経済にどういう効果をもたらし期待できるのかという点については、ぜひ経済対策本部などでまとめて県民にも示していただきたいと申し上げておきます。
知事は、安全・安心に暮らせる社会づくりとして誰も見捨てないぞと今議会でもおっしゃっていましたけども、あちこちで話を聞くと県内の中小事業者は見捨てられているのではないかなという思いがします。せっかく国のほうで保証協会の信用保証制度を拡充して、ずいぶんと融資が受けやすくなってきたということがありますが、肝心の保証協会の保証が受けられない、取引先が倒産をして莫大な金額の手形が不渡りになり、そのことが経営を圧迫してなかなか再建が難しく、保証協会の保証すら受けられずどうしようもないという話も実際に聞くわけです。だから県内の中小業者のこともぜひ見捨てることなく、経済対策にも融資面だけでなく本当の中小事業者の仕事づくりということで留意をしていただきたい。その結果、経済対策の効果がどうであったのかをきちんと検証していけるような仕組づくりをぜひしていただきたい。また後日、どうだったのかということを質問させていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
地域活性化・経済危機対策臨時交付金、これはざっと85億円が見込めるということで、有効に活用できるのではないかと思います。さきほど私いくつか事業の事例などを申し上げましたが、ぜひ和歌山県の地元中小業者や家計を応援する施策に有効に使っていただきたい。住民の声にも耳を傾けるようにしてもらいたいと思います。
2.消費者行政について
《質問》 藤井健太郎 県議
「消費者庁設置法案」及び関連2法、「消費者庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案」「消費者安全法案」が、与野党全会派による共同修正を経て今国会で成立し、今秋にも消費者庁が発足する運びとなっています。
長年消費者問題に取り組んできた消費者団体、弁護士会から消費者の観点から諸問題の一元化がはかられることとなり、縦割り行政のすきまが埋められると、期待の声が寄せられています。国民生活の安全・安心をはかるうえでも一歩前進であり、今後、消費者庁が国民の声にこたえて、積極的な役割を果たしていくことが求められています。
近年の経済状況と経済的社会的規制が緩和される流れの中で、食品偽装事件、悪質な住宅リフォーム、欠陥ガス器具、中国製冷凍ギョーザ中毒、汚染米の流通、架空請求などなど消費者問題が多発しています。いち早く対応して被害の拡大を防ぐことが重要です。
国の役割には大きいものがありますが、住民に、より身近な地方自治体の役割には決定的なものがあり、消費者行政は地方自治体の自治事務ともなっています。
その中心を担っているのが、相談の窓口でもある消費生活センターと直接住民と対応する相談員です。年間6,000件を超える相談に対応しており、様々な法令に通じた専門的な知識と、なにより消費者の立場に立っての熱意と権利擁護の意識の高さも求められています。その職責に応じた適切な処遇も必要となってきます。
県のセンターの設置は和歌山市内、田辺市内の2ヶ所、市町村では和歌山市が開設しています。今回、都道府県へのセンター設置が義務化、市町村には努力義務が課せられることとなりました。
2月議会で国からの補助金1億5200万円が措置され、23年度までの事業として県は消費者行政活性化基金を設置しました。
そこで、環境生活部長にお尋ねします。
(1)消費者庁発足に向けた県の対応について
消費者庁発足をどう受け止めるのか。県の消費者行政はどのようにかわるのか。県はどのような方針をもとうとしているのか。消費者の権利擁護、被害の未然防止、拡大防止施策の充実となっていくのか。基本的な考えについてお尋ねします。
《答弁者》 環境生活部長
県といたしましても、食品偽装や架空請求などの問題が多発するなか、消費者の安全・安心を確保する行政はたいへん重要と考えており、今回の消費者庁設置関連法の成立を受け、市町村や関係機関、消費者団体等と連携しながら消費生活相談窓口の充実、消費者被害の発生・拡大の防止、消費者教育・啓発の推進に一層取り組み、消費者が安全で安心して暮らせる和歌山県づくりを進めてまいりたいと考えてございます。
(2)消費生活センターの充実に向けて
《質問》 藤井健太郎 県議
基金事業は23年度までと年限がきめられていますが、使途はどのようになるのか、消費生活センターの充実、相談員の処遇の改善となるのか。
市町村での消費生活センターの設置と相談員の配置をどのようにすすめるのか。また継続的な財政的支援をどのようにすすめていくのか。
《答弁者》 環境生活部長
住民がより身近なところで相談ができ、トラブルを解決できる体制を整えていくため、市町村に対し、和歌山県消費者行政活性化基金を活用して消費生活センターの新設あるいは地域の状況に応じた消費生活相談窓口の充実を要請しているところでございます。
