2010年9月県議会 藤井健太郎 一般質問 2010年9月17日
1.経済・雇用・くらしと営業の安定に向けて
(1)県経済の今後の見通しと対策について
(2)経済対策の評価と今後の対応について
(3)緊急雇用創出事業、ふるさと雇用再生事業について
(4)正規雇用の拡大について
(5)賃金、所得の向上について
(6)中小企業向け融資制度、金融円滑化法について
2.関西広域連合について
(1)広域連合で関西は元気になるのか
(2)経済界の位置付けとその役割について
(3)地域開発と広域連合の役割
(4)広域連合のもつ問題点
(5)広域連合と府県間協定
(6)広域連合と道州制について
(7)国の事務の受け皿について
(8)住民の理解と同意について
(9)温暖化対策への取組について
(10)ドクターヘリの運航について
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1.経済・雇用・くらしと営業の安定に向けて
《質問》 藤井健太郎
県議
県経済の先行き、見通しをどのように考え、これまでの経済対策の成果と今後の対策について、お伺いしたいと思います。同時に、県経済を支える主役の一つでもある県民の家計の収入がへり、消費力、購買力が、冷え込んできているなかで、県民生活をどのように応援していくのか、県民のくらしの安定に向けてどのように考えているのか、お伺いします。
内閣府の景気ウォッチャー調査というのがあります。街角の景気実感を各産業分野で調査し、指数であらわしたものですが、今年の8月の結果を見ると前月比4.7ポイント低下の45.1となり、2カ月ぶりに悪化、家計の動向、企業の動向、雇用の動向の3部門すべてで低下ということが示されていました。
この調査では、景気が回復傾向にあるかどうかの実感をはかる指数として、横ばいの状態を50という数字であらわしていますが、この3年4カ月間、若干の下降上昇はあるものの50を上回らない状況となっています。この2年間、様々な景気対策がとられてきましたし、現在もとられつつありますが、景気回復の実感がともなわないことを示した一つのデータといえます。
今議会の冒頭、知事は経済情勢への対応として「景気・経済情勢に対する対策の出動は国レベルでないと如何ともしがたい。心配しながら国の対策に期待する」とし、県としては「業況把握に努め、資金繰りと競争力・成長力の強化を支援していく、雇用面では、経済団体への求人の要請、企業と求職者のマッチングの機会の提供を行う」といわれています。
これまで、知事は、経済対策として、新商品・新技術の開発などで伸びる可能性のある企業をさらに伸ばして競争力をつけていくこと、トップセールスなどで販路拡大を県外、国外に求めていくことなど経済の供給側、企業活動を活発にしていく経済政策に力点をおかれているように見受けられます。
県内経済の需要の側面、県内事業者の仕事づくりや県内の消費力をいかに高めていくかという視点でどのように考えておられるのか。企業活動に活力をもたせることによって、雇用の増や給与のアップに期待できるという考えかたもありますが、県経済の自立的な景気回復をはかっていくために県内での需要の喚起や冷え込んでいる家計をどう応援していくのか、ということも必要だと思うのですが、どうでしょうか。
家計を応援するという視点から見ると、一つは、県民の安定した雇用の維持や所得を向上させていくこと、二つ目に将来の生活設計に安心感をもてること、年金、医療、介護など社会保障制度の給付を安定させ、所得に占める社会保障負担をできるだけ軽減させていくこと、などが必要だと私は考えています。
そこで、知事並びに関係部長にお尋ねします。
(1)県経済の今後の見通しと対策について
県経済の今後の見通しと対策の基本的な考えた方をどのようにおもちなのか。
国の対策を心配しながら期待する、と言われていますが、国に対してどのように働きかけていくのか。
県として経済振興にかかる基本的施策はどのようなもので、今後どうしていくのか。
県内の需要を拡大させていく、強化していくということについては、どのように考えておられるのか。
(2)経済対策の評価と今後の対応について
08年12月から始められた経済対策は景気を自律的な回復軌道にのせることができている、できつつあると考えられるのか。
経済対策関連の基金事業も来年度で底をつくことになります。これまでの評価と今後どのように活用をはかるのか。
《答弁者》 知事
