2010年6月県議会 藤井健太郎 一般質問 2010年6月15日

1.地域主権改革について
(1)地域主権、地域主権改革とは
(2)国と自治体の役割
(3)県の条例化への対応
(4)基準の引き上げと明確な財源確保

2.地場産業・中小企業振興について
(1)地場産業の状況と今後の見通し
(2)製造業振興にかかる県の役割と利用実績
(3)振興条例の制定を

3.職業訓練について
(1)公共職業訓練についての基本的な考え方と方針
(2)国の地域職業訓練センター廃止への対応

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1.地域主権改革について
《質問》 藤井健太郎 県議
 昨年11月17日、国は、これまで地方分権について審議をしていた地方分権改革推進委員会にかわって地域主権改革戦略会議を設置しました。
 戦略会議は、地域主権改革とは、住民の身近な行政は地方自治体が担うようにし、住民の判断と責任において取り組むことができるようにする改革であると定義、明治以来の中央集権体質から脱却し、この国の在り方を大きく転換させるとしています。
 昨年12月の第1回会合において、法令による施設の設置基準や計画策定などについての義務付け、枠づけの見直しをする「地方分権改革推進計画」を決定、同時に地域主権改革工程表(原口プラン)を了承しました。
 工程表を見ますと、今年の夏までに戦略大綱を、2013年夏までには地域主権推進大綱を策定するとし、今後、4年間に、規制関連では、法令による自治体施設の義務付け、枠づけの見直しを順次すすめ、自治体への権限移譲を、予算関連では、補助金を廃止し一括交付金化と地方の自主財源の強化、国直轄事業負担金の廃止などを、法制度では、自治体間連携の自発的な形成と国の出先機関の改革と合わせ人員の地方移管の検討をすすめ地方政府基本法の制定をめざすとなっています。
 この4年間を一つの区切りとして、地方分権に関する施策をこれまでにはない早さですすめていくという意気込みが感じられますが、一方では、国民的な議論を必要とする問題点も多く含まれているように思います。
 すでに、プランにもとづいて、参議院では、地域主権改革一括推進法1次分と国と地方の協議の場に関する法律が先議され、与党の賛成多数で可決、衆議院に法案が送られています。
 今回の地域主権改革一括推進法は、41法律を一括改正するもので、これまで国の政省令で定めていた施設の設置や管理運営にかかる基準を県の条例で規定すること、自治体の事務について国との協議や同意、国の許認可などを原則廃止すること、自治体が定めることとする基本構想などの計画策定義務の廃止など、となっています。
 特に施設の設置、運営基準については、保育所などの児童福祉施設、特別養護老人ホームなどの高齢者介護施設、障害児者施設、公営住宅など、住民生活に直接かかわるものが多くあり、これまで国がさだめていた基準について、基本的に参酌すべきものとし、自治体の判断にゆだねるという内容になっています。
 これまでのような国が施設ごとに定めた基準をなくし、施設ごとの補助金、負担金も一括交付金化することによって、地方自治体の裁量権が拡大されるという側面もありますが、知事の政治姿勢と財源のありようによっては地域格差がさらに広がることが懸念されます。
 政府の第1回戦略会議の場で、原口総務相は、地域主権をすすめれば地域格差はかえって広がっていくという主張もあるが、ある意味ではそのとおりである。間違ったリーダーを選べば、そのリーダーを選んだツケは選んだ人にくる。この当たり前のことが行われる。と発言しています。
 リーダーの政治姿勢がどちらを向いているか問われることは、もちろんのことですが、結果として、福祉が悪くなったのは、住民がまちがった選択をしたからという住民への責任転嫁が強調され、憲法が定める生存権などの人権保障に対する国の責任が免罪されることにもなりかねません。
 今般の一括法では、福祉施設の職員の定数、利用者1人あたりの居室面積など人権に直結する基準は国が示すガイドラインを地方が従うべき基準にするとしていますが、地方が従うべき国の基準がどう示されるのか、現在と同等なのか、ひき上がるのか、それとも引き下がるのか、またその財源は国がどの程度まで保障してくれるのか、参議院の審議では明確にされませんでした。
 厚労省は今年に入り、認可保育所の定員を超す受け入れの上限の撤廃や特別養護老人ホームの居室面積基準を引き下げる動きをしています。
 保育所などの児童福祉施設の最低基準は昭和23年に決められ、最低基準を超えて設備、運営を向上させていくことや超えている施設は設備や運営を後退させてはならないと定めていますが、今回の受け入れ定数上限の撤廃は、昭和23年策定の最低基準に限りなく近づけていくことを容認するものとなっています。
 戦略会議が示す地域主権改革の無批判的な推進は、福祉施設などの基準を引き下げた上で、財政責任もあいまいにする結果となるのではないか。大いに危惧するところです。
 全国知事会は、衆議院での一括法の早期成立を求めていますが、国の示す基準の引き上げや財源保障の明確な手立てこそ強く求めていくべきであると思います。
 そこで、知事にお尋ねします。

