2009年月県議会 松坂 英樹 一般質問
 2009年18

1.県立射撃場建設計画について
(1)予算化にむけた知事の判断について
(2)クリアすべき前提条件について
  ・建設後の利用見込みや維持管理コストの試算はどうか。
   また、鉛害対策、災害対策はどうクリアするのか。
(3)説明責任と住民合意について
2.鳥獣害対策
(1)イノシシに加えてシカ・サルの被害と有害捕獲状況
(2)市町村協議会や地域協議会での事業化
(3)有田圏域での広域的サル対策について
(4)県鳥獣害対策事業の拡充について
3.道路の災害対策と維持管理
(1)国号480号清水地内崩落災害について
(2)同様の災害未然防止について
(3)道路維持管理の位置づけについて


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1.県立射撃場建設計画について
(1)予算化にむけた知事の判断について
《質問》 松坂英樹 県議
   まずはじめに、今議会の補正予算案に盛り込まれております、県立射撃場建設計画について、以下3点にわたって知事に質問をさせていただきます。ここ3回の県議会で、国体施設としてクレー射撃場建設を求める提案や、また鳥獣被害対策としての射撃場建設の提案が繰り返しされてきました。これまで県は、国体施設については、既存施設の活用を基本としながら、県の施設は県が、市町村の施設は市町村が整備し、困難なものは県外施設を活用するという基本方針で、競技団体等とも相談をすすめてきました。また知事は6月議会の答弁で、射撃場建設を求める提案に対して、施設の必要性に加えて財源や運営コスト面、地元が賛成をするかどうかなどのいくつかの条件を上げ、「これらは全部必要条件で、1つでも欠けると難しい」、そしてまた「それらが全部かなえられるならば検討に値する」との答弁をされたわけです。
 このようにかなり慎重にこの問題に対応してこられたと思いますが、その6月議会が終わるころに、知事は一気にこの射撃場建設を決意し、市町村ではなく県が施設を建設すること、鳥獣被害対策の射撃訓練場として建設し、ゆくゆく国体施設としても活用するという方法を決断し、今議会での補正予算提案となりました。第一の質問として、県立射撃場建設計画の決断にいたった経緯と理由をお示しいただきたいと思います。

