2010年月県議会
雑賀光夫 一般質問

2010年9月15日






1.教育や福祉を大事にする県政をすすめるのか
(1)少人数学級のために県単独負担教員を確保しないのか
(2)学校の暑さ対策について
  ・暑さの実情をどう把握し、どう対応しているのか
  ・来年度予算で、教室の空調への補助を国・県でどうするか
(3)子どもの医療費無料化年齢引き上げへの県の補助は

2.ゼネコン優先の乱開発行政から中小企業による生活密着の仕事づくりへ
(1)大滝ダム追加予算の負担に対する考えは、今でも変わっていないのか
(2)LNG火力の見通しがないのに南防波堤建設をつづけるのか
(3)「中小企業憲章」閣議決定への評価と中小企業振興条例について
(4)リフォーム助成について

3.乱脈な同和行政への反省と同和特別行政終結への前進

4.平和行政について
(1)平和行政としてどういう施策をすすめるか
(2)平和行政の担当窓口について

5.風力発電にともなう健康被害
(1)県内での風力発電の現状と今後の計画
(2)被害の訴えはないのか
(3)風力発電にともなう下津での健康被害の訴えを、どう把握しているか
(4)風力発電建設にともなうアセスメント、今後のありかたについて
(5)健康被害と測定結果の関係をどうみるか
(6)被害者救済などについての企業の対応について

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

《質問》 雑賀光夫 県議
 議長のお許しを得ましたので、質問に入らせていただきます。
 11月には、知事選挙がおこなわれます。仁坂知事は、引きつづき知事職をつづける意思を表明しておられます。他に立候補を表明しておられる方もおられますし、私ども共産党も、「ゆたかで住みよい和歌山県をつくる会」のみなさんとともに、候補者擁立を検討しているところでございます。
 そこで、この9月県議会は、知事選挙の争点をできるだけわかりやすくし、県民のみなさんが判断しやすくすることが大事であると考えます。
 質問通告のはじめの4点は、その立場からの質問です。


1.教育や福祉を大事にする県政をすすめるのか
(1)少人数学級のために県単独負担教員を確保しないのか
 まず、教育の問題から入ります。和歌山県の教育行政は、過去10数年間進められてきた教育行政、とくに高校通学区撤廃、中高一貫の県立高校など、高校教育にエリートコースをつくって、それで大学進学率を上げようという「教育改革」を総括する時期にきています。
 しかし、知事選挙で問われるのは、財政権を持っておられる知事が、教育をどれだけ大事にしているかのかであります。
 教育予算の最大のものは、教職員定数確保、人件費でございます。
 和歌山県では、かつて同和教育をすすめるために県単独で140人ほどの教員を確保し、同和地区35人学級をすすめてきました。私は、「教育困難な課題がたくさんある。140人の県単独教員定数を残して、すべての学校での少人数学級をすすめるべきだ」と主張したのですが、私の主張は受け入れられず、まるまる削られてしまったのです。
 いま、教育委員会は中学校35人学級、小学校38人学級などすすめていますが、文部科学省が措置した教員をやりくりして実施してるにすぎません。
 文部科学省の資料では、和歌山県では、標準定数の92.3%しか正規教員ははいっていない。それを定数内講師でうめあわせています。
 他府県ではどうなのだろうか。財政力の大きい東京はべつとして、鳥取県でも、正規教員は97.2%です。92%と97%。5%の差ですが、6000人の教員がおれば、300人という大きな人数です。
 知事にお伺いします。教育を大事にすると言うなら、正規教員をふやし、さらには県単独負担教員をおいて、少人数学級についての県民の期待にお応えになっては、いかがでしょうか。


《答弁者》 知事
   正規教員につきましては、できるだけ多くするように毎年努めているところです。
   次に、少人数学級編制のための県単独負担教員の配置についてですが、学校教育においては、子どもたち一人ひとりに対するきめ細かな指導が必要だと考えています。そのための手法の一つとして少人数学級編制の推進が国において議論されているところですが、その一方で、多人数の集団の中で、子どもたちの社会性を育てていくことも大切であると考えております。
   現在、学校教育においては、児童生徒の実態に応じ、きめ細かな指導が大事であるので、そのため特にそれぞれの子どもたちの状況に応じて補習学習等による学力向上対策を行うなど、効果的なきめ細かな対策を実践しているところであります。和歌山の子どもたちに真に生きる力を育むためには、教員増による少人数学級編制だけで全ての課題が解決するわけではありませんので、様々な方法を効果的に実施することによって、きめ細かな指導を実現することが重要であると、私は考えております。


