2010年6月県議会
奥村規子 一般質問
2010年6月16日


1.障害者自立支援法について
(1)訴訟での和解をどのように受け止めているか
(2)基本合意にもとづいた新法づくりを国に求めること
(3)自立支援医療の住民税非課税世帯の無料化について
(4)市町村における地域生活支援事業の移動支援事業について
2.介護保険制度施行後10年を経て
(1)だれもが安心して老後を過ごせるような介護保険制度に
(2)保険料減免制度の拡充と利用料の減免制度の創設を
(3)サービス提供の地域格差の現状と自治体の責任
(4)介護現場の人材確保状況と処遇改善の効果と評価
3.ヒブ・肺炎球菌・子宮頸がんのワクチンの接種について
(1)早急に公費助成と定期予防接種化を実現させること
4.防災について
(1)09.11.11集中豪雨の被災状況および教訓について
(2)移動の困難な人への支援について
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1.障害者自立支援法について
(1)訴訟での和解をどのように受け止めているか
(2)基本合意にもとづいた新法づくりを国に求めること
《質問》 奥村規子 県議
 議長のお許しを得ましたので通告にしたがって一般質問させていただきます。
 まず最初に、障害者自立支援法についてお伺いいたします。
 障害者自立支援法は2006年4月に施行されました。施行の背景には、国はそれまでの障害保健福祉施策では身体・知的・精神障害といった障害種別等によって異なる福祉サービスや公費負担医療の利用の仕組みや内容などを一元的なものとすることや、その利用の増加に対応できるように制度をより安定的かつ効率的なものとすることが求められてきていたということから、2006年10月に全面施行しました。支援法の目的は障害者や障害児がその有する能力と適正に応じ、自立した日常生活または社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付その他の支援を行なうことにより、障害者や障害児の福祉の増進を図り、障害の有無にかかわらず、国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与するとなっています。しかし現実的には、障害が重ければ重いほど利用者の負担が増えるというものになっています。自立支援法施行前より多くの障害者や関係団体からこの法律の廃案を求める声が上げられていました。施行後も、福祉や医療サービスを受けた障害者に利用料の負担を強いる支援法の抜本的見直しや廃止を求める声が広がり続け、大きな運動に発展してきました。そして、自立支援法の「応益負担」は法の下の平等などを定めた憲法に反するとして2008年10月31日、全国8地裁に一斉提訴され、翌年2009年4月1日には和歌山を含め10地裁、その後も提訴があり、原告71名、14地裁に裁判を起こしました。被告は国及び住んでいる自治体になっています。
 このような中で、厚生労働省は本年1月に支援法を廃止して2013年8月までに新法を制定することなどについて基本合意を交わしました。基本合意のなかみは、憲法13条・14条・25条の理念に基づき意見訴訟を提訴した原告らの思いに共感するというものです。そして自立支援法を障害者の意見を十分に踏まえず施行し、応益負担を導入したことにより、多大な混乱と生活への悪影響を招き、障害者への人間としての尊厳を深く傷つけたことに対し原告らをはじめとする障害者及びその家族に心から反省の意を表明するというものでした。今後新たな総合的な福祉制度を制定するにあたっては、障害者の参画のもとで充分な議論をおこなうと約束しました。私も和歌山地裁に傍聴にいき、その時の原告の意見陳述を聞きました。
 ここでみなさんにも聞いていただきたいと思います。意見陳述の内容をご紹介します。

 『障害者自立支援法は、支援費制度が始まったすぐ後に国が「財政難でお金が足りなくなった」と言い出して、障害者の声をほとんど聞かずに作った法律です。成立前から様々な問題点が指摘されていて、僕たちも「これから生活は一体どうなるのだろう?」という不安で一杯でした。法律ができる前から全国各地の仲間たちが国会や厚生労働省に何度も足を運び、反対の声を上げてきました。中でも応益負担、支給量、施設報酬の日割りの問題などは深刻で、全国の実態を知れば知るほど恐ろしくなりました。
 応益負担や支給量では、生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされた方々も多くいます。自立支援法になり、障害年金だけで生活している人でも、介護を受けると毎月15,000円とか25,000円というお金を払わなければならなくなりました。しかも障害が重ければ重いほど負担が大きくなります。僕のまわりにも、自立支援法になってから生活がとても苦しくなり、必要な介護を受けられなくなった方がいます。僕は、自立支援センターの代表を務めていて収入があるため月35,000円以上も負担していました。これではとても生活が成り立ちませんでした。』