(2)クリアすべき前提条件について
   次に県立射撃場計画の中身について具体的に質問をしたいと思います。補正予算案では事業費5億5千万円が計上されていますが、県はいったいどのような規模の射撃場を建設し、どうやって維持管理するつもりなのでしょうか。担当課に予算説明を求めましたが、これから設計にかかるということで、議会には具体的なビジョンも試算も一切示されてはいないという状況です。知事は補正予算案を説明した記者会見で、関係者の話として、うまくやれば「もうかる」と聞いていると、ずいぶん気楽な見通しを示されました。いったい、施設の規模や利用見込み、維持管理のコストと運営方法はどう検討されたのでしょうか。
   私が指摘したいのは、射撃場における銃弾の鉛による環境汚染対策、いわゆる鉛害対策はとりわけ重要な課題だということです。全国各地で県営射撃場が使用中止や廃止となる事例が重なり、環境省も対策ガイドラインを示すなど、全国的にもこの10年間、問題になっているこの鉛害対策をどうクリアする計画なのでしょうか。加えて、谷を埋め立てた造成地への建設という点で災害対策は万全なのでしょうか。これら知事が射撃場を検討する際の条件としたもの、クリアすべき前提条件についてどうなったのか、2点目にご答弁を願います。
   この際、全国的な射撃場をめぐる状況を紹介申し上げますと、千葉県立射撃場は、水路から環境基準の7倍の鉛が検出されました。ここでは年間で200万発、重さにして約48トンの散弾が使用され、そのうちのかなりの量が施設外の周辺森林にも飛散していたとのことで、使用中止・閉鎖して、鉛弾の除去作業中となっています。このようなケースが各地に見られます。
   また一方で、神奈川県立射撃場は、県教委が調査した結果、環境基準を超える土壌が2万8千立方メートルに達することが判明しました。この射撃場では年間3万人が利用し、推定でこれまで1400トンの鉛が射撃場内と周辺山林に発射された計算だと報道されています。20億円かけて4万9800トンの土壌を搬出し秋田県まで運んで処理しました。その後、閉鎖するか再開するかと、専門の検討委員会で議論したそうです。閉鎖しても土留めなどもし排水管理対策をするのに7億円かかる、鉛害対策をして再開するのにも10億円かかるという選択を迫られ、ここでは10億円の対策工事をすることを選択し、来年4月から再開する予定だそうです。
   山梨県立射撃場は、ゴルフ場建設計画が中止になって寄付をされた土地に、15億円をかけて建設をする計画だそうです。県はすでに建設計画を予算化していますが、地域から反対が出てきて未だ決着はつかず、計画は難航しているという報道です。
   2007年の秋田国体で使用した秋田県立射撃場も、環境基準を超える数値が出たため、今年度から閉鎖中と表示されています。
   和歌山の近隣府県では、京都府営射撃場が5年前から休止し、10億円かけて鉛を回収して再開の目途は白紙状態。徳島県営射撃場は4億円かけて回収した後に3年前に廃止。姫路射撃場が土地契約更新ができずにこの9月末で廃止という状況だそうです。和歌山県内では、先の和歌山国体で建設した海南市の射撃場でも鉛対策が必要となり、5年前に約3200万円かけて鉛害対策をしましたが、そのうち800万円を県が負担、2400万円は県体育協会が負担し今も借金を返済しているようです。
   私は、調べれば調べるほど、これは無理して建設して本当に大丈夫だろうかとの率直な感想を持ちました。
   射撃場をめぐる困難な条件が多い中、先ほど紹介した神奈川県の検討委員会は、射撃場再開の条件として、すべての銃弾を回収できる施設に作りかえることや、スチール弾など環境への影響が少ない代替弾の使用を原則とし、競技ルールから鉛弾を使用しなければならない場合のみ例外的に認めることなどを、再開の条件として答申しています。
   この鉛の銃弾の問題ですが、鉛弾からの転換が進まない理由として、鉛の弾の方が鉄の弾より比重が重くて破壊力があることや、タングステンなどの非鉄金属弾は比重が重くても高価であるため普及が進みにくいということです。
   しかし、スポーツ競技としても、また狩猟という面や有害駆除の面でも、いつまでも鉛弾を使いっぱなし打ちっぱなしにできる時代ではありません。デンマークではラムサール条約登録湿地での鉛弾使用が禁止され、アメリカでは水鳥などの猟で全面的に鉛散弾の使用が禁止されていて、日本でもすでに北海道ではライフルも散弾も鉛弾は環境面から全面禁止だそうです。競技ルールをみても、北欧ではすでにクレー射撃公式競技でも鉄の散弾が使用されています。
   こういった流れの中で、環境省が示した鉛対策のガイドラインでは、こと細かく対策が例示され、たとえば場内を舗装をするときでも、水溜りができては鉛が溶け出すから水溜りができないようにとか、斜面にコンクリートを吹き付けるときも亀裂が生じないよう維持修繕が求められていますし、水処理プラントやろ過装置なども示されていて、ランニングコストはかなりのものだなと感じました。
   これらの対策が、どの程度まで今回の計画には盛り込まれているのでしょうか。いろいろ全部やろうとすれば5億円で足りなくなって追加予算がいってくるのではないか、また一方で、形だけやっても実際に防ぎきれるのだろうか、などの疑問が出てくるわけです。
   このように、県立射撃場建設計画に際しては、県民や専門家との間での充分な議論や検討、また規模や内容・予算についても議会での慎重な審議が必要だと考えますが、なにしろ予算案の可否を判断する際に、審議に耐える説明材料が、議会にも県民に示されていないのではないでしょうか。答弁ではこれらの前提条件をどうクリアする計画なのかしっかりとお答え願いたいと思います。