(1)地域主権、地域主権改革とは
 住民や自治体にとっての地域主権とは何か。地域主権改革とは何か。住民の生活や住民福祉の向上を目的とする自治体の運営は、どのようになっていくと考えられているのか。今、すすめられようとしている権限移譲と一括交付金化は、三位一体改革のように、仕事量はふえるが財源は減らされ、地方負担が増えるという結果にならないか。ひいては、工程表では自発的な自治体間連携をすすめるなどといわれていますが、財源の厳しい自治体にとっては、さらなる自治体合併や広域行政を強いられることになりはしないか。

(2)国と自治体の役割をどう考えるのか。
 国が負うべき国民の権利保障への責任をどのように考え、国の最低基準のありかたと財政責任のありかたをどう考えるか。国には憲法が要請している国民生活のナショナルミニマムを示し、たえず向上をめざすこととその実現にふさわしい財源保障を行うことが求められていて、自治体には国施策の上乗せ、横出しなど国施策の拡充をしたり、国施策の補完や地域の要望に応えた独自事業をすすめていく役割が求められているのではないでしょうか。

(3)条例化への対応について
 一括法では国の示す基準を参酌して都道府県が条例で施設の設備や運営にかかる規定をすることとなっています。条例を策定すると県が責任の主体となってきます。条例化についての基本的な考え方、国の基準よりも充実させていくという立場にたって臨もうとされるのでしょうか。

(4)国への基準引き上げと明確な財源確保の要望について
 国に基準の引き上げや住民にも内容のわかる財源保障の手立てを求めていくべきではないか。地方交付税に算定されているという一般財源化や一括交付金でくくられては国からどのくらい財源がきているのか住民にはわかりません。交付税措置されている、一括交付金にふくまれているということだけでは、国、県の財政責任の所在が明確にされません。


《答弁者》 知事
   地域主権改革について、一括してお答え申し上げます。
   地域主権改革とは、地域のことは地域に住む住民が責任を持って決めることのできる地域社会をつくっていくことだと思っておりまして、私もそういう社会をつくっていきたいと考えております。
   そのためには、国と地方の役割分担を明確にいたしまして、国が行うべき役割は国の財源で、地方が担うべき役割は地方の財源で行うことができるようにすることが必要でございます。
   一方、何でもかんでも地方に移せというのもどうかという気もいたします。国のかたちを規定するものは、国でしっかり責任を取ってもらわないといけない。まして、財政負担が大変だから、この際、地方に移してしまえというようなことは、本末転倒であります。例えば、高速道路ネットワークの整備とか、義務教育とか、福祉とか、そういうものは、この国のかたちを規定するようなものとして、国が責任を持つべきだというふうに思います。
   その際、大切なことは、どんな地域に住んでいても日本国民として受けることのできる必要最小限の行政サービスであるナショナルミニマムが保証されるような制度とすべきであり、必要な財源はそういう意味で国の責任において明確に確保すべきであるというふうに考えます。
   それでは、何がナショナルミニマムであるか、そういうことについて議論をしなければならないが、そういう議論もなく、地域主権改革という名のもとに、ナショナルミニマムと思われるようなものまで地方に移されてしまわないかということについては、注意をしなければならないと思います。その結果、財政力の弱い地方公共団体では、サービス水準が実際下がってしまうのではないか、そういう懸念もありまして、本県としては、十分注意してまいりたいと考えております。
   次に、地方への義務付け等の見直しは、国が定めている基準等の引き下げを目的とするものではありません。国が一定の基準を示した上で、議会や地域の住民のご意見をお伺いしながら、地域のことは地域の実情に合わせて自分で決める、条例で定めることができるというようにすることだと理解しております。ただし、この機に乗じて、地方財源の削減が行われるということはあってはいけないし、そんなことではなくても、十分な財源の移譲がないと、貧しい地方公共団体については、自分で基準を定めるときに、残念ながらサービス内容を落として基準を定めないといけないとなると、中々これは大変なことになるということであります。
   したがって、先程申しましたような一定の水準が達成できるような基準を、仮に自分が作るとしても、作れるような財源の手当が必要であろうと思いまして、この点については、知事会とも連携して、国に対しても積極的に意見・提案を行ってまいりたいと考えております。


