2010年2月県議会 雑賀 光夫 一般質問
2010年3月8日

1.「学力向上」のためのとりくみ

(1)初任者研修を含め「教育の匠」から学べる
   ゆとりある学校を

(2)和歌山大学との連携、山本学長との対談について
(3)学校を支援する地域のとりくみをどう進めるか

2.「子どもの貧困」と教育費
(1)高校授業料無償にかかわってPTA会費等の徴収に
   ついて起こってくる問題にどう対処するのか

(2)小中高を通じて「子どもの貧困」の実態をどう把握
   しているか

(3)就学援助や給付型奨学金について
(4)中学校学校給食の普及について

3.地場産業への支援について
(1)地場産業への金融支援について
(2)「成長サポート資金」などの普及、融資額拡大・融資期間延長について
(3)地場産業支援のメニューとそれを知らせる活動について

4.公共事業について
(1)岩出海南線拡幅とJR踏切拡幅について
(2)日方川整備の計画と進捗について
(3)秋月海南線整備について

5.さしせまったテレビ放送の地上デジタルへの移行について
(1)難視聴対策の進捗状況
(2)セーフティネットなど大詰めでの問題

6.津波防災対策
(1)佐用町・チリ地震の経験もふまえて「本音と建前」が一致した避難対策について
(2)津波防災堤防ができた場合の津波の流れのシミュレーションと対策はどうか

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

1.「学力向上」のためのとりくみ
《質問》 雑賀光夫 県議
 議長のお許しを得ましたので、質問にはいらせていただきます。
 第一の柱は、「和歌山方式の学力向上」として提案されていることにかかわってであります。「学力向上」というのは、学力テストでおいたてたらいいというものではありません。仁坂知事は、「学力テストの点数をあげる方法を私は知っています。それは、よく似た問題で事前に模擬テストをすることです」という発言をされたことがあります。点数だけを問題にすれば、現場の先生をそんな方向に追い込み、学校現場にゆがみをもたらす、それではいけないということでしょう。これは卓見であると思っています。
 教育委員会の施策には、「教育の匠」という言葉がでてきます。力量を持った教員から学び、学校と教員の教育的力量を引き上げようということでしょう。
 私は、教職員組合の役員をしていたころ教育研究集会があれば、できるだけ現場の先生の実践に耳を傾けるようにしました。そこで「これは」という実践をお聞きしますと質問したものです。「先生は、そんな子どもの見方や教育技術をどこで身につけられたのか、先生の教員としての成育史を聞かせていただけませんか」
 私の質問を受けて、その先生は語り始めます。
 「教員になって初めて赴任したのは○○小学校でした。気負いこんで子どもに向かったのですが、すれ違いで子どもがついてきてくれません。そのとき助言してくれたのが先輩のA先生でした。A先生に子どもをどうみるかを教えてもらうとともに、A先生が得意にしている人形劇を教育に取り入れることを学び、紙粘土をこねて子どもと一緒に人形作りに夢中になりました。」まあ、こんな話が返ってきます。これこそが「教育の匠」に学ぶということだと思います。学校にゆとりがあってこそできることです。
 新任教員を支援する初任者研修でも、その基本は、担任している子供たちに責任を持って向き合いながら、悩み、試行錯誤し、そのことを周りの先生が支援し、まわりの先生から学ぶことにあると思うわけでございます。
 しかし、いま、学校現場でおこなわれている初任者研修は、そうなっているのだろうか。
 数年前に、文教委員会が、地域を回って地方教育委員会や校長さんたちのご意見を聞かせていただいたことがあります。そこである地域の教育長さんから、新採の研修のあり方について、「膨大な資料の提出ということで、それに時間が割かれて大変だ」というご意見をいただきました。現場の先生方にも、「とにかく忙しい。書類に向き合うより子どもと向き合いたい」という思いが語られます。
 大事なことは、上からの押し付けでなく学校現場に自由とゆとりをとりもどすことです。

 先日、和歌山大学の山本健慈学長と懇談したのですが、そこで学長がいわれたのは「受験競争をくぐって和歌山大学に入ってきた学生が、教員になれるように心のリハビリテーションをしなくてはならないのが大変です」という言葉でした。
 今日の社会状況の中で、学生が18歳まで生きてきて、人間的未達成の課題をかかえて大学にはいってくる。受験競争を勝ち抜いてくれば来るほど教員になるための大事なものをともすれば失いがちになる。それを支援することが大切だという意味でしょう。 大変大事な観点だと思いました。その立場からも、教員採用試験に勝ち抜いたみなさんに、研修・研修とおいたてるだけでいいのかなと思うわけでございます。

