2010年12月県議会 松坂英樹 一般質問  2010年12月8日

1.TPP問題
(1)和歌山県経済と産業への影響について
(2)政府に対して反対の意思表示を

2.鳥獣被害対策
(1)来年度県予算・取組みの抜本的強化を
(2)免許取得・更新、狩猟登録への支援を
(3)野生鳥獣食肉活用の今後の展開について

3.ミカン対策
(1)2010年産ミカンの生産販売状況
(2)県オリジナル新品種のアピールと普及
(3)気候温暖化に対応した栽培技術について
(4)運搬用モノレールの機能強化・更新や作業道など身近な基盤整備への支援を

4、有田地方の救急医療体制強化について
(1)住民アンケートの結果について
(2)関係機関との協議状況と方向性

5、犬の多頭飼育問題
(1)県としての対応と今後の取組み
(2)実効性のある法・条例の検討を


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1.TPP問題
(1)和歌山県経済と産業への影響について
(2)政府に対して反対の意思表示を
《質問》 松坂英樹 県議
 今、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加問題が政治の熱い焦点となっています。TPPは関税を原則撤廃し、農産物の輸入完全自由化をすすめるものであり、日本がこのTPPに参加すれば、国の試算によると食料自給率は14%まで低下してしまい、県内農業はもちろん関連産業など地域経済に深刻な打撃となる重大な問題だと考えます。
 政府は「開国と農業の再生を両立させる」と繰り返していますが、すでにEUやアメリカ並みの経営規模になっている分野の農業でさえ壊滅的打撃を受けることになり、両立は不可能です。今でも日本の農産物の平均関税率はOECD各国の中でもアメリカに次いで2番目に低く、鎖国どころか充分すぎるほど開かれていて日本農業の疲弊と困難の主な原因となっているのです。
 TPPへの参加は、北海道庁の試算でも明らかなように、食料と農業を破壊するだけではなく、地域経済全体を破壊するものです。知事、議会、農業団体、経済界がそろって反対しています。
 以上のべたような問題点は、国の試算でも、本定例県議会に提出されている農業団体からの反対請願にも指摘されているとおりであり、先日12月1日の全国町村長大会でも「我々は、政府に対しTPP反対を明確に表明する」と、TPP反対の特別決議が採択されたところです。
 知事はこのTPP問題をどう認識し、また和歌山県経済と産業への影響についてどう考えているのでしょうか。一昨日にプロジェクトチームを立ち上げたと記者会見をされましたが、和歌山県への影響額はどう考えていますか。
 そして2点目に、県内農業と地域経済を守るという立場から、和歌山県知事という立場で、国に対してTPPには反対だとはっきり意思表示をすべきだと考えますがいかがでしょうか。以上TPP問題2点について知事の答弁を求めます。


《答弁》 知事
 環太平洋戦略的経済連携協定TPPにつきましては、二面あると思います。一つは一般論ですが、他国より競争上不利に扱われて日本経済が破綻しないかという問題と、もう一つは参加によって影響を受ける産業をどう守るか、この二つの問題がこの事の問題ではいつも議論になります。
 こういう問題は、影響を的確に把握したうえで、ちゃんと対応策を打てるかどうかを見極めたうえで、慎重に対応すべきものと考えております。
 少なくとも、今の国政が農業の競争力強化策を放棄してしまったように思え、さらにTPPに入るのは、常軌を逸していると私は思います。
 県内の影響につきましては、工業分野では業界や輸出入関係の企業等に聞き取り調査を行っているところでありますが、現時点では輸入関税が残っているいくつかの業界、この業界は農業と同じような問題がありまして、これに対して非常に慎重な考慮が必要であります。
 大部分の他の産業については、むしろ関税がありませんので、輸入面で打撃を受けるということでなく、逆に(TPPに)入らないことによる経済の影響をどう考えるか、例えば関税で不利に扱われた結果、輸出産業が打撃を受けると今度は部品などに対する発注がガクッと減るとどうなるか、というようなことが議論になると思います。
 一方、農林水産業におきましては、だいたいについては関税が残っております。
 それから、輸出よりもやっぱり輸入の方が問題ということが基本でありますので、TPPに入ることによる影響が大問題であります。
 それで、今後生産性の向上とか競争力の強化が本当は大切であり、農業基盤整備などを国に働きかけていくことが必要と考えております。
 このため産業毎に、どういう影響があって何が必要かをきちんと見極めておかないといけませんので、庁内にプロジェクトチームを立ち上げたところであり、それぞれの産業毎の影響を分析するとともに、悪影響が出るとするとそれを緩和するために何が必要かをきちんと分析して、国に対して「その対応をしないと困る」と、きちんと要求していく所存であります。


