2009年12月県議会

奥村 規子 一般質問

2009年12月10日



1.後期高齢者医療制度について
(1)制度開始後1年8ヶ月を経て、県民の反応をどのように受け止め、制度の問題点を
   どのように考えているか

(2)短期被保険者証・資格証明書発行の被保険者への対応
(3)制度廃止の受け止めと国への働きかけについて

2.障害者自立支援法について
(1)応益負担についてどう考えるか
(2)報酬の日割り計算による施設運営への影響はどうか

3.高校生の雇用対策の強化について
(1)新規卒業予定の高校生の就職内定状況と対策
(2)求人企業・求人数の拡大と失業防止策について

4.保育所の充実について
(1)保育の現状をどのように把握しているか
(2)保育の質の向上に向けて取り組んでいること

5.紀州材の販路拡大に向けた家づくり支援の拡充について

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1.後期高齢者医療制度について
《質問》 奥村規子 県議
   議長のお許しを得ましたので5つの項目について質問させていただきます。
   1つ目は「後期高齢者医療制度について」お尋ねします。
 新政権は後期高齢者医療制度について「新制度ができるまで廃止を先送りする」という態度を示しました。
 制度が実施され1年8ヶ月を経た今でも、多くのお年寄りのみなさんが「なぜ年齢で区別するのかわからない」と疑問や不満、怒りの声がおさまりません。「年をとったら医療費がかさむのは自然の成り行き、それを病気する老人は悪いように言われて、経済的にも精神的にも生きる力を奪うものだ」と抗議の声を上げています。不服申し立ては、昨年は県で86件、全国で1万398件に及び、今年は県で71件あります。
 そもそもこの制度の根拠となる法律は「高齢者の医療の確保に関する法律」で、その目的は第一条に「(この法律は)国民の高齢期における適切な医療の確保を図るために、医療費の適正化を推進するための計画の作成と保険者による健康診査等の実施に関する措置を講じる」とあり、医療費抑制が最大の目的になっています。元の制度であった老人保健法は、第一条に「国民の老後における健康の保持と適切な医療の確保を図るため、疾病の予防、治療、機能訓練等の保険事業を総合的に実施し、もって国民保健の向上及び老人福祉の増進を図ること」となっており、高齢者の「健康の保持、適切な医療の確保」を目的としたものでした。これを後期高齢者だけの別枠の保険をつくり、医療費の抑制をはかるという仕組みに変えたものです。人権を無視した世界に例のない悪法と言わざるを得ません。こういった悪法のもとで、これ以上国民の犠牲を広げることはすべきでないと考えます。
 またこのまま継続すれば、保険料は2年ごとに際限なく上がっていきます。
 来年度は全国平均で約12%も保険料が上がるという事態となっています。国民の立場に立つならばすぐにやめるべきです。
 さらに、この制度には他にも問題があります。保険料滞納者への制裁として保険証を取り上げるとしていることです。一年以上の滞納者には正規の保険証は出さず、短期証や資格証明書に切り替えるというものです。
   和歌山市で、保険料の滞納で短期保険証が発行されている方の状況を聞きました。
 一人暮らしで88歳のAさんは満州からの引き揚げ者で、掛け金が捻出できずに年金はありません。後期高齢者医療制度が始まるまでは息子さんの保険に入っていたので、保険料を納める必要がありませんでした。この制度になってからは保険料の負担をしなければいけないということが分かりませんでした。その結果滞納状態になっており、短期保険証にも気づいていませんでした。今は滞納分も納め、通常の保険証を手にして、月々の保険料も納めています。しかし、住居や水・光熱費以外の生活費は息子からもらう2万円で賄っており、日々の生活には大きな負担になっています。食費に通院費、介護保険料などを2万円でやりくりしなければなりません。往診で入院を勧められても応じようとしません。Aさんは「最近何のために生きてるんかなと思うようになってきた」と言います。
 Bさんは75歳の誕生日がきて前期高齢者の妻と別保険になりました。年額40万円の年金の妻には5万円の国保料、Bさん本人には10万円の保険料がかかりますが、年金を担保にした借金の支払いにも困り、保険料を滞納しています。
   特養施設に入所しているCさんも自営の仕事をしていました。無年金で、短期保険証が発行されていました。
 79歳のDさんは病院に入院中です。息子さんと孫の3人暮らしで入院費は何とか工面できるということでしたが、本人は無年金です。
 いずれの方もぎりぎりの生活状態です。そのため保険料が払えない、あるいは家族とは別の保険になったことに気づいていない方もいました。
 厚生労働省が明らかにした短期保険証の発行数は(平成21年10月1日)時点で全国28,000件を超え、当県では507件もありました。12月1日時点では387件となっています。こうした短期保険証の発行を繰り返した後、資格証が発行されるとなれば大変な問題です。どんなに年金が少なくても、また無年金でも、すべての高齢者に保険料を課し、その結果払いきれない低所得の人たちの医療を奪う危険性のある制度は「姥捨て保険」と言われても仕方がないと思います。高齢者からの保険証の取り上げはただちに命にかかわる問題となります。だからこそ前の老人保健法では保険証を取り上げなかったのです。
 厚生労働省は10月26日、全都道府県にあて、資格証の発行には「悪質な人に限る」ということで厳格を期すように通知をしています。悪質かどうかの見極めを自治体ができるのか大変疑問に思います。
 他県には制度の理解ができずに滞納していた人が悪質とみなされ、無保険状態になっていたという事例もあります。
 そこで福祉保健部長にお尋ねします。

