2010年2月県議会 予算特別委員会 奥村 規子 2010年3月12日
1.雇用対策について
(1)深刻な雇用危機にどのように取り組むか
2.保健予防活動について
(1)特定健診・がん検診の受診状況と
受診率向上の取り組み
3.高齢者施策について
(1)介護保険制度と地域支援事業の充実
(2)特別養護老人ホーム待機者への支援策
4.子育て支援策について
(1)安心こども基金の活用と施策の充実
5.和歌山下津港北港地区の南防波堤建設について
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1.雇用対策について
(1)深刻な雇用危機にどのように取り組むか
《質問》 奥村規子 委員
1番目の項目の雇用対策について知事にお伺いいたします。
知事は経済危機のもとで新年度予算編成の基本的な考え方として、県民誰もが希望と安心が持てる政策を重点的に進めてゆきたいとのべられています。そのためには社会資本の整備や人件費の抑制、事務事業の見直しの実施とともに、一般財源の節減に努力するとしています。国内の経済状況を示す内閣府の2008年度「国民経済計算」が昨年12月に発表され、雇用者報酬や企業所得などを合わせた「国民所得」は対前年比7.1%減と過去最大の減少幅を記録しました。08年9月のリーマンショック以降の急速な経済悪化をしめしています。「国民所得」の約7割をしめる雇用者報酬は、1997年度の280兆円から2008年度は262兆円へ、さらに2009年7月から9月期の速報値では253兆円と、この10年ほどで27兆円、1割近くも減少しています。当県の当初予算の県税の収入の落ち込みをみてもわかります。
「構造改革」政策により雇用破壊がおこり、派遣ぎりなどによる失業者の増加、正規雇用の減少と低賃金による内需の冷え込み、外需依存の産業構造と合わさって景気の悪化をいっそう進行させてきたのではないかと思います。
先日、青年のみなさんが市駅前で若い人を対象にアンケートをとりました。ほとんどの大学生が何らかの奨学金を受けており、返済や生活資金を得るためにアルバイトを掛け持ちしたりしています。働いている人はほとんど非正規の不安定な身分でした。なかには和歌山市内の大手企業に非正規で勤めていた若者が、会社が欠陥商品を製造しておきながら、なぜ自分がやめさせられないといけなかったのか今もわからないと言いました。本当に、わがことのように悔しい思いがします。
この深刻な雇用危機にどのように取り組むのかお聞かせください。
《答弁》 知事
厳しい雇用情勢が続く中、雇用の維持にがんばっている県内中小企業を資金繰り等の面で下支えすることが重要である。また、「和歌山で働きませんか」をはじめ、福祉・医療、農業、地域資源を活かした産品づくりの4分野のプロジェクトにより離職者と雇用に意欲ある企業等のマッチングを図っている。さらに、緊急雇用・ふるさと雇用の両基金を活用し、1人でも多くの雇用機会の創出に積極的に取り組んでいる。県としては、県内業況のきめ細かな把握に努めながら、中小企業の資金繰りに万全を期すとともに、雇用に係る一連のプロジェクトの推進、両基金を活用した雇用対策を機動的に講じていきたい。長期的に考えると、今後の安定的な雇用を確保するためには、本県の特性を活かした成長分野の産業を育成することが不可欠である。このため、先端的産業分野における先駆的技術開発支援や、地域資源を活用した新商品等の開発支援、農商工連携の促進、優れた県産品の県外・海外への販路拡大支援など、活力ある産業創りに取り組んでいく。一方、新エネルギー関連産業など、成長分野の企業誘致活動に引き続きがんばり、新たな雇用の創出に努めていきたい。さらには、農林水産業、観光業の面でも少しでも儲かるように雇用が増えるようにいろんな手立てを講じていきたい。大不況、地球規模での構造変化といった大波は、一県の力だけで消すという訳にはいかない。しかし、その影響をできる限り緩和するための最善の道を取ることが義務であると考える。企業、県民と力を合わせてベストを尽くせるようがんばっていきたい。
《再質問》 奥村規子 委員
産業振興や企業が元気になり、雇用の確保や創出につながるように取り組みを強めると言われました。加えて私は、地域の中でいかに投資主体を強め、内需を拡大し、地域内での経済循環をつくりだしていくかということが重要だと思います。国の財源を活用しながら自治体として地域の産業を維持し、また、住民の中から出てくるニーズにそって新たな仕事をつくり出してゆくことに支援することが求められてくると思います。
地域に持続可能なしくみを作っていくことだと考えますがいかがですか。
《再答弁》 知事