(3)説明責任と住民合意について
   3点目の質問として、県立射撃場建設計画の説明責任と住民合意についてお尋ねします。建設計画予定地となっている湯浅町の山田山は、過去にゴルフ場の大型乱開発計画で町政も町民も大混乱したところです。ゴルフ場計画への「地元同意」として区長さんの印鑑を押した書類が先行し、山田区民・湯浅町民が後でたいへんな苦労をした過去があります。結局、ゴルフ場開発は頓挫しましたが、山田山には乱開発の爪あとが残り、町当局をはじめ町民県民の手によって自然回復と活用の努力が地道に続けられてきたのです。
 このような経過のあったところであるだけに、「建設するということで国から予算をとってきました」と、トップダウンの決定ではなく、地元住民が納得も合意もできるような説明責任を、設置者である県自身が果たすべきではないでしょうか。
   計画の全容も知らされないままに、同意の印鑑だけをせまられるようなことを繰り返してはなりません。山田山の歴史をふまえるならば、きちんと順序と段階を踏むべきです。調査もし、計画素案を住民に示し、住民合意を得た上で本体予算案を議会にはかるべきであったと考えます。
   私はこの間、地元山田区の住民に射撃場建設計画への意見を伺いにまわらせていただきました。鉛害対策や災害対策などの不安点を上げる方、大丈夫だろうと理解を示す方や活性化に期待をする方など、まさに半々に分かれている状況です。また、国体まではお客もくるんだろうが、それ以降はどうなるんだろうかという声も多く聞きました。ひろく町民の中では、山田山の自然回復に取り組んできた住民の方々をはじめ、寝耳に水という方がほとんどです。
   知事、今、問題なのは、地元区民や町民・県民に何の具体的な説明もなく、住民の判断材料がないままに「もう県が作ると決まって予算もつくらしいで」と建設計画が進んでいるということです。知事は一番大事な地元同意という条件をどう考えているのか。すでに地元同意は得ていると考えているのでしょうか。
   以上大きく三点、知事にご答弁を願います。