(1)制度開始後1年8ヶ月を経て、県民の反応をどのように受け止め、制度の問題点をどのように考えているか

 後期高齢者医療制度の開始から1年8ヶ月経ちました。県民のみなさんの反応をどのように受け止め、制度の問題点をどのように考えていますか。


《答弁者》 福祉保健部長
   後期高齢者医療制度につきましては、制度発足当初、被保険者証や保険料の賦課徴収に関する問い合わせや意見を多数いただきました。
   窓口である後期高齢者医療広域連合と市町村からは、最近は、保険料等に係る問い合わせ以外、制度に対する苦情や意見はそれほど多くはないと聞いております。
   この制度につきましては、各方面から問題点が指摘されてきたことは承知しておりますが、昨年6月以降、新たな保険料軽減措置の追加や年金からの特別徴収制度を口座振替との選択制へと見直すなど、きめ細かな改善策が実施され、県内の情勢といたしましては、概ね制度が安定してきた段階であると考えております。


(2)短期被保険者証・資格証明書発行の被保険者への対応
《質問》 奥村規子 県議
   また、短期被保険者証・資格証明書発行にあたって、被保険者への対応はどうなっていますか。「払えるのに払わない悪質な滞納者」をどのように見わけるのでしょうか。
   資格証明証は発行しないようにすべきではないでしょうか。福祉保健部長お答え下さい。


《答弁者》 福祉保健部長
   短期被保険者証の交付につきましては、保険料滞納者に対する納付相談の機会を確保するための制度であることから、保険料の分割納付など、その方々の収入や生活状況に応じた相談指導を行うよう市町村を指導しております。
   また、資格証明書につきましては、交付にあたり、滞納者の生活状況等を電話や個別訪問等により市町村が十分に把握した上で、後期高齢者医療広域連合が交付することとなっております。
   現在、資格証明書の交付実績はございませんが、国においては、原則として交付しないことを基本的な方針としております。
   県といたしましては、国の方針を踏まえ、後期高齢者医療広域連合に対して、資格証明書の交付により、必要な医療を受ける機会が損なわれることがないように、厳格な運用の徹底を指導しております。


(3)制度廃止の受け止めと国への働きかけについて
《質問》 奥村規子 県議
 次に知事にお尋ねします。
 新政権は新制度を検討するとして廃止を先送りにしていますが、世界に例のない差別法であり、ただちに廃止して老人保健制度に戻すべきと考えます。これが高齢者の願いであり生きる希望です。この制度の廃止をどのように受け止めているか、ただちに廃止するよう国に意見をあげる考えはないでしょうか。お答え下さい


