2010年2月県議会 藤井健太郎 一般質問
2010年3月5日

1.補正予算、新年度予算と県経済
(1)県内事業者の受注機会の拡大と成果
(2)雇用創出の取組について

2.経済対策としての官公需のあり方
(1)よりきめ細かな発注を
(2)県産材、県産品の活用の促進
(3)適切な下請け単価、労務単価に

3.住宅関連施策の拡充を
(1)耐震改修助成の拡大、リフォーム助成の創設
(2)住宅関連施策を網羅した情報発信を

4.関西広域連合について
(1)県民の合意形成について
(2)将来の出口は
(3)国の事業の受け皿としての広域連合とは
(4)事業連携、一部事務組合との違いは
(5)緊急性のある課題は何か
(6)広域行政の基本的な政策の企画、交通、物流基盤整備計画とは

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1.補正予算、新年度予算と県経済
《質問》 藤井健太郎 県議
 年度末を迎え、雇用や収入の低迷が続き、県民のくらしをとりまく状況はあいかわらず厳しいものがあります。中小零細業者の売上も落ち込んだままであり、深刻さを増しております。
 新年度、国の施策では子ども手当、高校授業料無償化、農家への戸別所得補償など家計への応援がされる一方、社会保険料の引き上げ、税の扶養控除の一部廃止、縮小による増税が保育料など福祉制度の負担金へのはねかえりが、将来、家計へどのように影響してくるのか、不安材料が残されている面もあります。
 国の新年度の経済見通しでは、名目成長率0.4%、完全失業率5.3%、雇用者報酬マイナス0.7%、民間最終消費支出は名目でマイナス0.2%と生活の実感としては、デフレ基調が続くことが予測されています。
 県の新年度の税収見込みでは、前年度当初比較で160億円の減、個人県民税、法人2税とも前年度に引き続き、2年連続の大幅減額の見込みとなっており、景気回復の厳しさを示しています。
 ところで、20年12月補正より今年の2月補正まで7回の補正予算で、高速道路4車線化の凍結分102億円を引いても、907億円が生活対策・経済対策としての社会資本整備、雇用対策など生活応援や地域活性化のための予算としてあてられ、新年度においても事業化がすすられています。これらの事業は単年度限りであったり、23年度までの3年間の事業と年限が限られていることから、最も効果のあがる活用方法が望まれています。
 家計への直接応援や県内の需要拡大へとつながるもの、県内事業者の仕事を増やすこと、県民の雇用の場を作り出すこと、ひいては県民の所得をひきあげていくことにつながる活用が求められています。
 そこで知事にお尋ねいたします。

(1)県内事業者の受注機会の拡大と成果は
 新年度予算についての知事説明の中で、きめ細かな社会資本整備を補正予算に盛り込むことで、県内企業の受注機会確保にも配慮したといわれています。今議会の最終補正に限らず、これまで幾度となく経済対策の補正が公共事業を中心に行われてきておりますが、県内需要の思い切った拡大をすすめるためにも、県内事業者の仕事を増やしていくことが必要です。
 県内事業者の受注機会の確保に具体的にどのようにとりくんできて、どのような成果があったと考えておられるのか。受注機会が拡大されても実際に仕事につながらないと意味がないわけで、発注に対する受注件数、受注金額などの割合はどのようになっているのでしょうか。
 また、新年度のとりくみをどのようにしていくのか。さらに県内事業者の受注機会の拡大にどのようにとりくむのか。期待される成果をどのように考えておられるのでしょうか。


