2009年月県議会 雑賀 光夫 一般質問
 2009年9月16日

1.知事の「県行政報告会」について(感想)
2.「政権交代選挙」結果をどう受け止めるか
(1)「政権交代選挙」に示された民意をどう受け止め、県政にどう生かすか
(2)この間の「政策の競り合い」の功罪、特に高速料金引き下げ問題について
3.道路整備に際しての交通安全対策
(1)新しい道路供用前に安全対策を
4.医療トラブルの解決のために
(1)医療トラブルの相談体制と相談の実態について
(2)裁判によらない第三者的な調停機関
5.障害の多様化と特別支援教育について
(1)障害の多様化がすすむ学校現場での取り組みと人的支援
(2)支援学校のマンモス化と新設支援学校の見通し
6.冤罪問題について
(1)足利事件などから何を学ぶか
(2)海南市の方が虚偽告訴で苦しんだ問題について

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《発言》 雑賀光夫 県議
   議長のお許しを得ましたので、質問に入らせていただきます。

1.知事の「県行政報告会」について(感想)
   9月4日に、海南市で仁坂知事が参加される県行政報告会が開かれ、わたしも同席させていただきました。感想を申し上げたいと思います。
   知事とは、意見が違うこともありますが、こうした報告会を開いて県民と直接対話する場を持つことは、大変よいことです。いいお話もありました。
   レジメの中で、「暫定税率廃止騒ぎ」という表現があったことは、少し気になりましたが、目くじらをたてることもないでしょう。
   質疑の時間は少なかったのですが、大雨が降った場合の浸水の心配だとか、県道秋月海南線の拡幅だとか、身近な要望が出されたのが特徴でした。
   特に秋月海南線について知事は「しっかりお聞きしました」とお答えになりました。多分、そのときはどこか分からなかったと思うのですが、(知っておられたら、失礼しました。)地域の懸案、強い要望です。こういう声をしっかりお聞きになることに重点を置いて、「行政報告会」を開かれたらもっと良かったかもしれません。以上、感想です。


《答弁者》 知事
   行政報告会にご出席いただきまして、ありがとうございました。ひとつだけ、県道秋月海南線につきましては、私は多分、ひょっとしたら20回ぐらい走っていると思いますので、よく存じております。狭い道で、しかもあそこに頼るところが非常に大きいので、これをなんとかせないかん、ということが宿題となっていることはよく存じあげております。


2.「政権交代選挙」結果をどう受け止めるか
《質問》 雑賀光夫 県議
 さて本論です。質問の第一は、「政権交代選挙」結果をどう受けとめるかという問題です。
 長い自民党を中心にした政権がたおれ、本日、民主党を中心にした内閣が組閣されます。歴史を画する選挙であったといっても言い過ぎではないでしょう。ことは国政の問題ではありますが、私たち県政にたずさわる者としても、この政治の激変をいろいろな面から考える必要があります。

 まず第一に、このたびの政権選択選挙に示された民意をどう受け止めるかという問題です。多くの論者が一致しているのは、この選挙で吹いた風は、「現政権の政治は終わりにしたい」という「政権交代」の風であって、民主党の政策がかならずしも国民からすべて支持されているわけではないことです。
   私は、これまで雇用や社会保障など国民生活を犠牲にして財界の大もうけの応援し、その横暴を許してきた政治、アメリカとの軍事同盟絶対の政治が国民から見放されたと思います。
   私たちは、その根本を改め、大企業から応分の税金をはらっていただく、アメリカへの思いやり予算を聖域とせずメスを入れることができる共産党の役割を訴え、「政権交代」の嵐の中でも、現有9議席を維持することができました。政権交代したことは一歩前進、新しい政治過程がはじまると評価しています。
   これまでの政治への反省から生活保護費の母子加算復活、後期高齢者医療制度廃止、労働者派遣法抜本見直し、障害者自立支援法の応益負担のみなおし、高校授業料無料化など国民の切実な願いが、民主党のマニュフェストにも取り込まれたことには、その実現に全力をあげたいと思います。
   知事にお伺いいたします。知事は、このたびの総選挙で、「政権交代」の風が、なぜこんなに大きくなったとお考えでしょうか。閉塞感といわれますが、なぜ閉塞感を感じたのでしょうか。国民のみなさんの声をどううけとめ、県政にどう生かしていかれるのでしょうか。