《答弁者》 知事
   高齢化に伴い医療費の一層の増大が見込まれるなか、この制度は、国民皆保険制度を将来にわたり維持するため、若年世代と高齢者でともに支え合う制度として、そういう思想のもとに、設けられたものと認識しております。
   一方、高齢者を年齢で区分し、医療費増加に比例して保険料が増加するなどといった問題点が各方面から指摘されたことを踏まえ、国においては、平成25年度の施行に向けて、後期高齢者医療制度廃止後の新たな制度のあり方について、検討が開始されたところであります。
   新政権は、他の制度は拙速といわれるようなスピードで、判断をどんどんしておられますが、本件は平成25年度の施行に向けて、じっくり検討をしておられます。これはですね、本件のような根幹にかかわる、特に保険制度みたいなものはですね、大変難しくて、こちらを立てればあちらが立たんとかですね、そういうことになるということを良く考えられて、また、度重なる拙速な制度の見直しは、被保険者の方々と、それから、それを実施する地方行政、あるいは地方財政に不安と混乱を招くことが懸念されるためであると思います。十分な検討と準備を行った上で、新制度に移行する方針とされたものと理解しております。
   県といたしましては、県民の信頼が得られる制度となるように、この検討、国の動向を注視するとともに、必要に応じて、国に働きかけてまいりたいと考えております。


《再質問》 奥村規子 県議
 事例でAさんのことを申し上げましたが、その方のことをもう少し知っていただきたいと思います。
   Aさんは88歳で女性の方です。現在は一人暮らしをしていますが、20歳過ぎの頃から台湾のほうに渡り、そして(中国の)広東に行き、軍の賄いをしながら生活をして、その後終戦を迎えましたが、そのときには大変な思いをされました。当時は一人一人じゃなく、11人ほどのかたまりで夜も含めて逃げたわけですが、そのときに生まれたての子どもも一緒でした。集団の中で、小さい子どもを抱えながら逃げ回ったと言われていました。そして、子どもが泣くので川に捨てたということを言われるんです。一緒に逃げ回っている人たちの中で子どもが泣くとみんなにも危険がおよぶので、川に捨てざるを得ませんでした。自分の子どもは幸いにおとなしく泣くことがなかったので助かりましたが、そういった経験をしながら生き延びて戦後をずっと過ごしてきました。今のうちなら紀ノ川まで歩いて死にに行けるが、寝たきりになれば死ぬことさえできないとも言われていました。
   先ほど無年金と言いましたが、「こういう生活保護の制度もありますよ」という話もしましが、2万円を持って訪ねてくれる息子さんとの関係が切れてしまうんじゃないかという思いを言われていました。
   知事は先ほど、社会保障でみなさんが負担することについて、あちらが立てばこちらが立たたずになるからと言われましたが、それではこちらが立たないんですよ、高齢者の本当に大変な人が。せっかくこれを廃止するとなっている制度に対して、知事がどんなふうに思われているのかを私は問いたかったわけです。
   こういったお年寄りは別に特別なお年寄りではないと思うんです。このような方のことをどう思われているのかを再度質問したいと思います。

   それと、福祉保健部長にもう一度おたずねしますが、こういう方たちが短期保険証を受け取るわけです。先ほど短期保険証になった人に丁寧な相談をするといったことをお話されていましたが、短期保険証を発行しなければいけない時点で、この方たちは非課税であるとか、税金を納めている状況やいろんなことが分かると思うんです。そのときに、きちっと相談やいろんなことがお話できるチャンスでもあると思うんです。現在300何人ほどあると、これも分かっていることだと思います。資格証を発行するとなっているこの仕組は、そういう所得が厳しい人たちに対して非常に冷たい制度だと私は感じています。
   この資格証は、特に大変な人には和歌山県として発行しない、また短期保険証の場合は、発行する前に丁寧に相談をして、何らかの支援も同時に考えていくことで温かい政治になっていくんじゃないかと思うんです。

   私は知事の県政報告会にも行かせていただきましたが、先ほども政治は正義でなくてはいけないと言われたその思いを、社会保障制度を良くしていく中でぜひ心を寄せていただきたい。こちらが立てばあちらが立たずじゃなく、立たないその人の状況の中で支援をしていっていただきたいと思います。再質問は、先ほどの短期保険証の発行のあり方について答弁いただきたいのと、女性がこんな思いをしている状況に対して知事がどう感じ、どう思われるのか答弁をよろしくお願いします。