(2)学校の暑さ対策について
  ・暑さの実情をどう把握し、どう対応しているのか
《質問》 雑賀光夫 県議
 いまひとつ、今年は、異常な暑さであります。県立高校では教室にクーラーが設置されましたけれども、小中学校で普通教室への設置は、一部市町村に限られています。多くの学校では、保健室・図書室など一部にとどまっています。その一方で、授業時間確保といって夏休みを短く切り上げる傾向がある。
 学校の暑さの状況をどうつかみ、どういう対応をしておられるのでしょうか。これは教育長への質問です。


《答弁者》 教育長
   学校の暑さ対策、特に生命にかかわる熱中症対策につきましては、適切に対応するよう指導しているところです。
   とりわけ、今年の夏については、気温35度を超える猛暑目が続いており、学校の管理下における熱中症事故は、ほとんどが体育・スポーツ活動によるものであることから、体育祭、運動会等の学校体育行事や部活動を中心に、状況をみて計画の弾力的な変更等も含め、熱中症対策に万全を期するよう指導しております。


  ・来年度予算で、教室の空調への補助を国・県でどうするか
《質問》 雑賀光夫 県議
 さらに、今後もこうした暑さが予想される中、来年度予算で、暑さ対策をおこなうことが求められています。国の施策も、電子黒板や大型テレビの大量購入もお金があれば結構ですが、普通教室のクーラー設置が優先順位は高いのではないでしょうか。市町村任せでは、たいへんです。子どもを暑さから守る施策について、来年度予算でどういうことが考えられているのか、知事のお考えをお伺いしたいと思います。


《答弁者》 知事
   子どもを暑さから守る施策のひとつとして、雑賀議員ご指摘の空調設備等を設置し、小中学校の教育環境を充実させることは、市町村の取り組みとして検討していただく課題だと考えております。
   現在、小中学校における空調設備の設置につきましては、国の補助制度がありますので、県の補助制度の創設については、財政事情から考えて、大変難しい状況であると考えております。
   ただ、そうは言っても、県といたしましては、この国の補助制度などを活用して、負担軽減をうまく図れるように、側面から市町村を応援してまいりたいと考えております。


(3)子どもの医療費無料化年齢引き上げへの県の補助は
《質問》 雑賀光夫 県議
 次に、福祉・医療の問題はたくさんありますが、私の地元海南市は、いま、子どもの医療費無料化で沸いています。お隣の紀美野町で、中学校卒業まで子どもの医療費は無料になった。海南市は、小学校入学前までです。「紀美野町でできることがどうして海南市でできないのか」と、署名運動がひろがっています。
 県でもせめて小学校卒業までは、医療費無料化のために半額は負担して、国に対しても、その施策を迫っていくべきだと思うのですが、知事のお考えをお伺いいたします。


《答弁者》 知事
   まず、教育や福祉を大事にする県政のうちのですね、子どもの医療費無料化年齢引き上げへの県の補助ということについてお答えいたしたいと思います。
   県が実施している「乳幼児医療費助成制度」では、就学前までの児童を対象に、市町村とともに医療費の自己負担分を助成しておりますけれども、この制度に独自に上乗せをすることによりまして対象年齢等を拡充する自治体も増えていることは認識しております。
   県としても、子育て支援も含め福祉の充実につながる政策は手厚くしていきたいというふうに、そういう思いは強く持っておりますけれども、財政再建の議論の中では、特に、これは和歌山県における事業仕分けと言ってもいいかと思いますが、整理という案が出て、これを何とか整理しないで済まないかという思いでですね、一生懸命頑張ってやって参りました。そういう意味では財政状況を考慮いたしますと、今は、制度を維持することが精一杯であり、拡充はなかなか難しいというふうに思います。
   なお、国の政策に関しましては、子どもが大事だという点については、そういう考え方が前面に出てきております。ただ、子ども手当には大変熱心でありますけれども、そこには大きな財源をたくさん回しておりますけれども、ご指摘のような、そういう直接の給付金、そういうものについては、少し冷たいという感じがいたします。
   これまでも全国知事会等の場を通じ、子どもの医療費負担の軽減について要望しておりますが、今後も引き続き国に働きかけるとともに、国の動きを十分注意して参りたいと考えております。


2.ゼネコン優先の乱開発行政から中小企業による生活密着の仕事づくりへ
(1)大滝ダム追加予算の負担に対する考えは、今でも変わっていないのか
《質問》 雑賀光夫 県議
 第二に、ゼネコン優先の乱開発行政から中小地場産業による生活に密着した事業優先に切り替えるという問題です。仮谷県政の時代は、対決点が鮮明でした。私たちはあのころの県政を「海があれば埋めたくなり、山があれば削りたくなる県政」と特徴づけたことがあります。多くのつけを私たちに残したのが、コスモパーク加太でありました。そして、県民の批判を受けて断念したのが、雑賀崎沖埋め立てであったわけです。
 その後もつづいてきた問題では、関空二期工事の負担金、あれだけの負担金を払っても完成しない大滝ダムの問題もあります。
 こうした問題について、仁坂知事も態度を問われたことが幾度かありました。大滝ダムの問題で追加予算の負担を要求されたとき、和歌山市長も橋本市長も、態度を保留しているときに、仁坂知事は「負担します」とすぐに表明された。今でも、大滝ダムの追加負担というようなことは当然だと考えておられるのでしょうか。