本県経済は、鉄鋼、化学などの一部の業種を除き、回復への懸念要因が払拭されたとはいえません。現時の円高の影響により、今後先行きに慎重にならざるを得ない状況にあると考えております。
さらに言うと、前政権の時の潤沢な資金の経済対策で、そのような資金が、例えば、県に基金などの形で配られております。この対策のですね、いわば繰り延べ効果という形で、この一年間、何とか景気の腰折れというのが無くてですね、過ごしてこられたのではないかというふうに、私自身は思っております。
あんまりこういう悲観的なことばっかり言うとですね、私の立場からすると良くないんですけど、正直に申し上げますと、このような効果も考えると、あまり楽観的になれない、というのが、私の気持ちでございます。
このような、これまた、景気・経済情勢への対策は、理論的にも、実際的にも、国レベルでないと効果的な対応は難しい面があります。そういう意味で、やきもきをしながら心配しているのですが、国に対しては、景気対策と成長戦略ですね、これをしっかりやってくれと、というふうに頼むとともに、県レベルでできることは、全力で取り組んでいこうと考えておりまして、いろいろな対策を講じております。
経済の活性化並びに雇用や所得の確保など県民生活の安定を図るため、平成20年12月、「緊急経済対策本部」を設置し、産業別担当者などを活用し業況を的確に把握するとともに、金融対策や基金事業をはじめとした雇用対策、下請け地場産業対策などについて、国の経済対策の活用も図りながら、全庁を挙げて取り組みを進めてきたところであります。
主な取り組みでありますけれども、金融対策につきましては、「資金繰り安定資金」や「経営支援資金」など国の緊急保証制度と連携した、特にセーフティネット制度融資の創設によりまして、小規模零細企業への資金供給、あるいは、事業継続を支えることができたものと考えております。
また、下請け・地場産業対策では、「下請け駆け込み寺」の活用、相談窓口の設置により、企業の課題に応じた指導を行ったところであります。
このような施策により、本県経済の打撃を受ける、そういうことにですね、打撃をうけることを防ぐことに一定の効果があったものと認識しております。
今後とも、円高などの動向を注意深く見守りながら、県民生活や企業の業況把握に努め、国に対し必要があれば提案・要望を行うなどし、引き続き、セーフティネットの充実、経営革新などの施策について機動的かつ適切に講じてまいりたいと考えております。
(3)緊急雇用創出事業、ふるさと雇用再生事業について
《質問》 藤井健太郎
県議
離職を余儀なくされた人の一時的つなぎ雇用や失業者の安定雇用につなげるための事業が国の経済対策として全国の都道府県で実施されています。国が発表している緊急雇用の21年度実績と22年度計画を見れば、本県は雇用創出数で下から4番目、ふるさと雇用でも下から4番目、2つの事業を合わせた雇用創出数では下から2番目という低位に甘んじています。国が配分した予算の範囲内のみで事業をされていると見受けますが、雇用創出を拡大していくという点からみて、どのように考えて、今後、どのようにしていくのか。
《答弁者》 知事
雇用情勢につきましては、完全失業率が5%台を推移しています。本県の有効求人倍率は全国平均を上回っており、近畿ではトップでありますが、喜ぶわけにはいかず、依然厳しい情勢が続いています。
こうした状況を踏まえ、ふるさと雇用再生特別基金活用事業及び緊急雇用創出事業臨時特例基金活用事業の実施に鋭意取り組んでおり、21年度は県事業と市町村事業を合わせ、1,693人の雇用を創出しております。今年度は更に基金を有効に活用し、現時点で約2,700人の雇用を創出する計画を立て、切れ目のない雇用の創出に取り組んでおります。
(4)正規雇用の拡大について
《質問》 藤井健太郎
県議
今年7月の本県の有効求人倍率は0.58倍、職を求める人2人に対して1人分の仕事しかない。正社員の有効求人倍率は0.27倍という状況で正社員を希望する人では、3人に1人分の仕事しかないという状況です。正社員としての仕事を求める求職者に対して求人が少ないという状況が見てとれます。
企業の求人のなかでもアルバイトなど非正規が占める割合が拡大してきているのではないでしょうか。また、失業率は改善の方向にあるのでしょうか。どのような認識をおもちでしょうか。
雇用の安定化をはかるためにも正規雇用の拡大が必要です。正規雇用の拡大をすすめることについて、どのように考えておられるのでしょうか。
《答弁者》 知事