 この制度では私は、働いても働いても生活が成り立たないということが、改めて裁判の中で明らかになったのではないかと思いました。彼はまた、このようにも言っています。

 『サービス・支給量の問題は地域生活において大きな問題です。支援費制度の頃は、今よりは一人ひとりのニーズに応じて支給量を認めてくれていたと思います。しかし自立支援法になり、障害者を障害程度区分ごとに機械的に分けられ、サービス・支給量もそれによって決められてしまうようになりました。「個人のニーズはどこにいってしまったのか?」と疑問だらけでした。「どこで誰とどんな生活を送りたいのか」という当事者の希望やニーズを無視した法律を許すことはどうしてもできませんでした。そこで僕はこの裁判に加わることにしました。
 和歌山での提訴から丸1年が経ちました。全国で一緒に闘っている仲間たちや弁護士の方々、この裁判を応援して下さっている「めざす会」や関係者の方々のご支援があったおかげでここまでやって来ることができました。ありがとうございました。
 その間にも政権が交代し、障害者福祉にも明るい未来が見えてきました。「自立支援法を廃止し、4年後には新法を作る」という長妻厚生労働大臣の力強い言葉があり、「期待と希望」を胸に仲間たちみんなで喜び合いました。
 今年1月7日には、国と基本合意を結ぶことができました。それによって4月からは低所得の方の利用者負担がゼロになります。この裁判も国や和歌山市と「和解」できることになりました。
 今、国では「障がい者制度改革推進会議」が開かれています。どんな新法になるのか注目し、全国各地からの当事者の声を反映させていきたいです。また、一緒に裁判を闘ってきた全国の原告らと国とで話し合う「検証会議」に僕も参加してどんどん意見を述べていきたいです。
 何より先に、障害者一人ひとりが「夢と希望」を持ち、幸せに伸び伸びと自由に暮らせる社会を作らなければいけません。僕もそのために力を入れていきたいと思います。』
 と結んでいます。これは彼一人だけの気持ちではないことが痛いほど分かりました。

 私の姉も障害がありました。姉が亡くなった後、母は次第にパーキンソン病の症状が進行し、自分では全く身動きできない状態になってしまいました。母は口癖のようにいつも姉をおいては「安心して死ねない」と言っていました。心安らぐ日はなかったと思います。私も一日も早く障害があっても普通に安心して暮らせるような法制度の確立を強く願わざるを得ません。
 そこで知事は、障害者自立支援法違憲和歌山訴訟での和解をどのように受け止められていますか。
 また現在、内閣府におかれた「障がい者制度改革推進会議」では当事者参加のもとで新しい法律づくりや新法制定までの当面の課題など論議がすすめられていたにも係らず、突然そうした動きをまったく無視し、与党の民主党は自民・公明両党とともに根本的には応益負担を残したまま自立支援法「改正」案を国会に提出、成立させようとしていることに非常に憤りを覚えるものです。関係団体の方も抗議の声をあげています。そこで和歌山県知事としても、是非基本合意の内容を生かした新法づくりをするように国に求めていただきたく思いますがいかがですか。


《答弁者》 知事
   障害者自立支援法違憲訴訟は、本年1月7日に原告団と国との間で調印された基本合意文書を前提に、和歌山地方裁判所で4月9日に和解が成立するなど、4月までに全国で和解が成立したと聞いております。
   現在、国において自立支援法に代わる新たな障害者福祉制度の検討が進められていますけれども、検討にあたっては、基本合意文書の趣旨を尊重し、応益負担から応能負担への変更など、障害のある方の立場に立ったサービスが、地域で安定して提供される制度となるように、障害のある方のご意見を十分踏まえていただくことが重要であると考えております。
   県といたしましては、国における検討の状況を注視しながら、新しい制度が障害のある方にとってよりよい制度となるように、他の都道府県とも連携し、国に対して働きかけてまいりたいと思います。