《答弁者》 知事
   平成22年度において公共事業に対する国の方針が大きく変更されるなかで、和歌山県としては必要な社会資本整備を進めるため、国の補正予算等も最大限活用し、2月補正予算を含めた実質的な投資的経費としては対前年40億円増の総額1,193億円を計上しております。
   公共工事等の発注に当たっては、現下の経済・雇用情勢に対応し、県内事業者の健全な育成・発展を図るため、県内事業者で施工・履行が可能と見込まれるものについては、一部特殊な工事を除いて、原則県内事業者へ発注するということとしております。
   平成20年6月の新公共調達制度導入以降、このような考え方でやっておりまして、県内事業者の受注機会の碓保に取り組んでおるわけですが、平成18年度、これのときにはですね、受注状況は件数では県内が96%、しかし、金額では約79%でありましたが、平成22年1月、直近でございますが、末現在における受注状況は、件数で約98%、ちょっと上がったぐらいですが、金額で約94%と増加しておりまして、ほとんどの工事を県内事業者が受注している状況にあります。
   今後とも、県経済の活性化のためにも、県内事業者の受注機会の拡大に取り組んでまいりたいと考えております。


(2)雇用創出のとりくみについて
《質問》 藤井健太郎 県議
 同じく新年度予算についての知事説明で、離職を余儀なくされた方への雇用対策や高校生の就職支援強化など、新たなセーフティネットを講じていくとともに、雇用創出プロジェクトを引き続き実施する、といわれております。昨年12月末時点での緊急雇用創出事業の実績を国が発表しておりますが、それを見ると、本県は事業数、雇用創出数で、全国比較で最下位に甘んじている状況となっています。
 知事のいう雇用創出プロジェクトのこれまでの成果と新年度のとりくみはどのようなものなのか。緊急雇用、ふるさと雇用などの基金事業、福祉・医療、農業分野などでのU・Iターンへのとりくみなど、直接、雇用につながる事業の拡大が必要であろうかと思います。これから強化されようとする環境対策や観光事業などでの雇用創出への期待も聞こえてまいりますが、新年度、雇用創出のとりくみで強化される、または新たに雇用創出プロジェクトとして、とりくむようなものがあるのか。雇用創出の目標をどのように考えているのか。お尋ねします。


《答弁者》 知事
   長期にわたる厳しい雇用情勢を踏まえ、県といたしましては、国に先駆けた独自施策として、離職された方々と優秀な人材を求める県内企業とのマッチングを図る「和歌山で働きませんか」プロジェクト、そのほか兄弟分全部で4つございますけれども、そういうものを立ち上げまして、さらにこのような取組を福祉・医療や農業、地域資源を活かした産品づくりの分野にも広げ、これで4つになる訳ですが、雇用機会の拡大に積極的に取り組んでまいりました。
   また、国の「生活防衛のための緊急対策」、昨年でございますが、により創設された「ふるさと雇用再生特別基金活用事業」及び「緊急雇用創出事業臨時特例基金活用事業」を早期かつ最大限に活用し、一人でも多く雇用創出できるよう取り組んでまいりました。今、昨年と申し上げましたが、一昨年からのもございます。
   その結果、これらのプロジェクト関連として、直近の雇用創出の概数は、2,000人と把握しております。
   雇用の確保・創出は県政の最重要課題の一つであると認識しております。
   新年度におきましても、中小企業にとって優秀な人材を獲得する絶好の機会と捉えまして、人材確保に意欲的な県内企業等の更なる発掘、さらには創意工夫を凝らした両基金の積極的な活用により、就職氷河期と呼ばれる厳しい雇用環境を乗り切ってまいりたいと考えております。
   なお、議員ご質問の新年度の目標につきましては、21年度を相当程度上回る数値を目指して努力したいとこんなふうに考えております。