《答弁者》 知事
   まず、私の県政におきまして、ゼネコン優先の乱開発行政などというものはございません。建設業界を敵視するようなそういう気持ちは全く持っておりませんが、同時に、開発とかプロジェクトとか建設工事は、全てその必要性から出ないといけないということは当たり前の話でありまして、そのようにいつも心がけております。
   大滝ダム追加予算の負担については、平成19年6月の議会では、県の財政を考えると支払いたくないけれども、現行の負担制度で本県が追加負担に同意しないと、大滝ダム事業が中断または中止になって、洪水に対する流域住民の安全が確保できなくなる。そういう治水の観点から同意せざるを得ないと議会にお諮り申し上げました。
   また、国から2箇所の地すべり対策の追加が必要との説明を受け、県の方でもその技術的な検証を納得できるまで行ったところであるということもご説明致しました。
   その後、国に対しては、何度となく、これ以上事業費の増額がないように、ダムの早期完成とあらゆる段階におけるコスト縮減等を強く働きかけ続けております。その結果、本事業は、平成24年度の完成に向けて順調に、只今進捗してきていると理解しております。
   平成19年6月議会にお諮りした当時の考えを改めるような情勢の変化はその後生じておりませんで、流域住民の安全確保のために追加負担に同意せざるを得なかったとご説明した考えは、今でも変わりがありません。


(2)LNG火力の見通しがないのに南防波堤建設をつづけるのか
《質問》 雑賀光夫 県議
 また、今なおゼネコン奉仕の公共事業がつづいているのは、南防波堤建設の問題です。LNG火力が住金埋立地に建設されるということで始まった事業です。県の負担は50億円にものぼります。あらたな公共岸壁は必要とされていない、LNG火力建設の見通しがないままにつづけられ、半分進捗した。これからも、25億円かけてつづけられるのでしょうか。


《答弁者》 知事
   この防波堤は関西電力和歌山火力発電所計画における3カ所の係留施設及び現在供用中の水深10メートルの公共岸壁の港内静穏度を確保するためのものでございます。
   現在実施中の国直轄事業につきましては、関西電力株式会社からの要請を受けて、同社の2分の1の負担のもとに整備が進められております。
   公共岸壁につきましては、砂利あるいは砂の輸入及び鉄鋼スラグの輸出など、岸壁背後の港湾施設用地とともに有効に利用されております。
   今後とも、公共岸壁の利用を確実にしていくためにも、南防波堤の整備により、静穏度の向上を図ってまいりたいと考えております。


(3)「中小企業憲章」閣議決定への評価と中小企業振興条例について
《質問》 雑賀光夫 県議
 中小企業を支援するために何をするのか。政府は、6月18日「中小企業憲章」を閣議決定しました。「憲章」は前文で中小企業を「経済を牽引する力」「社会の主役」と位置づけ、「中小企業がその力と才能を発揮することが、疲弊する経済社会を活気付け」、「日本の新しい未来を開く上で不可欠」とその役割を重視し、国の総力を上げて」中小企業の可能性を伸ばし、励まし、支え、「どんな問題でも中小企業の立場で考えていく」との決意を示しています。
 中小企業家同友会も全国商工団体連合会も、中小企業を守る政策への大きなステップとしてこの「憲章」を歓迎しています。
 政府の実際の政策は、この憲章に反することもあります。いま、大事なことは、折角の「中小企業憲章」を空文にしないために、その積極的な中身を広く知らせ、閣議決定という政府文書にとどめず、国会決議として、国民的宣言文書とすることです。また、地方自治体でも、この憲章にそった施策をすすめることが、大変大事であると思います。
 知事は、この憲章をどのように評価しておられるでしょうか。また、それを空文にしないためには、県で「中小企業振興条例」などその精神を確認していくことが大事だと思いますが、知事のお考えはいかがでしょうか。