《再質問》 奥村規子 県議
 国との関係を注視していきたいとおっしゃいましたが、知事自身、障害のある皆さんがうったえてきたこの「応益負担」「応能負担」という問題について、基本合意に共感を持っておられるということなのかどうなのか、そこの点が少し分からなかったので再質問をさせていただきます。


《再答弁者》 知事
   私は、これはいろいろな制度を考える時に、全部、両方の要素を考えないといけないと思います。したがって、応能がよくて、応益がだめだと、一般論として言うのはいかがなものかと思います。
   障害者自立支援法について、障害のある方は、やはりなかなか収入を得ることも難しいし、そういう意味では応能の問題をもっときっちり取り上げないと難しいのではないかということは正しい方向ではないかと思います。
   一方、絶対応益が悪いかというと、障害を持っている方でもたいへんな、例えば資産を持っておられる方のお家の方とかそういう方もいらっしゃいます。そういう方をどう考えるかというのは、また別の問題として、考えておかないといけないということではないかと思います。同時に応益ということについては常にそういうことをカウントするということが必要だと思います。
   ただ、障害者を助けていく時に、応益というのが少し添わない感じが私はします。というのはいろいろなサービスをする。それはサービスを受益する人が応益に負担する、そういうことは一般的に正しいと思いますが、障害を持っている人を社会全体で助けていくということが目的であるとすると、あまり応益を大きく出すというのはどうかな、というような感じがいたします。


(3)自立支援医療の住民税非課税世帯の無料化について
《質問》 奥村規子 県議
 また次の2点について、福祉保健部長にお尋ねします。
 1点目は自立支援医療についてです。障害者医療費公費負担は育成医療・更生医療・精神通院医療が統合され、対象者は今までの制度に準じたものが自立支援医療に変更されました。自己負担は1割負担と入院した場合の食費がいります。国は本年4月から低所得者の福祉施策の利用者負担は無料としましたが、医療施策については自己負担の上限額があるものの低所得者にとっては厳しい状況です。障害者にとって医療は命綱ともいうべきものであり、本来は無料にすべきではないでしょうか。


《答弁者》 福祉保健部長
   障害者自立支援法違憲訴訟の原告団と国との間で取り交わさされました基本合意文書におきまして、自立支援医療に係る利用者負担の措置については、当面の重要な課題とすることとされてございます。この基本合意の際に国に併せて提出されました要望書におきましては、緊急に非課税世帯での無償化が実施されることとされてございます。
   また、今国会におきましては、自立支援医療の自己負担につきまして、法律上、負担能力に応じた負担、いわゆる応能負担が原則であることを明確化するための規定の見直しをする改正法案が提出されているところでございます。
   県といたしましては、このような状況を踏まえまして、国会の審議の状況を注視し、今後の国の動向を見守って参りたいと、このように考えております。


(4)市町村における地域生活支援事業の移動支援事業について
《質問》 奥村規子 県議
 2点目は地域生活支援事業についてお伺いします。
 地域生活支援事業は、地域の特性や利用者の状況に応じて市区町村や都道府県が柔軟におこなう事業とされており、内容についても市区町村ごとで決めることになっているものです。特に移動支援への要望が強く聞かれます。幅広く社会活動に参加するためにも本人の希望に沿って移動の保障をすべきだと考えます。06年12月に採択された「国連障害者の権利条約」は障害のある人の基本的人権を促進・保護すること、固有の尊厳の尊重を促進することを目的とする国際的原則です。その中にも第20条には個人的な移動を容易にすることとうたわれています。どこに住んでいても充分な支援を受けられることが必要です。各市町村の移動支援の状況と拡充についておこたえください。