《要望》 藤井健太郎 県議
 地方行政の主体というのはもちろん自治体であり、地域住民であるわけですが、これまでは国の法令によって事業なり予算なりが統制をされ、国会が決めるという状況が長らく続いてきたなかで、三割自治、四割自治といわれるような、自治体は事業量はたくさん持っているがその財源の配当が少ないということで、長年苦しんできた歴史があると思います。
 それがこの間、地域主権という言葉ではありますが、主権が地域に移されると解釈していいのかどうか分かりませんが、そういう改革ということがどう進められるのか。急テンポで、はやいスピード感で進められようとしております。
 私は、自治体にとっての一番大きな問題というのは、やはり財源の問題だと思います。三割自治ではなく、せめて五割自治、半々でやれるぐらいのところはまず確保しなくては、地域主権とはいえないのではないか。そのことは真っ先に解決をして、議論していくことが大事だと考えています。今は経常経費ということで、人件費を中心とする義務的経費がかなりの財源の部分を占めていて、政策的経費・投資的経費に回せないという状況がありますので、まずその改善を真っ先に進めていただきたいと思います。


2.地場産業、中小企業振興について
《質問》 藤井健太郎 県議
 内閣府が5月に発表した月例経済報告の景気の今後の見通しについて、景気は着実に持ち直してきているが、失業率が高水準にあるなど雇用状況には厳しいものがある、先行きについては、景気の持ち直し傾向がつづくことが期待されるとなっています。
 県発表による5月の県内経済動向では、鉱工業生産指数が4カ月連続で上回り回復傾向にある、消費動向は新車登録台数が10カ月連続で、新築住宅着工数は2カ月ぶりに前年を上回ったものの、小売店販売額は大型店で16カ月連続、全店では24カ月連続で前年を下回ったとされています。雇用面では、有効求人倍率は0.54倍で前月から0.01ポイント改善したものの前年同月と同じ水準。社会経済研究所は県内景況感、見通しともに不安要因はあるものの改善の方向であるとしています。
 雇用面や消費面での厳しさはあるが景気はおおむね回復のきざしをみせているという評価になっています。はたして県内の地場産業、中小企業をめぐる状況は改善の方向とみていいのでしょうか。
 5月に入って染色、繊維関係や建具、襖などの木工加工の製造業を中心に、一定規模の事業所を訪問してきました。国産品づくりでがんばっているが売上が大幅におちてきていて給料支払いがきつい、雇用調整助成金を活用している。売上が1/3に減り、機械のリース料支払いに困っている、まわりの建具屋がへってきているので仕事は回ってくるようになったが、安くて割にあわない。自分で3代目になるが同年代の若い職人がいない、定着しない、いつまで続けられるか不安など。いい話を聞くことはできませんでした。訪問した中には、1年以上の赤字つづきで従業員にもやめてもらった、仕事はあるときにだけしていて、すでに廃業を決めているといった事業者が2軒あり、いずれも事業を継いだ30代、50代という働きざかりの経営者であっただけに、廃業という話には聞いていてつらいものがありました。
 県がまとめた産業白書によると、平成18年の県内の農林漁業を除く民間の事業所数は5万2345事業所で、従業員数は35万6149人となっています。平成13年との比較では5年間で3918事業所、従業員1万4381人の減となっています。