地域の産業を活性化し、雇用を確保するため、地域の優れた農林水産物や観光資源等の地域資源を最大限活用した魅力的な産業の創出が重要である。このため、今年度から地域固有の資源を核とした「1市町村1産業」に取り組む市町村を支援する「わがまち元気プロジェクト」を推進している。或いは、農林水産業に従事するグループなどの力を借りて、地域ぐるみで地域おこしに取り組む「新農林水産業戦略プロジェクト」も積極的に推進している。また、地域社会における新たな雇用の場として、福祉系の仕事等も大事な要素である。その意味で、NPOや地域住民などによるソーシャルビジネスが注目されている。国の「地域社会雇用創造事業」なども活用しながら、このような取組も積極的に支援していく。
《要望》 奥村規子 委員
今、危機的な状況で仕事がない、生活が出来ない、生きること自体が大変困難な時代になっている。生活保護世帯数も和歌山県として初めて1万世帯を超え、全国でも過去最多を更新し続けていると聞いている。単なる経済不況とか雇用危機とかいうものではなく、人間の命の存続、人間生活の再生産の場として持続可能な安定した雇用が出来るよう、新年度の予算でも検討頂き、強めて頂きたい。
2.保健予防活動について
(1)特定健診・がん検診の受診状況と受診率向上の取り組み
《質問》 奥村規子 委員
2番目の項目は保健予防活動についてお聞きします。
申すまでもなく、県民誰もが健康で長生きしたいと願っていると思います。そのためには、さまざまな個人レベルで健康の保持増進に心がけ、積極的に取り組んでいる方も多く見ます。もうひとつは、病気を早期に発見し早期に治療するということですが、当県の健診受診率はあまりよくないと聞いています。特定健診・がん検診の受診状況と受診率向上の取り組みについて、福祉保健部長お答えください。
《答弁》 福祉保健部長
特定健康診査については、平成20年度の県内市町村国民健康保険の平均受診率は17.5%であり、目標率31.0%を大きく下回っている。がん検診については、県内市町村の各がんの平均検診受診率は、総じて全国平均を上回っているが、平成24年度までに受診率50%以上という目標に向けてさらなる向上が必要と考えている。受診率向上の取り組みについては、検診の重要性について、地域・職域連携協議会による出前講座等を推進するとともに、来年度からは企業との連携によるきめ細かな広報活動を展開して、効果的な普及啓発活動を進める。また、がん検診未受診者に対する休日検診については、対象者の要件を、従前は5年間の未受診者を対象としていたのを、3年間の未受診者とするよう緩和したり、特定健康診査の検査項目充実や自己負担の軽減等を行う市町村への財政支援、がん検診と特定健康診査の同時実施などにより効果的・効率的な対策を支援していく。
《要望》 奥村規子 委員
県民が受診という行動に結びつける動機付けが大事であるので、啓発活動には力を入れて取り組んでいただきたい。また、高い医療費の窓口負担の問題もあわせて改善していかなければならない課題だと思っている。ぜひ実態をつかんで、検診受診率50%以上を達成するために生かしていただきたい。
3.高齢者施策について
(1)介護保険制度と地域支援事業の充実
《質問》 奥村規子 委員
3番目の項目、高齢者施策について2点お尋ねします。
1点目は介護保険制度と地域支援事業の充実です。
介護保険制度発足から10年を経過しました。しかし、介護保険の給付サービスだけでは高齢者の生活は支えられない問題も数多く聞かれます。先日、あるデイケアの職員さんから相談を受けました。91歳の利用者さんのことでしたが、介護認定が軽くなりデイサービスの回数を減らさざるを得なくなり、入浴回数も減りました。「一人で風呂に行けなんて言えません」と悩んでいます。このようなケースは珍しくありません。介護認定や利用料・保険料負担など多くの問題を抱えた制度で改善が必要ですが、高齢の方が毎日笑顔で過ごせるよう、きめ細かな支援が求められるところです。市町村が実施する地域支援事業はどのようになっていますか。
《答弁》 福祉保健部長
市町村が、配食サービスなどの、一定の生活支援サービスを実施する場合、介護保険法で規定された地域支援事業の「任意事業」として、地域の実情に応じた事業が可能とされており、県では、これらの事業に対して、地域支援事業交付金により支援しているところである。この事業の平成22年度当初予算は、3億976万5,000円で、平成21年度当初予算と比べて、3,845万5,000円の減となっているが、平成21年度の市町村の実績を見込んだ、2月補正後予算の2億7,117万円と比較すると3,859万5,000円の増となっており、過去の実績から勘案すると、大幅な増加を見込んでいるところである。生活支援サービスは、地域の実情に応じて、その内容や方法、利用者の負担などをきめ細かく定めており、地域支援事業を活用して、市町村が工夫して必要な事業を実施していると考えている。今後も、市町村が、地域支援事業を一層効果的に活用できるよう、市町村とも連携を密にしながら支援していく。
《要望》 奥村規子 委員
介護保険制度が十分に高齢者の生活を支えるものではないので、市町村で実施される地域支援事業について、県としてさらに把握していただきたい。
(2)特別養護老人ホーム待機者への支援策
《質問》 奥村規子 委員
2点目は特別養護老人ホーム待機者への支援策についてです。