《再答弁者》 福祉保健部長
   短期被保険者証の交付につきましては、その交付前においても、市町村が滞納者の方と納付相談を行うということが必要と考えております。
   私どもとしても、市町村が、滞納者の収入や生活状況を把握し、保険料の分割納付など、その方の状況に応じた適切な納付相談に努めた上で、短期被保険者証を交付するよう、市町村と後期高齢者医療広域連合を指導してまいりたい、そのように考えております。


《再答弁者》 知事
   奥村議員がいわれた、Aさんという方に対する、同情とか、あるいは、その方を何とか救ってあげたいな、とか、そういうような気持ち、それから一般に言えばこういう方がいろんな事情でたくさんいらっしゃるのを何とか、全体としてね、泣く人がないように、見捨てないようにするということが大事なことであって、それをどうやって、何とかしていくかな、ということを考えようという意味においては、私は奥村議員に落ちるものではないというふうに思います。
   ただ、政治とか行政とか言うのは、それをどういう制度によって救い、その制度を作ることによってある目的を達するときに、他の目的、例えば、増税になったり、他の、なんといいますか、負担者の方が、不公平だと思われることの無いような、そういう制度を作ることによって、できるだけ多くの人を助けるというのが、多分、政治の提要であるというふうに思います。それが、私のような立場にいる人、それからまあ、奥村議員のような議員さん、あるいは、もっというと、国政を預かる人たち、そういう方々がほんとに真摯に考えなきゃいけない、というふうに思うわけでございます。
   でございますので、私は、先ほどのようなお答えをさせていただいた、ということでございます。


2.障害者自立支援法について
《質問》 奥村規子 県議
   2つ目は障害者自立支援法についてお尋ねいたします。
 2006年4月から障害者自立支援法が施行されました。福祉サービスや自立支援医療に導入された原則一割の「応益負担」が、この制度の根本的な矛盾・欠陥であることがますます明らかになっています。障害者が人間としてあたりまえの生活をするために必要な支援を「益」などとして負担を課すという「応益負担」は、憲法や福祉の理念に反すると考えます。重い負担のために、サービスの利用を抑制せざるを得なくなった障害者の方もいます。事業所に対する報酬単価の引下げや日払い化で施設・事業所の経営は苦しくなり、廃園に追い込まれた施設もあります。「福祉は人」なのに、福祉労働者の離職や労働条件の悪化が深刻になっています。政府も利用料軽減等を含む「特別対策」「緊急措置」を実施せざるを得なくなりました。
 新政権が誕生し鳩山首相が10月、国会の所信表明で障害者自立支援法の「廃止」を公約しました。長妻厚労相も、障害者自立支援法廃止と当事者の参画のもとで新法づくりをしてゆくことを約束しました。障害者のみなさんはじめ、県民の多くのみなさんの運動が実を結んだのだと思います。しかしここにきて新政権は、公約実現の困難さを強調するようになってきており、障害者施策についてもサービス利用料の応益負担の廃止やサービス事業者の収入源である報酬単価の引き上げ、障害者施設の経営悪化を招いている報酬の日割り単価の見直しなど切実な願いに反して先送りの姿勢が見られます。
 長妻厚労相は「4年間で応益負担から応能負担に変える新制度を創設する」と説明しています。しかし、新法の実現を一日も一刻も早くというのがみなさんの願いではないでしょうか。障害者や家族は、食事やトイレなど、障害者が生きていくうえで不可欠な支援を「益」とみなして利用料を課す負担は憲法違反だと裁判まで起こしています。障害者の福祉や医療は本来、無料であるべきです。県としても障害者の苦しみを改善する緊急対策を国に求めるべきだと思います。
 そこで福祉保健部長にお聞きします。

(1)応益負担についてどう考えるか
(2)報酬の日割り計算による施設運営への影響はどうか

 応益負担についてどのようにお考えですか。
 また、就労支援B型の施設に働く職員は報酬が日払い制のため、「利用者の顔がお金に見えてくることがある。こんな状況ではニーズに応じた支援が難しい、月額払いに戻してほしい」と訴えています。日割り計算による施設運営の影響をどのようにお考えですか。福祉保健部長お答えください。