《答弁者》 知事
   私は、昨日も御答弁申し上げましたように、度重なる政府側の不祥事に加えまして、それまでの政権が取り組んできた政策が、100年に1度といわれる経済危機に伴う失業者の増加とか、所得格差の拡大とか、あるいは地域産業の疲弊などに起因する経済面、生活面での不安感、閉塞感を払拭するに至らず、多くの有権者が、こういった現状を、政権を代えることで打破したい、そういう風に考えた結果であろうと考えております。
   県政においても、県民の皆様が望んでいることは、私は基本的に同じであると考えております。和歌山県は、近年栄えてきた東京や、あるいは発展の著しい地方ならばともかく、経済的にも、あるいは社会的にも、閉塞感に悩んできた、そういうような苦しんできた地域だと思います。また、前知事の逮捕等々いろんな不祥事がありましたので、行政の不信感もあったと思います。
   従って和歌山を変えること、これが私に課せられた任務であると考えておりました。従って、そのために、不祥事をなくして信頼できる県政を確立するために努力してまいりました。また、少子高齢化とか、過疎化とか、そういうものの進行、経済の停滞など、特に和歌山は取り残されて停滞してきた、つらい現状がございますので、それを少しずつでも変えて、県民の皆様が将来への展望をもっていただくことができるような県づくり、県政づくりに努めてまいった次第であります。
   このような現状打破は、今始まったばかりであります。やめてしまうことはできませんし、持続をしないと、がんばって持続をしていかないといかん、と思います。
   しかし、肝心の県民に理解してもらえないと、力が発揮できません。それにそのやり方も、独善的ではいけません。不断に改善すべきところは直していかないといかんわけであります。
   そういったことから、行政報告会などを通じ、県の取り組みをできるだけわかりやすくお伝えするとともに、それを元にして、県民の皆様からご意見をいただいて、またそれを、県の施策に活かしていくということを、粘り強く続けてまいりたいと考えております。


《質問》 雑賀光夫 県議
   第二にお伺いしたいのは、この選挙の過程でうまれた、政策の競い合いの功罪です。
   自民党も国民の声に大変敏感になって、薬害肝炎問題や原爆被爆者認定の解決へと動きました。国民の願いが民主党のマニフェストにもとりこまれるなど、政治が民意に敏感になったことは、大変結構なことだったと思います。
   しかし心配するのは、国民の目先の利益だけで人気を得ようとする政策が生み出しているゆがみの問題です。「定額給付金」もそのひとつですが、今ひとつ、自民党も民主党も競った高速道路料金引き下げ問題について考えて見たいと思います。高速道路の一部を1000円に引き下げるという政策を実施したのは、自公政権でした。新しい民主党政権は、それをさらにおしすすめて、「高速道路無料化」をマニフェストにかかげています。
   高速道路料金引き下げは、利用者に喜ばれるでしょう。しかし、その結果、何が起こったのか。高速道路の渋滞がおこりました。南海フェリーの経営がやっていけなくなって、県としては補正予算を利用して、期限を切った支援策で、しのいでいるという状態です。高速道路が渋滞すれば、Co2排出がひどくなる。渋滞を解消しようとして、さらに高速道路を拡張しつづけるのでしょうか。
   私は、道路整備が遅れている和歌山県が、国に対して道路整備を求めることを否定しません。
   しかし、交通政策で私が重視したいのは、できるかぎりエネルギー効率のいい電車・乗り合いバス・船舶などの公共交通にシフトすることです。
   ところが、自民党と民主党の高速料金引き下げ競争は、それとは全く逆のことをしている。自家用車利用者の目先の利益におもねって、交通体系や環境問題についての政策を欠いていると思います。
   知事にお伺いします。高速料金引き下げの結果、南海フェリーは採算がとれなくなってしまった。県は、現在おこなっている補助金の支出をいつまでつづけていくことができるのでしょうか。知事は国の補助を求めていますが、その見通しはいかがでしょうか。私は、交通政策なしの場当たり的高速料金引き下げに問題があったと考えますが、知事のお考えはいかがでしょうか。