現在はっきりわかっている特養希望者は2,468人と聞いています。和歌山県は一人暮らし世帯数全国3位の状況です。介護のため、離職を余儀なくされた方もあります。介護者の高齢化によって、全国では悲惨な事件も起こっています。現在、待機者の介護度はどのようになっていますか。また待機者への支援はどのようにおこなっていますか。福祉保健部長お答えください。
《答弁》 福祉保健部長
県内の特別養護老人ホームに入所希望の在宅の待機者数は、平成21年3月末現在2,468人、うち要介護度4以上は、約3割の843人である。今後も待機者数の増加が見込まれるため、入所施設の整備について、「わかやま長寿プラン2009」に基づく計画的な整備に加え、経済危機対策に基づく緊急整備も同時に実施し、補助単価の引き上げを行い、積極的に整備を促進していく。平成22年度は、特別養護老人ホーム6施設190床の増築、小規模特別養護老人ホーム3施設87床の新設などの整備を計画している。また、在宅で介護している家族の負担軽減や在宅で介護が難しい場合に利用できるショートステイの整備を進めるとともに、国の交付金を活用し、「通い」「訪問」「泊まり」の3サービスが提供できる小規模多機能型居宅介護事業所の整備を進め、併せて訪問介護やデイサービスなどの在宅介護サービスの充実に、努めていく。
《要望》 奥村規子 委員
「健康長寿日本一」を目指す中で、特養への入所待機者のうち要介護度4以上の843人は全介助がいるような方で、平成22年度の計画で277床を増床しても全員の入所は難しい。そういった現状から待機者の実態を把握し、施策に活かせるよう検討してほしい。
4.子育て支援策について
(1)安心こども基金の活用と施策の充実
《質問》 奥村規子 委員
4番目の項目で、子育て支援策についてお尋ねします。
不安定雇用や長時間労働、社会保障負担の増大、高い教育費で、県民の暮らしは経済的にも精神的にも追い詰められ、子育て困難がひろがっています。総合的な子育て支援策が必要です。当県においては県単独事業「紀州3人っ子施策」が取り組まれ、第3子出産数の割合も増える傾向にあると聞いています。今後とも拡充を望むものですが、さしあたり期限のある「安心子ども基金」の活用で、効果的な子育て環境の改善につながるようにすべきと考えます。どのように「安心こども基金」の活用を考え施策の充実を図るのか、福祉保健部長お答えください。
《答弁》 福祉保健部長
安心こども基金については、保育所の施設整備などを行う「保育サービスの充実」等4事業があり、平成22年度に約16億円程度を活用する見込みである。
また、和歌山県独自の取組として、保育所・幼稚園等の芝生化や、駅・スーパー等での「授乳スペース」、「子どもの遊び場」等の設置、小規模なファミリーサポートセンターの開設などを実施する。平成22年度において基金を集中的に活用していく。
《要望》 奥村規子 委員
基金の活用を考える際、現場の実態等を十分に把握した上で取り組んでいただきたい。世論調査では、少子化対策として保育所増設や育児休業制度の拡充などが上位となっており、今後も子育て環境の改善などの支援策を進めていただきたい。保育所の耐震化率が現在60%程度と低い状況にあり、今年度施策を拡充し、安心・安全な保育所整備を進めていただきたい。
5.和歌山下津港北港地区の南防波堤建設について
《質問》 奥村規子 委員
最後に、和歌山下津港北港地区の南防波堤建設について、県土整備部長にお尋ねします。
関西電力LNG火力発電所へのタンカー入港を主な目的とするエネルギー港湾という位置づけで建設が進められています。
工事は2000年から始められ、総事業費は300億円で、国と県が2分の1を負担するものです。これまでの県負担は約24億円で、2010年度予算でも3,310万円計上しています。このまま進めば、およそ50億円の県負担額になります。埋立地の一部は公共岸壁だということですが、和歌山下津港本港での貨物取扱にはまだまだ余裕があり、ここに公共岸壁を作る必要もないと考えます。
LNG火力発電所建設の見通しも立っていないなかで続けている南防波堤の建設は、無駄な国直轄事業と言えるのではないですか。県負担を毎年続けることはやめて、事業を中止する考えはないでしょうかお答えください。
《答弁》 県土整備部長
南防波堤は関西電力和歌山火力発電所計画における3カ所の係留施設及び現在供用中の水深10メートルの公共岸壁の港内の静穏度を確保するために必要なものである。国の直轄事業については、関西電力株式会社からの要請を受けて、同社が半額を負担し、残りの3分の1を県が負担している。公共岸壁は、中国などからの砂利などの鉱産品、鋼材及び産業機械の輸入を主体として、岸壁背後の港湾施設用地とともに有効に利用されている。今後、公共岸壁の利用を確実にしていくためにも、南防波堤の整備による静穏度の向上を図っていきたい。
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