正社員有効求人倍率は低い状況が続いておりまして、就職面談会などのマッチング機会の提供やジョブカフェをはじめとした若年者雇用対策、また経済団体や約3,000企業への求人要請を行い、正社員の雇用拡大に向け取り組んでおります。これから特に、高校生の就職が次の年に向けて始まります。出来るだけ多くの人を雇ってくださるよう、もう一度、拍車をかけてお願いしてまいりたい、そうした指令を発したところです。
(5)賃金、所得の向上について
《質問》 藤井健太郎
県議
県民所得の動向はどのようになっているのか。勤労者の賃金はどのようになってきているのでしょうか。毎月勤労統計調査で表れている本県の平均現金給与総額では、この10年間低下を続け、10年前より年間53万円下がっているようになっています。どのような認識をおもちでしょうか。
今年の8月、最低賃金の改定が和歌山地方最低賃金審議会から和歌山労働局長に答申されましたが、雇用者報酬をひきあげていくためにも最低賃金の引き上げが必要だと考えますが、知事の見解はいかがでしょうか。
最低賃金は、直接、県の権限が及ぶところとはなっていませんが、県内の最低賃金を10円引き上げて684円にする答申となっています。10円の引き上げは全国最低のランクでもあり、近畿2府4県では一番低い金額です。
《答弁者》 知事
毎月勤労統計調査で、「所定内給与」は減少傾向にありますが、賃金、所得の向上については、県内企業の生産性の向上など事業活動そのものを活発化させることが重要であると考えています。このため、県内企業の研究開発や、あるいは販路開拓の支援等を強化して、企業の力を強めるということも行っているところです。
また、最低賃金の適正な引き上げは、労働者の生活の安定、消費の刺激、内需の拡大へと繋がるプラスの要素があると考えておりまして、私はできるだけ賃金が上がればいいと思っていますが、しかし、無理やりに大幅に引き上げをしますと、雇用を縮小する企業、あるいは撤退、廃業する企業が出ては一大事で、かえって失業者が出て、人々の暮らしをより悪くするということにも繋がりかねません。そういうことにも留意は必要です。
本県の最低賃金についても、公益、労働者、使用者の代表で構成する最低賃金審議会で、地域経済等の実情を十分踏まえ、慎重な審議を経て、和歌山労働局長が法の主旨に沿って決定されていると認識しております。
いずれにしても、県経済が活性化することが重要であり、県内企業の元気を取り戻すため「技術力強化」と「販売促進」を柱に、様々な施策を積極的に講じてまいりたいと考えています。
(6)中小企業向け融資制度、金融円滑化法について
《質問》 藤井健太郎
県議
国の緊急保証制度の拡充を受けて県の融資制度の見直しが随時実施されてきたところです。今年2月から拡充された資金ぐり安定資金、経営支援資金を中心に毎月平均440件、50億円程度の資金供給がされています。県の中小企業振興策の柱でもあります。今般の円高への懸念が広がりつつあるなかで、更なる中小企業向け制度融資の償還期限の延長、利息の引き下げ、貸出枠の拡大や融資の早期実行など経済状況に見合った資金需要にこたえていくことが求められていると思います。とりわけ、円高からの先行き懸念で、より安く材料を仕入れるために現金取引をされはじめた事業者の方々からは、短期決裁資金の申し込んでからの早期実行と金利の引き下げをしてほしいという話を聞きます。
また、貸し付け条件の変更を求めることができる金融円滑化法が施行されていますが、申し込みしにくいという声もよく聞きます。有効活用をすすめていくために県からの金融機関への働きかけを続けていくことも必要だと思いますが、いかがでしょうか。
《答弁者》 商工観光労働部長
一昨年秋の世界同時不況以降、国の緊急保証制度と連携し、償還期限の延長、貸付限度額の拡大などを図るとともに、全国的にも最低水準まで融資利率の引き下げを行い、また、中小企業の皆様方の意見も参考に、例えば、短期決済資金の償還方法に一括償還を加えるなど、不断の見直しを行っているところです。
今後とも、厳しい経済情勢を踏まえ、より使い勝手の良い制度となるよう見直しを行い、安定的な資金供給ができるよう努めて参りたいと考えております。
また、中小企業等金融円滑化法に関しましては、昨年12月に、県内金融機関等に対し、返済条件の変更について個別企業の実情に応じた柔軟な対応を要請したところですが、今後とも、同法に基づく各金融機関の開示状況を注視するとともに、引き続き、中小企業者への円滑な資金供給について要請して参りたいと考えております。
《意見》 藤井健太郎
