2008年度決算 反対討論   松坂英樹
                                                         2009
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   日本共産党県議団を代表して、決算認定議案である議案第150号と議案第151号に対する反対討論をさせていただきます。
   2008年度は仁坂県政の長期総合計画1年目のスタートの年でした。長期総合計画に掲げられた「子育て環境ナンバーワンわかやまの実現」「セーフティーネットの充実」「健康長寿日本一わかやま」などのスローガンにもとづき、県民生活に密着した県行政がどう前進したのかが問われる1年でありました。
   08年決算では一般会計歳入5064億2820万円、歳出5012億6360万円で実質収支は28億9980万円の黒字となっています。地方交付税を補うものとして作られた「臨時財政対策債」は、交付税削減と財政難の中で発行がすすみ、全体の県債発行額のとうとう31%をしめるにいたっています。毎年の返済額も増えてきて、08年度は県全体の償還額合計の12.7%となっています。償還額は全額交付税措置されることに理論上はなっていますが、交付税総額が減らされている中では、交付税不足分を補うという臨時財政対策債がまた増えてしまいます。償還額が増えることで財政の硬直化が進み、県民に対する事業にまわす財源がへってくるという状況です。また、大滝ダムや住金沖堤防の国直轄事業負担金は152億円にものぼりました。国に対して地方税財源の拡充と一般財源総額の確保を強く求めるものです。
   県経済と県民生活は、昨年秋以降の経済危機の影響で厳しさを増しています。昨年末に社会的問題となった「派遣切り」にみられるように、県民の雇用環境や所得の悪化がすすみ、高校生の就職内定率の低下など深刻な影響が出ています。県として県民生活を支えるための努力は充分だったでしょうか。
   県内企業や経済団体に雇用確保の働きかけをしたことは評価できますが、一方で企業立地補助金を受けながら派遣切りをする企業などに対しての指導は不十分なものでした。
   県内中小業者の営業を守るため、制度融資を広く活用するには県信用保証協会の信用保証をいっそう柔軟・積極的にすすめるべきです。また、県民への支援は一部にかたよることなく広く行うべきで、排ガス対策の補助がトラック協会だけが対象の事業となったことは不十分でした。また、県による公の発注は、県内業者への発注率を高めるべきです。県内業者への発注率の低い県警本部などはいっそうの努力を求めるものです。
   充分な納税相談なしに地方税回収機構にまわされた県民から、財産の差し押さえに抗議の声があがっています。県は違法性が問われるような過度な差し押さえがされないよう厳しく指導すべきです。
   福祉や教育の分野ではどうでしょうか。子育て環境ナンバーワンわかやまの実現といいますが、県が打ち出した保育料や妊婦健診の県民負担を軽減する事業なども、「市町村事業」として行うというものであり、県の企画立案した事業としてふさわしい内容や補助率とすべきです。教育の分野でも30人学級の実現はいまだ先送りされています。

   健康長寿日本一わかやまをめざすといいますが、他県でやっている所もある後期高齢者医療制度の負担軽減はおこなわず、高齢化率も高く一人暮らし高齢者の割合も高い和歌山県なのに、県独自の手をさしのべる姿勢が見られませんでした。高齢者の住宅改修事業も年々限度額が下げられ使いにくくなる中で交付実績も下がっており、改善が求められます。
   特定健診、いわゆるメタボ健診の受診率は17.2%にとどまり目標の31%には程遠い結果でした。地震防災アクションプログラムの進行状況が報告されましたが、木造住宅の耐震改修など、なかなか進まない課題が固定化傾向にあります。ところが市町村事業を支援する県補助金は減額されています。市町村が家具固定など身近な震災対策に取り組めるよう一層支援をすべきではないでしょうか。
   こうした県民生活への支援の不十分さとは対照的に、大企業優遇の姿勢を指摘しなければなりません。これまでもコスモパーク加太におけるカゴメ加太菜園の土地賃貸代金が安すぎるということを指摘してきました。土地開発公社から1平方メートルあたり560円で借りてカゴメへ100円で貸し出す差額は県財政から補助している結果となっています。
   しかし、カゴメが07年から操業予定であった2期計画は08年度も実行されず、3期計画はとうとう中止すると発表、約40ヘクタールの計画が約20ヘクタールに縮小・半減されることになりました。当初、県は20年間で580億円の経済効果があると過大な評価で持ち上げ、それを理由に土地の造成費用20億円も県が負担し、カゴメへの賃料をたった100円に設定したのです。それなのに残り15年間が計画だおれになっても賃料等の優遇はそのままです。企業誘致のための様々な施策を否定するものではありませんが、負担増と予算カットを押し付けている県民への処遇と比較すると、大企業優遇・県民に冷たい和歌山県政の弱点を指摘せざるをえません。
   公営企業決算の土地造成事業会計においては、当初予算で企業用地売却による31億円を見込み、工業用水引き込みも和歌山市と事業化しておきながら、決算額はわずか4億円の売却にとどまりました。早期の用地売却と活用を強く求めるものです。土地造成事業では多くの売れ残り企業用地や、造成すらできていない塩漬け土地をかかえ、帳簿価格と時価資産との乖離が非常に大きくなっています。時価評価会計を取り入れるべきだと、昨年の決算委員会でも指摘され、監査意見も出されているのに、08年度も時価評価会計を実施しなかったことは問題です。説明責任を果たすという点でも、すぐに時価評価会計の導入を求めるものです。
   最後に、ゆがんだ同和行政の問題点も指摘せざるをえません。中小企業高度化資金の滞納問題では、この度の決算で26億4千万円もの大金が回収不能として不納欠損処理されており、不透明でずさんな融資の全容解明と真摯な反省なしの最終処理は、到底県民の理解を得ることはできず、認めるわけにはまいりません。当年度の償還は、経済危機もあいまって当初予算の計画にさえ程遠い状況に終わり、延滞法人33法人のうち償還率が10%にも満たない法人も5法人残されているという実態です。県議会附帯決議を重く受け止め、償還をすすめるとともに問題点を明らかにするよう求めるものです。人権課題現況調査や部落史編纂事業などの事業継続も問題があると考えます。

   以上を申し上げまして私の反対討論を終わります。


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09年12月議会

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決算反対討論をする松坂県議=12月16日、和歌山県議会