 次に、現場の先生を支援する問題として「退職教員の派遣」といわれています。私は、経験を持った教員が学校の外で学校を支援することができないかと考えています。最近、NHKで何度か放映された「門真っ子」という大阪の門真市の退職教員のみなさんの取り組みは、学校の休みの日に子どもたちの学力補充をふくめたサポートするとりくみです。いいとりくみだと思いました。
 教育長にお伺いします。

(1)初任者研修を含め「教育の匠」から学べるゆとりある学校を
 「学力向上」のために、初任者研修をふくめて、教員が力量をつける機会を保証するために、どんなことをお考えでしょうか。


《答弁者》 教育長
   教員の資質向上につきましては、喫緊に必要とされている内容や経験年数に応じた研修を行いながら、同時に各学校で教員が子どもたちと向き合い、同僚と相談しながら実践的に資質を高めることが大切であると考えております。
   このため、各学校におきましては、研修の充実を図るとともに、県といたしまして、今年度、子どもと向き合う時間を確保するため、会議や調査等の精選や学校と教育委員会との情報の共有化の推進などにつきまして「学校マネジメント支援に関する調査研究」を進めており、今後その成果を県内に広めてまいります。
   また、教育センター学びの丘の研修事業につきましても、その内容の充実や報告書等の効率化を図るとともに、新規採用教員の研修では、初年度に学校を離れて行う研修の日数を減らすなど、見直しを行っております。
   今後とも、市町村教育委員会等と連携しながら、効果的な研修や学校マネジメントの機能の充実等をすすめ、教員の資質向上に一層努めてまいります。


(2)和歌山大学との連携、山本学長との対談について
《質問》 雑賀光夫 県議
 和歌山大学の学長とお話した折も、県教育委員会と連携して和歌山の教育をよくしていくためにさまざまな構想をお持ちのように伺いました。どんなことを進められようとしているのでしょうか。知事は最近、山本学長と対談されたそうですが、山本学長は、私が紹介したようなことも語られたかと思います。どう受け止められたのでしょうか。


《答弁者》 知事
   山本学長のお話では、今の学生たちが、成長する過程で、学長のお言葉そのままなんですが、言葉遣いとして、「群れ」とその中で起こる「トラブル」を経験していない。そのために、人間関係やコミュニケーションに問題を抱えている学生が多いというようなお話がありました。
   大学では、そうした学生に対して様々な取組をされているそうでありますけれども、その大学へ送り出す方の立場、すなわち、初等中等教育の方に責任がある立場から申し上げますと、改めて、「確かな学力」と「豊かな人間性」と「健康・体力」の3つの力を育成する、すなわち「生きる力」を高める教育を進める必要性を感じたところであります。確かに受験に関する学力も必要でありますが、これからの変動の激しい社会を生き抜くためには、自分で課題を見つけ解決をするそういう能力や、仲間と協調し、相手を思いやる心、また、たくましく生きるための健康・体力を育成することがより大切であります。郷土和歌山を愛する心とともに、こうした「生きる力」をより一層育成していかなければならないと考えております。

《答弁者》 教育長
   県教育委員会では、地元教員養成大学である和歌山大学との間で、平成11年度から「連携協議会」を組織し、教員養成や研修機能の向上、地域の教育の充実をめざして、様々な取組を進めてまいりました。その成果をより発展させるため、平成17年度から新たな共同・参画事業として「ジョイントカレッジ」を設置し、両者の連携を幅広く様々な形で広めるとともに、深めてきております。昨年の「連携協議会」設置10年を契機として、「連携」から「協働」へ、ということで積極的な協力体制を構築し、子どもを中心に据えた和歌山の教育力の向上に取り組んでまいりたいと考えます。


(3)学校を支援する地域のとりくみをどう進めるか
《質問》 雑賀光夫 県議
 第三に、子どもの学力を高める、学校を支援する活動で、「門真っ子」の紹介をしました。こうした活動は和歌山にもたくさんあると思いますが、どう支援されているのでしょうか。


《答弁者》 教育長
   議員ご指摘のように、地域住民のボランティアによる子どもたちの学力補充の取組は、学校教育を支援する活動として大変意義あるものと考えております
   