《答弁者》 福祉保健部長
   まず、応益負担につきましては、障害のある方もサービス利用量に応じた負担と食事等の実費を負担して頂き、持続可能な仕組みとなるよう導入された制度であります。
   しかしながら、この制度改正が抜本的であったことから、国に対し利用者負担の見直しを要望してきた結果、大幅な負担軽減がなされたところであります。
   国におきましては、「障害者自立支援法」は廃止し、利用者の応能負担を基本とする総合的な制度が検討されているところであります。
   県といたしましては、持続可能な仕組みになるとともに、ニーズに応じた適正な制度として、障害のある方が地域で福祉サービスを選択・利用できるようになることが重要であると考えております。
   次に、報酬の日割り計算による施設運営への影響についてでございますが、障害者自立支援法の施行により、利用日数に関わらず計算される月額方式から、日割り計算による日額方式に改正されたことから、通所施設等において収入が減少致しました。
   この収入の減少による施設運営への影響が大きかったことから、国において、定員を超えての受け入れや通所施設の開所日数を増やすなど、弾力的な措置が講じられるとともに、法施行前の報酬額の9割が保障されております。
   また、本年度から5.1%の報酬単価の引き上げが実施され、施設運営は改善してきたものと考えておりますが、引き続き、円滑な施設運営ができるよう支援してまいります。


《要望》 奥村規子 県議
 今年、報酬単価の引き上げなど改善している部分もあると言われましたが、もともと非常に賃金が低かったところに改善されたということもあり、実際働いている人たちにとってはまだまだ実感できないところです。今の改善された中でも大変な状況であるという実態をぜひ掴んでいただきたいと思います。


3.高校生の雇用対策の強化について
(1)新規卒業予定の高校生の就職内定状況と対策
《質問》 奥村規子 県議
   次に3つ目の高校生の雇用対策の強化についてお尋ねします。
 国民生活の危機はますます深刻になり、失業率、有効求人倍率も史上最悪水準を記録しています。このような中で当然、高校生はじめ新規卒業生の就職も厳しく、和歌山労働局の10月末時点の状況調査では高卒生の求職者1,756人に対し求人数は1,167人、昨年より34%も減っています。製造業などが大きく減り、県内企業も県外企業も減少しています。求人倍率は0.66、就職内定率は県合計で55.6%、昨年同時期に比べ11.3ポイントも下がっています。女子は特に厳しく、10月末で48.6%と半分以上が決まっていません。
 今年の春の高校卒業生は216人が就職できませんでした。来春はそれより厳しい状況が予想されます。就職を希望する高校生が就職できないまま卒業していかなければならない、卒業と同時に失業という事態は日本社会・和歌山県の未来に係る重要な課題です。高校現場や保護者のみなさんはじめ関係者のみなさんも心を痛め、それぞれの立場や従来にも増して連携をしながら、就職を希望するすべての高校生に就職保障できるようにと必死に努力されています。
 また、高校生と直接対応する進路就職担当者も過重勤務になっています。補助教員の配置など予算措置をすることなど、県としても特別な対策が必要と考えます。
 新規卒業予定の高校生の就職内定状況と対策について、教育長にお尋ねいたします。


《答弁者》 教育長
   雇用状況の悪化に伴いまして、昨年に比べてさらに本年の就職状況は極めて厳しく、今後、就職が決まらずに卒業する生徒や、やむなく進学へと進路を変更する生徒が増える可能性があると懸念しております。
   県教育委員会では、和歌山労働局及び県労働関係部局等と連携をし、さまざまな対策を講じているところです。
   経済5団体に対する求人要請につきましても、7月に続いて10月に重ねて行いまして、雇用拡大の協力を強く要望してまいりました。
   また、就職が内定していない生徒に対しては、企業の合同面接会の機会を増やし、11月から県内各地で計6回開催しているところです。
   さらに、高等学校の就職担当教員等とハローワークやジョブカフェにおいて就職支援に携わっている支援員との連絡会議を設置いたしまして、就職関連情報を共有するとともに、こうした支援員等の協力を得て、生徒一人一人の希望を丁寧に聞き、求人情報と照らしながら、手厚く支援する体制を整えているところです。
   議員ご指摘の、就職を支援する人の配置につきましても、前向きに検討してまいりたいと考えております。
   今後とも、一人でも多くの生徒の希望が叶うよう、各学校とともに全力を挙げて取り組んでまいります。