《答弁者》 福祉保健部長
   地域生活支援事業は、障害者自立支援法の施行により実施されている事業でありますが、全国統一の基準ではなく、地域の実情に合わせた柔軟な事業実施によりまして障害者の方々の地域での生活を支援する事業でございます。その事業の実施方法、また利用者負担等は市町村の主体的な判断に任されているところでございます。
   そのうち議員ご質問の移動支援事業につきましては、必須事業とされてございまして、県内全ての市町村で事業化をされてございます。また、本年4月からは、市町村民税非課税世帯について介護給付費及び補装具等にかかる自己負担額が無料となったことに伴いまして、地域生活支援事業におきましても、県内全ての市町村で同様の取り扱いとなってございます。
   また、市町村民税課税世帯につきましても、原則1割負担となっておりますが、無料としている市町村もございまして、これにつきましても各市町村の判断で実施されているところでございます。
   さらに、移動支援事業などの利用者負担額の合計額が介護給付費にかかる利用者負担上限月額を超過した場合に、その超過額を補助する県単独補助事業も行っているところでございます。
   今後とも、地域生活支援事業については、障害のある方々が地域で安心して生活することができるよう、市町村の積極的な取り組みを要請して参りたいと考えてございます。


2.介護保険制度施行後10年を経て
(1)だれもが安心して老後を過ごせるような介護保険制度に
《質問》 奥村規子 県議
 2項目目は介護保険制度についてお尋ねします。
 4点にわたってお聞きいたします。
 2000年4月に介護保険制度がスタートし丸10年が経ちました。制度が発足した背景は90年代に入って「介護地獄」や「老老介護」など悲惨な事件が各地で起こり、家族介護の困難さと限界がだれの目にも明らかとなり、介護が社会問題となって本制度が誕生しました。この間、介護の社会化が進んだと言えるかどうかです。私は、介護が商品化・営利化されていることがますます明らかになってきているように思います。高齢者にかかわる人が増えた点では一定評価することができますが、ホテルコストや自費の領域が拡大しお金がなければ必要なサービスも利用できず、結果的には家族介護に頼らざるを得ない事態も広がっているように思います。3日前の13日、兵庫県で介護心中の記事が載っていました。介護の社会化がまだまだ進んでいないと実感しました。だれもが安心して老後をすごせるような介護保障になっているかという点で、知事はどのように感じておられるかお聞かせ下さい。


《答弁者》 知事
   介護保険法が施行され10年が経過しました。サービスの利用者が大幅に増加していることなどから、「高齢者の介護を社会全体で支える仕組み」という形では、はかなり定着してきたものと認識しております。
   一方、今後ますます少子高齢化が進む中で、このまま介護保険制度を維持していけるのか、不安を感じているところであります。
   議員ご提案の「誰もが安心して老後を過ごせるような介護保険制度」を実現するためには、制度を持続可能なものとすることが大きな課題であると考えております。
   そのためには、しっかりとした財源が必要でございますが、その財源の確保のため、税や保険料を含めた制度全体の構造をどういうふうにするかということが、改めて問われていると認識しております。
   国においては、先月末から社会保障審議会介護保険部会において、制度見直しの議論が始まったところであり、県としても、この議論を注視するとともに、機会を捉えて必要な要望を行って参りたいと考えております。


(2)保険料減免制度の拡充と利用料の減免制度の創設を
《質問》 奥村規子 県議
 次に福祉保健部長におたずねします。
 あるケアマネジャーの方は「介護の現場では介護の必要性よりも、先に費用負担能力から逆算することが常態化している」といっています。所得の少ない人がサービスを受けられないということでは安心した老後をおくることができません。保険料の減免をひろげ、利用料の減免制度をつくる必要があると考えますがいかがでしょうか。


《答弁者》 福祉保健部長
   介護保険の保険者である市町村が介護保険サービスの支払いのために必要な費用は、国・県・市町村、それに被保険者が法律で定められた割合で負担すること、また65歳以上の被保険者が支払う第1号保険料の金額は保険者である市町村が条例に基づき決めることが、介護保険法で定められてございます。
   このため、第1号被保険者の保険料の減免を実施する場合は、保険者である市町村におきまして対象範囲や財源等を検討し、条例等に規定をして実施すべきものであると考えてございます。
   また、利用料減免制度につきましては、市町村民税非課税世帯等の低所得の方々が社会福祉法人や市町村の提供する介護保険サービスを利用した場合、1割負担や食費・居住費が軽減されます「社会福祉法人等による利用者負担軽減制度」がございます。
   この制度を実施している社会福祉法人等に対しては、市町村が軽減総額の一定部分を助成し、市町村が助成した分に対しまして県から補助金を支出するという形になってございます。
   この軽減措置の利用状況につきましては、市町村によりバラツキがあることなどから、市町村に対しまして積極的に実施するよう要請を行ってございまして、あわせまして、一部未実施の社会福祉法人もございますので、直接訪問をして、制度実施の依頼を行っているところでございます。
   なお、これまでも低所得の方々に対する保険料負担及び利用者負担軽減措置の充実につきましては、近畿府県民生主管部長会議を通じまして国にも要望しているところでございますが、引き続き要望して参りたいというふうに考えてございます。