2.経済対策としての官公需のありかた
《質問》 藤井健太郎 県議
 物品の購入、役務の提供や工事請負契約などの官公需の発注にあたって、中小企業の受注機会の増大を図るために、官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律、いわゆる官公需確保法が制定されています。
 国においては、中小企業向け契約目標の設定と達成に向けた措置を契約の方針として毎年閣議決定を行い、発注情報の提供、受注機会の拡大、分離・分割発注の推進、適正価格による発注などの方針を定めています。
 県の官公需のありたかについて、今日の経済状況と予算の有効活用を考えていくうえで、県内中小事業者への発注のありかたにも配慮していくことが重要ではないかと思います。また、県内業者でできる仕事は県内業者への発注を、が原則でもあります。
 最近、県の教育施設や県内の自治体で物品の発注において、製造はISO認証工場と指定して発注をおこなっていることがありました。ある自治体では学校の本棚を作るのに設計仕様のなかで、紀州檜の集成材を使用すること、紀州産の証明をつけること、ここまではいいわけですが、しかし、製造はISO認定工場でとなっていました。木工品を作るのに県内でISO認証を取得している事業者がどれほどあるのでしょうか。これではせっかく県産材を使用しても県内事業者の仕事の機会をせばめてしまうことになります。また、設計仕様書の中で大手特定メーカーの金具品番を指定して発注されていることもありました。工事発注だけではなく、物品の発注にあたっても県内業者で製造可能なものなら受注の機会を広げるように、細心の注意を払っていくべきであろうかと思います。
 そこで改めて、県の官公需、なかでも予算額の大きい工事発注のありかたについての考え方や今後の方針についてお尋ねしておきます。

(1)よりきめ細かな発注を
 きめこまかな社会資本の整備をすすめるといわれていますが、それにはよりきめ細かな発注も必要ではないか。どのように考えているのか。
 受注が特定の事業者に集中することなく、より多くの事業者に仕事が行き渡るように発注の工夫を尽くすこと。
 そのためにもきめ細かな分離発注を行うこと。当然、職員体制の確保も必要となってきますが、特に多くの業種が参加する建築工事においての分離・分割発注のさらなる推進を求めたいと思います。


《答弁者》 県土整備部長
   舗装工事、電気工事等の専門工事では、一括下請防止や品質確保の観点から、可能な限り分離発注することを原則としております。
   また、工事の入札参加条件設定に当たって、可能な限り多くの事業者が参加できるような配慮もしてございます。
   今後とも、可能な限り分離発注に努めてまいりたいと思います。


(2)県産材、県産品の活用の促進
《質問》 藤井健太郎 県議
 県内の需要を高めていくためには、県内事業者の受注機会を拡大していくとともに、県内での生産物、製造物の利活用を高めていくことも重要な課題です。
 県産材、県産品活用についての考え方はどうか。
 どれくらいまで活用できているのか。新年度の目標の設定はどうか。さらに引き上げることへの考えはあるのか。
 これから整備しょうとする体育館、屋内プールをはじめ国体施設への紀州材の活用方針はいかがなものか。


《答弁者》 県土整備部長
   県内景気の浮揚と雇用の確保を図るために、県発注工事においては県産品等の優先使用に努めているところです。
   また、県産品等を積極的に利用した建設事業者に対しては、工事成績評定や総合評価方式において加点評価をしており、利用の促進を図っているところです。
   今後とも、県産材、県産品の更なる利用に努めてまいりたいと思います。
   特に紀州材については、国体関連施設の建設時にも利用に努めたいと考えております。


(3)適切な下請け単価と労務単価に
《質問》 藤井健太郎 県議
 適切な下請け単価と労務単価となっているのでしょうか。工事請負では下請けは1次下請けにとどまらず2次、3次、それ以上へと重層化しているのが通例であります。建設業をとりまく状況が厳しさを増すなかで、下請け単価において一方的な価格の押し付け、契約書がかわされていないこと、最低賃金を下回る労賃になっていることや支払いの遅延など、下請け事業者や建設労働者にしわよせがさらに広がっていくのではないか、懸念がされます。県発注の工事において、実態把握がどの程度までできているのでしょうか。
 検証していくシステムづくりも必要となってくるのではないかと思われます。
 国においては、昨年12月参議院で、国や自治体が発注者となる公共工事で働く労働者の賃金・労働条件を確保・改善するための公契約法制定を求める請願が採択され、法案が国会に提出される予定にもなっています。国に先駆け、条例を策定した自治体も生まれています。
 地域での建設産業の健全な育成と技術者の養成・確保という点からも、適正価格での発注であり、適切な下請け単価、労務単価であることが求められます。それは、公共工事の品質の確保を保証することにもつながってきます。どのように考えているのか。