《答弁者》 知事
   私は高速道路料金の値下げ、あるいはこれを究極的に突き詰めると無料化ということかもしれませんが、国民あるいは県民の物の輸送や観光などのコストが下がり、その限りにおいては、プラスに評価することだと思います。
   しかし、高速道路料金の値下げのためには、その財源としての税金が投入されているわけで、国が本来そうした政策をとるときには、国の責任で行った施策ですから、他に与える影響を考慮して必要な施策を講じる必要があるわけであります。
   現に高速料金の引き下げによって、和歌山県が非常に大事にしております南海フェリー、これはあまり実現していない第2国土軸の唯一の手がかりというような形なのですが、徳島と和歌山を結ぶ大事な公共交通であります。これが、経営としては危殆に瀕するということになっております。
   政府の首脳によって決定されたものについては、政府の資金によって行われたわけですから、それならば競争条件を同一にするということもまた政府の責任ではないかということを、国土交通省を中心にして訴えて参りました。
   自分の業界を守るということは国土交通省や中央官庁の本来の仕事ではないかと、それが政府の施策によって行われたものならば、その施策を少し直し、改善をして、自分の業界を守るために必要なことをするのがあなた方の努めではないかということも、当時の事務次官や担当局長に申し上げました。
   しかしながら、なかなかそうは実施されなくて現在に至っている次第であります。これを放置しておきますと、徳島県や和歌山県は特に打撃を受けます。
   したがいまして、和歌山県民や徳島県民が許してくれる範囲内において、競争条件を同一化するように近づける。これは完全ではありませんが、近づけるように支援を行っているところであります。
   今回、この高速料金の無料化の問題も議論になるようであります。鳩山さんは官僚まかせにはしないとおっしゃっていますので、こういう一つの政策を行ったら何がどう悪影響がでてくるのかということも考えて、立派な政策をしていただいて、二度と南海フェリーが泣くことがないようにしていただきたいと考える次第であります。


3.道路整備に際しての交通安全対策
《質問》 雑賀光夫 県議
   質問の第二、道路整備にかかわる交通安全対策についてお伺いします。
   海南市東部から紀美野町へのバイパス道路が野上厚生病院まで供用されるようになりました。
   海南市から紀美野町にはいったばかりのところに交差点ができました。近所のみなさんは「この道路が開通したら交差点で事故がおきる。」と言っておられる。さっそく、県海南工事事務所に電話を入れ、「一旦停止を強調するような道路標示を」とお願いしました。
   開通したあとも、何度も安全対策を要望しました。そして7月15日の朝、40歳ぐらいの女性が単車で乗用車と衝突してなくなったのです。すぐに警察本部と連絡を取りました。
   その日の午後、たまたま「国道370号推進協議会」がありましたので、私は、その事故のことで安全対策が後手にまわっていることを指摘しました。藤山県議・尾崎県議も同席しておられましたから、私の発言を、私よりもっと強い言葉でフォローしていただきました。
   そのあと私は、お花を持って事故現場に向かいました。そこへ、私のケイタイ電話が鳴ります。県警からです。「公安委員会では手続きが済んで、一旦停止の表示を業者に発注しています。」
   私は「ああ、もう数日早かったら」とため息をついたことでした。地域のみなさんは、よくおっしゃいます。「大きな事故でも起こらないと警察も行政もうごかんよ」と。私は、「そんなことはない。手続きを急いでもらっているんです」と説明をしてきたのですが、こんども「それ見たことか、人が死んだら3日後に一旦停止を書きに来たやないか」と言われそうです。

   そこで警察本部長にお伺いいたします。
   第一に、新しい道路が供用される場合、その前に安全について検討し、供用と同時に一旦停止が必要ならその指定・表示をおこなうことができないのか。今後、このたびの事故を教訓に、徹底されてはどうかと思いますが、いかがでしょうか。


《答弁者》 警察本部長
   交通規制を実施する場合は、道路の状況・交通流量などの実態調査を行い、規制場所や種別に応じて道路管理者との協議や地域住民等の意見を聞くなど事前調整を行って、その必要性を十分検討した上で実施するように努めております。
   今後も交通規制を必要とする箇所につきましては、関係者と協議し、できるだけ早く対応するように努めてまいりたいと考えます。


《質問》 雑賀光夫 県議
   第二に、一旦停止の表示を、定例の公安委員会の会議を待って認可しなくてはならないものなのか。「一旦停止」などについては、現地警察に権限を委譲し、速やかな対応をしていただきたいと思いますがいかがでしょうか。


《答弁者》 警察本部長
   道路交通法によりまして、警察署長が行うことのできる交通規制は、例えば、道路工事、祭礼、崖崩れによる通行止めなど一時的なものに限られておりまして、通常の交通規制につきましては、公安委員会が行うこととされております。
   なお、公安委員会の行う交通規制のうち、一時停止等の定型的なものにつきましては、規制実施までの期間短縮を図るため、交通部長の専決となっておりますので、今後とも迅速な実施に努めてまいりたいと考えております。