県議
経済対策はなかなか悩ましい問題ですが、今回は家計という視点からどう見るかということで質問をさせてもらいました。
和歌山県内はほとんどが中小企業であり、その事業活動の活性化をはかることが県民の雇用の場の提供や所得の向上に結びつく、それはそのとおりです。しかし、これだけ家計が冷え込まされてきて、消費力、購買力が低下するなかで、地域の仕事もどんどん減ってきているわけですから、内需を喚起し、どうつくりあげるのかという視点からの方向に沿った政策の組み立ても必要ではないかと思います。知事はどちらかというと企業活動を応援する、供給サイドを引き伸ばしていくことで全体を潤していこうという方向にあると思います。しかしその逆の立場から、では需要はどうか、県民生活の実態、消費力、仕事量がどうなっているのか、そういったところをあたためていく形での政策の組み立てというのも一つの方法として考えています。
再来月は知事選挙ですから、私はそういう意見を持っているということでお含みおきいただきたいと思います。
2.関西広域連合について
《質問》 藤井健太郎
県議
今議会に関西広域連合設立に向けて規約案と予算1224万5千円が計上されました。
今年2月議会で規約案が説明され、これまで議論がすすめられてきたところですが、議案提出にあたり改めてお尋ねしておきたいと思います。
私は、地方自治体のありかたとしては、住民のくらしの身近なところで住民の必要とするサービスが提供できることがもっとも望ましいと考えています。そのためには基礎自治体である市町村の権限と財源を拡充強化し、市町村を補完する広域自治体としての県の役割を高めていくことこそ重要だと思っています。そういう観点から、県域をこえた広域自治体づくりについては慎重に検討したいという立場です。
関西広域連合という関西の府県域を越えた新たな広域自治体をつくるということになります。今日の厳しい財政状況、経済状況の中で、県民のくらしや営業の立て直し、住民自治の発展にとって、果たして必要なものなのかどうか、どのような展望と期待が持てるものとなるのか。現時点で県民にどこまで説明ができるのか、県民の理解と同意が得られたと考えているのか。お尋ねいたします。
(1)広域連合で関西は元気になるのか
関西が元気になれば和歌山も元気になる、と言われますが、元気な関西とはどのような状況を想定されているのか。広域連合でないと実現できないものなのか。それと和歌山を元気にしていくこととどのように関連していくのか。県の産業振興、県民所得の引き上げ、少子高齢化対策、過疎対策などにどのような期待がもてるのでしょうか。
《答弁者》 知事
元気な関西圏とは、地域の個性を連携させながらスケールを広げ、首都圏とは異なる多様な価値が集積する日本のもう1つの中心核として発展することであると考えております。このように関西圏が発展することが本県の発展にもつながると思います。
県の区域を越えて取り組む必要のある課題に関西が一丸となって取り組む体制である関西広域連合は、元気な関西づくり、関西圏の浮揚につながる、一助になる、と考えまして、関西広域連合への参加を目指してきました。
本県が参加する具体的なメリットとして、私どもから考えますと、とりわけ、これは一例ですが、本県の東南海・南海地震に備えた防災対策の強化充実とか、京都や大阪などとの協働による海外からの観光客の誘致などを挙げることができると思います。
(2)経済界の位置付けとその役割について
《質問》 藤井健太郎
県議
関西の経済界が中心になって自治体の広域化をすすめてきたこれまでの経緯があります。広域連合の協議会にも参加して発言していくといわれていますが、経済界の広域連合での位置づけや役割はどのようになるのか。経済界には企業活動を通じて社会に貢献するという役割が期待されています。が、広域連合は自治体であり、住民全体への奉仕者であることが求められています。運営についても住民自治が発揮できるようにすることが求められています。したがって、経済界の企業利益の追求の立場からの意見が大勢を占めることになることがあっては問題があると考えます。
《答弁者》 知事
関西広域連合は、官民連携団体ではありません。地方公共団体でありますので、幅広い層の方からいただいたご意見を運営に反映していくことになりますが、責任は行政長であります。具体的には、経済界だけでなく市町村や住民団体の代表の方、学識経験者などに、附属機関として設置する広域連合協議会、これは規約に載っておりますが、これの構成員になっていただいて、いろんな意見を言って頂く、ということになろうかと思います。