《答弁者》 県土整備部長
   県では予定価格1億円以上の工事に「低入札調査基準価格」を導入して、工事の内容に適合した履行が行われているかどうか低入札の調査を行っております。そのなかで、応札者の見積書等が設計内容に適合しているかどうか、必要な経費が計上されているか、下請業者や資材納入業者の見積書が反映されているか等調査いたします。また、工事完成後、元請業者から下請代金の支払い状況等も報告していただいて、必要に応じて指導を行うこととしております。
   このように、工事の品質確保のために下請状況を確認しているところですが、今後とも、良好な元請下請関係に努めていきたいというふうに思っております。


《要望》 藤井健太郎 県議
 ひとつは公共工事の、物品も含めた発注の問題です。
 今、国の経済対策で予算が膨らんでおり、2月補正も含めて1,193億円、繰り越し分を入れるとざっと1,500億円近くになると思います。
 国としては今、公共工事は全体として抑制の方向で進んでいます。そのなかで今回の経済対策分も含め、新年度予算も含めてどれだけ県内事業者の仕事づくりをしていくのかが非常に大事な問題だと思います。
 県産材を使用しても「ISO工場でつくったもの」というようなことをされますと、県内の業者にとっては大変なんです。受注機会を広げることと、実際に仕事になるかどうかは別ですが、とにかく県内の事業者が仕事ができるような発注条件をきめ細かく点検チェックしていかないと、ふわーと流れてしまい受注機会が狭められてしまうことになります。その点はぜひ発注者においてきめ細かな配慮をし、できるだけ多くの事業者に仕事がわたるように最大限の工夫をお願いいたします。

 ふたつめに、そういったことで行政の仕事量がずいぶん増えてきておりますが、一方、行革プランで職員の定数削減がこれはこれとして進められてきています。その行革プランを作成するときは国の経済対策以前の問題ですから、その分がカウントされていないのではないかと思います。
 これだけの予算の事業を確実に執行していくんだ、という上で必要な体制は十分にとっていただきたい。きめ細かな発注をしていくためにもそれだけの職員がいるわけですから、十分配慮していただきたいと思います。


3.住宅関連施策の拡充を
(1)耐震改修助成、リフォーム助成について
《質問》 藤井健太郎 県議
 住宅着工戸数が激減してきています。所得が低迷を続け、住宅ローンの返済のことなどを考えると新築、改築などしばらく様子見の状況が続くものと思われます。
 そういうときこそ、住宅関連施策の拡充をはかっていくことが必要ではないでしょうか。
 すまいは人権ともいわれていますし、家計を応援することにより、県民の住環境の改善をはかるとともに、広い裾野をもつ建設関連産業の需要拡大にもつなげることができます。
 新年度、太陽光発電で2000万円、紀州材を使っての住宅新築、改築に4000万円の予算で個人に対する直接助成を継続して行うとしていますが、昨年と同額の予算となっています。双方ともに申し込み件数も増えていて、抽選となっているため競争率が2倍を越えるなど、助成制度の公平性が損なわれる恐れがあります。抽選制度をやめて予算の拡大こそすすめるべきであると思います。このことについては、今回は意見として述べておきます。
 耐震改修への助成と住宅リフォーム制度の創設について質問いたします。国の耐震診断への助成制度とあわせて耐震改修にとりくむ個人住宅に対して、県単独事業として60万円を限度額に耐震にかかる費用の3分の2を市町村と半分ずつ負担しています。昨年度からは国から改修費の11.5%の上乗せ補助が追加されていると聞きます。
 改修に対する助成制度ができてから6年が過ぎようとしていますが、利用戸数は400戸にも満たない到達です。昭和56年5月以前に建築された木造住宅で耐震診断の結果、評点が0.7未満の住宅について、評点1.0以上に、昭和45年以前に建築された住宅については評点0.7以上に改修することとされていますが、耐震改修は住宅のリフォームに合わせて行っている世帯が多く、平均200万円以上はかかっているという話も聞くところです。
 この際、耐震改修にかかる助成限度額の引き上げ、そして、昭和56年5月以降に建築された住宅についても、築後30年を経過し、リフォームの必要な時期にもきています。そういう住宅も助成対象に加えていくことを検討してはいかがでしょうか。
 また、住宅のリフォームに対する助成に取り組む自治体が広がりつつあります。住宅ローンに対する利子補給から直接助成に踏み切る自治体が増えつつあります。今年の3月から秋田県が利子補給から直接助成へとすすめました。工事費50万円以上で大手ハウスメーカーではなく、県内に本店をおく建設業者が施行することとし、工事費の10分の1、限度額20万円で、22年度7000戸を募集、予算12億6000万円で開始しました。住宅投資の経済波及効果に着目して始めたものですが、本県においても耐震改修への助成の拡大と合わせて、住宅リフォームへの助成制度を検討してみてはいかがでしょうか。