《再質問》 松坂英樹 県議
 再質問させていただきます。知事はTPP問題によって、県内農林水産分野での影響は大きいという趣旨の答弁をされました。
 影響額については、具体的な額には言及されませんでしたが、農林水産業の総産出額の約1割が見込まれるという答弁でした。和歌山県の農林水産業総産出額は1286億円ですから100数十億円の影響というふうになろうかと思います。
 しかしこれは国の計算方式の枠内での試算であり、他県のように関連産業や雇用全般への影響は反映されていない数字です。
 私は和歌山県が農商工連携で地域の産業を元気にしてゆくという方向をめざしているだけに、影響の全体像をしっかりと把握することが大事ではないかと思います。
 また、国に対してのスタンスですが、「どの様な要望をしていくのかを検討してゆく」と答弁されましたが、影響をさらに分析してゆくのは結構ですし、さまざまな対応を求めるというのもいいのですが、基本姿勢はどうなのか。「常軌を逸している」と言うのならきっぱり「反対だ」と言えばいいと思うのです。反対だとはっきりものを言うのか、そうでないのか、とりあえず今は何もいわずにおこうと思っているのか、基本的な姿勢を的確に答弁いただきたいと思います。
 そもそも、和歌山県はオレンジ輸入自由化でたいへんな苦労を経験しています。自由化前は全国で360万トン400万トンといわれたミカンの生産高が、ことしは80万トンにまで下がってしまいました。輸入される濃縮ジュースの価格には到底対抗できず、ジュース用ミカンの価格はもはやタダ同然となってしまいました。表年ではだぶつき感が加速して価格の下げが止まらないという状況が固定化し、農家手取り収入の減少は著しく、もう農業をつづけてゆく意欲をなくしかけている農家が多いのです。
 こういう体験をもつ県民に対して、知事の態度はいかにもそっけない態度ではないでしょうか。知事は競争力をつけるのが農業政策のようにおっしゃいますが、工業製品と同じように思っているふしがあるように思うのです。いつまでも食料はお金で外国から買えばいいんだという時代ではないのです。和歌山県農業と日本農業全体がまさに崖っぷちであり、県として地産地消の取組みをすすめて食料自給率を上げようとしているのに、食料自給率を下げてどうするんだと、基本的にまちがっていると国に対して堂々とものを言ってしかるべきではないでしょうか。
 影響額の全体像と国への対応・姿勢、この点について知事の答弁を求めます。


《再答弁》 知事
 松坂議員におかれましては、私が答弁をしていないところも含めて推測をしていただきまして、ありがとうございました。
 私の考えをいろいろと推測されたのですが、それについては異論もありまして、これをいちいち言っておりますと長くなりますので、そういうことは無いということも含めて留保させていただきたいと思います。
 その上で本質的なところですが、現在、農業生産では国において、米の所得補償を行うために農業の基盤整備という競争力を高めるような政策をお金にすると60%もカットしてしまったんです。
 それで何も対策をとらないどころか、対策を弱めたそのうえでTPPに入って荒波にさらすというのは常軌を逸していると申し上げたわけです。
 ということは、現状ではそんなものに入るのは反対であるというのは当然と思います。