(3)サービス提供の地域格差の現状と自治体の責任
《質問》 奥村規子 県議
 また介護保険は当初、「サービスを選択できる制度」と宣伝されていましたが、現実は「保険あって介護なし」という状況を目の当たりにします。特に和歌山県のような山間地の多いところでは、そもそもサービスが提供できないといった地域もあるのではないかと思います。ある地域では訪問介護や訪問看護もきてもらえず、保険料だけ払っているということになっています。また別の地域では、介護タクシーをたのめず一時間以上歩いてやっと医療機関にたどり着き、「先生から『よく歩いてきたな、心筋梗塞をおこしている』と言われ、びっくりした」という話をききました。このようなことから、サービス提供の地域格差が著しいのではないかと考えますが、現状と自治体の責任をどのようにお考えですか。


《答弁者》 福祉保健部長
   高齢化が進展し、介護サービスの需要が増大する中で、県内における介護サービス提供事業所の地域格差や中山間地域におけます事業所の不足は重要な課題であると認識をしております。
   そのような中、昨年4月の介護報酬の改定によりまして、中山間地域等における小規模事業所が介護サービスを提供する場合や事業所が通常の事業の実施地域を越えて中山間地域等に居住する方に介護サービスを提供した場合に、新たに介護報酬の加算措置が設けられてございます。
   県としましては、中山間地域等における介護サービス事業所の参入が進むよう、介護報酬の加算措置の周知に努めるとともに、市町村とも連携をいたしまして、地域密着型サービスとの併設や新たな参入などにつきまして、民間の介護サービス事業所や市町村社会福祉協議会などに要請をし、地域格差の解消に努めて参りたいと考えております。

(4)介護現場の人材確保状況と処遇改善の効果と評価
《質問》 奥村規子 県議
 次に人材確保の問題についてお尋ねします。
 介護現場の人材不足は周知のことですが、この間、県としても対策がとられてきました。根本的には介護労働者の労働条件の改善をすすめてゆくことだと考えますが、現時点での人材確保状況と処遇改善の対策の効果と評価についてお答え下さい。

《答弁者》 福祉保健部長
   介護サービス分野の人材確保のため、県では新規就業を支援する事業や就職相談会を実施するとともに、介護職員の給与水準の向上など処遇改善などを併せて実施することにより、介護現場への就業促進と定着に取り組んでございます。実施といたしましては、昨年4月からの一年間で、約300人の新規雇用があったところでございます。
   また、介護職員の処遇改善につきましては、昨年4月の介護報酬の引き上げに加えまして、国の経済危機対策による介護職員処遇改善交付金を活用して、賃金の引き上げを図るなど一層の処遇改善に努めているところでございます。
   これらの対策によります介護の人員不足への効果でございますが、介護関係の有効求人倍率が、昨年の4月では、2.07でありましたが、本年4月には、1.47に下がっていることから、一定の効果が現れてきているものと考えてございます。
   しかしながら、介護関係の有効求人倍率は、全産業の有効求人倍率0.54に比べまして、依然として高い状況にありますので、引き続き、介護職員の人材確保と処遇改善に努めて参りたいと考えてございます。


《再質問》 奥村規子 県議
 介護保険制度ができる時に、所得がたいへんな人、年金額が低い人から年金もない人、そういったいろいろな方々にとってはたいへんな負担になるのではないかと当初から思っていました。
 知事は、「制度を持続可能なものとすることが課題であり、維持していけるのか不安を感じる」ということも言われました。それは、今のままでは高齢者が増えサービス料も増えて財政的に大変だと。これ以上保険料を払うのが本当に精一杯になってきている状況のなかで、介護保険制度自体が持たないんじゃないか、維持していくのが大変だというふうにおっしゃられたと思います。
 費用負担が出せなくて介護サービスを受けられない方々が大勢いらっしゃるわけです。そういう意味では、「誰一人泣くことのないように」と言われた知事の政治姿勢の決意と合わせてどのように理解したらいいのか。そういった低所得の人たちもしっかりと介護を受けられるようなものに考えられていると受け止めたらいいのか、介護保険制度そのものの制度仕組みを考えていかなければいけないと言われたのか、その点どうでしょうか。