《答弁者》 知事
   この問題につきましては、一番初めは国体のクレー射撃をどこでやるかというようなことから始まっております。これについては、一昨年に原案を出した時にはなかなか建設をするのは大変なので、各市町村ともあまり乗り気ではありませんでしたので、従って県外で実施してはどうかという意見を原案として提出しました。クレー協会等からはそれは飲めないということでございましたのでペンディングになっておりました。他にもあと2つくらいペンディングがあるのですが、数少ない未決定部分であったわけであります。
   ただその時から、推進をしたいという方がおっしゃっていた、例えば地元の雇用になるとか、先程松坂議員が指摘されましたように各地域で旧型のクレー射撃場がどんどん減っている状況であります。そうすると供給と需要の関係によって、これが以外と地域おこしになるんじゃないかとかですね、そうゆうような議論がありまして、できれば県内でやるのが一番いいわけですから、そういう意味で推進をする方の御意見も理屈があるというふうに思ったわけでございます。
   そうしておりましたところ、国のほうで予算措置をしようという動きもありました。その国のほうの予算措置というのが、実は松坂議員が是非熱心に進めるべきだとおっしゃる鳥獣被害の問題にからむところなんでございます。スポーツということではなくてですね。
   実は鳥獣被害については国も危機意識を持っているし、それから和歌山県も、特に私などは危機意識を持っております。記者会見であなたは鳥獣知事かといやみを言われたくらい、矢継ぎ早に出来る事はどんどん対策を打って参りました。ただ、鳥獣被害がどんどん拡大しているにもかかわらず、狩猟をする人ですね、この方々がどんどん高齢化して、それで後進の育成がなかなかままならないというような議論も一方ではあるわけであります。したがって後進の育成と、あるいは未熟な人が鉄砲を撃ってはいけませんので練習をするというような事も大事であると言う事から、これはだんだんと条件が整ってきたなというふうに思いました。その条件というのは国からの補助金の活用であり、地元市町村が応分の負担をしてくださること、それから、住民は市町村がきちんと同意を取り付けてくれること、それから県に後年度負担が生じるとまずうございますので、これは採算に合うと言っておられる人を中心にしてですね、自分たちできちんと運営をしてくださること、こういう事が必要であって、このうち1つでも欠けるとなかなか難しいという事を先の6月議会で申し上げたところは松坂議員御指摘のとおりであります。この点についてはいささかも変わっておりません。
   ただ国の補正予算において、先ほど申し上げましたように鳥獣害防止総合対策事業のメニューとして新たに射撃訓練施設が追加され、補助金の確保に一定の目処がついております。それから、いくつかの市町村と協議を進めてきたところ、湯浅町から用地の無償提供をすると、それから地元同意については責任を持って対応するという申し出がありましたので、この条件も目処としては一応ついております。それから運営主体についても、関係者と協議をしてですね、実射訓練や技術講習会、競技会等での利用が見込まれ十分採算に見合うものという見解から、前向きな姿勢を示して頂いております。こういうような、一応全部の条件について目処が整いましたので、今議会に補正予算をお願いしたものでございます。
   今後はどういうことをするかと言うことなんでございますが、一つ忘れましたが、先程御指摘のありました鉛対策、又は災害対策、これによる被害を出さないということは前提でありますので、最近の射撃場についてはそういうような備えをしたものだけが出来上がっていくという状況になっています。備えをしなかったものについては先程松坂議員がおっしゃった様に改造するとかあるいは廃止をするとかそういうことになっているのでございます。その上で、これまで申し上げました各条件を本当に詳細まで詰めていった時にそれで行けるかどうか、これを今後しないといかんわけであります。
   しかし、これをやるにあたっては、予算の目処がついていないと、国の目処はついておりますが、県の目処はついてないとそういうことはできませんので、我々に予算を、うまくいけば執行する権限を議会として与えて頂きたいというふうにお願いを申し上げまして、今回上程している次第でございます。
   我々のあらあらの試算によれば、土地代を除いて約5億円で施設は完成する見込みであります。もちろん、災害対策、鉛対策を備えたものでございます。土地代につきましてはさらに負担がありますが、これについては湯浅町が無償で提供するということになっております。私も現地を見て参りましたけれども、一見したところ、私は素人ですから必ずしも権威があるわけではありませんが、私のただの行政官としてみたところですね、一応条件は整っているような感じがいたしました。それから、現地で案内をしてくれたり、是非頼むと言ってくださった湯浅町の関係の方々等はこれによって他になかなか産業というものがないので、湯浅町においては例えば大会等が開かれたら大勢の人が来てくれて、宿泊施設等に泊まってくれるかなとか、そうゆうような若干の希望と言いますか夢というか、そういう事も又抱いておられるような事をお聞きしました。
   今後、設計の予算を議会に認めて頂けましたら設計をいたしまして、その条件をまた提示し、これで最終的に市町村としては大丈夫かどうか、それから予算の範囲内にはまるかどうか、そういうようなことをきっちりと今度は実施の段階でやっていく、これは他の水泳場とか県営体育館というようなものと同じでございます。
   一部この間の議会と少し変えたところがありますが、それは一応の建設主体を、県のお金をつぎこんで建設する主体を市町村にするというふうに思っておったのですが、これはなぜかというと、鳥獣害対策は市町村が主体的に取り組むという特措法の趣旨からでございます。鳥獣被害が拡大し利用者が県下全域に及んでおります。また国体のクレー射撃にも使えるというような事、あるいは市町村の財政事情がとても悪いという事も勘案して、施設整備については県で行い、土地は提供して頂くと、そういう事を現在考えておりまして、これが適当と判断しているところでございます。
   地元への説明等については、町が主体的に行って頂かなければならないし、それが条件であります。ただ、県といたしましても、設置者としてこれから設計をし、その情報を提供していくと言うような事をしまして、地元への説明等に際しましても、町と協力をいたしまして進めて参りたいと、そんなふうに考えているところでございます。