本県におきましても、平成19年度から、放課後や週末等に小学校の余裕教室や公民館等におきまして、子どもたちの居場所である「地域ふれあいルーム」を全県的に開設し、その中で退職教員などの地域人材を活用した学習アドバイザーを配置することで、子どもたちの学習活動をサポートしているところでございます。
   今後とも、地域共育コミュニティの取組を生かしながら外部人材を多様な形で活用し、子どもたちの学習を支援する取組を進めてまいります。


《要望》 雑賀光夫 県議
 学力向上の取り組みは「教育の匠」という、たいへんあじのある施策であったので、もう少しあじの出るような答弁もほしかったんですが。
 しかし、「教育の匠」から学ぶためには、やはり学校にゆとりが必要です。それは教育委員会でもできる範囲の中で意識をして、いろんなことを精選し、また初任者研修についても学校から離れる日をあまり多くならないようにする努力をしていると話されました。

 本当に学校にゆとりを生み出すためには、やはり30人学級の実現や教職員の大幅な増員が必要ですが、その点もこれから一緒に進めていっていただきたいと思います。


2.「子どもの貧困」と教育費
《質問》 雑賀光夫 県議
 第二の柱として、「子どもの貧困」と教育費の問題についてお伺いします。
 日本の教育費があまりにも高すぎる。このたび高校授業料無償化が実現の運びになったことは歓迎します。県として留年生についても無償化を実施される。先日の知事の説明は大変よかった。「留年生というのは、いろいろな事情がある。それを切り捨てるとは何事か」というご説明には、感銘をうけました。しかし、これまで授業料減免を受けていた、本当に苦しい家庭には、何の支援もありません。問題の最終解決ではなく、さらに新しい問題が出てくるように思われます。

(1)高校授業料無償にかかわってPTA会費等の徴収について起こってくる問題に
   どう対処するのか

 ひとつは、PTA会費はじめ教育費保護者負担の高さが、あらためて浮き彫りになったことです。文部科学省の調査によりますと、授業料以外のPTA会費を含めた納付金、教科書や実験実習材料費、学生服やスポーツウェア、修学旅行費用などは24万円にのぼっています。
 これまでは、PTA会費は、高校授業料とセットで徴収されていました。PTA役員のみなさんは、会費等徴収でご苦労なさることと思います。徴収手続きをどうするのか。減免基準はどうなるのか。それ以上に、PTA会費や学校納付金についての疑問が、保護者から出されるのではないかと思います。どういう課題がでてくるのでしょうか。


《答弁者》 教育長
   PTA会費や学校納付金等に関しましては、保護者のご理解を得ながら、PTA総会で決定をいただき、学校教育の充実のためにもご協力をいただいているところでございます。授業料無償化後も、各学校において、保護者等からのさまざまなご意見、ご質問に関して、いっそう説明責任を果たさなければならないと考えております。


《質問》 雑賀光夫 県議
 次は、「貧困から子どもを守る」という問題です。
   先日「貧困から子どもを守るシンポジウム」が開かれました。「保健室から見える子どもの貧困の実態」という報告の資料を、お配りしています。
 2ページ目に、和歌山からの報告があります。その次の埼玉からの報告で、食にかかわる問題が取り上げられています。保健室からは、子どもがよくみえるといいます。
 「母子家庭が増えている。…ファーストフードのハンバーガーの夕食・朝食になる家がある」
 「夏休みになるとやせる児童生徒が、ここ3年ぐらい増加している。」
 この問題で、和歌山市内の養護教員の方からお聞きしました。
・お弁当を持ってこない子がいる。「どうしたの」と聞くと「忘れてきた」という。子どもは「親がつくってくれない」とは絶対に言わない。この子どもの心情をみなさん想像していただけるでしょう。
・小学校からの申し送りで、「給食だけで栄養を取っている子」がいる。
・「友達のお弁当を分けてもらって食べている子がいる。」ともお聞きしました。

 食との関係だけを申し上げましたが、医療との関係、副教材や遠足費用の問題、いろいろあります。子どもは、こうした「貧困」を背負って高校に進学していくわけです。学歴をつけないと貧困の連鎖がおこります。連鎖を断ち切ろうと、子ども自身が必死でもがいている実態が「シンポジウム」でも大学生から語られました。
 「単親家庭の女の子が、看護専門学校にはいった。奨学金をうけたがそれだけでは生活できないのでアルバイトで体をこわした。いま学校を辞めて、働きながら奨学金を返している。お金を返してから、また学校に行きたいと言っている」
 奨学金というのは、学校を卒業したら安定した収入を得られるから、それで返済すればいいという考え方ですが、今日の状況は、学校を出ても安定した職に就けない、収入が少ないので結婚もできないという若者が大量に生み出されているわけです。
 こうしたことを踏まえて教育長にお伺いします。