要望》 雑賀光夫 県議
   私が質問要望したことは、すべてやることになっていますというのが、答弁の中身でございます。それなら、どうして、住民の皆さんがいらいらし、私がとりあげたような、安全対策の遅れがおこったのか。
 「必要性を十分検討した上で実施する」というが、検討する時間があるのに、検討していない。道路が供用されてから検討が始まる。これではだめだと申し上げているわけです。今日は、警察本部長にお伺いしましたが、道路管理者が早く警察との協議を申し入れなくてはならないという問題もあるのかもしれません。
 申し上げている問題は、「こんな問題をわざわざ本会議で取り上げるほどのことか」と思われるような、ある意味でささいな問題かもしれません。しかし、同じことが繰り返されて住民はうんざりしている。再質問はしませんが、こんな遅れを出さないようにしていただきたいと申し上げておきます。


4.医療トラブルの解決のために
《質問》 雑賀光夫 県議
   質問の第三に、医療トラブルにかかわってお伺いします。
 NHKテレビで医療過誤の裁判のことが放映されました。串本の方の事例でもあり、途中からでしたが視聴いたしました。私自身が、医療過誤の問題で相談を受けており、どうしたものかと思いあぐねているという事情もありました。
 その終わりのほうで、女性の弁護士の方が、「こういう裁判ではなく、医療機関が説明責任を果たしていけたらいいんですが」とおっしゃっていたのが大変、心に残ったわけでございます。
   私が相談にのって解決しあぐねていた問題というのは、ある整形外科の問題です。無理なマッサージをされたと言われます。
   訴えられた方が元院長先生に出した手紙の控えによりますと
「昨年9月20日、救急車でお世話になり、あれから1年近くなりましたが、毎日痛く、うずきに耐えるのに頭がおかしくなってきました。
   杖に縋って歩いても十分とはもたず、夜はぽんぽんに腫れ、膝から下が足先までパイプが入っている状態がずっと続きます。
   …もう限界です。先生、助けてください。」
   私は、円満解決を得られるように、事務長さんに何度もお電話し、納得のいくような説明をしてあげてくださいとお願いしておりました。
 その後、訴えの方からのお手紙です。
「昨年先生にお願いした病院の件ですが、二ヶ月経っても病院の事務長さんから連絡がありません。…先生からもう一度交渉してください。」
 そこで、県庁医務課にも相談に乗っていただいたのですが、今年の3月に次のような手紙です。
「事務長から呼び出しがあって、2月に訪問しましたが、一ヶ月経っても何の音沙汰もなく、県医務課に相談すると電話で尋ねてみたらとのことでしたので電話しましたら、書面にて返事しますとのことで、こんな書類がとどきました。こんなだったらもっと早くできるのにとつらい気持ちになりました。書面のコピーを同封します。」
   事務長名の文書が添付されています。
「当初の入院の目的である骨折自体は治癒いたしましたし、現症は、骨租しょう症・骨萎縮・下肢筋肉低下等によるものと思われますが、これらは容易に治療の効果をあげることのできるものではありません。決して治療過誤によるものではありません。(云々)」
 この間、対応は事務長などであって、院長なり医師が対応して患者さんの体を見たり、カルテやレントゲン写真を取り出して医療的説明をするなどはしていないそうです。
 この問題が医療過誤であったのかどうか、断定できません。しかし、もう少し血の通った対応があってもいいのではないかと思わないではいられません。
 専門家を含んだ行政機関が、話し合いの調停にはいってできるだけ円満に解決するようにはできないのだろうか。

 そこで、福祉保健部長にお伺いいたします。
第一.「医療トラブル」について、県としてどういう相談窓口を開いておられるのでしょうか。相談の件数、相談への対応はどうなのか、医療機関との話し合いを取り持つことまでできるのかお伺いしたいと思います。


《答弁者》 福祉保健部長
   県では、医務課及び各県立の保健所に「医療安全相談窓口」を設置し、患者やその家族からの医療に関する相談に対応しているところでございます。
   直接医療機関との話し合いの場を取り持つことは行っておりませんが、患者と医療機関とのコミュニケーション不足によると思われるような場合は、医療機関に対し相談者に充分な説明を行うよう助言しております。
   また、医療過誤等の疑いがある場合の法的な相談につきましては、月2回無料の弁護士相談を行っているところです。
   平成20年度の「医療安全相談窓口」への相談件数は、519件あり、そのうち医療内容の疑義等に関する相談は、107件、また弁護士相談の件数は46件となっております。