あわせて消費生活相談の充実には、現在の県消費生活センターの相談員の方々のようにさまざまな法令に通じた専門的な知識を有し、かつ熱意を持った相談員が重要な役割を果たすことから、県では基金を活用し、こうした相談員の養成と適正配置に取り組んでまいります。
しかしながら、当該基金の活用期間が平成23年度までとされているため、市町村が相談窓口を維持・運営していくためには、その後の財政措置が必要であり、このため、国に対し、「消費者行政推進のための恒久的な財政措置」を講じるよう要望を行ったところであり、今後とも機会あるごとに働きかけてまいりたいと考えてございます。
《再質問》(要望) 藤井健太郎
県議
経済状況が厳しいなかで様々な消費者問題、トラブルが起こってくることがこれからも予想されますが、消費者センターは市町村で努力義務となっております。なかなか市町村では難しい状況もたくさんあると思いますが、相談員の配置というのは要だと思うんです。
いま県は相談員については県職員が直接やるのではなく、外部委託をしています。その外部委託を受けている団体、またそこでの相談員の人員の確保であるとか、研修の機会の確保、資質・技術レベルアップといった点について処遇の問題も含めて考えていかないと、器だけつくっても中身がないということになってしまいますので、その点もぜひ留意して進めていただきたい。
3.医療費適正化計画の特定健康診査について
《質問》 藤井健太郎 県議
県は昨年3月、高齢者の医療の確保に関する法律に基づく医療費適正化計画を策定しました。県民の健康の保持・増進と医療の効率的な提供を推進し、医療費の過大な伸びの抑制を図り、国民皆保険制度を維持するとして、平成20年度から24年度までの5年間を第1期期間としています。
内容は2つで、ひとつは特定健康診査・特定保健指導の実施、もうひとつは療養病床を削減し介護施設への転換と平均在院日数の短縮をはかるとなっています。
今回は、ひとつ目の柱となっている特定健康診査、特定保健指導について、とりわけ特定健康診査についての取り組み状況と今後の方針について質問します。
県の達成すべき政策目標として平成24年度において、40歳から74歳までの70%以上の県民が特定健康診査を受診することをかかげています。
健康診断を受けることは、みずからの健康状態を把握し、健康管理意識を高めることへの動機づけや疾病の早期発見となり、重症化を防ぐとともに医療費の自己負担の軽減にもつながり、奨励されることであると考えます。そのためにも気軽に受診できる機会の提供が幅広くされることが必要だと思います。
これまでの住民を対象として自治体が実施していた健康診査から、昨年度、20年度から医療保険者が加入者を対象として実施するようになり、実施主体も対象者も変わってまいりました。22年度には中間評価を行い、25年度の実績評価で、健康診査の受診率によっては保険者からの後期高齢者医療制度への支援金が、加算されるなどペナルティが課せられることにもなっています。
経済状況が厳しいもとで、健康管理どころではないという話も聞こえてきますが、ストレスや過労の蓄積で健康を害し、仕事が手につかなくなったり、重症化すれば、本人や家族の苦しみ、経済的負担も増え、とりかえしのつかないことになっても困ります。
幅広い受診の機会と経済負担のあまりかからない健康診査の提供が望まれています。
そこで、福祉保健部長にお尋ねします。
(1)基本的な考え方、取り組み状況と評価
県の特定健診についての基本的な考え方は何か。また、どのように取り組んできたのか。
各保険者の到達点、取り組みの状況をどのように把握し、評価をしているのか。
《答弁者》 福祉保健部長
県民が現在の健康状態を知り、自らの生活習慣を改善して、生活習慣病の予防または重症化を防ぐことは、「健康で長寿な社会」の実現に資するものと考えております。
県においては、保険者が実施する特定健康診査の体制整備や特定保健指導者研修会の開催等により、市町村及び関係機関を支援してきたところです。
市町村国民健康保険における特定健康診査の実施状況につきましては、本年4月の暫定的な受診率は、県全体の平均が16.6%と、平成20年度目標率31.0%を大きく下回っております。
なお、全ての保険者の平成20年度における実施結果が確定するのは、本年11月以降になる見込みでございます。
この受診率についてでございますが、この制度に関する周知不足やデータ管理システムの構築の遅れ等から、目標率を下回った市町村が多くなったものと考えております。
(2)全住民対象の健診に
《質問》 藤井健太郎 県議
各医療保険の保険者がその加入者を対象に実施することになりましたが、医療保険に加入していない人や被用者保険の扶養家族、遠隔地保険となっている人、生活保護世帯などを含め、全住民が健康診査を気軽に受診できる体制となっているのでしょうか。
《答弁者》 福祉保健部長