(2)小中高を通じて「子どもの貧困」の実態をどう把握しているか
 第一に、県教育委員会として、「子どもの貧困」の実態をどう把握しておられるのでしょうか。
(3)就学援助や給付型奨学金について
 第二は、セーフティネットとしての就学援助、小中学校でそれを受けやすくする必要がある。さらに県内で就学援助需給者は1万297人に達していまが、この子どもたちの多くが高校に進学します。しかし、高校では就学援助はありません。就学援助または給付型奨学金のようなものが必要だと考えます。
 また、定時制通信制の教科書・教材費や補食給食費の補助制度の改悪は、高校教育無償化への流れに逆行するものだと思いますが、元に戻してはいかがでしょうか。


《答弁者》 教育長
   子どもの生活面等の把握については、学校現場におきまして、学級担任が学校での子どもの様子や家庭訪問を通じて、個々の児童、生徒についての状況を把握し、適切な助言に努力をしているところでございます。市町村の就学支援制度の対象者数が増加傾向にあることから、経済的な理由により就学が困難な状況にある児童、生徒の対応について、学校現場でのよりきめ細かな取り組みが大切であると考えております。
   また、家計における授業料以外の教育に要する経費負担の軽減に関しましては、給付型奨学金などを含めて、高校生に対する就学援助の制度化を国に働きかけており、今後も引き続き要望してまいります。なお、定時制、通信制生徒対象の修学支援制度につきましては、支援が真に必要な生徒を対象とする制度変更を行ったものでございますので、ご理解を願いいたします。
   県教育委員会といたしましては、就学援助制度の趣旨に鑑み、実情に合った事業の実施並びに制度の周知について、引き続き市町村教育委員会に助言するとともに、教職員に対して、担当者会議や研修の機会を通じて、啓発や情報提供を行ってまいります。


(4)中学校学校給食の普及について
《質問》 雑賀光夫 県議
 第三は、学校給食の問題です。私のいる海南市でも中学校の学校給食が実施されていません。それは、市の責任に属することですが、子どもの実態や食育基本法や学校給食法の趣旨をもっと理解してほしいという思いがあります。その辺の啓発をしっかりやっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。


《答弁者》 教育長
   平成21年度に改正されました学校給食法におきまして、学校給食は、食育の観点から児童生徒の心身の健全な発達に資し、食に関する正しい理解と適切な判断力を養う上で、重要な役割を果たすものとして位置付けられております。
   このようなことから、学校給食の普及推進のため、各地方における学校給食研究大会の開催を通じ、また、研修会等を実施することで、従前より啓発してまいりましたが、今後も、設置者である市町村教育委員会と連携し、学校給食への理解と普及に努めてまいります。


《要望》 雑賀光夫 県議
 この問題は、今回私が一番力を入れたところです。
 就学援助の高校までの延長、給付型奨学金の実現を国に要望するということが表明されたのはたいへん大事だと思います。高校の授業料が無償化になった今、この課題が非常に明らかになってきた。子どもの問題というのは行政も、議会も、あるいは党派も関係ありませんので、一緒になって実現するようにやっていっていただきたいと思います。
 同時に学校給食についても、非常に大事な課題に前向きの答弁をいただき、どうもありがとうございます。これは市町村がやることですが、私どもも働きかけていきたいと思っています。


3.地場産業への支援について
《質問》 雑賀光夫 県議
 第三の柱として、地場産業への支援についてお伺いいたします。

 海南海草地方は、地場産業が多い地域です。家庭日用品業界は、全国シェアの85%を占めます。また、下津を中心にした内航海運業は、県下の半数の事業者、船舶がここにあつまっています。
 こうした地場産業を活性化するための施策についてお伺いいたします。

(1)地場産業への金融支援について
 第一は、事業資金の問題です。私も、地元民主商工会からも要望をいただき、融資の問題で、いっしょに関係方面に相談にいかせていただきます。1昨年末からの経済・金融危機と経済対策のもとで、中小業者への資金繰り支援などは、たしかに進んでいる面があると感じています。金融支援は、どのようにすすんでいるかお答えください。