 その中でも一定の事業所数があって減少率が大きい産業として製造業があります。平成18年4,483事業所で、5年間で787事業所、15%の減少となっています。同じ時期での建設業6%の減、卸小売12%、飲食・宿泊13%の減と比較しても大きく、製造業の中でも特に繊維・衣服の30%減、皮革22%減、木材・木工加工16%減が大きいものとなっています。これらはいずれも地場産業とよばれる事業所です。地場産業は明治以降地元資本をベースとする中小企業が一定の地域に集積し、地域内の特産物を主原料として、地域内で技術、労働力、資本をたくわえ、県内外に広く販路を目指してきたものとされています。100年以上の歴史をもつ企業もあり、地場産業24業種は和歌山を代表する産業ともいえます。県工業に占める地場産業の割合は事業所数で5割、従業者数で4割と大きな比率を占めており、地域の経済と雇用だけではなく地域の文化やまちづくりにも貢献し、自治体財政も支えています。
 ところが、県の製造業振興に直接かかわる条例を見ますと、平成21年、昨年10月施行の新技術の研究開発、実用化を目的にした「新技術創出推進条例」のみという状況です。
 新技術創出推進条例は、先駆的産業分野において、卓越した新技術の創出と実用化をはかる研究開発に支援を行うというもので、支援の対象をロボットなどの加工組み立て技術、化学や分子・原子の大きさで製品加工するナノテクノロジー、医療福祉・遺伝子操作などのバイオテクノロジー・食品加工、エネルギー環境の分野と限定しています。今後、伸びていくであろうといわれている産業分野への支援であり、支援を受けられる事業者は、資金の調達や人材が確保でき、市場ですでに競争力をもちえている事業者でもあります。それをさらに伸ばそうという支援になっています。
 また、県は22年度の中小企業者向け主な支援策として、国の施策も交えて経営支援、技術開発支援、新事業創出支援、融資による資金支援、雇用支援の5つを柱として45の施策を複数の部局にわたってメニュー化しています。商工観光労働部では、重点個別施策34事業が予算化されています。
 支援策のメニュー化がふえつつあり、中小事業者への支援を着実にすすめていこうという姿勢はわかりますが、これまでにも中小の事業所を訪問して感じていたことですが、自治体行政の施策については、融資制度以外、ほとんど知られていないし、利用してみようかという話もあまり聞きません。県の施策についても同じことがいえます。
 県は、県民の友5月号に産業振興特集を組んだり、産業別の担当者を決めて訪問を重ねたり、事業所を訪問してカルテづくりをすすめられるなど、支援の手をのばしていこうとされています。それが、どこまでの事業者にいきわたって、どのくらいの事業者が利用できるものとなっていて、事業者のニーズに応えることができるものとなっているのでしょうか。
 知事は、新たな技術開発と優れた製品の販路開拓をすすめ、ものづくり王国「わかやま」を国内外に発信していくといわれました。和歌山もかって各産地でそれぞれの地場産業が栄え、工業県として「ものづくり王国」を誇る時代もありました。知事のいう、ものづくり王国「わかやま」とは、どのような構想をもっておられるのでしょうか。一部のすでに競争力のある事業所だけの話になってしまうのではないでしょうか。まさに、知事のいう「誰も見捨てないぞ」という立場で全事業所を視野に入れた施策体系を望みたいと思います。
 中小企業対策は国の施策に負うところが大きいですが、地方自治体の責務としても施策の策定と実施が求められています。地域の実態と諸条件に応じての中小企業振興にかかるタイムリーな施策が求められています。それは特定の産業、特定の事業者だけを対象にするものであってはならないと思います。
 そこで、知事にお尋ねします。

(1)地場産業のおかれている状況と今後の見通しをどのようにもっているのか。
 県内地場産業全体としての底あげが図られ、減少傾向にある事業所数が増えていくという展望はあるのでしょうか。