(3)地域開発と広域連合の役割
《質問》 藤井健太郎
県議
関西広域機構の理事に大阪湾ベイエリア開発推進機構という特定のプロジェクトを推進する団体が入っていますが、大阪湾ベイエリア開発の実現に向けての力がそそがれることとなるのではないか。
もうひとつは、国のこれまでの全国総合開発計画、いわゆる全総にかわる国土形成計画法による近畿圏広域地方計画が策定されており、すでに道路、河川、港湾などの社会資本整備については広域計画ができあがっています。
経済団体と関係府県によって構成される近畿圏広域地方計画協議会がこの計画づくりを主導してきましたが、協議会の会長は関西広域機構の会長でもあります。
大阪湾岸の開発、近畿圏の広域整備が広域連合の本格的な仕事であり、主たる目的となるのではないでしょうか。
《答弁者》 知事
関西広域連合は、広域的な防災、観光、環境など、広域的に取り組んだ方が効果が上がるものに幅広く取り組んでいくこととしておりまして、社会資本整備を主たる目的とするものではありません。
(4)広域連合のもつ問題点
《質問》 藤井健太郎
県議
全国知事会道州制特別委員会報告がH18年6月にされています。座長は木村前知事であり、本県が事務局をもっていました。その報告の中で、広域連合について次のように述べられています。
広域連合には課税権がないため、関係都道府県からの財政負担に依存することとなるばかりか、事業実施にあたっても実質的に複数の構成団体の意向に左右されるなどむしろ調整に時間がかかることも想定される。また、現行の都道府県を存続しながら新たに広域連合を設立することは、組織上、屋上屋を架すことにもなりかねず、運用に関して効率性に欠けるとともに、住民から見れば責任の所在がわかりにくくなることや広域連合で実施する事務と都道府県で実施する事務の連携・調整の面で総合的な対応が不十分となることなどが懸念される。
広域連合には以上のような限界があるとして、道州制の必要性を説いています。
調整に時間がかかる、組織上、屋上屋を架す、運用に効率性がない、住民から見れば責任の所在がわかりにくい、広域連合と県の事務調整で総合制が不十分となる。
関西広域連合には、こういった問題点が実際にあるということなのでしょうか。
《答弁者》 知事
議員ご指摘の点については、広域連合の限界を、道州制を是とする立場から考えると限界がある、というような議論でありまして、県が存続するということを前提にして、それよりはどうか、ということを議論したものではございません。県を前提として現在の広域連合を考えると、問題点があり得るとすれば、県の事務との関係において二重行政かどうかとか、屋上屋にならないかどうかとか、それから縷々(るる)申し上げておりますような、人口の少ない県が損しないかとか、そういう問題があると思う。それについてはいろいろ配慮、あるいは措置をいたしまして、必要最小限の経費で効率的に目的を達成できるよう、あるいは人口が少ない県が損することがないよう、いろいろ配慮して、仕組みを作っている、こういうことであります。
(5)広域連合と府県間協定
《質問》 藤井健太郎
県議
関西広域機構の構成団体、理事となっている福井県、三重県、奈良県ならびに政令市が設立時から広域連合に加わっていないなかで、関西全体の問題が広域連合で扱えることになるのでしょうか。広域連合による事務と府県間協定による事務と二重行政になるのではないでしょうか。
・近畿2府7県の危機発生時の相互応援に関する基本協定が06年4月に締結されています。
奈良、三重、福井が参加しています。災害対策基本法、武力攻撃事態法、その他重大な被害が生じた場合、生じる恐れがある場合、相互応援する協定です。同時に複数の府県が被災しても要請にもこたえられ、生活必需物資、資機材の提供、避難者・傷病者の受け入れ、職員の派遣、ほか要請のあった事項について対応するとなっています。
・新型インフルエンザなど危機発生時に備え近畿の地方衛生研究所間で連携する協定が06年8月.に締結されています。
奈良、三重、福井も参加し、京都市・大阪市・神戸市・堺市の政令市や和歌山市も参加しています。
・近畿地域イノベーション創出協議会
工業試験場などの試験研究機関の相互活用はかるもので福井県・奈良県の工業技術センターも参加しています。
・最近では、農林水産分野で果樹・飼料米研究を行うための試験研究機関の連携協定が、今年の8月に、京都、大阪、奈良、和歌山の2府4県で結ばれています。