《質問》 雑賀光夫 県議
第二.医療トラブルについて医療機関と訴える側の間に入れる専門家を含んだ第三者機関があればいいがと思うのですが、いかがでしょうか。


《答弁者》 福祉保健部長
   裁判によらない第三者的な調停機関につきましては、高等裁判所が所在する地域の弁護士会が、医療の分野においても裁判を行わずに、問題を解決する裁判外紛争処理を進めていると伺っております。今後、その処理状況をみながら、和歌山弁護士会等に働きかけて参りたいと考えております。
   県といたしましては、患者と医療機関が信頼関係を構築できるよう医療安全相談、医療情報の提供の充実に努めて参ります。


5.障害の多様化と特別支援教育について
《質問》 雑賀光夫 県議
   質問の第四として 障害児教育・最近は特別支援教育と呼ばれているものについて、いくつかお伺いいたします。
 先日、ある小学校の特別支援学級の様子をお伺いいたしました。その学級は、児童数が8人、1年生から6年生までひろがっています。普通学級なら2学級に分かれるのに、特別支援学級では、学年というものが認められないので、1学級なのだそうです。
 また、学校現場で、「大変だ」といわれるのは、「障害の多様化」といわれる問題です。
 学習障害LDということが言われ始めたのは15年ぐらい前だったでしょうか。そのころは、当時の文部省もこうした問題への認識が薄く、こうした子どもを持つお母さん方が運動を始められたと思います。
 その後、文部科学省レベルでは、平成13年に「21世紀の特殊教育の在り方について」という報告がまとめられ、障害の重度・重複化の問題とともに、学習障害、注意欠陥・多動性障害などの問題に言及しました。また翌年の平成14年の全国調査で、いわゆる「気になる子」が、全児童の約6、3%にのぼることが明らかにされました。そして平成16年には、発達障害者支援法が国会で全会派一致で可決されました。
 このように、15年ほど前に比べて、文部科学省の認識も進み、発達障害が認知されるという点では大きな前進があったと思います。

   そこで教育長にお伺いいたします。発達障害への学校現場での取り組みはどう進んできているのでしょうか、教育委員会は学校現場の取り組みをどう支援しているのでしょうか。
   ところで、それにふさわしい学校現場への定数など人的配置はすすんでいないように思われます。
 先に申し上げた小学校1年生から6年生まで広がる8人の多学年学級の定数についての今後の考え方、さまざまな発達障害児への対応のための人的措置について、教育長のお考えをお伺いいたします。


《答弁者》 教育長
   県内の小・中学校では、特別支援教育を推進するための校内委員会の設置や、障害のある児童生徒一人ひとりについて指導の目標や内容、配慮事項等を示した個別の指導計画を活用するなど、一人ひとりの実態や教育的ニーズの的確な把握にもとづく継続的な指導・支援を行うため、校内体制の整備を進めております。また、県教育委員会では、こうした子どもたちへの指導・支援のより一層の充実を目指しまして、平成20年度に、具体的な指導の手立てやポイントをまとめました「発達障害児指導事例集」を作成し、県内全ての学校でその活用を図っているところでございます。
   人的支援についてでございますが、特別支援学級は、「知的障害」、「自閉症・情緒障害」など、障害の種類に応じて設置をし、国の基準で1学級の児童生徒数が8人と定められておりますので、同一障害種別の場合は、学年をこえて1学級編制となってございます。ただし、本県では、6人以上の学級に対しましては、非常勤講師を配置しております。また、平成18年度からLD(学習障害)等の通級指導教室を開設し、現在、各地方に1教室ずつ、合計8教室を設置しております。
   なお、学校における日常生活動作の介助や、発達障害を含む障害のある児童生徒に対して学習活動上のサポートを行う特別支援教育支援員の配置につきましては、市町村教育委員会において措置されるよう引き続き指導、助言を行ってまいります。