《答弁者》 知事
   本県の地場産業については、経済のグローバル化とか、産業構造の変化とか、消費者ニーズの多様化などへの対応の遅れもあります。それから下請け要素が強い小規模事業者が多いという特色もあります。それから、長い間不振を続けてきましたので、蓄積が少ないという、なかなかつらいところもあります。そういう意味で、全般的に低迷状況からなかなか脱しきれない状態の企業が多いというふうに思います。
   一方、厳しいこういう経済の状況の中にあっても、地域資源活用等による新たな商品の開発とかあるいは積極的な販路開拓の取り組みを進めるような、「元気な企業」も数多く存在し、そういう意味では、一部に明るい動きも出て来ておるのも事実であります。


《質問》 藤井健太郎 県議
(2)製造業振興にかかる県の役割と利用実績はどのようになっているのでしょうか。
 製造業はすべての産業の富の源泉でもあります。ものづくり、製造業振興における県の役割は何だと考えておられるのでしょうか。
 また、県の製造業振興に直接かかわる支援策の利用実績はどうなっているのでしょうか。制度融資を除いてどのくらいの事業者が利用できたのか。どのくらいの事業者への支援につなげたいと考えているのか。
 また、新技術創出推進条例では、支援対象の優先分野が設けられ、募集がはじまっていますが、県内に支援対象となる事業者がどのくらいあって、実際にどのくらいの事業者への支援につなげたいと考えておられるのでしょうか。


《答弁者》 知事
   私は、産業別担当者制度などを使いまして、県内企業の業況把握に努め、それぞれの企業の課題、地域の実情に応じ、すべての中小企業者の皆様を対象にした、金融面並びに技術力、販売力等経営面などを様々なメニューでご支援をいたしているところであります。
   主な支援策、これはたくさんございますが、実績につきまして、一端を披露させていただきますと、最近の3ヵ年において、例えば、企業に対する専門家の派遣指導事業が約100件、産学官の連携等による研究開発支援、約70件、内外の専門的展示会への販路開拓支援、約50件、地域資源活用や農商工連携による新商品作り支援、約70件、財団法人わかやま産業振興財団、商工会・商工会議所の経営診断、約500件、これ以外に下請けなどの各種相談事業等幅広く取り組んでいるところでございます。
   今後とも、経営革新、販路開拓、新技術創出推進条例を踏まえた技術開発、こういう前向きの支援について、より多くの中小企業の皆様への周知に努めてまいりたいと考えてございます。同時に、私どもの中小企業振興策は、こういう前向きの、これからの未来に向かった力を蓄えていくというだけではなくて、例えば、セーフティネットであるとか、あるいは、現状の経営の相談であるとか、中小企業を助けていくような政策もたくさん、そういう意味で両方をやっていかなければならないということではないかと思います。


《質問》 藤井健太郎 県議
(3)振興条例の制定を
 この際、地場産業振興条例もしくは中小企業振興条例の制定を考えてはいかがでしょうか。本県は全事業所に占める中小零細事業者の割合が全国一だともいわれています。条例制定は県の地場産業、中小企業振興にとりくむ立場、方針を県の責務として明らかにすることができます。
 条例では、全事業所を視野に入れた中小企業振興にかかる理念、基本方針、県の責務、後継者・人材育成や販路開拓も含めた施策体系、中小企業振興をすすめる市町村への支援など明確にしてもらいたいと思います。
 1999年改定の中小企業基本法の第6条では、地方自治体の責務として、「国との適切な役割分担を踏まえ、その地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、実施する責務を有する」とあり、施策の策定から実施まで責任を負うこととなっています。
 旧法では「国の施策に準じて施策を講じるように努めなければならない」となっていて、中小企業支援は、国のメニューの範囲内で施策を実施してきました。
 地方自治体の中小企業振興にかかわる役割が拡大され、努力義務から実施義務へとより明確にされたわけです。