・カワウ広域協議会というのもあります。中部近畿カワウ広域協議会、近畿、中国、四国、九州のそれぞれの一部15府県で構成されています。近畿では滋賀と大阪、そして徳島が入っています。和歌山は入っていません。この分野では、県の事務が増えることになるのか、それともこの事業には加わらないことになるのでしょうか。
これらを見ると、広域連合で実施するとされている事務がすでに協定で実施されており、広域連合の参加府県の方が少なくなります。協定締結府県の方が多くあり、現在の府県間協定は生きたものとし、共同事務が行われることになると思われます。広域連合に加入していなくても広域で共同処理する事務への対応はできることになります。協定で不足しているものがあれば補強すればいいのではないでしょうか。
《答弁者》 知事
広域的な課題については、今まで広域連携で行ってきたものもあります。関西広域連合で行うことによって、より責任の所在が明確になって、より具体的に連携が進むというふうに期待されているものもあると思います。全て連携をやめるというわけではありませんが、移せるものはどんどん移していけばいいと思うわけであります。
(6)広域連合と道州制について
《質問》 藤井健太郎
県議
全国知事会や経済界は道州制を推進する立場をとっています。広域連合と道州は組織や権限のありかたは当然、異なるものでありますが、道州制を展望して道州制の議論をすすめながら、広域連合を発足させることとなります。関西広域連合発足によって関西の道州制の議論は止まることとなるのか。広域連合は過渡的な組織となり、最終的には府県間の広域行政のありかたとして道州制をめざすこととしているのではないか。
・関西経済連合会の「関西ビジョン2020」
2008年10月に策定されたものですが、「関西での広域連合へのとりくみが、道州制導入に向けての議論を深め、実現させる先駆けとなる。」と書かれています。
・全国知事会の道州制に対する基本的考え方
2007年1月に発表。「道州は都道府県に代わる広域自治体とし、地方自治体は同州と市町村の二層制とする。」
・2010年6月の政府の地域主権戦略大綱
「都道府県を越える広域的課題については、広域の連携も重要とし、自発的な連携や広域連合等に対する支援のありかたを検討、道州制についての検討も射程にいれていく」射程というのは打てばあたる距離。手のとどくところにおくということ。
《答弁者》 知事
関西広域連合が道州にそのまま転化することはないと、8月27日の関西広域機構分権改革推進本部会議で関係府県の知事等が確認したところです。有り体に申し上げますと、関西広域連合は道州制を止めるということにもなりませんが、推進するということにもなりません。
(7)国の事務の受け皿について
《質問》 藤井健太郎
県議
国の出先機関の事務の移譲をうける受け皿づくりといわれていますが、関西広域連合への権限と財源の移譲が他地域よりも先行して行われることになるのでしょうか。
全国いっせいに権限と財源の移譲が行われない限り、先行して受けるとしてもきわめて限定的なものになるのではないか。
《答弁者》 知事
国からの権限の受け皿については、今まで、複数の府県にまたがる事務について府県では調整ができないという理由で、地方への権限移譲を拒否する国の言い訳、あるいは理由がありました。例えば、府県間をまたがるような河川において、上流と下流の総合的な管理が必要だから、従って各府県には任せられない、ということで権限の移譲が出来ない、ということであったんですが、広域連合ができますとこの中で議論が出来ますから、それは可能になってくる、ということだと思います。ただし、何を移し、何を国が責任を持ち続けるべきか、こういうことについては、それぞれきちんと議論して考えていくべきだ、と私は思っております。さらに、権限が移される際には、その必要な財源、そういうものについての保証が絶対条件であると考えます。
(8)住民の理解と同意について
《質問》 藤井健太郎
県議
住民の理解と同意はどの程度まで得られていると考えられているのでしょうか。
知事は「県民のなかでよく理解していただいて、わかった上で発足しなきゃいけない」。
去年の6月議会答弁ですが、議案の提出にあたり、そういえる状況になったと考えておられるのでしょうか。
県民の友や県政報告会、市町村長会や議長会、シンポジウムの開催など説明はされてきたところですが、その中で、反対意見はなかったということをもって、県民には理解してもらえたということになるのでしょうか。
《答弁者》 知事