《答弁者》 知事
   「中小企業憲章」の内容につきましては、経営革新などの新たな事業に取り組む事業者への支援とともに、セーフティーネットを整備し、中小企業の安心を確保するということは基本原則に掲げられております。しかしながら、よく考えてみますと、「中小企業憲章」に書かれていることは、すべて中小企業基本法、それから数多くの中小企業振興の実施法、それから中小企業法政策、中小企業庁をはじめとするような組織、そして県においても、実はわが県の状況から考えて、全ての産業行政は中小企業に向けられているというふうに思っても差し支えはございません。すなわち、経営革新、販路開拓、技術開発、政策金融、経営相談など具体的な政策を、現在の法体系及びわが県における政策体系の下に、具体的にかつ総合的にどんどんやっている、ということではないかと私は思います。現に泣いている中小企業、あるいは泣きそうになっている中小企業、あるいはある政策を期待している中小企業に対しては、実は宣言というようなものの重要性よりも、実のある政策をぜひやってくれというのが強いのではないかと、私は思っております。
   実は憲章が採用される一方で、地域の中小企業に対する技術開発の予算が、これは国の予算でございますが、事業仕分けによって大変な危機に瀕していて、それを県は自身の予算で必死になってやっておるというような状況もあります。中小企業振興こそわが県の活力を伸ばすものだ、この考え方の下に具体的な中小企業振興のために一層の力を入れていきたい、そんなふうに考えております。


(4)リフォーム助成について
《質問》 雑賀光夫 県議
 さらに、この憲章の精神に沿った施策として注目を集めているのが「リフォーム助成制度」です。県段階でも秋田県などで大きな成果を上げていると言われています。ところが、和歌山県は、県段階でも市町村でもこの制度が全く導入されていない県になっています。「リフォーム助成」を検討するお気持ちはありませんか。知事にお伺いいたします。


《答弁者》 知事
   現在、住宅関連施策として、耐震改修、あるいはバリアフリー改修及び省エネ改修などの目的に応じて、国とか県とか市町村などにおいて、様々な支援制度がございます。
   県といたしましては、このような支援制度を、わかりやすく、できるだけ利用しやすいようにという観点から、いろいろな制度をひとつにとりまとめた冊子を作成するとともに、総合的な相談窓口を設置しております。
   従って、これらをご活用いただいて、できるだけ議員ご指摘のリフォームなども、いい方向に進むというふうに考えています。
   今後も、各種支援制度の有効な活用を図り、それぞれの施策目的の達成に努めてまいりたいと思います。


3.乱脈な同和行政への反省と同和特別行政終結への前進
《質問》 雑賀光夫 県議
 第三は、乱脈な同和行政への反省にかかわる問題です。
 仁阪知事が就任されてから、過去の乱脈な同和貸付、高度化資金の焦げ付きが問題になりました。その最たるものが、プラスパフーズというとうふをつくるといっていた会社が、24億円もの貸付をうけたまま、1%しか返済せず倒産した問題でした。
 この問題は、「貸付の審査がたまたま甘かった」という問題ではありません。
 仁阪知事が就任されてから、過去の乱脈な同和貸付、高度化資金の焦げ付きが問題になりました。その最たるものが、プラスパフーズというとうふをつくるといっていた会社が、24億円もの貸付をうけたまま、1%しか返済せず倒産した問題でした。同和行政そのものは、最初は、住民の人権を守る積極的な行政でしたが、ある運動団体が暴力的糾弾を武器に、行政を屈服させ、あるいは癒着して、利権団体化していったという全国的な流れを背景にして起こった、ゆがんだ「政策融資」であります。今後も、欠損処理の事案が出てくるものと思われます。すでに欠損処理を終わったものをふくめて高度化資金の貸付残高は、100億円を越しております。
 私は、ゆがんだ同和行政を引きついでいる問題として、部落解放研究所への裏金補助金の問題、牢番頭文書の出版問題、高校入試の副審書問題などいろいろとりあげてきました。そのときそのときで、反省もありました。しかし、旧同和子ども会に法外な補助金がだされている問題については、「活動が活発な子ども会だから」と言い訳がされてきましたが、納得できるものではありません。それでも、私の質問の直後に、担当課の努力で補助金をへらし、適正化をはかる方向に少しはすすんでいると思います。その一方で運動団体との交渉の議事録をみますと、その努力への抵抗も強いことがよくわかります。
 今度の知事選挙では、同和利権団体による巻き返しになるのか、ゆがんだ同和行政の残り物に終止符を打つのかが問われます。知事のお考えをお聞かせ下さい。


《答弁者》 知事
   同和対策事業につきましては、平成13年度にすべての事業の見直しを行い、経過措置を除き、平成14年3月末をもって、地域や人を特定した特別対策は終了いたしました。
   しかしながら同和問題につきましては、教育や産業・就労等において課題が残されており、また、なお許し難い差別事件が発生している状況でもあります。
   このことから、県では、「和歌山県人権尊重の社会づくり条例」及び「和歌山県人権施策基本方針」に基づきまして、すべての人の人権が尊重される平和で明るい社会の創造を目指して、関係機関と連携・協働しながら推進してまいりたいと考えております。