《答弁者》 県土整備部長
   まず耐震改修助成の拡大につきましては、今年度より設計費への補助制度と共に、高齢者の方などを対象として専門家を派遣して、様々な相談に応じたり改修プランの提案を行う耐震改修サポート事業を創設したところでございます。
   これら新たな施策の周知に努めてまいりましたが、今後は、耐震診断の結果が悪かった方に対して、個別に説明を行うなど、耐震改修の促進に、一層努めてまいります。
   住宅リフォームへの助成制度についてでございますけれども、耐震改修などそれぞれの施策目的に応じた、現在ある補助制度をご活用いただければというふうに考えてございます。
   今後も、それぞれの目的に応じた助成を通じて、耐震改修など促進に取り組んでまいりたいと思います。


(2)住宅関連施策を網羅した情報発信を
《質問》 藤井健太郎 県議
 住宅建設投資関連の施策、メニューが複数の部局にまたがって、それぞれ独自の取り組みがされています。環境生活部での合併浄化槽、太陽光発電、農林水産部での紀州材を使用しての家づくり支援、県土整備部の耐震改修、国の施策やバリアフリー化への融資制度などなど、多岐にわたっています。
 それらの制度を網羅した統一宣伝物の作成、広報の強化、相談窓口の設置など、今ある制度の総合的な活用を最大限はかり、少しでも住宅投資の促進へとつなげていく努力をしてもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。


《答弁者》  県土整備部長
   県の補助制度のほか、住宅金融支援機構などの融資や住宅ローン減税など、様々な制度があり、関係機関も多方面にわたってございます。
   そのため、制度を網羅している宣伝物の作成、広報の方法、総合的な相談窓口などについて、消費者の方々にとって、わかりやすく効果的になるように、関係部局と共に検討してまいりたいと思います。


4.関西広域連合について
《質問》 藤井健太郎 県議
 広域連合に参加を表明している大阪、京都、兵庫、滋賀、和歌山、徳島、鳥取の2府5県が、今議会に規約案の説明を行い、今年中に議会上程をいっせいに行うということです。
 関西広域連合の設立の目的は、東京一極集中とそれをすすめる中央集権体制を打破し、関西規模での自主・自立的な広域行政の実現と国の出先機関である地方支分部局の廃止後の受け皿づくりをすすめること、と説明されてきたように思います。
 広域連合が、果たして、県や市町村、県民にとって、くらしや福祉の向上、地域産業の活性化にどのように結びつくのか、県民の利益につながるものとなるのか、県民の声がどこまで届くのか、産業界をはじめ県民の中での議論が盛り上がらない状況にあります。
 県は説明責任をどのように果たしていくのでしょうか。県民の負担で新たな地方公共団体をつくっていくことになるわけですから、県民の理解を得ることが求められていますし、そのための説明責任を果たしていくことが必要です。
 そこで、積極的に参加を表明されている知事にお尋ねします。