《答弁者》 知事
   中小企業の振興は、今、申し上げましたように、産業政策の基本中の基本で、したがって、国の中小企業基本法を中心とする様々な法制度とか、あるいは、それを受けた私どもの関連の条例とか、それからそのもとでの制度とか、そういうものが、例えば、セーフティネットあるいは現状の経営の向上、あるいは、将来の発展のための振興策等が整備されております。ある意味ではすべて中小企業振興といって過言でないと思います。
   その中で、特定の重要な要素に着目いたしまして、例えば、科学技術振興とか、観光立県推進とか、そういう必要に応じた条例化で重点を明示しているということがあろうかと思います。
   以上のことから、全般的な振興条例というのは、ちょっと違うのではないかという気もいたしますが、中小企業を振興しなければいけないという哲学についてはまったく同感でございまして、不況などの状況変化に対し、あるいは機動的な政策を推進し、活力あふれる元気な和歌山経済創造のために、中小企業振興に積極的に、今まで以上に、特に、具体的に取り組んでまいる所存でございます。


《要望》 藤井健太郎 県議
 知事から、3年間でこれだけの利用実績数とありましたが、やはり県が実施する振興策ですから、すべての事業者を視野に入れて対象にした事業、施策体系であるべきだと思います。今のメニュー下では、特定の事業者がいくつものメニューを利用できるというようなことが起こってきます。現にそうなっています。それによって、本来利用すべき事業者が利用できないということがあっては困ります。もちろん財源の限界というのもあろうかと思いますが、そういうことから条例という形で、県の施策のあり方を示してはどうかと申し上げました。
 地場産業・中小企業というのは地域の大事な宝、産業です。そこで住民が雇用や生活をしているわけで、県民全体にとっても地場産業・中小企業振興というのは大事な課題であると思います。県民一丸となって支えていけるということを進める上でも、条例化がふさわしいのではないかと私は思ったわけです。
 この間すっと、事業所の訪問を続けてきました。今後も継続していきますが、この問題もぜひ求めていきたいと思います。


3.職業訓練について
《質問》 藤井健太郎 県議
 厚労省は全国に83か所ある地域職業訓練センターを、今年度末で廃止し、建物を希望する自治体に譲渡するという方針を示しました。県内では、新宮市、田辺市、日高町の3か所に該当する施設があります。
 地域職業訓練センターの設置目的は、地方産業都市を中心とする地域において中小企業に雇用される労働者に対し、各種職業訓練を行う事業主、団体、地方自治体などに施設を提供し、地域における労働者の職業生涯を通じた訓練体制を確立するとともに、地域経済社会の発展に寄与すること、としています。
 設置は都道府県からの設置要望に基づき、国が設置決定し、現在の独立行政法人雇用能力開発機構が設置者となり、土地は県または市から有償で借り受け、建物は雇用能力開発機構が建設をしています。
 運営は、雇用・能力開発機構が地元県・市を通じて職業訓練法人に運営を委託しています。
 事業内容は、教育訓練の実施、教育訓練を実施する団体への施設の提供、各種講座の開催または施設の提供となっていて、昨年度の利用者と利用率は新宮地域職業訓練センターで延べ5万8500人、利用率72%、田辺地域職業訓練センターで延べ3万4500人、利用率65%、御坊市から日高町に移された中紀地域職業訓練センターで延べ1万9600人、利用率44%となっていて、それぞれに地域差はありますが、利用者が少なくて廃止してもいいような施設はないように思います。
 国の外郭団体である雇用・能力開発機構という組織の廃止に伴い、公共職業訓練の集約化をはかるというものですが、国の行政として地方都市に対する職業訓練からの撤退・縮小となっています。
 今日の経済状況、雇用状況から見れば、国や自治体による公共職業訓練を行う意義は決して薄れてきてはいないと思います。
 完全失業率が改善しないなど雇用情勢の悪化が長期化し、特に若年層ほど失業率が高い状況が続いています。
 今年4月の総務省発表の労働力調査では、完全失業率は全国で5.1%、2カ月連続で悪化。若年層の完全失業率は15歳から24歳の男性で10.1%、女性で9.2%、25歳から34歳の男性では6.5%、女性で6.2%、15歳から34歳の完全失業者数は140万人、失業者全体の4割を占めているということです。
 若者に安定した雇用を確保していくことは、働く権利を保障していくことでもありますが、少子化対策にとっての大きな課題であることや税・社会保険料負担など地域社会を維持していく上でも重要な社会問題でもあります。公共職業訓練の位置づけの重要性は薄れるものではなく、現に働いている労働者が働きながら安心して能力開発に取り組めるような仕組みや失業している人のニーズに見合った教育訓練の提供など、よりいっそうの充実強化が求められているのではないでしょうか。
 そこで、商工観光労働部長にお尋ねします。