2.鳥獣被害対策
(1)来年度県予算・取組みの抜本的強化を
《質問》 松坂英樹 県議
 次に、鳥獣被害対策についての質問をさせていただきます。県内の鳥獣被害は年々深刻さを増すばかりです。農業生産への被害だけにとどまらず、中山間地で暮らしが成り立たなくなるなど、県民生活と地域全体の課題となっています。
 10日ほど前ですが、有田川町の山間部の集落で、シカによって畑の白菜を食べられたおばあさんの話をお聞きしました。畑の白菜20数個がみんな食べられたということですが、息子の家にもわけてあげようと楽しみにしていたのに、一夜のうちに全滅ということだったそうです。県が発表する被害額というのは基本的に商品作物への被害であり、こういった自家栽培の畑などへの被害は数値となって現れてはきません。しかしこれは深刻な問題で、田舎の高齢者世帯は、年金収入は極めて少ないけれども、毎日の食事は野菜などを自給自足やおすそ分けをし合って生活を成り立たせているのです。自家栽培の畑が鳥獣被害によって何も作れなくなると、住み続けられなくなってしまいます。農業対策予算という位置づけだけではなく、まさに地域・集落の存続にかかわる地域政策の問題として正面から取り組むべき課題であると考えます。
 鳥獣害対策は、農地の防護対策はもちろんのこと、人里近くのエリアでの爆発的な個体数増加という事態のもと、頭数調整のための捕獲が焦眉の課題となってきています。加えて、単純に捕獲だけではなく、地域住民の共同や生息環境への働きかけもあわせた総合的な取組みが必要なことは言うまでもありません。
 そこで、鳥獣被害対策の予算がどうなっているかに注目してみますと、近年は有害捕獲数の激増もあり市町村の鳥獣被害対策予算が増加傾向で市町村予算は火の車です。調べてみるとここ4年でほぼ倍増している自治体が多いのです。有田川町も、広川町も、おとなりの日高川町でも年間約2000万円の予算となっているのが実態です。ところが県の予算を見てみると、県単独の鳥獣被害対策予算は年間4000万円程度であり、これでは市町村予算に毛がはえた程度ではないか。果たすべき役割や予算規模からいっても極めて不十分ということになってきているのではないでしょうか。
 県予算としては、防護柵や捕獲オリの補助事業額の増額はもちろんのこと、有害捕獲報償費の補助増額や狩猟免許者への支援、さらに県からは補助金を出していない国事業の防護柵事業に県の上乗せ補助を検討するなど、ぜひ大幅な増額を予算編成の中で検討していただきたいと提案するものです。
 また国予算の方ですが、特別措置法にもとづく鳥獣被害対策事業予算が2010年度分は事業仕分けによって予算削減され、全国的な要望額も急増したために、和歌山県分は要望額の半分しか認められませんでした。たいへん重大な影響を受けました。しかし民主党政権も事態の深刻さと急増する予算要望を無視できずに、来年度は別枠で100億円の対策費を概算要求していますが、これが和歌山県で十分に活用できる内容となっているかどうかは不透明であり、本年度同様の交付金事業の方はなんと半分に減ってしまうということですから、国に対しても和歌山県としてしっかりとモノを申してゆかなければならないと思います。
 そこで知事に伺いますが、来年度予算編成に向け、国の事業をフルに活用できるよう働きかけるとともに、県予算も、また取組みも一気に倍増させるぐらいの思い切った対応が求められているのではないかと考えますが、来年度県予算・取組みの抜本的強化についてどう考えているか答弁を求めます。


《答弁》 知事
 これまで有害鳥獣捕獲や防護柵の設置支援など、捕獲と防護の両面から取り組んで参りました。
 しかし、こうした取組にもかかわらず鳥獣害被害は減少せず、現場で農業に携わっている方々からは、何とかして欲しいという深刻な声、あるいは鳥獣害対策をもっと充実して欲しいという声も聞いております。
 県としても、これまで、鳥獣保護対策というのが名前からして明らかのように、これまでの法体制は「守る」ということであったんですが、これを180度ひっくり返しまして、個体数調整を行う「捕る」に重点を置いた取組を強化していく必要があると考え、平成18年からイノシシ、平成20年からシカの猟期の延長を行うとともに、今年の猟期からシカの1日当たりの捕獲頭数制限を撤廃したところであります。むしろ減らすという目標を明記してですね、減らしていこうというふうに考えているところであります。
 ところが、昨今、銃の所持規制が厳しくなる中で、後継者難等が発生いたしまして、この鳥獣を捕って下さる方がいなくなるという重大な局面にわれわれは遭遇しております。従いまして来年度予算につきましても、これまで春からずっと検討してきた中で抜本的に強化を図る所存でありましたが、さらにですね、ハンター対策、こういうことをどういうふうにして考えていくかということをさらに追加して、さらに強化した対策を必要としていると考えております。