県民への周知については、「県民の友」やホームページ、広報番組、シンポジウム、行政報告会を通じ、県民の方に説明を行ってきました。さらに、市町村にもご理解とご協力をいただくよう努力してきました。他府県となかなか比べにくいんですけども、他府県のいろいろなこういう理解を求める努力に比べて、和歌山県が劣っているということは全然ないと考えます。
その甲斐あって、関西広域連合に対する県民の認知や理解が広まってきたと思いますし、県のホームページで意見募集をいたしまして、特に反対の意見はなかったというふうに理解しています。
従って、ここで、県民の代表たる皆様方にお諮りをいたしまして、広域連合についてご賛同いただけないかどうか、そういうことを代表者の方々にご議論いただく機会として、別に早すぎることはない、とそんなふうに私は考えております。
《再質問》 藤井健太郎
県議
議会で議案が提案されているので、やはりいくつか気になる点があるんです。
関西広域連合ができたからすぐ関西全体が元気になるというわけでもないと思います。そのことで和歌山県がストレートに直結するということでもない。和歌山県は和歌山県で一所懸命がんばっていかなくてはいけないことが当然あるだろうと思っております。
分権改革ということでいえば、まず市町村、それを補完する都道府県、そこに権限と財源を持ってくると。そのなかでまだ不足するものであれば広域連携や広域連合ということも考えられると思いますが、そこを抜きにしていきなり府県域をこえた広域連合をつくるということには、少し違和感を覚えるところもあります。地方自治体の姿としてどう在るべきかという結論が、まだ国民のコンセンサスとして出ていないと思います。
いま地域主権改革ということで、地方政府基本法をつくろうといった話もあります。一方、大阪の橋本知事などは8月の大阪市長との論戦のなかで、「強い大阪、強い関西をつくるためには連携をこえた意思決定が必要、そのための新しい広域自治体として関西州が必要だと考える。一足飛びにいかないなら関西広域連合を踏み台にして、そこで努力をしていく」ということです。関西広域連合がそのまま道州につながるものではないとは誰が見ても思うわけです。しかし、一方では道州制の議論がすすんでいる。広域連合を構成する団体の首長のなかでも道州制の議論がある方もあり、兵庫県の井戸知事などは「政府の地域主権戦略大綱の道州制を射程に入れて検討していることについては、道州制は国が制度的に府県合併を強制する仕掛けであり、地域主権に反する」というコメントもされています。
先ほど知事は、広域連合が出発をしても自動的に道州制になるものでもない、しかし道州制の議論は議論として別にあるというような話をされていました。では仁坂知事としては、関西広域連合の議案を提出にあたって道州制という地方自治体のあり方についてどう考えられているか。片や広域連合で広域行政ができるということがあり、一方で道州制が議論され、すすめられている。仁坂知事としては、和歌山県民の暮らしや今の産業の状況など様々な課題がたくさんあると思いますが、それらを解決するために道州制についてどのように考えておられますか。これをお尋ねしたいと思います。
《再答弁者》 知事
私は、道州制について、いろいろ考えるところがあります。
絶対反対、何でも反対というつもりもございませんが、2つの点から問題をきちんと詰めないといけないと考えています。
一つは、この国の形を規定するものとして、道州に何をやらすのか、国としては何に責任を持ってやり続けるのか、そういうことについて、何でも道州ができたから移してしまえとなると、日本の国が分解してしまう。特に、経済規制の領域などで、そういう問題が発生するんだということについて、あまり人は言わないのですが、私は大変な懸念を持っています。
二つ目としては、私は和歌山県の知事でありますので、一番責任を持つべきは、100万人、少し100万人を切ったかもしれませんが、この100万人の県民の幸せを考えることが私にとっての使命であります。したがって、100万人の県民にとって、懸念のあるようなことは詰めてもらわないと、或いは、詰めていかないと、軽々しく乗るわけにはいかないということだと思います。
それは、具体的にいうと、道州間の調整というのは何一つ議論はしていません。全部、東京を中心とする州が勝ってしまうかもしれません。それから、道州の中で、道州内の配分、これをどんなふうにするのかということについて、何一つ議論はされていません。専門的な用語でいうと、道州間財政調整と道州内財政調整、こういう2つの問題について、きちんと案が出てこないと「はいイエス」と言うわけには私はいきません。これが、100万人の県民に対する私の責任だというふうに思っています。