(1)県民の合意形成について
 広域連合は、地方自治法での規定がされている地方公共団体の一つでもあり、地方自治の理念が発揮される必要があります。連合長も議会も住民の直接選挙で選らばれるわけではなく、その運営のありかたが問われてきます。つくる過程においても住民の合意形成に努力する必要があります。
@広域連合に市町村、県民の声を反映していくための手立てをどのように考えられているのか。
A県民の広域連合参加への理解をどのように得ていこうと考えているのか。知事は昨年6月議会で「県民の中でよく理解していただいてわかった上で、発足しなきゃいけないと考えている」と答弁されています。それから半年以上たつわけですが、わかった上での発足とは具体的にどのような状況を考えておられるのか。そういう状況になっているのでしょうか。広域連合発足に向けての住民の合意のありかた、どういう状況となることが必要だと考えておられるのか。

(2)将来の出口は
 入り口の姿は規約案で示されていますが、将来の出口はどのように考えているのか。
 出口は広域連合を解消しての道州制なのか、確たる将来の広域連合のありかたをどのように見通しているのか。設立案のなかでは、広域連合が道州制導入のステップになるのか、道州制にかわるシステムになるのかは、今後の検討課題とされています。
 知事は「関西広域連合は道州制をめざして設立するものではない」と議会答弁されてきましたが、大阪府の知事は府議会に「広域連合は最終的に道州制をめざす第一歩」と説明しています。
 広域連合と道州制は、法理上はまったく違う組織ですが、将来の広域行政のありかたとして、広域連合から道州制へ衣がえしていく可能性を否定することはできるのでしょうか。

(3)国の事業の受け皿としての広域連合とは
 目的の一つに、これが大きな目的だと思うわけですが、国の地方支分・部局を廃止して、広域連合が受け皿となることをめざすとされています。国が責任を負うべき仕事と広域連合で担おうとする仕事の区分、広域連合として提言していくのでしょうか。だとすれば、その区分について知事はどのように考えているのか。国が全国統一的に責任を担うべきナショナルミニマムとして実施すべき事業、憲法が国民に保障する基本的人権にかかわる事業など当然残しておくべきだと考えますが、どのように考えておられるのか。

(4)事業連携、一部事務組合との違い
 広域連合の実施する分野、事業ごとに参加するかどうかは自由ということになっています。不参加の事業については財政負担もありません。これでは、事業連携、一部事務組合と広域でとりくむ事業として何が違うのでしょうか。
 広域連合で当面の取り組みとされている防災、観光、産業、医療、環境などの事業をみても、事業連携、事務組合で十分対応できる事業と見受けられますが、県民生活にとってどのように違ってくるのか。また、徳島、鳥取の一部参加、政令市が参加していないことや半島振興でともに歩むべき奈良の不参加をどう考えるのか。

(5)緊急性のある課題は何か
 県域をこえて解決すべきさしせまった緊急性のある課題は何かということです。現在でも防災、医療など広域連携が取り組まれているところですが、広域連合でないと解決しない緊急性のある課題には、どういうものがあるのでしょうか。

(6)広域行政の基本的な政策の企画、交通、物流基盤整備計画とは
 設立当初の事務として、防災、観光、産業、医療、環境、資格試験、職員研修の7分野ではある程度、具体的な事業が示されています。その他として、広域にわたる行政の推進にかかる基本的な政策の企画、交通・物流基盤整備計画とありますが、これは国土形成計画の広域計画や大阪湾ベイエリア再開発をさしているのでしょうか。東京一極集中に対抗するための広域連合が権限と財源を手にしたとき、真っ先に大阪、神戸などの大都市に集中して、財源が投入されることも想像に難くないと思われます。