(2)求人企業・求人数の拡大と失業防止策について
《質問》 奥村規子 県議
 次に商工観光労働部長にお聞きいたします。
 来春の高校新卒者の就職環境が厳しさを増している中、いくつかの県ではさまざまな対策が講じられようとしています。京都府では来年4月から高校新卒の未就職者を直接雇用し、職業訓練を受けてもらう支援事業を始めると発表しています。新潟県では医療介護分野に就職しやすくするなどの追加支援策を発表し、宮城県では高校生を採用する企業に1ヶ月のみですが一人15万円の奨励金を支給するとしています。卒業後の未就職者への支援は、県としても緊急に取り組むべき事項であると思いますが、どのような対策を考えておられますか。商工観光労働部長にお尋ねします。


《答弁者》 商工観光労働部長
   高校生の就職支援につきましては、卒業時までの就職支援を最重点に、関係機関と連携しながら、様々な対策を講じておりますが、議員ご指摘のとおり、高校生を取り巻く雇用環境は例年以上に厳しいため、多くの生徒が卒業時において未就職となるのではないかと大いに心配しております。
   このような生徒に対しましては、ジョブカフェわかやまに、緊急雇用創出事業臨時特例基金を活用したコーディネーターを追加配置し、ハローワークや教育委員会の就職支援員等との連携強化のもと、カウンセリングや企業訪問等を実施しながら、対応してまいりたいと考えてございます。
   また、将来の安定的な就職につなげるためにも、職業訓練の実施は重要な事項であり、今般、政府の追加経済対策に盛り込まれた、高校新卒者の職業訓練制度について情報収集し、その活用を図ってまいりたいと考えてございます。


《要望》 奥村規子 県議
 来春卒業される高校生が、非常に厳しい状況であることをおっしゃって下さいました。私も娘が就職するときには本当にいろいろと悩んだりしました。十分選択できるということではない就職状況の中で、今、保護者のみなさんも、何よりも当人が大変な思いをしていると思います。
   教育委員会資料の高校生の進路状況を見ますと、和歌山で就職する方が本当にたくさんいらっしゃいます。ここでは和歌山県内での就職率が、20年度は69.5%と書かれています。これから和歌山を背負い、和歌山を開いていく貴重な人材の方々を、できるだけ多くではなく一人一人を大切にするということで100%就職ができるように、県をあげて力を注いでいただきたいと強く思います。以前、京都で知事をされた方が「十五の春は泣かせない」と全員高校入学をと言われたように、「全員十八の子どもを泣かせない」というつもりで、ぜひ取り組んでいただきたいと切にお願いいたします。



4.保育所の充実について
《質問》 奥村規子 県議
   次に4つ目の項目です。保育所の充実について福祉保健部長にお聞きします。
 22年度の県の「新政策」の基本方向として、県民生活に「希望」と「安心」をもたらす取り組みを重点と打ち出されています。そして生活の「安心」を守る施策の展開の中の一つに、子育て支援の充実が掲げられています。
 いま、経済的格差による子ども家庭の貧困がすすんでいる中、先日、新政権が、経済開発協力機構(OECD)が発表しているものと同様の計算方法で日本の相対的貧困率、及び子どもの相対的貧困率を算出しました。最新の相対的貧困率は、2007年の調査で15.7%、子どもの相対的貧困率は14.2%と発表しました。2006年にOECDが、OECD諸国のなかで日本の相対的貧困率はアメリカについで高く15.3%であると指摘し、貧困という問題があらためてクローズアップされるようになりました。OECDの調査では、2005年の日本の子どもの貧困率は14.3%と報告されています。子どもの貧困は子育ての場である家庭環境の貧困であり、不健康・体力の低下・学力の低下・虐待を受けるなど様々な問題を生む背景になっています。それは子どもの希望・意欲・やる気を奪い、生きる力を奪っていくものです。子ども家庭への福祉にとって、最大の克服すべき問題ではないでしょうか。そういうことからも、子育て支援のより一層の充実が求められています。なかでも、子どもの豊かな発達を支え、県民のさまざまな保育要求に応えるなど保育所の果たしている役割は大変大きいと思います。子育て支援において大きな役割を担う保育所の充実・整備が必要です。
   そこで福祉保健部長にお尋ねいたします。