(2)免許取得・更新、狩猟登録への支援を
《質問》 松坂英樹 県議
 次に具体的な課題で2点、農林水産部長にお尋ねします。まず第1点目に、有害鳥獣捕獲のための免許取得・更新、狩猟登録、この3つの経費への支援の問題です。有害捕獲を必要とされる規模に引き上げようとすれば、捕獲用のオリの設置などを相当数拡大させるとともに、銃器での駆除をお願いしている猟友会の皆さんや、有害捕獲のためワナ免許を取得した農家の皆さんへの支援が求められていると思います。
 今年度から広川町では、毎年必要となっている狩猟登録の費用への補助をスタートさせました。印南町では新たに猟銃免許を取得する人を対象にして、手続き費用や猟銃購入費の一部を補助する制度をスタートさせました。これらはどちらも県内の新しい動きです。また全国的には長野県で、猟銃者確保事業として許可所得に係る経費の支援が、そして有害鳥獣捕獲者支援事業として、ハンター保険や射撃訓練経費を、それぞれ市町村とともに支援する予算が始まっています。
 これらの県内市町村で始まった努力や全国的な試みを、ぜひ和歌山県の事業として取り入れていただきたいと思うのですがいかがでしょうか。
 実はこれらの費用負担は案外たいへんなのです。銃の免許取得費用は約7万円かかります。そして毎年毎年行わなければならない狩猟登録にかかる費用は、保険料など含めて、銃で約4万円、ワナで2万数千円です。そして3年ごとには銃やわな免許の更新を迎えます。毎年の費用に加えて更新費用がかかるので、更新と狩猟登録あわせればワナ免許でも約4万円の出費となります。
 県は、これまでワナ免許取得時の費用に対しては支援を新たにもうけてきましたが、その後残念ながら銃の免許取得時費用への支援や、銃もワナも免許更新時の費用への支援、そして免許とは別に毎年毎年必要となる狩猟登録という手続き費用への支援する制度がありません。
 有害捕獲は猟期をはずれた時期に無理をお願いする事業です。また箱ワナにしても放っといて入るものではないので、エサの補給管理や見回りなど多大な労力がかかります。有害捕獲は猟友会や免許取得者の献身的な協力なしには成り立たない事業なのです。困難な中での免許取得者拡大にむけて、また途中で免許をやめてしまわずに継続して有害捕獲に協力いただけるよう、これらの費用に対する支援拡大がぜひ必要ではないでしょうか。


《答弁》 農林水産部長
 狩猟免許の取得や更新、登録に関わる経費につきましては、県では、平成19年度から自ら農地を守る農家を支援するため、わな猟免許の取得に係る講習経費の一部に対し補助を行ってきておりまして、これまで203名の方の活用いただいております。
 また、平成21年12月に施行された銃刀法の改正により、銃の所持者に対する新たな負担が発生していることは十分認識しております。県では鳥獣による被害が依然として減少しない中、鳥獣害対策についてこれまで以上に捕獲に力を入れていく必要があると考えておりまして、どのような方策が取れるのか市町村や猟友会の方々の意見を聞きながら検討して参りたいと考えてございます。


(3)野生鳥獣食肉活用の今後の展開について
《質問》 松坂英樹 県議
 次に野生鳥獣食肉活用について伺います。日高川町でスタートした野生鳥獣の食肉加工の取組みが注目を集めています。有害鳥獣食肉処理加工施設として町内2ヶ所に開設された「ジビエ工房紀州」には、全国からの視察が後をたたないと聞いています。
 鳥獣被害対策推進のためにも、猟友会や食肉加工・販売関係者との連携を深め、県内各地にこういった取組みを広めてゆくべきだと思いますが、今後の展開についてどう考えているかご答弁願います。