4.平和行政について
(1)平和行政としてどういう施策をすすめるか
(2)平和行政の担当窓口について
《質問》 雑賀光夫 県議
 第四は、平和行政の問題です。
 夏は、平和の問題を考える季節です。
 8月6日、原爆記念日、広島・秋葉市長は、「日本国政府の出番」として「非核三原則の法制化と「核の傘」からの離脱」など被爆国の政府にふさわしいとりくみを求めました。
 ところが、同じ日に菅首相は、広島市内で記者会見し、「核の傘は必要だ」とのべたという、大変情けないはなしでありました。いま、わたしたちは、平和への声を大きくしなくてはなりません。和歌山県議会も平成10年6月議会で、「核兵器廃絶平和宣言」を採択しています。
 市町村はさまざまな平和行政をすすめています。私たちは、毎年、全市町村をあるく平和行進をおこないますが、市町村長さん、議会議長さんからの連帯メッセージや協賛金をいただきます。平和マラソンへの補助、広島への平和バス、平和集会への補助、平和のモニュメントなど、さまざまな平和への願いを表している市町村があります。
 府県段階でも、広島県・長崎県は別格としても、たとえば大阪府では大阪国際平和センターに補助金を出して、戦争・平和に関する展示、映画上映、戦跡ウオークなど実施した。大阪空襲体験者の証言を収録したDVDビデオ「大阪大空襲」を緊急雇用事業で作成しています。
 知事にお伺いします。
 第一は、和歌山県として、どういう平和行政施策を進めているのでしょうか。
 第二に、平和の問題というと、担当は「総務学事」にまわされる。それは、県政の中に平和行政が位置づけられていないからです。県行政のどこかに平和行政を位置づけるべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。


《答弁者》 知事
   恒久平和は国民の願いであるとともに、人類全体の願いでもあります。
   本県では、昭和34年9月議会において平和宣言がなされておりまして、その精神に基づいて、これまで県行政を進めてきたところであります。
   私といたしましても、日頃の県政を進めるうえで、絶えず、平和で安全な暮らしができることを念頭において取り組んでいるところであります。
   平和ということに関しましては様々な施策や組織に関連するものと考えており、県行政全体として、それぞれの関係部署が連携して、問題意識を持ちながら取り組んでいくことが重要であると主に考えております。


《再発言》 雑賀光夫 県議
 4番目の問題については、来る県知事選挙の中で大いに論議していきたいと思います。

 ただ、感想を申し上げておけば、苦しい財政のなか大滝ダムのようにずさんな当初の計画から5回も計画変更になる。25億円といっていた県負担が437億円にまでなっていた。それにさらに追加負担せよと国から言われたとき、「国の責任じやないか」となぜ言えなかったのか。これからもそうなのか。今年度も4億円追加負担しています。これがあれば、子どもの医療費補助の年齢引き上げ、教員の数を増やし30人学級に近づけること、教室の暑さ対策などもできるわけです。

 教室の暑さ対策については、国に対してもしっかりと声を上げてもらいたい。景気対策で電子黒板や大型テレビが学校に入ったときはびっくりしました。小中学校の普通教室にクーラーを設置すれば、電子黒板を購入するよりもっと町の電気屋さんに仕事をしてもらえ、新たな景気対策になるかもしれません。

 「中小企業憲章」については、「国の言い出したことくらい和歌山では前からやっている」という自信をお持ちのように伺いました。しかし今、町のどこへ行っても「仕事がない、何とかならないのか」というお話です。こう嘆いている業者の皆さんが、こんな答弁を聞いたらなんと思うだろうか。
 県が考えている中小企業支援の中心は、新たな商品の開発や積極的な海外への販路開拓などを進めている、やる気のある中小企業支援であり、今回出された知事の説明要旨を見ましても、やはりその事が中心に書かれています。ところが「中小企業憲章」には、その「基本理念」の中で、「中小企業の多くは、資金や人材などの制約があるため、外からの変化に弱く、不公平な取引を強いられるなど数多くの困難にさらされてきた」とあり、活力のある中小企業を支援するというわけではないのです。その点で県の施策と「中小企業憲章」にはズレがある。知事の答弁の中に「泣いている中小企業の支援も」という言葉もあったのでそれならいいかなとも思いますが、知事はまだご説明されたいようですので再質問にします。※(↓知事再答弁あり)