《再質問》 松坂英樹 県議
   一つ目の再質問は前提条件の答弁についてです。
   考えられるハードルをどうクリアするのかと私が聞いたの対して、知事からは、条件がほぼととのったとの見解をしめされたものの、維持コストや運営の面では、聞いている話だけで県が自ら試算した形跡もないようです。鉛害対策も万全を期すという掛け声だけで具体的な中身を示すことができませんでした。目途がついたのはお金だけかもしれません。
 これが、無理して国の補正に乗ってゆこうという話でなかったら、私が第一問でお話したように、まず調査費でもつけて、概要の設計をして、地元や猟友会・競技団体などの意見も聞いて、地元同意を得た上で、本体工事の予算計上にすすむと思うんですね。
 再質問で確認したいわけですが、いくつかの超えなければならないハードルや条件をクリアできたから建設計画を決定したというのではなく、これから一つひとつハードルを越えてゆく、具体的に条件を満たすようにつめてゆくということでいいんですね。ご答弁願います。

   次に2つ目の再質問は住民合意についてです。湯浅町が誘致に手を上げたのだから、住民合意は町の方で主になってやってもらうという趣旨の答弁でした。これは納得できません。
   この射撃場建設計画に対する住民合意のカギは、鉛害対策など色んな不安にどうこたえるのか、説明責任を果たして、信頼関係を築き、どう理解と納得を得るのかということに尽きると思うのです。
   ですから、施設がどんなものになるのか、どう対応・運営するのかという中身が大切であり、その意味では設置者である県が主体的に説明責任を果たす、町はその窓口となっていっしょにやる、このことが求められるんではないでしょうか。
   町が手を上げたんだから、責任もってやってよというのではだめだと思うのです。町が計画の中身ぬきの合意をせまってしまうことになれば、地域の中で「施設ができたらお金も落ちて活性化につながるから賛成してよ」とか「はよ合意せな、よその町にとられるらしいで。はよハンコおしてよ」とでもなりかねないと心配しています。これではゴルフ場開発の時とかわらないことになってしまうのです。
 確認しますが、基本設計が出来上がり次第、これをもって住民説明にこれから入るところなのですから、住民合意はこれからだということでいいですね。
 それから、県が主体的に説明責任をはたして住民合意を得るという姿勢にならないといけないと考えますが、そこはどうなんでしょうか。再度答弁を求めます。


《再答弁者》 知事
   2つ御質問がありましたので、第1の点についてはそうですということでございます。
   第2の点についてはこれから御答弁申し上げますが、先程も申し上げましたように、地元の同意については市町村で主体的に取り組んでいただくと、その前提で来てくださいということを湯浅町から頂いてございますので、そのレベルにおいて、今は地元の同意というか、同意というよりもむしろ来てくださいと、そういう意思表示を頂いているということです。
   もちろんですね、その中身については例えば、え、そんなんだったのかというようなことでは困りますので、今後、設置者として設計等をどんどんやっていってですね、その度ごとにこんなんで良いですねということを町のほうに言っていかなあかんと思います。もちろん町もいろんなお膳立てをして、我々も当然出席して、それでこういう設計になってございまして、こういう点は、例えば鉛の害なんかは配慮していますとかですね、そういうことをちゃんと説明をして、その上で皆さんに御納得頂くということにしないといかんと思います。
   ただ、御納得頂く時の例えば取りまとめとか、そういうのはやっぱり町がきちんとやって頂かないと、県としても遠ございますので、そういうことを申し上げている次第でございます。


2、鳥獣害対策
(1)イノシシに加えてシカ・サルの被害と有害捕獲状況
《質問》 松坂英樹 県議
   次に2つ目の柱として、鳥獣害対策について質問させていただきます。以下4点、農林水産部長よりご答弁願います。
   有田地方では、イノシシ被害とともに、シカ被害・サル被害が件数・地域ともに急拡大していると悲鳴が上がっています。配付資料には、有田地方の最近の有害捕獲実績と狩猟期の捕獲頭数をまとめて表にしてみましたが、数字を見れば一目瞭然だと思います。まず第一の質問として、県はイノシシとともに近年のシカ・サルの鳥獣被害と有害捕獲の実態をどう把握し、対応しているのか答弁を求めます。