《答弁》 農林水産部長
 本県では、ジビエの処理加工施設の整備を推進するとともに、取扱店舗の拡大やホテル、レストランでの利用を促進するなど、流通販売対策に取り組んでおります。
 イノシシ、シカ肉は地域の貴重な資源として有効に活用することが重要であると考えておりまして、今後も引き続き「わかやまジビエ」としての活用を図って参ります。


《再質問》 松坂英樹 県議
 知事からは、来年度予算にむけてハンター対策を追加していきたい、また部長からは、有害捕獲の経費支援について、「免許取得や更新時等について検討してゆく」との前向きの答弁をいただきました。免許取得と更新、この2つは答弁にありましたが、狩猟登録の経費については直接触れられませんでした。そのあとの免許取得と更新等について検討、という「等」に含まれているだろうと思うのですが、いずれも新しいことをはじめようということなので、もう少しつっこんで、今度は知事に質問させていただきます。
 有害捕獲に従事していただくためには免許だけではなく、実質上、狩猟登録を毎年していただくことになっています。ここにあるのは広川町における狩猟登録申請の費用一覧表です。
 どんな費用がかかっているのかを紹介しますと、銃のケースでは、狩猟税これは県税ですが、16,500円、それに県手数料1,800円、大日本猟友会・県猟友会費などに5,800円、猟友会有田支部の会費に6,000円、ハンター保険に8,000円、猟友会広川分会費に4,000円、合計42,100円となっています。
 わなのケースでは、狩猟税(何回も言いますが県税です)8,200円、県手数料1,800円、大日本猟友会・県猟友会費などに4,000円、支部会費6,000円、ハンター保険1,100円、広川分会費4,000円、わなの場合でも合計で25,100円となります。それにプラスして銃の場合、射撃の訓練費といった費用もかかってきます。
 紹介しましたように、いろんな経費が合わさってこれだけの個人負担になっているのですが、県税や県手数料、また保険料など各種費用、これらに支援を工夫できる余地はいっぱいあると思うのです。
 また、有害捕獲には協力しません、純粋に趣味やスポーツで免許を持ち狩猟登録をするという方は枠外へ別にしていいのです。有害捕獲に協力いただいている猟友会や個人の方々に、色んな料金を引き下げたり、支援を手厚くして、個人の負担をできるだけ軽減する、がんばって免許を取ってもらった方々が、「免許とったはええが、後から後から色々お金がかかってえらいよ」言っている、このことに報いることは県民の合意を得られるとおもうのです。
 知事に対して細かい具体的な答弁を求めるわけではありませんが、こういう性格をもった維持経費、狩猟登録費用なのだということを受け止めていただいて、ぜひ有害捕獲の免許の取得や維持にかかわる支援を、猟友会など関係機関とよく協議してすすめるよう指示をしていただきたいと思いますがいかがでしょうか。


《再答弁》 知事
 狩猟の問題でございますけれども、ハンター対策を強化すると申し上げました。それは、議員ご指摘のようなことを色々検討してやっていかなければいけないと言うことを当然踏まえているわけでございます。


《要望》 松坂英樹 県議
 さきほど、国の防護柵事業にも県費補助を加えてほしいと提案しました。国のハード事業に取り組む自治体、取組まない自治体に、ずいぶんアンバランスがあるんですね。県内で一番事業量の多い広川町でお聞きしました。「なぜここまで進んでいるのですか、住民の意識が高いのですか、町行政の熱意ですか」と聞きますと、担当の職員さんは、「いいえ、町からも補助をして地元負担を軽くしているからです」とサラリとお答えになりました。
 国のハード事業は補助率が2分の1で、県補助はなし、地元負担が2分の1となっています。そこで広川町では町単独予算で33%の補助をつけ、地元負担を12%におさえています。ですから進むのです。今年度、国の予算が半分に減らされ、今年できなかった地区を来年度で事業化する予定だそうですが、あと5地区ほどから手が上がっていて、うれしい悲鳴だそうです。
 要望としては、この市町村負担分には8割の交付税措置がされるということをもっと市町村にアピールし、理解してもらって積極的に取り組んでいただくようにすべきだということ。そして、厳しい市町村財政の中で財政や議会にウンといってもらおうとすれば、県も補助をしているという形にふみこんでくれれば、理解を得られやすい、これも道理だと思いました。国と市町村だけにまかせずに、県もぜひ予算枠を確保していただきたいと強く要望しておきます。