 リフォーム助成については、「いい方向で」という言葉がありましたから前向きだと思いますが、多くの地域で大きな成果が上がっていると報告されています。
 和歌山県の木造住宅耐震補助金は、21年度で61件約5000万円。耐震改修費・経済効果は約1億3500万円。これは補助額の2.7倍になっています。
 岩手県の宮古市では、一律10万円の補助で1795件の申請があり、83億円の需要が生み出されたそうです。補助額の4.6倍の経済効果です。しかも、20万円から40万円の小規模なリフォームが7割を占めますから、地元の大工さん、左官屋さんに仕事が行く。私は昨夜、計算してびっくりしました。
 こうなると、知事選挙の論戦でやっつけてやろうというようなケチな話ではなく、誰が知事になろうとも、ぜひとも和歌山県でも実現していただきたい。


※ 再発言のなかの「『中小企業憲章』閣議決定への評価と中小企業振興条例」の部分について
《再答弁者》 知事
   まず第1番目に、「中小企業憲章」が国で、地方・和歌山県だけは独自の事をやっていると申し上げたわけではなくて、国も和歌山県も中小企業対策はきちんとやっているということでしたね、ということを申し上げました。次に、新たな事業をやる中小企業に対する助成だけではなくて、困っている中小企業といいますか、弱い立場にある中小企業に対する対策がないではないか、ということは全く間違いでありまして、実は新しい発展を助成していくんだ、それが元気の素だというのは22年度の新政策で、今まで無かったものを追加したということでアピールさせていただいたわけです。セーフティーネットで、どれだけ多くの中小企業者の方をあの大不況からお救いできたか、というようなこととか、あるいは下請け中小企業に対する配慮とか、そういう弱い人達を助ける中小企業政策を、いささかたりとも縮小したり、そういうことはしておりませんので、ご理解いただきたいとお願いいたします。


5.風力発電にともなう健康被害
《質問》 雑賀光夫 県議
 次に、風力発電にかかわる健康被害についてお伺いいたします。
 海南市下津と有田川町の間にある長峰山脈には、東西1列に10基の風車がならんでいます。風力発電です。私は、風力発電というのは、太陽光発電とともにクリーンエネルギーとして期待しておりました。今も、適切に建設されるならば大いに期待していいと考えています。
 しかし、風力発電による低周波公害が、いま、全国的にも大きな問題になっています。今年の3月、下津町の大窪地域の当時の区長さんから「一人の女性が、気分が悪くなる、どうも風車と関係があるらしい」というお話です。私はその話を聞いて、低周波の問題を研究しておられる元日赤病院の内科部長をなさっていた汐見文隆先生のところに飛び込んだのです。
 健康被害については、その女性の汐見先生への手紙から紹介しましょう。
 「昨年10月より風車が稼働し、3ヶ月後音が気になり眠れず、2月20日頃より耳鳴りがし、食欲も無くなりました。昼間に家事をしている時は耳鳴りはしません。夜寝ている時ツーツーツーとなり、耳栓をしても音は消えません。風車がゆっくり回っていても寝るとツーツーなります。左の方がよく聞こえます」
 「4月になって二重サッシを入れた1週間後、主人も胸が圧迫されしんどいと思い、…その日からガラスを少し開けて寝ることにしています。
 私がまわりの人はなんともないのが不思議でなりません。私一人騒いでいるのです。悲しいです。ゆっくり眠りたいです。
 5月6日より車で20分離れた親類宅へ夜泊まりに行きます。耳鳴りはしません。2日泊まった後自宅で寝るとやっぱり耳鳴りします。その後は外泊しています。主人は自宅で眠れるそうです」
 手紙の内容は、低周波被害の特徴を示しています。
@潜伏期があって、耳栓をしても効果がない。ここに骨導音(骨から伝わる音)である低周波音の特徴がでています。
A二重サッシを入れるとかえって被害が大きくなるのも、低周波音の特徴です。
B個人差がある、潜伏期があります。
C現地を離れると耳鳴りはしないが、戻ってくると耳鳴りするというのです。
 4月20日には、大窪の区長さんは「風力発電の被害者救済についてのお願い」という「要望書」を海南市を通じて仁坂知事に提出しているそうです。
 私は、県環境生活部に「低周波の問題らしいので測定してほしい」とお願いしました。環境生活部の環境管理課と和歌山県環境衛生研究センターがすぐに対応してくださいました。風車を設置した会社・ユーラスエナジーも一緒に測定してくれました。風力発電にかかわる低周波測定というのは、県内では初めてのことだそうです。
 いま被害を訴える女性は、離れたところに家を建てて移り住んでいますが、生計を立てるための農業もできないのです。
 地域の皆さんは、汐見先生を招いて学習会を開きました。個人差があって、ある人は苦しんでいるのに隣の人はなんともない。低周波の問題というのは被害を訴える方が「あんたがおかしいんと違うか」といわれて孤立して、いっそう苦しむことになることが多いそうですが、そうはならなかったことが、せめてもの救いであります。
 地域のみなさんは、風車建設にあたって、風車がつくられている地域に視察に行っています。そこでは、低周波公害という話はなかった。風力発電が経済効率を追及すると、風車も大きくなる。小さい風車では問題にならなかった低周波が、大規模化によって問題になったとも考えられます。
 こうした経過を踏まえて、いくつか質問をします。
 ただ、私も風力発電というものが、こんな問題を引き起こすとは思わなかった、行政当局も同じだと思います。新しい問題に直面していることを踏まえて、被害者をどう救済するのか、今後広がるかもしれない被害にどう対処するのかを一緒に考えたいというのが、私の立場であります。