特定健康診査は、「高齢者の医療の確保に関する法律」により、市町村国保や健康保険組合等、各保険者に実施が義務づけられており、40歳以上75歳未満の全ての被保険者が受診できる体制となっております。
被用者保険の扶養家族や遠隔地保険の方につきましては各保険者が、また、生活保護を受けている方や医療保険に加入していない方については「健康増進法」に基づき市町村が、健康診査を実施しております。
なお、75歳以上の方は、「高齢者の医療の確保に関する法律」により、和歌山県後期高齢者医療広域連合が、健康診査を実施していることから、全ての県民が健康診査を受診することが可能な体制が確保されております。
(3)受診率と自己負担額の格差
《質問》 藤井健太郎 県議
市町村国保が実施する健康診査において、市町村間の受診率や自己負担額に格差があるように聞いています。受診率の一番低い自治体で8%、もっとも高い自治体が43%、自己負担額については、無料のところから最高で2,000円の負担、となっているようであります。県はこのような状況をどのように考えているのか。受診率を引き上げるためにも自己負担はない方が望ましいのではないでしょうか。国は乳がん・子宮がんなどの検診受診率目標50%を達成するために、無料クーポン券を配布するとしています。
受診率引き上げに向けての今後の県の対応は、どうされていくのでしょうか。
《答弁者》 福祉保健部長
市町村国保における特定健康診査の自己負担額を軽減することは、受診率の向上を図るための一つの手段と考えられますが、自己負担額は、受益者負担の原則や国民健康保険特別会計における保険料財源の影響等を勘案し、各保険者が決定していると承知しております。
県といたしましては、積極的に制度の周知と広報に努めるとともに、効果的な集団健診や受診勧奨の取り組み等を市町村に指導することにより、受診率の向上に努めてまいります。
(4)特定健診への財政支援
《質問》 藤井健太郎 県議
特定健診にかかる財源は国、県、市町村国保が国の示す標準額の1/3ずつを負担することとなっています。しかし、国の示す標準額は実勢価格よりも低いため、市町村国保の超過負担となり、受診率を上げれば上げるほど負担が増え、保険料の引き上げもしくは一般会計からの繰り出しにつながってくることとなります。国の補助基準額を実勢価格にあわすことや、県の特定検診への財政支援が必要ではないでしょうか。どのように考えているのか。
《答弁者》 福祉保健部長
県では、市町村国保の保険料収納率や特定健康診査受診率の向上など保険者の取組を評価し、県国民健康保険特別調整交付金を交付しているところです。
平成20年度においては、特定健康診査の受診率が25%を上回る市町村国保に対しまして、この交付金による財政支援を行っており、引き続き受診率向上に向け、支援してまいります。
《再質問》(要望) 藤井健太郎
県議
今まで老人保健法の基本健診で住民を対象にして医療保険の加入者ではなく、幅広く住民を対象にやっており、19年度の平均受診率が34%という結果です。20年度で医療保険者が加入者を対象に行った結果16%ですから、老人保健法の基本健診が引き継がれていないと、地自体は大変な努力をして集団検診やいろいろな取り組みをし、ここまで引き上げてきたわけです。これから考えると県の目標は70%ですから、どうやっていくのかということになってくるわけです。今の状況のなかで、働く人々の健康被害も心配されます。きっちりと早く健診を受けて病気の早期受診に努める、働き続けられる社会づくりということでも大事な問題だと私は思います。県も積極的に広報して受診率を上げるために努力をしていただきたいと思います。
県の財政支援ですが、そもそも国がきちんと財政支援しなくてはいけないわけですが、県は財政調整交付金、国がもっていたものを肩代わりをした中から受診率25%以上の団体について支援をしているということですが、受診率25%以上の市町村国保というのは県内で6団体です。郡部は28団体あります。28団体中7団体が25%以上の受診率で県の平均受診率は16%というお話がありましたが、これで財政支援と言えるんでしょうか。一定の受診率をすればお金をあげるよと、早く受診率を上げなさいという立場だと思うんですが、しかしさきほどお話しましたように市町村国保というのは財政が非常に厳しい。きのうの松坂質問でもありましたね。保険料引上げ、一般会計からの繰上げが困難ななかでこの基本健診に取り組まないといけないわけです。そういうことも十分考えていただき、財政支援のありかたを改善することにぜひ取り組んでいただきたい。これも宿題にしておきたいと思います。
以上で私の質問を終わります。
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09年6月議会
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