《答弁者》 商工観光労働部長
   一昨年秋の世界金融危機に端を発する未曾有の経済不況の影響を受け、県内中小企業の方々も、大変厳しい経済環境にあると認識してございます。
   県としましても、一昨年11月に、国の緊急保証制度を踏まえ、いち早く、再度の借り換えを可能とした独自の「資金繰り安定資金・緊急対策枠」等の資金を新設・拡充し、平成20年度には、過去最高となる815億円を超える県制度融資のご利用となり、一定の資金供給につながったものと考えてございます。
   平成21年度におきましても、国の景気対応緊急保証制度にもとづき、先般、「経営支援資金・景気対応緊急枠」に新たに設備資金を資金使途に加えるなど、中小企業の皆様方の資金需要に、適宜適切に対応しているところでございます。


(2)「成長サポート資金」などの普及、融資額拡大・融資期間延長について
《質問》 雑賀光夫 県議
 第二は、それでもなかなか利用できないで悩んでいるという話もお聞きしました。たとえば、「成長サポート資金」というものがあります。「経営革新計画」や「地域資源計画」などを作成しての認定を受けるなどした場合、年金利1.8%以内で融資がうけられる。しかし、私に話した方は、「制度がつかいにくい」と悩んでいます。また、「設備資金の場合は融資期間は7年以内だけれども、貨物船を建造した場合は、減価償却は税法上14年、実際は20年はつかいます。もうすこし長くなりませんか」といわれています。
 「成長サポート資金」をはじめとする設備投資のための資金について、融資額・融資期間はこれ以上延長・拡大することはできないのでしょうか。


《答弁者》 商工観光労働部長
   県の制度融資につきましては、中小企業の皆様方の資金需要などを踏まえ、毎年、制度の見直しに取り組んでございます。
   新年度の制度改正では、厳しい経済情勢を乗り切り、将来の景気回復に向けての「競争力・成長力の強化」を支援するため、設備資金や新規開業のための資金といった、いわゆる「前向き資金」の拡充に取り組んでございます。
   議員ご質問の「成長サポート資金」につきましても、近隣府県の状況なども参考にしながら、設備資金の融資限度額を5,000万円以内から1億円以内に引き上げるとともに、融資期間を7年以内から10年以内に延長することとしてございます。
   また、振興対策資金につきましても、設備資金の融資限度額を5,000万円以内から1億円以内に引き上げるとともに、耐用年数が10年を超える減価償却資産の取得について、融資期間を建物取得と同じく15年以内とする見直しを行うこととしてございます。
   これらの制度見直しにつきまして、報道機関への資料提供や関係機関等への説明会などを通じて、県内中小企業の皆様方により一層ご活用いただけるよう、周知徹底を図ってまいりたいと考えてございます。


(3)地場産業支援のメニューとそれを知らせる活動について
《質問》 雑賀光夫 県議
 第三に、県としては、成長サポート資金をふくめて、新製品の開発、受注開拓など経営革新とセットで、地場産業を支援するメニューをお持ちと思います。こうした支援策はハードルが高いのではないかどいう話も業者の皆さんからお聞きするときがあるのですが、さまざまなメニューを業者のみなさんが使いやすいように知らせていく、アドバイスしていくということが大事だと思いますが、いかがでしょうか。


《答弁者》 商工観光労働部長
   地場産業の支援メニューにつきましては、県内企業の事業段階、課題に応じ、融資制度の活用、経営革新計画の認定、新技術・新商品の開発、販路開拓に対する補助を行うとともに、地域資源の活用や、農商工連携による新たな取り組み、新製品の開発等についても支援を行ってございます。
   これらの支援策につきましては、企業の目線に合わせて、その内容や要件、基準などを分かり易く説明し、ご理解していただくことが大事であり、「県民の友」をはじめ、産業別・企業別担当者制度による情報提供、さらには、各商工会、商工会議所等の経営指導員の活動や財団法人わかやま産業振興財団による支援情報の提供など、幅広く行っているところでございまして、今後とも、より一層積極的、かつ機動的に取り組んでまいりたいと考えてございます。


4.公共事業について
《質問》 雑賀光夫 県議
 第四に、公共事業にかかわって、いくつかお伺いいたします。
 毎年、予算県議会では、「工事箇所表」というものが配られます。そのいくつかについてお伺いします。

(1)岩出海南線拡幅とJR踏切拡幅について
 第一は、海南市JR黒江駅の南を通る岩出海南線の拡幅であります。はじめは小規模道路改良事業でしたが、数年前から国の補助事業となり、工事の進捗が期待されます。いま、この近くの、JR黒江駅では、バリアフリー化の工事に入っています。バリアフリーの観点からも岡田踏切の改善がもとめられます。歩道をつけようとすれば、踏み切りの幅を広げなくてはならないと思います。
 以前は、こうした場合には、JRとの折衝がむずかしいと聞いたことがあるのですが、JRの協力は得られるのでしょうか。見通しは、いかがでしょうか。