《答弁者》 農林水産部長
   猟友会をはじめ関係者の努力等にもよりまして、その捕獲数は年々増加をいたしてございます。平成20年度には5千頭を超えるということで実績が上がってございますが、農作物の被害につきましては、ここ数年3億円前後で横ばいということで推移をしている状況にございます。
   こうした中で、県といたしましては、防護柵、捕獲檻の設置、或いは有害捕獲への助成等について充実強化を図るとともに、猟期の延長やくくりわなの規制緩和などきめ細かな対策に取り組んでいるところでございます。


(2)市町村協議会や地域協議会での事業化
《質問》 松坂英樹 県議
   次に、昨年9月議会で私は、国の鳥獣被害防止特別措置法にもとづき、「野生動物の生態保護を充分にふまえながらも被害対策として積極的に」事業化を促進するよう求めました。この国事業は、市町村の協議会が主体となって地域にあった対策にとりくめる事業であり、国や県の事業に合うように対策をするという受身ではなく、実情にあった対策事業ができる財源として重視したわけです。
   国の事業化2年目となるわけですが、県内市町村協議会や広域での地域協議会の事業化の状況はどう進んだのか、お示し下さい。


《答弁者》 農林水産部長
   市町村協議会につきましては昨年より5協議会増加をして、現在、10協議会となってございまして、雑木林等の刈り払いによる緩衝帯の設置、或いはモンキードックの育成などに取り組んでございます。
   一方、市町村の枠を越える地域の協議会につきましては、現在、振興局単位に7協議会が設置をいたしてございまして、鳥獣害防止施設の展示や研修会の開催等を行ってございますが、今後、より効率的な事業展開ができるように、県としても積極的に支援をして参りたいと考えてございます。


(3)有田圏域での広域的サル対策について
《質問》 松坂英樹 県議
   続いて有田圏域での広域的サル対策について伺います。このサル対策の広域的対応を何度となく提案してきたわけですが、昨年から今年にかけて、被害に耐えかねた住民が、県の補助事業を活用してサルの捕獲オリを有田川町で吉原地区と修理川地区の2ヶ所、湯浅町の青木地区で2ヶ所、広川町でも柳瀬地区と鈴子地区の2ヶ所で設置しました。先日、有田川町の2ヶ所の捕獲オリを御案内いただいて、ご苦労いただいている状況をお聞きしてきましたが、すでに来年度予算にむけての要望も複数個所から出てきているそうです。
   この有田地方でのサル対策を考えるとき、山田山を中心とした湯浅町・広川町・有田川町を転々と移動するサルを大きな視点で考えることがカギとなります。市町村まかせになっては、どうしても自分の担当エリアから他町に移ればやれやれと、イタチごっこになりかねないわけで、住民自身の取り組みも広がってきている中、広域で連携して取り組む必要性が高まっています。有田圏域での広域的サル対策についてどう取り組むのかご答弁を願います。


《答弁者》 農林水産部長
   サルの広域的なサル対策についてでございますが、サルの行動パターンと言いますか、行動域からいたしまして非常に難しい面があるというふうに考えてございまして、現在、改めて県下でサルの生息調査を実施をして、生息マップの作成ということに取り組んでいるところでございます。
   今後、この調査結果も踏まえながら、市町村の主体的な取り組みを支援をいたしますとともに、地域の協議会との連携を図りまして、捕獲、防護の両面から総合的かつ効果的な対策を実施して参りたいと考えてございます。