《再答弁者》 知事
   介護の制度について、私は答弁で申し上げましたのは、議員ご指摘の第1の点でございます。第2の点につきましてもそんなことは、冷たく考えてどうでもよいというわけでは、決してないと思います。
   どうやって貧しい方々がちゃんと介護が受けられるかどうか、その介護の制度、あるいはその外側にある社会保障全体の制度の問題として、きちんと考えていかなければいけないというふうに思います。


《要望》 奥村規子 県議
 前の予算委員会の時にも申し上げたんですが、「介護保険制度はサービスを希望する人が選択できる」ということですが、その選択ができずに特別養護老人ホームを待機しなければならず、在宅で置かれるなどいろんな状況を抱えられて、毎日介護がたいへんな状況です。ぜひ、県としても実態をしっかりと掴んでいただきたいと思います。
 利用料の減免制度のお話しで、その手立てはとられているとおっしゃられましたが、それが徹底されず、利用者さん自体がなかなか理解できていないんじゃないか、それともまた、利用にバラツキがあるということは、社会福祉法人の事業者さんが使いにくい状況があるのではないかといったことも思います。
 実際に予算もとられていることなので、ぜひこういう制度を活用できるような検討なりをよろしくお願いします。


3.ヒブ・肺炎球菌・子宮頸がんのワクチンの接種について
(1)早急に公費助成と定期予防接種化を実現させること
《質問》 奥村規子 県議
 3項目目はワクチンの定期接種についてお聞きします。
 細菌性髄膜炎に毎年約1,000人の子ども達がかかっています。細菌性髄膜炎の原因となる細菌の60%がヒブで、25%が肺炎球菌といわれています。死亡率は約5%で、25%の子どもは知的な障害やまひなどの後遺症に悩まされます。世界保健機構は1998年にすべての国に対して、乳幼児へのヒブ(ヘモフィルスインフルエンザb型)ワクチン接種を勧告しています。4回の接種費用が計約3万円となり、家計を圧迫します。お金がないということで接種せず、命を落とすことがあってはなりません。子どもは社会の宝、子どもの命を守るのは政治の責任です。医師の立場からも、ワクチンの定期接種化は小児救急医療の現場の負担軽減にも有効だと言われています。以前、私の身近なところでも子どもが細菌性髄膜炎にかかり、一時危険な状態から一命をとりとめるということがありました。高熱が続き病気と闘っている幼い子どものそばで、生きた心地がしなかったと言われています。私を含め周囲も祈ることしかできませんでした。回復したその後も成長過程の中で何かあれば病気が原因ではないか、後遺症ではないかと考えてしまうと言います。一刻も早く安心して子育てができるようにしなければならないと思います。20代女性では発症率が一番高い子宮頸がんも、ワクチンの接種によりほぼ予防できる病気と聞いています。安心の子育て環境をつくる上でもヒブ、肺炎球菌、子宮頸ガンの3種のワクチンについて、一日も早く定期接種化を望むものです。福祉保健部長いかがお考えですか。お答えください。


《答弁者》 福祉保健部長
   ヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、子宮頸がんワクチンにつきましては、いずれも平成19年から21年にかけて医薬品としての承認は受けておりますが、予防接種法への位置づけについては、現在厚生労働省において専門家を交えて検討されているところですので、去る6月8日に国に対し予防接種法への位置づけを進めるよう提案を行ったところです。
   県としては、国の動向等を注視しながら、引き続き接種者への支援のあり方などについて検討してまいります。