(1)県内での風力発電の現状と今後の計画
(2)被害の訴えはないのか
 第一に、風力発電の状況は、県内でどうなっているのか、今後の建設計画はどうなのかを商工観光労働部長に、第二に、健康被害・騒音被害などの訴えは、これまでなかったのかを環境生活部長にお伺いいたします。


《答弁者》 商工観光労働部長
   県内における風力発電施設の設置基数は、平成21年度末時点で、総数53基、設備容量は6万3,350キロワットです。
   また、県で把握しております、事業者が計画を公表している風力発電施設の設置基数は総数100基、設備容量は21万2,490キロワットです。

《答弁者》 環境生活部長
   県内での風力発電によるこれまでの被害の訴えについてでございますが、今回の下津町大窪地区が初めての事例です。
   なお、有田川町において、風力発電に関する騒音の苦情があると町の方から聞いております。


(3)風力発電にともなう下津での健康被害の訴えを、どう把握しているか
《質問》 雑賀光夫 県議
 第三は、こうした新たな健康被害が訴えられた時、行政がするべきことは、その原因が何か分からなくても、被害を訴えておられる方の所に飛んで行って、状況を正確に把握することでしょう。海南保健所として、どのように状況を把握しておられるのでしょうか。また、海南市と連携して住民の健康調査をしてみてはどうかと思うのですが、いかがでしょうか。福祉保健部長にお伺いいたします。


《答弁者》 福祉保健部長
   海南保健所では地元の大窪地区をお訪ねし、区長さんからは全体の状況を、また、ご本人からは病院を受診しておられること、睡眠は6時間程度とれていることなどの状況をお聞きしております。
   今後とも引き続き海南市や地元の区長さん等と連携しながら状況把握を行い、健康不安のある方については保健所が実施するクリニックや健康相談等で対応していきたいと考えています。


(4)風力発電建設にともなうアセスメント、今後のありかたについて
《質問》 雑賀光夫 県議
 第四は、風力発電・風車建設にあたっての環境影響評価の問題です。
 今回の問題では、風車設置後に低周波の測定がおこなわれました。それは、10機の風車が稼働している時、停止している時、大窪地区に一番近い10号機だけが稼働している時などについて測定されています。第一回目の測定は風速が最大10mでした。第二回目の測定は、風速がもっとも弱い時で、0.5mでした。この測定でも、風車が稼働している時と停止している時では明らかな低周波の差が認められており、風が強い時と弱い時の差も明らかです。
 しかし、風車は停止している時でも、風が当たれば風を切るわけです。風車がなかった時と低周波がどう変わったかを比較することは、いまとなってはできません。
 そのことから、風車を建設する前に、この地区の騒音や低周波を測定したデーターをとっておくべきだったと思います。
 また、風力発電の設置やこれにともなう地元との話し合いでは、こうした点を踏まえて情報を公開していくことが必要だと考えますが、環境影響調査を所管する立場にある環境生活部長は、どうお考えでしょうか。


《答弁者》 環境生活部長
   現在、NEDOの補助金を利用する一定規模以上の風力発電施設の設置にあたっては、工事着手の前にNEDOのマニュアルによる自主的な環境影響評価を行う必要があります。
   ご質問の風力発電施設についても、事業者により、この環境影響評価が実施されているところですが、低周波音に関しては客観的な指標が存在しておらず、また、その影響範囲等についても明確でないのが実情です。
   このため、国におきましては、風力発電施設を環境影響評価法の対象とする方向で法令改正の準備を進めるとともに、今年度から平成25年度にかけて風力発電施設から発生する低周波音の実態把握及び基準を定めるための調査を実施することになりました。
   県といたしましても、風力発電施設の設置に係る事前調査の実施区域及び地点の選定には十分な検討が必要であると考えており、地域の住民の皆さま方に対して、できるだけの情報提供に努める一方、国による実態調査や法改正の状況を注視しながら風力発電施設事業者に対し、必要な助言・指導を行ってまいります。