《答弁者》 県土整備部長
   現在、JR紀勢線より東側において歩道設置のための用地取得と工事を進めております。
   議員ご質問の踏切拡幅を含めた歩道設置につきましては、沿道の方々との調整を行っているところですので、これを早急に行った上で、JRとの協議を始め、整備を促進してまいりたいと考えております。


(2)日方川整備の計画と進捗について
《質問》 雑賀光夫 県議
 第二は、日方川整備についてであります。
 東橋の架け替えが終わり、工事がすすんでいますが、河川改修のために立ち退きいただいた土地が10年ほど放置されていることなどあって、どうすすんでいるのだろうというという声もございます。また、この上流の重根地域は、大規模な区画整理で農地の宅地化があるだけに、大雨で水量が増えることが考えられる。改修を急いでほしいという声もございます。

 こうした声にこたえる立場から、今後の計画、完成予定などお示しください。


《答弁者》 県土整備部長
   現在策定中の日方川水系河川整備計画では、今後約20年の間で河口から神田橋までの間、約1.5kmの河道拡幅や河床掘削を進める計画を検討しております。
   現在は、下流部で最も流下能力の低い大橋から神田橋までの560m区間の整備を重点的に進めており、本年2月に大橋から東橋までの約280m区間の河道拡幅工事が完了し、来年度より、東橋から神田橋までの区間の河道拡幅工事を実施することとしております。


(3)秋月海南線整備について
《質問》 雑賀光夫 県議
 第三は、新しく予算がついた秋月海南線であります。9月に知事が海南にこられた「行政報告会」でも要望があったもので、知事もよくお通りになって改善の必要をよくわかっているといっていただいた道路です。ただ、そうとう大掛かりなことをしなくてはなかない第一歩であります。どういう構想を考えておられるのでしょうか。


《答弁者》 県土整備部長
   県道秋月海南線につきましては、海南市且来(あっそ)地内のくも池周辺約1.3km間で、整備を行ってまいりました。
未改良区間の海南市且来地内から和歌山市との境界までの約1.4kmにつきましては、昨年、地元の皆様方から道路拡幅の強い要望を受けております。

   この区間は、交通量が多く、狭隘な部分が、特に交通の支障となっておりますので、対策が必要と考えております。
   事業を進めるためには、人家の連坦している区間の家屋移転や用地協力が必要となりますので、海南市や地元の皆様方とご相談しながら、特に狭隘な部分から、順次整備を進めてまいります。


5.さしせまったテレビ放送の地上デジタルへの移行について
《質問》 雑賀光夫 県議
 第五の柱として テレビ放送の地上デジタルへの移行についてです
 地上デジタルの問題については、何度も取り上げてきましたが、アナログ放送が終了する来年の7月24日が近づいてくると、ますます心配になってきます。

 担当課は、地域に出向いて説明会を開いてくれています。私も2月15日に海南市岡田で開かれた説明会に参加させていただきました。
 地上デジタルへの移行は、国が勝手に決めた問題であり、それへの対応に県では苦労してくれているわけです。しかし地域の人々には、そのことが分かりにくいだろうと心配もしました。
 しかし、私が参加した会場では、参加者からは、国やNHKなどの対応への不満が出されましたが、県の担当課が苦労していることがよく理解されたと思います。
 それでも、地域でどう対応するかは大変です。岡田という地域は、地域でまとまって共聴を導入するならやりやすい地域だそうですが、それでもまとまりを作るのは大変です。すでにインターネットや電話で、光ケーブル系のものを利用している家もあるからです。
 そこで企画部長にお伺いいたします。

(1)難視聴対策の進捗状況
 第一点 難視家庭というのは、和歌山県で現時点でどのくらい残されているのでしょうか。海南市岡田でやられたような説明会はこれまで、どの程度開かれてきたのでしょうか。難視地域をカバーできているのでしょうか。そこでは、どんな声が出されているのかお聞かせ下さい。