4.防災について
(1)09.11.11集中豪雨の被災状況および教訓について
《質問》 奥村規子 県議
 最後の4項目目は防災について2点お伺いします。
 昨年、11月11日未明、和歌山市を中心に紀北地方に観測史上最大の雨量が記録されたことは記憶に新しいことだと思います。今年も梅雨の時期に入ってきましたが、被害にあわれた方から不安の声も聞かれます。「集中豪雨で工場の機械がだめになった」、「同じ年に2回も車が浸かり、2度目は保険がきかなかった」、「側溝に木の葉やごみが詰まり店にも水が入ってきた」など、営業にも随分被害がありました。12月議会でも藤井議員が質問していましたが、再度被災状況をお聞きし、これからも想定外の事態が起こりうるということから教訓をどのように考えているのか、危機管理監にお尋ねします。


《答弁者》 危機管理監
   昨年11月11日、未明から朝にかけて、県北部を中心に発生しました集中豪雨では、和歌山市を中心に、死者1名、床上浸水656棟、床下浸水2,449棟などの被害がございました。また、道路被害や河川被害などの公共土木施設や農業被害などが約7億7,000万円にのぼりました。
   和歌山市で同日午前3時57分までの1時間雨量が、122.5ミリに達する記録的豪雨となりましたが、豪雨の時間が比較的短時間であり、未明の暗い時間帯であったことなどから、避難勧告等は発令されませんでした。このこと自体は、夜間の避難中に死者や行方不明者の発生した兵庫県佐用町の事例からも適切な判断であったと考えておりますが、いずれにいたしましても、災害時の人的被害を最小限に抑えるためには、市町村長による避難勧告等の出し方が重要なポイントとなりますので、県では、市町村に対し、災害に際しての避難勧告等の適切な発令、そのための具体的な避難判断基準の作成などを要請しているところでございます。
   また、住民の安全確保のためには、気象情報などの防災情報を迅速かつ正確に伝達することが最も肝要と考えており、県では、防災わかやまメール配信サービスの周知を図るとともに、今年度、土砂災害危険箇所に立地する要援護者施設への市町村防災行政無線端末の整備支援を行うなどしており、今後も市町村と連携し、台風や集中豪雨などの風水害対策に取り組んでまいります。


(2)移動の困難な人への支援について
《質問》 奥村規子 県議
 また災害に備えて、移動の困難な人への支援について福祉保健部長にお伺いします。
 移動が困難な人というと年齢や障害の程度・部位など、個々人それぞれさまざまな状態にあり、朝方・昼間・夜間の時間帯や停電時、災害の種類・強さによっても避難支援の仕方がちがってきます。コミュニケーションがとれずパニックに陥ることも推測できます。ある団体では阪神大震災をきっかけに「障害者市民防災提言集」をつくり、震災を教訓に障害者が被災した際の負担軽減について話し合っているということです。県としてはどのような取り組みを考えられていますか。福祉保健部長にお尋ねします。


《答弁者》 福祉保健部長
   高齢者や障害者など災害時要援護者対策につきましては、国からの通知に基づきまして、市町村において、対象者の範囲、要援護者に関する情報の収集及び共有の方法等について基本的な方針を定める避難支援プラン全体計画の策定を進めているところでございます。本年3月末現在、県内22市町が策定済みとなってございます。
   また、要援護者一人ひとりに対応する避難支援者や避難場所、また情報伝達の方法等を定める個別計画につきましては、県内19市町で現在策定中となってございます。
   県といたしましては、平成20年6月に「和歌山県災害時要援護者支援マニュアル」を策定いたしまして、市町村に対する説明や情報提供を行ってきておりますが、 全市町村が避難支援プラン全体計画及び個別計画を早期に策定するよう、引き続き働きかけたいと考えてございます。


《要望》 奥村規子 県議
 国に上げた、昨年11.11の被害報告7億7000万円のなかの農業的な被害に入ると思いますが、白菜が大変な被害を受けたと聞いています。営業をされている方たちの経済被害状況はかなりあったのではないかと思いますが、そんなところもぜひ掴んでいただきたいと思います。
 現在は、床上浸水被害に対して5,000円のお見舞金を支給するといったようなものしかありませんが、そういう被害に対する今後の支援策をいま検討されているとお聞きしています。
 様ざまなことも含め、被害の経済状況をきるだけしっかりと把握していただきたいと思います。

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