《答弁者》 知事
   広域連合について、まとめてお答え申し上げたいと思います。
   関西広域連合の設立は、本県の発展に必要不可欠である元気な関西づくりにつながるものと評価しておりますので、本県も設立当初から参加してはどうかと考えております。このためには、県民の皆様によくご理解いただかなければならない。最終的には、県議会でもご賛同いただく必要があります。これまでも「県民の友」、ホームページを通じて、関西広域連合設立の私どもが考える意義を広報して、ご理解いただきたいと思ってきたところであります。今後とも、いろいろやっていきたいと思っています。また、市町村には、適宜、情報を提供しておりますが、昨年10月には市町村長との意見交換を2回に分けて行いました。
   今後も、これまで以上にきめ細かく県民や市町村に周知を図ることで、ご理解を得てまいりたいと考えております。
   それから、関西広域連合は、府県の存在を前提にしております。それ自体として、道州制を目指すものではありません。ご質問では変わっていくことを否定できないということでありましたが、同時に変わることをビルトインしているものでもありません。
   関西広域連合の設置の目的は、関西における広域行政を担う責任主体を確立することと、それから、一部事務組合では認められていない国の出先機関の権限移譲の受け皿として、地域の自己決定・自己責任を果たすことでありまして、これは設立以降も変わるものではないと考えております。
   
関西広域連合が国の出先機関の権限移譲を受けて事務を実施する場合には、その事務について先ず仕分けを行った上で、地方に移管すべき事務について、広域連合で行う方が適当か、府県で行う方が適当なのかを議論する必要があると思います。また、事務を執行する際に必要となる財源の移譲については不可欠でありますが、人員の移管を受ける場合は、先ずは国で整理を行った上で、必要最低限の移管にすべきである。全部いただくということになると、当方で大変な行革を行っているわけですから、そういうものについては、厳しくやっていかないといけないというふうに思っております。
   また、現在、本県と不参加の奈良県等との連携事業については、広域連合が実施することになる事業との整理が必要となってくると思います。広域連合で行う事業がようやく固まってまいりましたので、既存の連携事業の整理について、現在、関係団体との協議を行っているということであります。
   なお、連携事業の整理を行う際には、住民サービスの低下を来さないという観点から、関係団体との調整を行ってまいる、そういうことであろうかと思います。
   県域を越えて緊急性のある課題についてということでありますが、今までも府県間連携で行ってまいりましたが、広域連合の設立により、これが一層充実、スピーディーなものになるというふうに考えております。例えば、東南海・南海地震などが起こったときに、どういう協力体制を取るか、いつ起こるか分からない災害に対する備えや対応に、いち早く検討して初めから備えておくということが、より決定的にやりやすくなるのではないかというふうに考えております。
   広域にわたる政策の企画や計画の策定といった事務事業については、現在、国で行われております。関西広域連合の設立案に例示として交通・物流基盤整備計画の検討と記載しておりますけれども、これについては、今まで県にまたがるから国でやるんだと言っていたのが、国の権限移譲の受け皿として、こういう広域連合があると便利だということであろうかと思います。そこで、国の広域計画についても、地域の自己決定・自己責任のもと、計画策定がしやすくなる、そういう計画策定ができるという体制が整うものと考えております。


《要望》
 知事は「小さく生んで大きく育てる」というような言い方をされていますが、そこのところが見えないから、分かりにくいのではないかと思います。
 国の権限と財源の移譲を受けるのが広域連合の大きな役割・目的だと思いますが、そのとき和歌山県にとってどういうことが起こってくるのか、果たして県民の利益につながるのかどうか、そういう点できちんとした担保ができるのかどうかがまだ定かではないということで、県民のなかでもなかなか議論になりにくい状況があるのではないかと思います。
 議会の同意で最終決まるわけですが、そこに至るまでに県民に説明をし、理解してもらい、分かった上で発足していくと知事が言われました。この分かった上でというのがどういうレベルで、こういうことになれば「分かった」と判断するのかということがあります。住民の合意形成に向けた努力を急ぐべきであろうと思います。
 そして、決して見切り発車とならないように、強く要望しておきたいと思います。

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