3.ミカン対策
(1)2010年産ミカンの生産販売状況
《質問》 松坂英樹 県議
 引き続き、3つ目の柱であるミカン対策に移らせていただきます。
2010年産ミカンは裏年ということもあり、有田地方での収穫量は前年対比85%程度であり、当初すべりだしの販売価格はまずまずだったものの、収穫量が少ないこともあって一昨年よりは収入が少ないのではないかといわれています。第1点目に、本年の和歌山県産ミカンの生産販売状況や県の取組みについて答弁を願います。


《答弁》 農林水産部長
 本年は裏年に当たることから、生産量は対前年比約9割にあたります16万5千トンを見込んでおり、12月1日現在の出荷量は2万7千トンとなっております。一方、市場価格につきましては、糖度が高く品質が良好なこともあり、前年を約4割程度上回る219円となっています。
 販売対策につきましては、JAグループと連携して、東京の品川駅構内において大規模なPR活動を実施した他、百貨店やスーパーでわかやまフェアを開催するなど、積極的な販売促進活動に努めております。

 今後とも、需要の高まる年末・年始に向けまして、厳選出荷の徹底に加えまして、市場との情報交換を密にしながら、品質の高さを前面に出しました販売対策を推進してまいります。


(2)県オリジナル新品種のアピールと普及
《質問》 松坂英樹 県議
 2点目に県オリジナル新品種のアピールと普及について伺います。私はこれまでも魅力的な和歌山県オリジナル新品種をと求めてまいりましたが、この間、果樹試験場と農家の協力のもと、味と着色の良い極早生品種や浮皮の少ない12月の主力品種など開発がすすめられてきました。現在品種登録出願中の「YN26」という開発ネームの極早生ミカンが、このたび農業新聞にもとりあげられ注目されているところです。
 和歌山県産ミカンのブランド力と注目度アップのためにも、どんどんアピールし、そのことで農家も励ましてほしいと思っています。今後のネーミングや商標登録、普及にむけた取組みはどう進んでゆくのかお尋ねします。


《答弁》 農林水産部長
 これまで、本県産みかんのブランド力向上を図るため、極早生、早生、中生、晩生の県オリジナル品種によるシリーズ出荷に向けて取り組んでおります。その一環としてゆら早生を親とした極早生品種「YN26」を果樹試験場で育成し、昨年、品種登録出願をおこないました。
 これまで、JAや果樹育苗組合を通じ、新品種の特性や現地適応性について農家の方々にお伝えをしてきたところですが、平成25年に計画している苗木の本格配布までに、農家の方々を対象とした現地研修会の開催、また栽培マニュアルの配布などに加え、販売時の名称につきましても検討を進め、産地化に向けての態勢整備を図ってまいります。


(3)気候温暖化に対応した栽培技術について
《質問》 松坂英樹 県議
 2点目に、気候温暖化に対応した栽培技術についてうかがいます。昨今の気候温暖化は農作物に大きな影響をあたえています。夏の高温や降水量の低下、秋になっても暑さが続くという中で、農作物全般に不作や品質低下、ミカンでも色づきや収穫期のずれこみなどが言われています。特にミカン栽培では収穫前に「秋肥え」と呼ぶ肥料をまくのですが、気温が下がっても地温がなかなか下がらないために、予想以上に養分が吸収され樹勢が強くなりすぎて12月の浮皮が激しくなるなど、今までの延長線上の栽培ではいけないという課題が報告されています。県として気候温暖化に対応した栽培技術についてどう考えているかお答え願います。