(5)健康被害と測定結果の関係をどうみるか
《質問》 雑賀光夫 県議
 第五は、これまでの測定と被害の訴えの関係をどうみるかの問題です。これからも測定をつづけられると思いますが、現時点でどう考えておられるのか、また、どういう測定を進められるのか、環境生活部長からお答えください。


《答弁者》 環境生活部長
   これまで、地元選出の議員の方からの要請もございまして、既に、気象条件の異なる4月23日及び7月8日の計2回、低周波音の測定を実施し、海南市とともに地区住民に対し説明を行ったところです。
   低周波音と健康被害との因果関係については未だ一般的な基準がなく、国において、苦情が発生しやすいとされる参照値が示されているところです。今回の測定結果につきましては、これを下回っていることから、今回の健康被害は低周波音によるものとは現時点では断定できないものと考えております。
   今後の測定については、風車の近傍と苦情を訴えておられるお宅の屋内と屋外の計3ヵ所で風の強い11月以降に第3回目の測定を行うこととしております。
   なお、低周波音による被害には個人差もあり、国に対してできるだけ早期に低周波音の基準値を設定するよう要望しているところであります。


(6)被害者救済などについての企業の対応について
《質問》 雑賀光夫 県議
 第六に、問題の全面解決する国の指針やデーターが十分でない段階でも、暫定的な被害者の救済が必要ではないかという問題です。
 私は、地元のみなさんや、同僚の松阪県議や有田川町の議員さんと一緒に、風車に近い有田川町内の集落も訪問して聞き取りを行いました。その地域では、低周波よりも騒音が問題になっておりました。窓を二重サッシにしたり空調をつけるなど、ユーラスエナジー負担での対応もあったやのお話もうかがいました。
 健康被害を訴えている方への対応について、すぐに企業に指導・命令できなくても、企業と被害者の間をとりもつべきではないか、企業がどういう対応をしているのか、情報をつかんで提供することも必要ではないかと思いますがいかがでしょうか。


《答弁者》 商工観光労働部長
   既に関係部局で低周波音測定などを行っているところであり、今後も連携を密にした対応を続けて参ります。
   なお、企業が地域住民との信頼関係を損なわない形で事業を円滑に進められるよう、また、地域住民の方々も安心した生活を迎えられるように、県としても、新エネルギー促進策を今後とも検討して参りたいと考えております。


《要望》 雑賀光夫 県議

 「健康被害は低周波によるものとは断定できない」というのは、国の基準ができていないことが問題です。低周波によるものでないとも断定できないのです。被害を訴える方の健康状態ですが、「毎日6時間は眠れる」というのは、被害地を離れている今のことでしょう。被害の状態のつかみ方が弱いといわなくてはなりません。
 紀南地方で活動しておられる日本野鳥の会の会員さんと連絡を取ることができました。日本野鳥の会和歌山県支部から、「和歌山県の風力発電施設計画について」という要望書が出されていることを知りました。希少種のクマタカが繁殖地であることから心配されておられます。
 人間に対する被害では、低周波の訴えは私が取り持った下津町大窪のケースが初めてということでしたが、騒音被害などの訴えは、いくつもあるようです。私が、松坂議員といっしょに訪問した、大賀畑地区では、騒音被害とお聞きしていました。ですから、二重のガラスさっしなど対策をしていたのですが、このたび、有田川町が、聞き取り調査をしてくれたそうです。
 騒音によりテレビやラジオの音を大きくしたことがある。(75%)
 就寝中に風車騒音で目が覚めたことがある(88%)
 これは、耳に聞こえる騒音被害です。
 それとともに
 窓ガラスがカタカタ振動したことがある
 建具やフスマなどがカタカタ振動したことがある
 そのとき、圧迫感、振動感、違和感など不快感がある
 これらの質問に対して、88%の方が、「ある」とお答えになっています。これは、明らかに低周波にかかわる問題だと思われます。
 同じ質問で、田角地区でもアンケートをとっています。
 私は、住民が「おかしい」といったら、因果関係がどうだから理屈を言うより前に、「何がおかしいのですか」と聞いて回った有田川町の取り組みは、大変大事だとおもうわけでございます。
 同時に、こうした取り組みを県のほうでは把握されていないようです。

 県議会の場で、今日は最初の問題提起をさせていただきました。現に苦しんでいる県民の方がいらっしゃる。
 低周波の測定では、県の研究所の測定器具は、自動記録装置がついておりません。これだけたくさんの風力発電が動いている、計画もされているわけですから、新しい測定器具ぐらいは買っていただきたい。そのこともふくめて、新しい問題に立ち向かっていただけますようお願いしたいと思います。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
10年9月議会
雑賀光夫プロフィール、質問一覧
雑賀光夫ホームページ


10年9月県議会、雑賀光夫 一般質問=9月15日
10年9月県議会、雑賀光夫 一般質問=9月15日