《質問》 雑賀光夫 県議
   もうひとつは、支援学校の児童生徒数が、ふくれあがりマンモス化している問題です。紀伊コスモス支援学校でいえば、約10年間に児童生徒数が128人から228人に急増したとお聞きしました。
 こうした情況を生み出しているひとつの要因は、支援学校関係者の努力もあって、保護者のみなさんの支援学校への信頼と期待がたかまっているということがあると思います。さらに障害の多様化もあって、マンモス化ということが大きな問題になっているわけだろうと思います。
 私も先日、紀伊コスモス支援学校にお邪魔してお話を聞かせていただきました。教室が足りないので、大変苦労していらっしゃる。
 支援学校関係者のみなさんは、新しい支援学校建設をもとめて署名を集めていらっしゃいます。
 教育委員会としてこの現状をどう認識しておられるのか、どう解決されるのか、教育長にお伺いいたします。


《答弁者》 教育長
   紀伊コスモス支援学校、紀北支援学校におきましては、本年度も200名以上の児童生徒が在籍しており、過大規模化の傾向にあると認識しております。現在、紀北支援学校については、校舎の増改築にとりかかっているところでございますし、特に紀北地域の過大規模化を解消する方策につきましては、検討を行っているところでございます。


《再質問》 雑賀光夫 県議
   「発達障害児童指導事例集」、このたび事前に見せていただきました。
   15年前ぐらいから学習障害LDということが問題になり始めた。お母さん方が運動を始められたと申し上げました。当時、私が役員をしていた教職員組合の障害児学校部が学習集会を開いたとき、お母さんがたから「先生方も勉強してください」と訴えられ、パンフレットを買ったことを思いだしています。お母さんたちの運動が、行政をもうごかしてきたんだなあと思いました。
   また、定数法の不十分さはありますが、さまざまな人的支援がすすんでいることがわかりました。多学年にまたがる支援学級については、上限を引き下げるように国に働きかけていただきたいと思います。
 教育長に再質問ですが、答弁のなかにあった、市町村教育委員会で配置されている、特別支援教育支援員、どのていど配置されているのか、つかんでおられると思いますので、お伺いしたいと思います。


《再答弁者》 教育長
   小・中学校に1校1名を100%といたしまして、全県的には配置率45%というふうになっております。本年5月1日現在では、小・中学校で190名が配置されておりまして、前年度比プラス10.1%ということで、各市町村にも御努力いただいておりまして、これの拡充をお願いしているところでございます。


《要望》 雑賀光夫 県議
   市町村で配置されている、特別支援教育支援員の問題です。
   交付税措置されていると、市町村の財政が苦しいときには、教育予算が他に流用される場合がございます。
   10数年前のことですが、市町村の教育にかかわる交付税と実際の予算の関係を教職員組合で分析したことがありました。その結果を「100億円たりない」とビラにして訴えたことがあります。
   特別支援教育支援員の場合、現場で必要な場合、交付税措置いっぱいに配置されているのかどうかチェックしていくことも必要だと思います。私たちは、市町村の議員団とともにその充実をもとめていきたいとおもいますので、県教育委員会の側からも、市町村教育委員会としっかり連携して、すすめていただけるように、お願いします。


6.冤罪問題について
《質問》 雑賀光夫 県議
   質問の第五として、罪のない人が犯罪者にされるという冤罪問題をとりあげます。
   自白を強いられて有罪判決で17年間獄中におられた足利事件の菅家さんの問題は、ショックでした。何もしていない人間が、ある日、犯罪者に仕立てられ、自白を強要され、17年間も獄中につながれた。DNA鑑定の新しい技術で、無罪が証明されなかったらと思うと、寒気がします。
   しかし冤罪事件は、遠くの話ではありません。今年の1月15日の朝日新聞で「無罪判決」が報道された松本和也さんの事件です。今日、傍聴席にいらっしゃいますが、松本さんは、海南市で広告関係の会社を経営していて、海南民主商工会の会員でした。
   事業関係の争いがあり、会社をあらされて警察に届けたが捜査してくれないと、3年前に民商に相談にこられました。私も一緒に捜査要請にいきました。
   ところが、その松本さんが、相手から詐欺罪で告訴されたのです。郷里の三重県松阪市の警察で逮捕され、400日間も拘束されました。体をこわし、吐血するぐらい何回も自白を強要されたといいます。それでも松本さんは、虚偽の自白を拒否してがんばったのだそうです。
   検察側証人だった人が良心の痛みに耐えかねて「嘘の証言でした」と証言を覆して、無罪を勝ち取り、検察は控訴できなかったのです。そうでなかったらどうなっていたでしょう。冤罪事件の怖さを痛感いたしました。
   足利事件で菅家さんの問題は、全国的に大きく報道されただけに、国民的規模でその検証がはじまっているといえます。今月24日には、県弁護士会が主催して、菅谷利和さんをお招きした集会も開かれるようです。
   私が申し上げた松本和也さんの事件は、「無罪判決があった」という新聞報道がありましたが、ほとんど知られていません。
   私自身、松本さんがどんな目にあったかについて、国民救援会海南支部の総会とあわせて、松本さんの報告をお聞きして、はじめて知ったのです。
   松本さんは書いています。
   「松阪警察署にて128日間、接見禁止で留置され、厳しい取調べと自白強要され、苦しめられました。
   「お前は初犯やで。やったといえば帰れるぞ!」「お前は孤立無援や。誰も助けてくれないぞ!」「家族や子どもに会いたいやろ。早く認めて楽になれ!」
   まだまだあります。紹介しきれません。
   ここは国会ではありませんから、三重県の警察や検察の責任を追及することはできません。
   しかし、さきに申し上げましたように、松本さんは、告訴された相手側を「会社を荒らされた」と海南警察署に先に訴えているのです。訴えを受け止めて三重県警と共同捜査していたら、三重県警も、「嘘の証言」で松本さんを逮捕し、400日もとりしらべることにならなかったのではないかと捜査の中身を知らない素人考えですが思ってしまうのです。