《答弁》 農林水産部長
 浮き皮などの生理障害対策の技術開発に加えまして、高品質安定生産のためのかん水指標作成に取り組んでいるところであり、今後、ホームページを通じて、土壌に応じたかん水時期などに関する情報を農家の方々に提供することとしております。
 さらに、議員お話の施肥技術に関する試験研究の実施につきましても検討をおこなってまいりたいと考えております。


(4)運搬用モノレールの機能強化・更新や作業道など身近な基盤整備への支援を
《質問》 松坂英樹 県議
 4つ目に基盤整備についてお尋ねします。先日、有田のミカン畑で事業化された「乗用型モノレール」の説明・試乗会に参加させていただきました。急な段々畑が多いミカン畑にとって、運搬用モノレールはなくてはならない存在です。安全対策のために人が乗れるモノレールということで、今年度8路線約1000メートルの施設が完成したのでお披露目となりました。
 私も試乗させていただきましたが、パワーもあって安心して乗れる感じです。事業に取り組んだ農家の方からは「とてもすばらしい!しかし値段が高いのが難点。また車体が長いので段々畑ではコンテナを積むのに不便、もっと短く簡便に」などの感想が出されていました。もっともなご意見であり、リーズナブルな普及品を期待したいところです。

 有田地方のミカン畑に設置されたモノレールは、すでに3〜40年たって更新時期を迎えている畑が多くみうけられます。ところが経済的理由によりなかなか設備投資に踏み切れないでいる実態があります。こうした園地整備の事業を推進することは後継者対策、高齢化対策、また地域の経済対策としても大事な役割を果たすと考えます。
 今日的なニーズにあった基盤整備として、運搬用モノレールの機能強化や更新、園地内の作業道の整備というような身近な基盤整備への支援が求められていると思いますがいかがでしょうか。


《答弁》 農林水産部長
 傾斜地の多い本県の産地実態を踏まえ、作業の省力化やコスト削減を図るため、これまで園内道の整備やモノレールの導入を進めてまいりました。
 今後も、補助事業や低利融資を活用しながら、園地条件に応じたきめ細やかな対応をし、働きやすい園地づくりを進めてまいります。


《要望》 松坂英樹 県議
 基盤整備で運搬用モノレールや園内作業道の整備というような身近なものに力を入れようという提案をしました。
 これまで運搬用モノレールなどは国のメニューでは新設はOKだけど、単純更新はダメだという方向だったんですね。
 しかし、古い運搬用モノレールを更新することで、機能が向上し、積み込み場所や路線の延長なども工夫するわけですから、機能が上がるだけでなく後継者対策にもなります。何よりも今、こういった小さな事業というのは地元業者の方の仕事づくりになります。そういう景気対策の点でも、大型の工事ではなく小さなこういう基盤事業を思い切って大胆に進めていただくことを要望いたします。


4、有田地方の救急医療体制強化について
(1)住民アンケートの結果について
(2)関係機関との協議状況と方向性
《質問》 松坂英樹 県議
 4つ目の柱である有田の救急医療体制強化についての質問に移ります。私は、「有田は救急医療の谷間だ」こういう救急患者や救急隊員の声を紹介しながら、一昨年度の12月議会、昨年度の2月議会で継続的にこの問題を取り上げ、救急患者が和歌山市内の大病院に運ばれざるをえない状況の改善を求めてまいりました。
 今年3月に、湯浅町が「次世代育成支援行動計画」作成のためのアンケートをとっているのですが、その自由回答欄の中には、「夜間の救急医療機関が遠く、大きい病院しかないことが困る」「休日・夜間、子どもが病気のとき、診てもらえる施設が近くにほしい」など、切実な医療にたいする有田住民の願いがつづられています。
 この間、県が中心となって地域医療再生計画をたてるとともに、関係機関とともに立ち上げられた「湯浅保健所圏域医療体制整備充実委員会」として協議を重ね、三次救急医療機関への患者集中の防止、救急告示病院などの各二次救急医療機関の診療機能も踏まえながら、病院群輪番制の再構築など、体制整備の努力を重ねてこられました。
 そしてこのほど「地域医療住民アンケート」が実施され、有田地方の住民意識や医療需要などを幅広く調査されました。その結果を見せていただくと、和歌山市内の大病院指向の割合よりも、地元の救急病院で診てもらいたいという割合が多く、その願いが切実であることがはっきりと出ていたというふうに思います。
 県として、この住民アンケート結果をどう分析し、今後の体制作りに生かそうとしているのか。関係機関との協議状況と今後の方向性についての考え方、以上2点について福祉保健部長より答弁を願います。