(4)鳥獣害対策事業の拡充について
《質問》 松坂英樹 県議
   4点目に、県単独事業である鳥獣害対策事業の拡充について伺います。県単事業の防護柵は、1メートル当りの単価が900円で設定されています。イノシシ用の低いメッシュ柵や電気柵であれば充分ですが、近年のシカ被害にも対応するために、少し背の高いメッシュ柵を設置しようとすれば1200円程度かかるといわれています。県が3分の1、町が3分の1、地元が3分の1の負担ということで地域で事業を計画しても、設定単価が限度となって県300円・町300円しか出ないので、残りの地元負担が600円となり、約束が違うという声が出るようです。今後は、シカ対策もかねた柵も必要なところが増えてくるでしょうから、設定単価の引き上げや何種類かの単価設定をするなどメニューの充実が要望されています。
   この他にも、今年度の予算枠は要望が多くてすぐに一杯になってしまったことから、事業費の増額を求める要望、補助率アップの要望などを、地域住民や市町村担当職員からお聞きしました。県民の切実な声にこたえて、今後ともいっそう鳥獣害対策事業を拡充すべきではないかと考えますが、ご答弁を願います。


《答弁者》 農林水産部長
   中山間地域を中心といたしました被害の実態から見まして、その対策は、喫緊の課題であります。そういう中で、県といたしましては、厳しい財政事情の中ではありますが、市町村等の意向も伺いながら地域の実態に即した効果的な事業の実施ができるよう適切に対応して参りたいと考えてございます。


3、道路の災害対策と維持管理
(1)国道480号清水地内崩落災害について
《質問》 松坂英樹 県議
   さて、最後の3つ目の柱として、道路の災害対策と維持管理について質問をさせていただきます。
   さる9月1日、突然国道480号が有田川町清水地内で片側車線が崩落する災害がおこりました。配布資料に現場の写真を載せていますからご覧いただきたいと思います。
   有田川の流れがぶつかることによって、道路のコンクリート壁の根元が掘られたことによって、崩落したという報告を受けています。幸いにして崩落にまきこまれた通行車両や歩行者がなく、目の前で崩落を確認した地元の皆さんが適切な対応をしていただくなど、関係する人的被害がなかったことは不幸中の幸いでありました。一日も速い復旧対策を求めるものです。
 私も現場に足を運びましたが、想像以上の大きな亀裂に驚くとともに、なぜこんな災害がおきたのか?という思いがしてなりませんでした。近隣の住民の方にお話を伺うと、陥没していた舗装を最近やりなおしてもらったばかりだ、川底が掘れているという話が以前からあって県にも伝えていた、県の工事や管理はどうだったのか、などの声を聞きました。
 そこで以下3点を県土整備部長にお尋ねします。崩落後、これまで台風や大雨が奇跡的になかったことが幸いしましたが、台風14号も気になります。台風による大雨がくれば、残った片側車線も流出しかねない、2次被害の危険がある状況です。大雨が予想される事態となれば、緊急の応急対策するよう求めるとともに、完全復旧にむけて一日も速い工事開始と完成を求めるものですが、今回の国道崩落災害について、災害の原因分析と今後の復旧スケジュールをお示し下さい。また2年前の補修工事の際、河川による基礎部分の掘れ込みを調査していたのかどうかも明らかにしていただきたいと思います。


《答弁者》 県土整備部長
   路側擁壁の崩壊の原因につきましては、擁壁下面が河川により、深く洗掘され内部の土砂が吸い出され流出したものと判断しております。
   県では、9月1日の被災後ただちに、バリケード等の安全対策を実施し片側交互交通としました。それと合わせ、被災状況を調査し測量・設計を実施するとともに、台風に備え大型土嚢の製作を行っています。今後、早期に工事を実施し年内の復旧を予定しております。
   また、今回の崩壊箇所については、2年前の平成19年6月に県の通常パトロールで舗装面に沈み込み、ひび割れを確認し直ちに舗装補修工事を実施しております。
   その工事の際に、擁壁下面に多少の洗掘は認めましたものの道路本体は安定した状態であると判断し舗装工事を行ったものであります。


(2)同様の災害未然防止について
《質問》 松坂英樹 県議
 2点目に、県内にはこのような道路と河川が平行し、そして川の流れが当たっている所が数多く存在します。今回のような災害を未然に防止するために今後どう対応するのかお答え下さい。