(1)保育の現状をどのように把握しているか
(2)保育の質の向上に向けて取り組んでいること

   和歌山県の保育の現状をどのように把握していますか。
   保育の質の向上に向けて取り組んでいることは何ですか。以上お答え下さい。


《答弁者》 福祉保健部長
   まず、保育の現状についてでございますが、保育所は、子どもの最善の利益を考慮し、その福祉を積極的に増進することに最もふさわしい「生活の場」でなければならないという理念に基づき、運営されるべきものと考えております。
   県所管の保育所の現状につきましては、そのような観点に立ち、毎年実施している指導監査の中で、その運営等について詳細かつ的確な把握に努めております。
   また、施設に改善すべき事項があった場合には、厳正に指導しており、改善の確認等も速やかに行っております。
   次に、保育の質の向上にについてでございます。
   保育の質の向上を図ることは、正しく保育所という現場で頑張って頂いている方々の取組如何にかかっており、そういう意味からも県では、職員の研修には力を入れてございます。
   特に、全ての研修を「幼稚園・保育所職員合同研修」として、経験年数別・担当業務別などで実施しており、このことは、就学前の児童の教育と保育に携わる職員同士が情報を共有し、専門性を更に磨くことに繋がっていくものと考えております。
   その他にも、食育を推進するための研修や、県職員が直接保育所に赴く研修を実施するなど、現場と一体となって取り組んでおります。
   なお、各保育所の設置主体に対し、外部評価の導入なども働きかけており、このような取組も、保育の質の向上に役立つのではないかと考えております。



5.紀州材の販路拡大に向けた家づくり支援の拡充について
《質問》 奥村規子 県議
   最後に5つめの項目です。紀州材の販路拡大にむけた家づくり支援について、農林水産部長にお尋ねします。
 県土の7割を占める森林は、かけがえのない役割を持っています。
 森林を守り育てることは、県土を守ることにとどまらず、地球環境の保全という課題への大きな貢献でもあります。そのためにも、もう一度林業そのものが産業として再生することが必要であると考えています。
 森林県である和歌山にとって林業は、製材加工から住宅、家具等への利用まで広いすそ野を持った産業です。
 また低炭素社会に向け、バイオマス燃料をはじめとして大きな可能性を持った産業であり、まさに、地域経済と地域社会を支えることのでき得る産業です。
 私は、林業が産業としてすばらしい潜在力を持っていると考えています。森林の保全整備から木材が広く利用して頂ける環境整備に至るまで、本腰をいれた振興を図ることが大切だと考えています。
 現在、間伐などの森林整備や路網整備、機械化など川上側への支援も強めながら、今後は川下側の木材利用、いわゆる出口部分の施策の充実が必要であると感じております。そこで、木材の需要先といえば何といっても住宅建築用資材としての利用がメインになると思います。そんな中で、県では、平成13年度から紀州材の利用を促進するため紀州材を使用した家づくりに対し、1平方メートルあたり2万円、1軒あたり最高20万円を限度として支援しているところであり、その申し込みは年々増加し、事業開始時に154件であったものが、本年度は406件と事業創設時に比べ約2.6倍にもなったと聞き、反響の大きさを表しているものだと感じているところです。
 しかしながら、家づくり支援事業は当初予算の範囲内で執行されており、毎年予算額を超える申し込みがあることから抽選で採択を決め、本年度分についても、先日、抽選会がおこなわれたと聞いています。
 せっかく紀州材で家を建てても、結果的に支援を受けることのできる方と、そうでない方が居るということは残念なことであります。
 私は、地域の木材がその地域で利用されることは、林業の再生のみならず、運搬による二酸化炭素の排出削減など地球環境保全の観点からも重要であり、県内での需要拡大施策として思い切って予算を振り向け、家づくり支援の拡充をすべきだと考えますが、農林水産部長のお考えをお伺いします。


《答弁者》 農林水産部長
   議員お話しのように、平成13年度から県単独事業として、乾燥紀州材を利用した木造住宅の建設に対しまして、20万円を限度とした助成を行ってございます。
   これまで、申込者数につきましては年々増加しておりまして、本年度は、約2倍の406名の申込みとなってございます。
   県といたしましては、厳しい財政事情の中ではございますが、今後とも、木材関係者、建築・設計関係者等の意見も聞きながら、紀州材を活用した家づくり支援に取り組んで参りたいと考えてございます。

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