《答弁》 福祉保健部長
 有田地域の住民の皆様が救急医療に対して何を求めているのかを把握するため、湯浅保健所におきましてこの9月にアンケート調査を実施いたしました。その結果では、日曜、祝日の救急対応につきましては、約7割の方が和歌山市等の大病院ではなく、有田地域の医療機関で受診したいと回答されております。
 県では、このアンケート結果も踏まえまして、有田地域の救急医療体制を強化するため、湯浅保健所が中心となりまして有田保健医療圏の医療機関、医師会、消防機関、市町等と現在鋭意協議を重ねているところであります。
 その協議の方向性としましては、日曜、祝日の救急患者に対応するため、管内の医療機関等の医師の協力を得まして、拠点病院に入院患者等に対応する救急センタ一を設置する方向で 検討を進めております。
 今後とも、持続可能で安心できる有田地域の救急医療体制の構築に向けて取り組んでまいります。


5、犬の多頭飼育問題
(1)県としての対応と今後の取組み
《質問》 松坂英樹 県議
 最後に、犬の多頭飼育問題を質問させていただきます。この間、有田郡内3町の5箇所において、同一人物が合計約80頭もの犬を多頭飼育し、当該地域の付近住民がたいへんな迷惑をこうむっています。飼い主自身が住んでもいないこれらの場所で、非常識な多頭飼育を続けることにより、犬が吠えることへの苦痛をはじめ、柵をこえて犬が逃げ出したりする問題や、飛び掛ってきた犬のせいで通行人が転倒したりと、数多くの問題が報告され、相談を受けてまいりました。
 有田川町の修理川地区では、地区住民・行政、地権者など関係者の努力により犬が撤去されました。しかし湯浅町の住宅密集地や広川町での飼育現場では、住民や行政の懸命の努力にもかかわらず、飼い主は多頭飼育をやめる意思もなく、依然として付近住民への耐え難い被害が続いているのが現状です。
 無法な犬の多頭飼育問題に対する、県としての対応と今後の取組みについて答弁を願います。


《答弁》 環境生活部長
 県の対応といたしましては、これまで飼い主に再三にわたりまして指導を重ねてまいりましたが、飼い主の対応が不十分なため、現在「動物の愛護及び管理に関する法律」に基づく改善勧告を行っているところでございます。
 併せて、問題となっている飼育場所の周辺住民を始め、地元市町など関係者による連絡会を設置して地域の共通の課題とし、飼い主との話し合いの場を設ける等、地域一体となって飼い主に対して改善を強く求めております。
 今後の取り組みといたしましては、飼い主が勧告に応じない場合は、法に基づく措置命令等、より厳しい対応を行います。
 更に、動物愛護推進員を通じまして譲渡を求める働きも行ってまいります。


(2)実効性のある法・条例の検討を
《質問》 松坂英樹 県議
 県と湯浅保健所・地元自治体は、住民からの相談を受け、現場にも常に足をはこび、飼い主への指導や対策に努力をされてきました。しかし一方で、住民は事態がなかなか改善されないというもどかしさと不安を感じています。現行法にもとづく厳しい指導と対策をとりきるとともに、法の限界もあることから、実効性のある有効な法改正や条例の検討をすべきではないかと考えますがいかがでしょうか。


《答弁》 環境生活部長
 飼い主の所有権問題等から難しい課題があるところでございますが、全国的な課題となっている多頭飼育の適正化に向け、現在、国の中央環境審議会において「動物の愛護及び管理に関する法律」の改正の検討がなされておるところです。
 今後、こうした国の動向も注視してまいりたいというふうに考えております。

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2010年12月議会
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10年12月県議会、松坂英樹 一般質問=12月8日
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