   そこで警察本部長にお伺いいたします。
   第1点、松本さんが証言している取調べの実態は、足利事件の菅谷さんの問題も公になっている中では、十分ありえる話と考えなくてはならないと思いますが、警察のとりしらべにどういうことが問われているとお考えでしょうか


《答弁者》 警察本部長
   足利事件の捜査上の問題点につきましては、現在、警察庁において検証中であり、再審裁判も予定されておりますので、答弁は差し控えさせていただきますが、いずれにいたしましても、和歌山県警察といたしましては、法と証拠に基づき、引き続き適正な捜査を推進してまいりたいと考えております。


《質問》 雑賀光夫 県議
   第2点、松本さんの事件で、和歌山・三重の両県警では、連携した捜査が行われたのでしょうか。また松本さんの無罪と松本さんへの告訴の偽証が明らかになった現在の段階で、松本さんの被害届けについて、どう扱われるのでしょうか。


《答弁者》 警察本部長
   三重県の事件につきましては、三重県警察が告訴に基づいて捜査をしたものと承知しておりますが、海南警察署に申し出られました事案とは、まったく別事件であり、三重県警察から和歌山県警察に捜査の連携についての要請はございませんでした。
   また、本県警察において受理いたしました告訴につきましては、慎重かつ適正に捜査を遂げた上で、すでに検察庁に送付しております。


《要望》 雑賀光夫 県議
 足利事件については、「答弁は差し控えたい」ということで、それもやむを得ないかとも思いますが、警察というものは大きな権力を持っている。市民の安全を守るために、犯罪から市民を守るためにその権力を付与されているわけですが、それが間違って行使されたとき、大変な人権侵害を起こすことになる。それは警察に限らず、権力・権限をもたされているものが、つねに自戒しなくてはならない問題です。
   松本さんの最初の被害届けについては、新たに検察庁に送付したということです。ここは「慎重かつ適正に捜査をとげた」和歌山県警察本部のご答弁を信頼したいと思います。
   三重県警との共同捜査はなかったようで、これが殺人事件ででもあったら共同捜査本部でもおかれたのでしょうが、三重県警にとっては、たくさんある事件のひとつに過ぎなかったのかもしれません。起訴されても無罪になるということもそう珍しいことではないかも知れません。
   しかし、訴えられた者は、たまったものではありません。400日間拘束されて、自白を強要されたと訴えておられるのです。「自白の強要」を脇においても、無罪を勝ち取ったといっても、生活はどうしていったらいいのか。刑事訴訟法では、一日の補償は、12500円以下と決められています。400日間拘束されて、500万円ではたまったものではありません。
   和歌山県警察本部の責任ではありませんが、松本さんは、半ば警察権力からの被害者でございます。
   こうした立場の方が、前に訴えたことをとりあげてくれていたら、自分はこんな目にあわなかったのではないかという思いをもって、訴えにこられるとしたら、和歌山県警察本部としても、丁寧にどういう捜査をしたのか、松本さんの訴えを、警察レベルでどう受け止めているのかを説明してあげてほしいと思います。

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