《答弁者》 企画部長
   県が独自に作成している県難視解消ナビゲーターによりますと、対応方法が未定の箇所は172箇所約10,300世帯となっております。
   また、県による難視地域での説明会といたしましては、32回約900名のご参加を頂き開催をしてきております。その他、市町村の協力を得て個別に対応頂いている地域も数多くございます。
   説明会などでは住民の皆様から、「私たちは、デジタルに変えてくれと言った覚えはない。なんでお金を出さなければならないのか」とか「負担が高い」などの声を多くお伺いするわけでありますけれども、移行まで時間がないことから、住民の皆様の負担を出来るだけ軽減できる対応方法を提案させて頂きながら、テレビ難視をなくすため早急な対応をお願いし、ご理解を頂けるよう努めているところでございます。


(2)セーフティネットなど大詰めでの問題
《質問》 雑賀光夫県議
 第二点 いよいよ正念場に入っていく今、特に心配するのは、地デジ完全移行までに難視解消が完了しなかった地域に対して、衛星による措置がされチューナー等が無償配布されると聞いていますが、もれなく配布されるのでしょうか。
 また、移行直前に難視が判明した地域への対応はどうなるのでしょうか。


《答弁者》 企画部長
   暫定的難視対策における衛星放送のチューナ等の無償配布を受けるためには、国が認めた難視地域として「地上デジタル放送難視地区対策計画」に掲載され、当該地域の難視対策が平成27年3月までに完了すること等の条件を満たし、「地デジ難視対策衛星放送対象リスト、いわゆるホワイトリスト」に掲載される必要があります。
   そういったことから県としては、新たな難視地域を確定させるため、独自の受信状況調査を進めておりますが、こうして把握した難視地域を対策計画に含め、地デジ移行直前に判明した新たな難視地域も適時迅速にホワイトリストに掲載するよう、先日も知事が総務省に強く申し入れをしたところでございます。県民の皆様が、テレビを見られないということのないよう、今後とも円滑な移行に向けてきめ細かな対応に努めて参りたいと考えております。


《要望》 雑賀光夫 県議
 今どこへ行っても「テレビが見られんようになるんか」「どうなるんよ」という話しが聞かれるわけです。これは前からもいわれているように国が勝手にやった問題で、県はたいへん苦労されているということです。
 企画部長から答弁をいただいて、ふたつのことが重要だと思いました。
 ひとつは、見られないことが確認されたらすぐに市役所へ言う、また県へ連絡してもらうという対策を早くやらないと、際になって言ってもだめだという問題を言われました。
 もうひとつは、セーフティネットとして衛星放送がありますが、これも事前にホワイトリストに掲載される必要があり、早く申し出ておかないと間に合わないということも言われました。
 特にそういったことを私どもも住民の皆さんにお伝えし、そして混乱が起こらないように協力していきたいと思っていますが、どうにもならないときには国に対して延期を求めることが必要な場合もあります。今の段階ではありませんが、来年の2月あたりで「これはとても間に合わないから、知事、国に対して延期を求めてくれ」というふうなことが、場合によっては起こりうるかもしれません。その場合はひとつよろしくお願いしたいと思います。


6.津波防災対策
(1)佐用町・チリ地震の経験もふまえて「本音と建前」が一致した避難対策について
《質問》 雑賀光夫 県議
 第6に、津波防災問題についてお伺いします。
 12月県議会でもこの問題をとりあげ、海南港沖の津波防災堤防の完成をいそぐことをお願いし、津波から避難する問題では、「行政のたてまえ」と「住民の本音」が乖離しているということを申し上げました。そして「逃げ切るプログラム」にある「津波避難ビル」の評価をいたしました。
 その後、佐用町での大雨被害で、避難した方が、氾濫した溝に流されるなどの被害にあわれたということは、津波と大雨の違いがありますが重要な教訓だと思います。
 2月17日、阪神大震災の日には、海南市で避難訓練がおこなわれ私も参加しました。私が出向いたのは、海南第一中学校の近くですが、この学校は「暫定避難ビル」にも指定されていません。しかし、住民のみなさんは、裏口の草刈をし、車椅子が通れるように整備しています。さらに、参加者のお一人が、連れてきたおじいちゃんに言っているんです。「今日は訓練やから、ここにきたけども、ほんとに津波が来たときは、うちへ逃げてきてよ」。そのお宅は、3階建てのしっかりしたたてものなのです。市民の本音の心構えはいろいろです。「本音と建前の乖離」そのなかでも現実的な避難を考えている市民の姿をみました。
 そんなことも踏まえて、先日のチリ大地震にともなう津波で海南市でも避難勧告がだされましたが、避難された方が極めて少なかったということがあります。このことをどう考えるべきでしょうか。危機管理監のお考えをお聞かせいただきたいと思います。