《再々質問》 藤井健太郎
県議
では知事に再度お伺いいたします。
100万県民の幸せを願うという、それは知事として県政の最高責任者、県民の代表として当然だと思います。では、つくろうとしている関西広域連合は、100万人県民の幸せとどうつながっていくのかというところを、きちんと県民に説明をしなくてはいけないと思うんです。ホームページで意見を募集したら反対意見はなかったと言いますが、たしか3件しか意見がこなかったとも聞いています。あまり県民としてはまだ、自分の生活と関西広域連合は結びついていないという状況に広くあるのではないかと思います。
100万県民の幸せと関西広域連合がどう結びつくのか説明していただきたい。
《再々答弁者》 知事
これについては、私は提案理由の中でご説明しておりますように、和歌山県の100万人の県民にとって、少しでも良いことだったらやろうじゃないかというのが基本的な考え方です。もちろん、悪い点の方が多ければやめたらいいけれども、悪い点は極小にしたから、したがって良い点はいくつか考えられる。例えば、先程答弁で申し上げました点がいろいろ考えられるわけでありますが、これは100万人の県民のためになるのではないか、そういうことを考えて、ご提案申し上げた次第でございます。
(9)温暖化対策への取組について
《質問》 藤井健太郎
県議
広域連合では、温室効果ガスの排出の総量の削減に関する事務を行うとされています。温室効果ガスの削減目標は引き上げられるのでしょうか。
京都議定書で1990年を基準に2012年までに6%削減が公約されていますが、逆に排出量はふえてきている状況です。広域連合がどのように働きかけていくのか。府県により設定目標はバラバラで、県は10.6%の削減をかかげています。大量排出者への関西規模での総量規制がかけられることになるのでしょうか。
《答弁者》 環境生活部長
温室効果ガスの削減については、産業構造や森林面積など各府県でそれぞれ異なる実状に即して目標を設定し、対策を講じているところです。また、関係府県においては、事業者に対する排出量規制という削減手法を採用していない状況でもあります。
関西広域連合においては、広域環境保全の設立当初の取組として、「関西広域環境保全計画」を策定することとなっておりますが、その内容につきましては、今後、計画検討委員会で議論するということになっており、温室効果ガス削減についても、国の動向や各県の計画など実状を踏まえつつ、その内容が議論されていくものと考えております。
関西広域連合の当面の具体的な取組といたしましては、関西統一キャンペーンの実施や電気自動車充電器ネットワーク化の検討など広域メリットが十分に活かせるもの、また、広域調整が必要なものなどに的を絞り、積極的に取り組むこととなっております。
(10)ドクターヘリの運航について
《質問》 藤井健太郎
県議
関西全体の需要予測調査を行い、関西全体での最適配置、運航を行うとし、和歌山のドクターヘリを広域連合へ移管するとなっています。
ドクターヘリの運航は、より身近にある方が救命救急医療にとって、より効果があがります。現在、県立医大附属病院に1機配備され、県内の消防本部から附属病院内の運航指令センターへホットラインが入るようになっています。
ドクターヘリは救急現場からの搬送時間の短縮と早期の治療開始が最大のメリットであるわけですが、運用が広域連合に移れば、どうなるのか。さらに時間短縮や複数ヘリでの対応がされるのでしょうか。
《答弁者》 福祉保健部長
関西広域連合に参加する地域では、現在、和歌山県、大阪府及び兵庫県にそれぞれ1機ずつ計3機のドクターヘリが配置されており、今後、導入を検討している県もあると、聞いております。
ドクターヘリの運航が関西広域連合に移管されましても、ドクターヘリの配置及び運航指令センターは、現行どおりの和歌山県立医科大学附属病院となっております。
各府県が独自にドクターヘリを運航することに比べまして、関西広域連合において、現行以上の複数のドクターヘリを適切に運航する方が、県民の安全安心がより高まり、高度な救急医療体制を提供できるものと考えております。
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10年9月議会 藤井健太郎プロフィール、質問一覧