《答弁者》 県土整備部長
   河川の水衝部に道路が当たる今回と似たような箇所については、今後、入念なパトロールを行って、舗装面に沈み込みとか、ひび割れ等異常が認められる場合には、河川への土砂の吸い出しの可能性も想定した調査を行い、必要に応じ河川への根固め工の実施などで住民の方々の安全・安心を確保するため、一層の注意を図ってまいります。


(3)道路維持管理の位置づけについて
《質問》 松坂英樹 県議
 3点目に、こういった災害を防ぎ、安全な通行を保障するために大切な、道路維持管理のあり方について伺います。近年、和歌山県では、道路予算にしめる国直轄負担金の割合が年々増えてきて財政負担が大きいと指摘してきましたが、道路維持管理の予算の方は、路線延長が増え、管理する対象もコストも増えているのに総額は抑制傾向が続いてきました。
 無駄な大型公共事業を見直し、こういった維持管理の事業量を適正に確保することはたいへん重要な意味を持つと考えます。道路という社会資本を大切に有効利用し、安全な通行を保障する生活に密着した公共事業です。またこれは地元業者にとっても、下請けでなく県から直接発注をうけられる事業であるという点では、地元経済効果もたいへん高いのです。
   県として、道路維持管理予算に対する考え方と今後の方向について答弁を願います。


《答弁者》 県土整備部長
   県におきましては、道路の機能を保持するため日常のパトロールや点検により道路の状況を的確に把握し、効率的で効果的な維持補修を適宜実施する様に努めております。
   また、限られた財源のなかで初期段階での手当や予防的な補修・修繕方法を採用することで中長期的な維持管理費の総額の縮減や施設の長寿命化を図るなど効率的な維持管理を行うことが重要だと考えております。
   道路整備が著しく遅れた本県にとって、幹線道路の整備が重要であることは言うまでもありませんが、それと併せ、今後、増大することが予想されます維持管理予算の確保にも努めてまいりたいと考えております。


《再質問》 松坂英樹 県議
   部長の答弁の中で、今回の災害の捉え方・県の対応は、どうにもいいわけにしか聞こえません。
 私自身も県議として、今回の崩壊箇所が、住民の方から「危ないで、ヒビ入ってるで、底ほれてるで」という声があったということなのに、災害を防ぐことができなかった。申し訳ないなと、もっとそういう地域の声をつぶさに聞いて伝えんといかんという不十分さを反省しています。
 ところが、部長の答弁を聞いていると、ちゃんと調べましたよ、ちゃんと直してましたよ、これからもちゃんとやりますよ。こんな風に聞こえて、なんだか人ごとなんですよね。
 もっと素朴に、反省というか、道路管理者として、技術屋として残念だ、くやしいという気持ちはないんでしょうかね。今から思えば、もっと継続して下の掘れ具合を見ておけばよかったなとか思わないんでしょうか。
 答弁は県に非はないんですという言い方に聞こえます。「県民の皆さんに、えらい悪かったなあ」とか思わんのですか。今回の災害を防げなかったことへの率直な想いというか反省はどうなんですか。再度答弁を求めます。


《再答弁者》 県土整備部長
   平成19年度に先ほど申し上げましたが、舗装面にひび割れや沈み込みを見つけ、擁壁下面にも多少の洗掘は認め、今回の様な大きな崩壊につながらないと当時判断し舗装補修の工事を行いました。
   しかしながら、それから2年たった今年9月1日に、河川によります洗掘が原因と考えられる擁壁の崩壊が発生し、住民の皆様に多大なご心配とご不便をおかけしていると深く認識しております。2年前のひび割れや沈み込みが起こった事と今回の現象との因果関係はわかりませんが、今回の事案の重大性を深く受け止めて、今後はさらに、入念なパトロールを行うとともに、住民の皆様からよせられる情報等も参考にして、少しでも異常が認められれば、土質工学・河川工学などのそういった知識も総動員し、原因の解明や適切な対策を実施して住民の皆様の安全・安心の確保に努めてまいります。

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09年9月議会
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09年9月県議会、松坂英樹 一般質問=9月18日
09年9月県議会、松坂英樹 一般質問=9月18日