《答弁者》 危機管理監
   指定避難所へ避難することが原則でありますが、その場の状況により近くの建物等に避難するという選択肢もあり得ると考えております。このことにつきましては、佐用町の被害などを教訓にし、住民参加のもと現実的な検討を進めていく必要がございます。
   さて、チリ中部沿岸を震源とする地震による津波に係る避難状況につきましては、県内沿岸市町で約10万2,000人に避難勧告等を出し、そのうち避難所に避難した方は442人となってございます。ちなみに海南市では約2万人を対象に勧告を出し、32人が避難いたしました。
   県といたしましても、警報発表後直ちに沿岸市町に対し防災行政無線や広報車などによる避難等の警戒広報の実施を要請するとともに、防災ヘリや県警ヘリの出動により警戒の呼びかけを実施したところでございます。しかしながら、ご指摘のとおり、避難勧告が出たにもかかわらず、避難した方が少なかったということは大きな課題だと考えております。
   避難しない理由として、今回の場合、警報発表から、津波到達までの時間が長く、沿岸にお住まいの方々はテレビ等で得た情報により自己判断されたり、また過去に避難勧告が出ても、災害が起こらなかったじゃないか、などの理由で避難しなかったのではないかとも考えられるわけでございます。
   津波からの避難行動を促すためには、地域の防災リーダーなどが、隣近所に避難を呼びかけながら避難することが肝要でございまして、今後、津波からの避難行動について、市町村とともに検証していくとともに、迅速かつ適切な避難行動を行うよう津波の恐ろしさなどについて、さらなる啓発の充実に努めてまいります。


(2)津波防災堤防ができた場合の津波の流れのシミュレーションと対策はどうか
《質問》 雑賀光夫 県議
 もうひとつ、津波防災堤防にかかわって、この堤防が完成すると、津波が跳ね返されて、塩津・戸坂方面に波が押し寄せるのではないかという心配がありますが、そのシミュレーションや対策は、されているのでしょうか。
 県土整備部長にお伺いいたします。


《答弁者》 県土整備部長
   詳細な津波シミュレーションを、現在、国土交通省において実施中であり、その中で塩津・戸坂方面に与える影響についても把握されるものと聞いております。
   県といたしましては、その結果を踏まえ、必要に応じた対応を国に対して働きかけてまいります。


《要望》 雑賀光夫 県議
 この問題は私も確定的な答えを持っているわけではないので、これから研究していただきたいという問題です。
 津波注意報や警報が出たときに、釣りをやめないとかサーフィンをしているとか、こういう不心得は文句なしに論外です。しかし、海南市で2万人以上の避難勧告が出されたけれども、避難したのは32人だけだったということをどう見るのか。これを釣りやサーフィンと同じように見るわけにもいかないと思います。
 テレビでは津波問題の専門家が「避難勧告があるのに避難しなかった、津波警報が解除されていないのに自宅に回避者がいたのは問題だ」、こう指摘されます。それは正しいのでしょう。しかし、私は海南市で避難訓練にも参加をして、「非難してほしいが『ここで死んだらいい』と言って避難してくれない」という自治会や防災組織の役員さんのお話を聞きました。また、一軒一軒訪問したときにお会いした寝たきりのおばあちゃんを思い浮かべながら、まずあのおばあちゃんに真っ先に避難してもらわなくてはならない、しかしあのおばあちゃんを含めて、2万人が避難するということはどういうことなのか、私はリアルに考えることができます。大変なことです。それを一体どうするのか。それはもっともっと、現実的な避難の方法を緻密に計画しないと空文句になるのではないかと思います。
 でも空文句になると批判をしていて逃げなかったらいけないので、まず逃げることです。これは行政だけでできるものではなく、地域防災組織も主体にならないとできません。そのなかで私は、津波避難ビルを増やすことがまず現実的ではないかと申し上げているわけです。
 昨日もNHKのテレビで、長周期の地震が起こった場合、高層ビルを支えている地下の柱が折れることがあるという話を放映しておりました。それを見ながら私は、とりあえずは今やられている対策の枠の中で、とにかく逃げなくてはいけないことを住民の皆さんに訴えていきますが、同時に様々な効果的な逃げ方や、そういう問題を最新の科学の知見にも照らしながら研究していくことが大事な課題になっていることを改めて感じました。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

10年2月議会

雑賀光夫プロフィール、質問一覧

雑賀光夫ホームページ


10年2月県議会、雑賀光夫 一般質問=3月8日
10年2月県議会、雑賀光夫 一般質問=3月8日