(1)公共職業訓練についての県の基本的な考え方はどのようなものなのか。また、今後の方針をどのようにもっているのか。


《答弁者》 商工観光労働部長
   昨今の経済環境の激変や産業構造が変化し続ける中、完全失業率の悪化など雇用情勢は大変厳しい状況であります。この厳しい雇用情勢にかんがみ、県や雇用・能力開発機構が行っている公共職業訓練は大変重要なものであると認識しております。
   現在の公共職業訓練としましては、県立和歌山・田辺産業技術専門学院の2校において学校卒業者を対象に各産業分野における人材養成に努めるとともに、雇用・能力開発機構が設置する和歌山ポリテクセンターにおいて離職者を対象とした職業訓練を実施しているところであります。また、県では、昨年度から離職者を対象にIT関連・介護分野等を中心に民間教育機関等への委託訓練を大幅に拡充し、就職に繋がるよう努めてきたところであります。
   今後も、雇用の安定・拡大に結びつけられるよう内容を充実し、地域ニーズを踏まえた訓練の実施を関係機関と連携を取りながら効果的に進め、各分野における人材育成を図っていきたいと考えております。


《質問》 藤井健太郎 県議
(2)国が設置した地域職業訓練センターは、県の要望に基づいて設置された施設ということですが、国の廃止をするという方針への対応をどうされるのでしょうか。県として存続させていくという方針はもたれているのでしょうか。


《答弁者》 商工観光労働部長
   事業主が行う職業訓練の場として設置された地域職業訓練センターにつきましては、一昨年、雇用・能力開発機構の廃止について閣議決定され、それに伴う見直しにより、昨年12月に「国としては平成22年度末をもって廃止し、建物の譲渡を希望する地方自治体には譲渡する」とされました。それを受け、現在、雇用・能力開発機構において譲渡価額の算定が行われているところであります。
   県としましても、雇用・能力開発機構の動向や地元自治体等の意向を踏まえ、適切に対処して参りたいと考えてございます。


《再質問》 藤井健太郎 県議
 公共職業訓練は重要だというお話しがありました。国のほうでは地域職業訓練センターを廃止する方針ですが、私は、廃止を撤回するぐらいのことをしてはどうかと思うんです。自治体が引き受けるにしても、施設の提供だけではなく内容の充実も同時にしていかなくてはいけないし、国に対してもそのことを申し上げていかなくてはいけないと思います。
 知事は、地域職業訓練センターの廃止という機構からのこの方針を、国に撤廃せよと、国が引き続いてやれということを求める気はありませんか。そのことを再質問したいと思います。


《再答弁者》 知事
   職業訓練の重要性というのは、私も県もみなさんもすべての人が大事だというふうに思っていると思います。後はどういうかたちでやるかということでございまして、本県についてはちょっと前から、いろんな流れの中で一応の結論は出ているというふうに理解しております。
   それが現実にきちんと出来ないようであれば、元々の制度がおかしかったのではないかというような提言をしないといけないし、うまくいくようであればその必要ないと考えます。私の立場としましては、具体的にきちんとした訓練が本当になされるかどうか、広く議論していきたいと思っております。


《要望》 藤井健太郎 県議
 どういう形がいいのかよく議論をしていきたいということですが、もう機構のほうでは、平成22年末をもって地域職業訓練センターを地方自治体に譲渡する、地方自治体が受けなければそれはそれで廃止ということです。
 職業訓練の場の提供でもあるし、特に今の雇用情勢を見れば職業訓練の位置付けというのは、決して薄れてはいないということで申し上げました。
 県民の雇用の場、それから働いている人の職業訓練を重ねて、離職者を生まないというような形での職業訓練も大事だと思いますので、ぜひ力を入れてやっていただくよう要望します。

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